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2022年8月 1日 (月)

【読】2022年7月に読んだ本(読書メーター)

7月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:6128
ナイス数:201

ALONE ON THE WALL アローン・オン・ザ・ウォール 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡ALONE ON THE WALL アローン・オン・ザ・ウォール 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡感想
トミー・コールドウェルの『ザ・プッシュ』で知ったクライマー アレックス・オノルド(ホノルドと表記するのが正しいらしいが)とデイヴィッド・ロバーツとの共著。ロープやギヤ類をいっさい使わず、いわば裸一貫で岸壁を登る”フリーソロ”。考えてみれば、きわめて原初的な岩登りのスタイルで、そこに魅力を感じる。もちろん、落ちてしまえば一巻の終わりで、ふつうの人には真似できないことだ。コールドウェルもそうだったが、このオノルドも人間的な魅力に富む人物。手に汗握る映像も見てみたいものだ。
読了日:07月01日 著者:アレックス・オノルド,ディヴィッド・ロバーツ


日本国憲法日本国憲法感想
先日読んだばかりの小説『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)の著者が、2007年に上梓した本。この小説のベースになっているフジテレビの深夜番組「NONFIX」で試みようとしてできなかったことの顛末が、詳しく書かれている。憲法一条と九条への著者の思い・考えが綴られていて、あらためて憲法について考えさせられることが多かった。日本国憲法の最初の単語が「朕(ちん)」だという指摘にハッとした。「朕は、…帝国議会の決議を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。」
読了日:07月03日 著者:森 達也


戦争の日々(上)―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント戦争の日々(上)―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント感想
週刊金曜日2022/4/8号に掲載されていた『千代田区一番一号のラビリンス』の著者・森達也氏へのインタビュー記事を読んだ。そこに現代書館社長の菊地泰博氏へのインタビュー記事もあり、この本が紹介されていた。先の戦争についてはさまざまな本があるが、朝倉喬司氏による上下2巻のこの著作は知らなかった。まさに「戦時下日本のドキュメント」で、当時の指導者たちから巷間の無名の人びとにいたるまで、新聞記事などをたんねんに追って、その実相に迫っている。日米開戦に至る両国の交渉の裏話(米大使グルーの日記など)が興味深い。
読了日:07月07日 著者:朝倉 喬司


戦争の日々〈下〉天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント戦争の日々〈下〉天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント感想
当時の日記や手記(有名無名を問わず様々な人が遺した)、新聞・雑誌記事、市井の噂や流言飛語などを構成することで、あの戦争の姿をあぶり出す。まさに「実況ドキュメント」。下巻では1941年12月の開戦から、緒戦の勝利に沸く熱狂とそれに続く劣勢、敗戦までの日々が綴られている。終章、沖縄戦での幼女のエピソード(母親と二人で逃げ回っていて母親が死亡、通りがかりの人に拾われて壕に連れて来られたが、食べ物も一切受け付けずひと言も発しなかった)が胸に迫る。昭和18年生れの著者は、この幼女に自分自身を重ね合わせている。
読了日:07月11日 著者:朝倉 喬司


燕は戻ってこない (集英社文芸単行本)燕は戻ってこない (集英社文芸単行本)感想
ひさしぶりに桐野夏生作品を読んだ。2022年3月刊行の最新作。代理母(代理出産の一種)という、きわめて現代的なテーマ。実質的なデビュー作『OUT』につながる「女性たちの困窮と憤怒」(帯の惹句)が描かれる。終幕、主人公リキの決断に、何やら救われる思い。いい後味だった。物語の展開にかかわる「りりこ」の強烈な個性が印象的。
読了日:07月12日 著者:桐野夏生


ロンリネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)ロンリネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)感想
『ハピネス』の続編とは知らず先に読んでしまった。タワーマンションとか、ママ友とか、縁遠い世界だが、主人公女性の懊悩は理解できる。結末にもう少しひねりがあるかと思ったが、これはこれで桐野夏生らしいクロージングかもしれない。『ハピネス』も読まなくては。
読了日:07月14日 著者:桐野 夏生


ハピネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)ハピネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)感想
先に読んでしまった『ロンリネス』につながる作品。高級タワーマンションに暮らすプチセレブと呼ぶべき主婦たち=ママ友どうしの見栄の張り合いに翻弄される主人公、彼女と親しいヤンママ風の美雨ママ、お受験に奔走する3人のママたち。そこにダブル不倫や主人公と夫との軋轢がからむ。なかなか面白い。作品として未完の感が否めないのは、続編を想定して書かれたからか。文庫解説(斉藤美奈子)の指摘が鋭い。未完ということなら、続編の『ロンリネス』も、その先の展開が気になるところ。光文社のプチセレブ向け女性誌「VERY」連載とのこと。
読了日:07月16日 著者:桐野 夏生


魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)感想
感想は下巻読了後に。文庫上下2巻に分けるほどの分量ではないのに、と思う。たしかに文庫1冊にすると600ページを超える長編だが。
読了日:07月17日 著者:桐野 夏生

