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2022年7月の1件の記事

2022年7月 1日 (金)

【読】2022年6月に読んだ本(読書メーター)

6月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3560
ナイス数:170

日本人とエベレスト―植村直己から栗城史多まで日本人とエベレスト―植村直己から栗城史多まで感想
山好きにはたまらない一冊。1971年の松浦輝夫・植村直己による日本人初登頂から、近年の栗城史多まで、通史的に紹介されていて、エベレストに向けられる憧憬がひしひしと伝わってくる。それにしても、公募隊というガイド登山によって一般の人でも登れるようになったとは、驚きだ。ノーマルルートに張り巡らされたフィックスロープをたどって行けば(数々の難所はあるにしても)頂上にたどり着けるらしい(もちろん体力が必要だし、酸素ボンベは必須だが)。414ページに掲載されている頂上直下の大渋滞写真にも驚いた。
読了日:06月02日 著者:

ぼくは冒険案内人ぼくは冒険案内人感想
先に読んだ『日本人とエベレスト』(山と渓谷社/2022年)で、この著者(国際山岳ガイド)を知った。元気いっぱいのガイドさん。ヒマラヤの高山やヨーロッパアルプスの登山の実態もよくわかった。たとえば、ヒマラヤの8千メートル峰には放置されたままの遺体がたくさんあること、エベレスト登頂後にお客さんを死なせてしまった経験など…。著者が目指している山岳ガイドの姿には共感した。こういう人にガイドしてもらえば、2009年のトムラウシ山遭難事故(旅行会社主催で雇われガイドが率いたツアー登山だった)などは起きなかったと思う。
読了日:06月08日 著者:近藤 謙司

近藤謙司とシミュレートするエベレスト登山近藤謙司とシミュレートするエベレスト登山感想
Kindle版を読むことはめったにないのだが、カラー写真がきれいだし、拡大表示もできるのがよかった。2011年、あの東日本大震災の直後、エベレストへのガイド登山のルポ。近藤ガイドの現地からのブログ投稿と、日本の事務所からの投稿によって、臨場感あふれる登頂記録になっている。
読了日:06月08日 著者:近藤謙司

 

「おくのほそ道」をたどる旅: 路線バスと徒歩で行く1612 キロ (999;999) (平凡社新書 999)「おくのほそ道」をたどる旅: 路線バスと徒歩で行く1612 キロ (999;999) (平凡社新書 999)感想
芭蕉の「おくのほそ道」を路線バスと徒歩で行く、と銘打っているが、列車やタクシー、レンタカーまで使って、できる限り芭蕉と曾良が歩いた道を探る紀行文。ところどころで昔の旧街道をみつけたり、田んぼから新幹線が超高速で走り去る姿を見て感慨にふけったり、地元の人が利用する100円均一の市営バス(コミュニティバス)に乗るのを申し訳なく思ったり…と、バックパッカーらしい視点が好ましい。芭蕉の同行者曾良の苦労を思いやる著者の優しさにも好感が持てる。著者にはアジアや沖縄の寄稿文が多数ある。読んでみたい気分になった。
読了日:06月09日 著者:下川 裕治

You are what you read あなたは読んだものに他ならないYou are what you read あなたは読んだものに他ならない感想
ひそかに敬愛する服部文祥さんが書いた読書ガイド(「本の雑誌」連載書評)をまとめた本。59冊の興味深い本が、文祥さんらしい硬質で巧みな文章で紹介されている。私は池澤夏樹さんの文章を連想した。どれも読みたくなる本ばかりだ。"サバイバル登山"を実践し、都市でのサバイバル生活を続ける(その様子は配偶者服部小雪さんの『はっとりさんちの狩猟な毎日』河出書房新社2018年)この人らしい選書もあれば、まんが本や科学書もあって、いったい彼の読書の幅はどうなってるんだ、と驚くが、「岳人」編集者らしい見識なのだろう。
読了日:06月16日 著者:服部文祥

