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2024年4月の6件の記事

2024年4月16日 (火)

【読】原武史『一日一考 日本の政治』

面白そうだったので購入、そのまま本棚に眠っていた新書。
読みやすそうだったので、読んでみることにした。

原武史 『一日一考 日本の政治』
 河出新書 (2021/6/20) 398ページ

https://amzn.to/4aMpFEe

―Amazonの紹介文―
<歴史の深い闇に埋もれた言葉は、私たちの日常を読み解く鍵になる。公表時に話題にされても忘れ去られた名言、無名の人たちが残していた言葉、一つの出来事に対して異なる見解を示す文章……一日ひとつ、366人の言葉と今の体制のつながりを通して、この国の政治とは何か、考える。>

新書としては分厚い本だが、
「うるう年の2月29日を含む1年366日の1月1日から12月31日まで、1日ごとに政治とは何かを考えるための文章や言葉を配置し、それぞれの文章や言葉に対する筆者の解説を加えたもの」(はじめに)
とあるように、1ページ1項目で読みやすそう。

ちなみに、1月1日の項では、阿満利麿(あま・としまろ/1939-/宗教学者)の文章がとりあげられている。
阿満利麿という人物は、知らなかった。
この阿満利麿の文章を引用したあと、筆者の原武史さんは、こう解説している。

<1946(昭和21)年元日、昭和天皇は詔書により自らを「現御神」とする「架空ナル」観念を否定し、いわゆる人間宣言を行った。だが阿満利麿は言う。大部分の国民は、天皇が「神」だろうが「人間」だろうが、依然として崇拝の対象にしている。それは自分たちの生に究極的な意味を与える存在を、日常生活と同じ時間と空間のなかに求めたいという願望があるからだ。この願望がある限り天皇制はなくならないどころか、天変地異などで自分たちの生が危険にさらされたときほどその崇拝は強まることになる。> (P.16)

天皇や皇室に詳しく、たくさんの論考がある原武史さんらしい、鋭い指摘だと思う。

この本に出てくる人物、私の知っている人は少ないが、あたらしい発見がありそうで、楽しみな本だ。

(2024/4/16 記)

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【読】泉ゆたか著『ユーカラおとめ』を読んだ

宇梶静江さんのトークイベントのことを書いたら、この本のことを思い出した。
3/18から3/20にかけて読んだ。
図書館本。

泉ゆたか 『ユーカラおとめ』
 講談社 (2024/1/29) 268ページ
https://amzn.to/3xx9hce

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(書影はAmazonサイトより)

―出版社(講談社)のサイトから紹介文―
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000377108

「ユーカラを書き記すことは、私が生まれてきた使命なのだ」
絶滅の危機に瀕した口承文芸を詩情あふれる日本語に訳し、今も読み継がれる名著『アイヌ神謡集』。著者は19歳の女性だった。
民族の誇り。差別との戦い。ユーカラに賭ける情熱。短くも鮮烈な知里幸恵の生を描く、著者の新たな代表作!
「いつまでも寝込んでいるわけにもいきません。私には時間がないんです」
分厚く腫れた喉から流れ出した自分の言葉に、幸恵ははっとした。
私には時間がない。
そうなのか?
思わず胸に掌を当てた。満身創痍の身体の中心で、心臓は未来へ駆け出す足音のように勢いよくリズムを刻んでいた。
(本文より)

私は、以前から知里幸恵(正式な漢字は「幸惠」)への関心が深く、『アイヌ神謡集』にまつわる書籍や彼女を扱った評伝などを読み漁った時期がある。
この小説『ユーカラおとめ』も、フィクションながら、知里幸恵を描いたものなので興味深かった。

以下、私が所属している「図書館友の会」の会員向け交流紙(月刊)に寄稿した「おすすめの本」の文章を掲載しておく。
この交流紙は、紙媒体で友の会会員に配布される(一部の会員にはPDF版で配布)。
いわば非公開の文章なのだが、せっかく自分が書いたものなので、原文通りここにコピペしておこうと思う。
手抜きといえば手抜きだが。
※ブログ画面での読みやすさを考慮して、段落改行を変更。

『アイヌ神謡集』一冊を遺して、十九歳という若さで世を去ったアイヌの女性・知里幸恵(幸惠)。
1903(明治36)年6月生まれ~1922(大正11)年9月没。
『アイヌ神謡集』については、12年ほど前に交流紙で紹介したことがあります。
彼女をモデルにした映画「カムイのうた」も、今年1月から公開されているようです。
 https://kamuinouta.jp/
没後百年を過ぎても、ちょっとした知里幸恵ブームになっているのでしょう。
この小説は、東京の金田一京助宅に招かれて『アイヌ神謡集』を推敲し完成させながらも、発刊を待たずに急死した1922年5月から9月までのわずか4か月の、幸恵の軌跡(上京から死去まで)がリアルに描かれています。
作者はフィクションと断っていますが、金田一京助とその妻・静江、金田一の子息・春彦と妹の若葉、それに、金田一を“おじさま”と呼ぶ荒木百合子(旧姓・中條百合子、のちの宮本百合子)、金田一邸の女中・菊などが実名で登場します。
薄幸の乙女、というイメージを抱きがちなアイヌの女性の複雑な内面を、そこまで書くか、と驚かされるほど(これが小説家の想像力なのでしょう)赤裸々に描いていて、驚きました。
なかでも、金田一の細君(静江)は、奇矯な言動が多く、かなり迷惑な人物。
金田一との間にできた二人のこどもを幼くして亡くし、それが原因なのか、精神を病んでいたようです。
荒木百合子も、金持ちのお嬢さんらしい自分勝手な女性として描かれています。
幸恵の、このふたりに向ける眼差しは厳しく、彼女が心情を吐露するモノローグも辛辣。
読んでいてはらはらしました。
それでも、幸恵が亡くなる直前に静江が見せた優しさや、百合子の的確な金田一評と幸恵に見せる思いやりに、ほっとします。
アイヌ文化・ユーカラの理解者、紹介者とされている金田一京助ですが、その功罪を見直す必要もありそうです。
ずいぶん前に読んだのですが、藤本英夫(故人)が書いた評伝『銀のしずく降る降るまわりに 知里幸恵の生涯』(1991)
『知里幸恵 十七歳のウエペケレ』(2002年)(共に草風館)
『金田一京助』(1991年/新潮選書)なども、あらためて読み直してみようと思っています。
『100分de名著 知里幸恵・アイヌ神謡集』(2022年9月)もおすすめします。

