【読】「土偶を読むを読む」を読んだ(再掲)
少し前(9月5日)にアップした感想文。
手直しをしたので、再掲しておきたい。
望月昭秀/縄文ZINE(編著)
『土偶を読むを読む』
文学通信(2023/6/10)431ページ
話題をさらった竹倉史人著『土偶を読む』(晶文社2021)及び、続編のこども向け図鑑『土偶を読む図鑑』(小学館2022)に対する、考古学視点からの正面切った批判書。本の装幀も竹倉氏の上掲書を意識して(皮肉って)います(書影参照)。
私は以前、交流紙213号(2022年8月発行)に寄せた投稿で竹倉氏の著作を大いに持ち上げました。当時、竹倉説の杜撰さに気づかず、本書を読んだあとでは“だまされたのか”と思い至りました。当時の “目から鱗が落ちた”という感激も、いまでは“落とした鱗を拾い直した”という思いに変わりました。悲しいけれど……。
いずれにしろ、書かれていることを無批判に鵜吞みにするのはいけないな、と反省しています。
以下、本書のポイントをAmazonの紹介文を参考にして――
・「土偶の正体」は、竹倉史人『土偶を読む』によって本当に解き明かされたのか?
・竹倉氏は、考古学の実証研究とイコノロジー【注】研究を用いて土偶は「植物」の姿をかたどった精霊像という説を打ち出した。
・NHKの朝の番組で大きく取り上げられ、養老孟司ほか、各界の著名人たちから絶賛の声が次々にあがり、ついに学術書を対象にした第43回サントリー学芸賞をも受賞。この賞の選評で佐伯順子氏は――「『専門家』という鎧をまとった人々のいうことは時にあてにならず、『これは〇〇学ではない』と批判する“研究者”ほど、その『○○学』さえ怪しいのが相場である。『専門知』への挑戦も、本書の問題提起の中核をなしている」――と竹倉氏(人類学専攻で考古学については“門外漢”)の姿勢を大いに評価。ここで言われている“専門家”とは考古学分野の学者・研究者・学芸員などを指す。
・しかし、このような世間一般の評価と対照的に、『土偶を読む』は考古学界ではほとんど評価されていない。それは何故なのか。その理由と、『土偶を読む』で主張される「土偶の正体」、それに至る竹倉氏の論証をていねいに検証している。
【注】イコノロジー(iconology)
本来は図像解釈学(ずぞうかいしゃくがく)。
竹倉説においては、有名な土偶の外観写真=図像と、食用植物や貝類との形態の相似に着目し、土偶の正体(何をかたどり、どんな目的で作られたか)を類推(想像)、「土偶の真実」を明らかにした! と高らかに宣言していた。
いまになって思うのですが、竹倉氏の着眼点はとてもユニークで面白いものでしたたが、メディアや著名人、権威ある学術賞までが“お墨付き”を与えた形になり、まるで正当な学説であるかのような扱いを受けたところに問題があったのでしょう。竹倉氏も、ひとつの仮説(もっと言えば“思いつき”)、軽い「読み物」というスタンスで発表すればよかったのかも。
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