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)感想
東京都東久留米市の滝山団地は私の住まいから近く、この本に出てくる土地には馴染みがある。著者原武史さんの皇室関係の本をわりとよく読んでいて好きな書き手なので、以前から気になっていた。「滝山コミューン」とは「国家権力からの自立と、児童を主権者とする民主的な学園の確立を目指したその地域共同体」だった。1974~75年頃のことだ。当時、この団地のマンモス小学校の生徒だった原少年が抱いていた強い違和感・疎外感が、本書を著す契機になっている。文庫版解説は桐野夏生。原さんは桐野作品の解説を書いたり対談もしている。
読了日:06月16日 著者:原 武史

千代田区一番一号のラビリンス千代田区一番一号のラビリンス感想
書評家岡崎武志さんの書評(東京新聞2022年6月12日)を読み、がぜん読みたくなった小説。実在の人物(山本太郎氏、さかなクン、一水会代表木村三浩氏、等々)の逸話がリアル。天皇皇后(現上皇ご夫妻)の日常生活と皇居地下のラビリンス(迷宮)探検と幻想的な展開は、作者の”妄想”(作者がインタビューでそう表現している)。天皇制とは? 憲法一条がいう"象徴"とは何?(憲法では何も説明していないし、日本国民の総意というが国民投票をしたわけでもない)。さまざまな問題提起を孕みながらも、上皇ご夫妻に対する好意がうかがえる。
読了日:06月20日 著者:森達也

空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 (ヤマケイ文庫)空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 (ヤマケイ文庫)感想
作家の桐野夏生さんが、この著者ジョン・クラカワーを愛読していると知り、何冊か買い求めたなかの一冊。服部文祥さんも書評を集めた『You are what you read』(本の雑誌社)のなかで言及している。1996年のエベレストでの大量遭難については、少し前に読んだ『日本人とエベレスト』(山と渓谷社)で知ったばかり。エベレストの高所(デスゾーン)の過酷さが伝わってきて息をのむ展開。プロの登山家でなくてもガイドに率いられて登頂できるようになった「公募登山」の実態がよくわかる。この文庫版の解説は石川直樹氏。
読了日:06月24日 著者:ジョン・クラカワー

ザ・プッシュ:ヨセミテ エル・キャピタンに懸けたクライマーの軌跡ザ・プッシュ:ヨセミテ エル・キャピタンに懸けたクライマーの軌跡感想
服部文祥さんの著作(書評集)で知った本。フリークライミングで”ドーン・ウォール”と呼ばれるヨセミテ エル・キャピタンの長大な岸壁を初完登した著者の自伝。息詰まる展開。文章・訳文が良く、抵抗なく読み通せた。頻出するクライミングの専門用語もネット検索で補足理解できた(ごく初歩のクライミング体験があったので)。もっと写真があるといいのにと思った。「The Dawn Wall」という映像作品にこのクライミングの様子が写されているというので見てみたいが、本書では著者の内面の葛藤が克明に描かれている。
読了日:06月27日 著者:トミー・コールドウェル

増補新版 いま生きているという冒険 (よりみちパン! セ)増補新版 いま生きているという冒険 (よりみちパン! セ)感想
ずっと気になっていた人の本。少し前に読んだ『空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日』 (ヤマケイ文庫)の解説が、この石川直樹さんだった。少年少女向けシリーズ(よりみちパン!セ)なので、漢字にルビが振ってあったりして読みやすい。角幡唯介さんの2年後輩(早稲田大学)だったことを知る。服部文祥さんいわく「服部・角幡・石川三兄弟」。じつは、過去にこの石川直樹さんのこと(ある事故)をネット記事で読んだことがあって、なんとなく敬遠していたのだが、著書を読んでみて好感の持てる人だと感じた。先入観はいけないな。
読了日:06月28日 著者:石川直樹

ぼくの道具ぼくの道具感想
登山道具やキャンプ用具が好きなので、この本は楽しめた。外国の高山でしか使わないような羽毛服や高所靴、写真家らしいプロ向きカメラの数々など、私には縁遠い品物も、豊富な写真(巻頭のカラー写真が美しい)と文章で、とても興味深かった。失敗に終わった「2015年夏 K2登攀記」も、いい。靴紐をいちいち結ぶかどうかの話(P119)に出てくる「人生指南の量産している作家」「何を言ってるんだこの人は」とは五木寛之氏のことだろうと想像して、クスっと笑う。「ポメラ」という簡易な文書入力機器を初めて知った。これは便利そうだ。
読了日:06月29日 著者:石川直樹

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