 

魂萌え!〔下〕 (新潮文庫)魂萌え!〔下〕 (新潮文庫)感想
桐野夏生らしい作品。文庫解説(星野智幸)によれば、桐野作品には「ホワイト桐野ワールド」と「ブラック桐野ワールド」があるという。たしかに。この小説は「ホワイト」、つまり平凡な専業主婦の平凡な日常からの微妙な脱出(夫の急死であきらかになる事実と彼女の変化)の物語だ。これまで読んだ作品の中では『だから荒野』を連想させる。ラスト、ちょっとしたどんでん返し的エピソードをもってくるあたり、さすがの小説巧者。
読了日:07月18日 著者:桐野 夏生


抱く女 (新潮文庫)抱く女 (新潮文庫)感想
予備知識なく読んだので、タイトルからどんな小説かと思ったが、1972年の時代の匂いが濃厚。桐野さんは私と同年生まれで、内ゲバ時代の当事者世代だったことを思い起す。冒頭、雀荘にたむろする無気力な若者たちの姿にうんざりしながら読んでいたが、女性ジャズシンガーとの出会いあたりから懐かしい思いがした。酒癖の悪いジャズピアニストなど、いかにも居そうで笑ってしまった。主人公直子に頑張れよと声をかけたくなった。時代の色が濃厚だが、普遍的なテーマを内蔵する青春小説といえるだろう。またしばらく桐野ワールドにのめり込みそう。
読了日:07月19日 著者:桐野 夏生


猿の見る夢 (講談社文庫)猿の見る夢 (講談社文庫)感想
これも予備知識なしで読んだが、タイトルが秀逸。自己中心的でいながら、とんでもなく間抜けな主人公(一見、社会的な地位もあり金銭的にも恵まれている会社役員)の破滅へ向かうドジな道のりが、コミカルに描かれている。文庫解説・関川夏央が言うように、こういうサラリーマンは巷にありふれているのかも。物語の展開のテンポが巧妙で、いっきに読ませる。狐につままれたようなラストが不気味。
読了日:07月20日 著者:桐野 夏生


メタボラ (文春文庫)メタボラ (文春文庫)感想
タイトルが謎のまま、予備知識なしで読んだこの小説は、桐野作品の中でも何本指かに入る傑作だと思う。舞台は沖縄。それだけでも私にはうれしいのだが、副主人公ともいえる宮古島出身の男の島言葉が、この男のキャラクターを巧みに現わしていて、さすが桐野夏生だと感心した。主人公の過去が徐々に明かされていく展開も巧み。2005年11月から2006年12月にかけて朝日新聞に連載。現代沖縄の姿がよく描かれている。
読了日:07月22日 著者:桐野 夏生


優しいおとな (中公文庫)優しいおとな (中公文庫)感想
これも傑作。文庫解説で雨宮処凛が「熱烈な桐野ファン」と告白している。雨宮さんには秘かに注目しているので、嬉しい。この小説も、桐野作品らしく現代日本の深刻な問題(貧困問題、家族問題)を、これでもかと抉り出していて、強烈なのだが、どこか人の”優しさ”を信じたくなる、温かなまなざしが感じられる。巻末にあげられている参考文献(学術的で難しそうな書名)を見ると、この作品にこめられた作者の熱意が伝わってくる。
読了日:07月24日 著者:桐野 夏生


路上のX (朝日文庫)路上のX (朝日文庫)感想
桐野夏生作品には「ブラック桐野ワールド」と「ホワイト桐野ワールド」の2種類があるという説を読んだことがあるが、これはブラックもブラック、真っ黒な、現代の女子高生たちをとりまく世界。文庫版解説(仁藤夢乃=Colabo代表)を読むと、これが現代日本の生々しい現実なのだと納得。絶望的な気分になる。少女たちを食い物にする男たち、自分の子どもたちを見捨てるどころか虐待する親たち、隔離施設に閉じ込めることしかしない・できない行政。この現実を直視させられた。物語の展開は、さすが桐野さん。最後の種明かしが秀逸。傑作だ。
読了日:07月26日 著者:桐野 夏生


グロテスク 上 (文春文庫)グロテスク 上 (文春文庫)感想
<名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。>(文庫カバー)とあるが、表題どおり”グロテスク”な世界。ちょと辟易しながら、なんとか読了。上巻ではさまざまな謎が解かれておらず、下巻での展開が楽しみではある。
読了日:07月29日 著者:桐野 夏生

 

グロテスク 下 (文春文庫)グロテスク 下 (文春文庫)感想
下巻の冒頭「張(チャン)の上申書」で物語の流れがガラッと変わり、桐野夏生らしい凝った構成。悪意に満ちた独白と登場人物たちの手記・日記で構成されるおどろおどろしい世界。あまり好きではないが、最後まで読者を引っ張るところは、さすが。好悪が分かれる問題作だと思う。文庫版解説(斉藤美奈子)がなかなか鋭い。
読了日:07月31日 著者:桐野 夏生

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