【読】北方謙三と船戸与一
北方謙三『水滸伝』全19巻(集英社文庫)を、いま、夢中になって読んでいる。
5巻目を読み終えたところ。
壮大な物語だが、あくまでも北方謙三の「水滸伝」だ。
中国民間説話としての「水滸伝」を、思いきって再構築し、筋の通った活劇にしている。
ところで、私がずっと愛読してきた船戸与一さんと、この北方謙三氏の関係が気になって、ネット検索してみた。
ともに「日本冒険作家クラブ」(今はもうない)に所属、個人的にも親交があったはず。
日本冒険作家クラブ(Wikipediaより)
1981年の冒険小説ファンの団体日本冒険小説協会の発足を受けて、1983年5月、「作家の団体を」という森詠の提唱により、13人の発起人(田中光二、伴野朗、谷恒生、北方謙三、西木正明、船戸与一、南里征典、川又千秋、大沢在昌、内藤陳、関口苑生、森詠、井家上隆幸)を中心に創設。事務局長は井家上隆幸、会計役は大沢在昌だった。
その後はあまり顕著な活動がなかったが、1987年に再度、新生「日本冒険作家クラブ」として賛助会員を徳間書店として、書き下ろしアンソロジー『敵!』を発行。会報「冒険主義」を刊行開始。
1994年、大藪春彦に「功労賞」を授賞。
また、2001年から、会員が選考して編集者に授賞する「日本赤ペン大賞」を主催していた。
その後も、親睦団体として活動を継続したが、2010年に「役目を終えた」として解散された。
ネット検索で、船戸さんが亡くなった(2015/4/22)のすぐ後、北方氏のインタビュー記事にぶつかった。
「北方謙三」があなたの人生の疑問を一刀両断 | デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2015/08050815/
2015年8月5日のこの記事で、船戸さんの死を、こう語っている。(以下、記事から)
<この間、船戸与一って作家が亡くなりましたけど、生前、「がんで死ぬかボケて死ぬかどっちがいいか考えるんだけれど、どっちでもいいよな、死ぬんだから」と言っていた。彼は6年ぐらい闘病してましたよ。で、我々のところに手紙くれて、「あと1年で死ぬ」って。びっくりするじゃないですか。で、死ぬのかなあと思っていると、死なない。1年経っても死なない。2年経っても死なない。3年経っても死なない。4年経っても死なない。5年経っても死なない。「あの野郎、嘘言いやがったのか」と思いながら見舞いに行くと、やはり彼は闘病はしているわけですよ。体がぎゅっと縮んできてね。それで彼はその間に何やってたか、本当に書きたい小説を完成させたんです。『満州国演義』っていうんですけどね、これは本当に素晴らしい小説ですよ。それをね、きちんと完成させるまでは生命力を失わなかった。命の力を失わなかった。それが終わったら、ふうーっと少しずつ少しずつ力が抜けるように、なんかこう炎が消えていくように、すーっとそのまま亡くなってしまった。だけども、それを書いている間は生命力を失わなかった。人間はね、何かやろうとすることを持つ、やるべきことを持てばいいんです。
何でもいいんです。持てばいいんです。もし、持つことができないっていうならば、その船戸与一の『満州国演義』を読んで。これはね、「がんで余命1年を宣告された人が書いた小説なんだ、だけどそんなはずないだろう」っていうような小説ですから、読めばいい。それでもダメだったら、私の『水滸伝』を読めばいい。>
船戸ファンの私には、嬉しい記事だったので書いてみた。
最近のコメント