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2023年9月11日 (月)

【読】縄文時代は、はたして

まだ半分ほどしか読んでいないが、縄文時代を知るための、いい本があった。

山田康弘 『縄文時代の歴史』
 講談社現代新書 (2019/719)325ページ

【Amazonの紹介文】

われわれの中にも縄文人は生きている!? 近年の発掘調査、および科学的な分析技術の飛躍的な発展により、旧来の縄文像は次々に塗り替えられることになった。最新の知見を元に、最も新しい縄文時代像を明らかにする。縄文ブームの今こそ必読。

縄文時代とは、日本列島において、土器が出現した1万6500年前から、灌漑水田稲作が開始される3000年~2500年前までの時代をさす用語です。
この時代には、狩猟・採集・漁労を主な生業とし、さまざまな動植物を利用し、土器や弓矢を使うなどして本格的な定住生活が営まれていました。1メートルにも及ぶ柱材を使用するような大型建物を作る技術や、クリ林の管理や漆工芸を始めとするきわめて洗練された植物利用技術を持ち、各地の環状列石や土偶に見られるように、複雑な精神文化がありました。また多数の集落が婚姻や交易などによってつながり合い、列島内には広範な社会的なネットワークがつくりあげられていました。
世界史上にも類例のないユニークな存在としても知られる縄文時代。最近のDNA分析によると、現代日本人の遺伝子にも、12パーセントほどは縄文人から受け継いだものが存在しているということです。著者によれば、日本人の円環的な死生観には、縄文人から受け継いだ要素が色濃く反映しているといいます。その意味において、縄文人は今もわれわれの中に生きている、そう言ってもよいのかも知れません。近年の縄文ブームも、もしかしたら、そのような親近感ゆえのことかも知れません。
近年の発掘調査、および科学的な分析技術の飛躍的な発展で新たな知見が次々に明らかにされたことにより、旧来の縄文像は一新されることになりました。千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館では、これら最新の研究の成果を元にして、縄文時代の展示をリニューアルしました。本書は、その責任者による、最も新しい縄文時代像を紹介するものです。

あとがきに、ハッとする文章があった。
現代人が縄文時代に対して持つ、通俗的なイメージを打ち砕くものだが、なるほどと思った。

以下、長めの引用。

(本書 あとがき P.322-323 より)

<近年、縄文人をサステイナブル(環境破壊をすることなく維持・持続できる)でエコロジカルな考えを持ち、自然と共生した人々と評価する向きもある。確かに、そのような評価は当時の人々の一面を照らすものかもしれないが、少ない人口下で定住生活を行い、食料のほぼ100%パーセントを自然の恵みに依存していた縄文人には、そもそも自然と共生する以外のオプションはなかっただろう。「自然と共生する」という発想自体がきわめて現代的なものであることにも気が付くはずだ。>

<また、縄文人は、必ずしも現代的な意味でサステイナブルでエコロジカルな思考を持った人々だったわけではなかった。定住生活が進展するに従って、縄文人は周辺環境にさまざまな働きかけを行うようになった。彼らは必要に応じて森を切り開き、焼き払い、そして有用な植物を管理して自分たちに都合のよい二次的な自然環境をつくり出していた。このような人間本位の自然開発のあり方は、本質的に現代と変わらない。

<ただ、ごく少ない人口下で、そして石器によって人力で自然を切り開いていたがために、人々の改変・開発の度合いよりも、そして人々による自然からの食糧および各種資源の収奪量よりも、自然の回復力の方が優っていただけだ。その意味では、縄文文化とは、現代における私たちの社会の初原型と言うことができる。(後略)>

<縄文時代と現代を比較し、縄文時代をある種の「楽園」「ユートピア」として語ろうとする論調の中では、しばしば「極端に少ない人口」という観点が抜け落ちていることも、あわせて指摘しておきたい。(後略)>

現代は、文明の行き詰まりを世界的に感じていて、ついつい、はるか昔の素朴な生活を美化しがちだが、そんなことはないのだな。だいいち、いまさら縄文時代の生活に戻れるわけもないし。

ただ、「自然の回復力」というキーワードは、人類滅亡を避けるためには重要な観点なんだろうと思う。
「再生可能な」とよく言われるが、たとえば、人間が作り出したプラスチック製品の「再生」などは、本来の「再生」とは程遠いチャチな幻想なのかも。
自然の回復力を待つことなく、反対に、どんどん収奪・破壊し、ほんらい自然が持っているはずの回復力を奪っている今の人類に、滅亡を避ける道はあるのか?

雑駁な文章で恥ずかしいが、こんなことを考えている。

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