(2024.4.16 記)

【参考】草風館のサイト
http://www.sofukan.co.jp/ より

『知里幸恵(ちり・ゆきえ)──十七歳のウエペケレ』 藤本英夫 著
http://www.sofukan.co.jp/books/128.html

『銀のしずく降る降るまわりに―知里幸恵の生涯』 藤本英夫 著
http://www.sofukan.co.jp/books/75.html

草風館からは、『アイヌ神謡集』に収録されている神謡(ユカㇻ)を、元々の姿(節をつけて謡われた形)で”復元”した音源のCDも出ている。
「アイヌ神謡集」をうたう うた:中本ムツ子/復元:片山龍峯
http://www.sofukan.co.jp/books/134.html
※片山龍峯さんの手になる『アイヌ神謡集』の解説書(アイヌ語読解)も、草風館から出ている。

また、岩波文庫の”赤版”(外国文学)のロングセラー『アイヌ神謡集』は、昨年、中川裕さんによる改訂新版が出ている。
知里幸惠 アイヌ神謡集 (岩波文庫 赤80-1) 文庫 – 2023/8/10
Amazon
https://amzn.to/3xKsyXK

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2024年4月15日 (月)

【雑】地球永住計画2024.4.11(宇梶静江さん)

印象と記憶が薄れないうちに書き残しておく。

2024年4月11日(木) 19時~21時20分
武蔵野プレイス4階
「地球永住計画」
ゲスト:宇梶静江さん(アイヌの古布絵作家)
参加費:2000円

関野吉晴さんが代表をつとめる「地球永住計画」。
そのトークイベントには、これまで何度も足を運んだ。

今回は、アイヌの「古布絵作家」として知られ、近頃、映画化もされた宇梶静江さんが呼ばれた。
1933年生まれ、今年91歳になったという。
関野さんいわく、「地球永住計画」最高齢のゲスト。

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始まる前に、関野さんが作った映画「うんこと死体の復権」の宣伝が流れた。
8月に、東中野のポレポレ東中野で公開とのこと。

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映画は3月に完成しているのだが、映画を広めるための資金(宣伝費、バリアフリー字幕/音声ガイド制作費のための資金)を、クラウドファンディングで集めている。
私も、わずかだかクラウドファンディングに協力した。

会場入口で、宇梶静江さんの著作が割引価格で販売されていた。
手に入れたかった『大地よ! アイヌの母神、宇梶静江自伝』 藤原書店 (2020/3/3) 442ページ を購入。
書店で買うと税込2,970円の分厚い本だ。

https://amzn.to/3VWwChK

― Amazonより ―
アイヌとして生き、アイヌの精神性を問う、女の一生。
昭和三陸地震(1933年3月3日)のさなかに生を授かり、幼年期から思春期、和人から差別を受けつつも、北の大地=アイヌモシリの自然の中で父母の慈愛に包まれて、貧しいながらも豊かな時を過ごした少女時代。勉学を志して20歳で札幌の中学へ。中学校卒業後、東京へ。
高度成長期、東京で結婚、そして出産。溢れかえる物質文明の中で、自分が求めてきたものは何かと懊悩する日々。そこから詩を書き始め、壺井繁治らと出会う。1972年2月8日の『朝日新聞』の「生活欄」に投稿した「ウタリたちよ、手をつなごう」が掲載され大反響となる。
やがて63歳にして世界で初めて〝古布絵〟によるオリジナルな表現手法を発見し、作品制作の活動に入る。アイヌとして生きる女性が、自らの内なるアイヌ、内なる大地を切り拓き、その生涯をかけてアイヌの精神性を問うた軌跡。

藤原書店は、いい本を出す出版社だ。

この日のトークイベントでは、関野さんが宇梶さんから話を引き出すのに苦心している様子がうかがえた。
宇梶さんの声・語りは、91歳とは思えぬしっかりしたものだった。

話はあちこちに飛んだが、ポイントは次のようなもの。
私のメモから拾ってみる。

・アイヌの自然観
 いつもカムイが見ている
 この世にムダなものはない
 水を大事にしなさい(ワッカカムイ)
 …子どもの頃から噛んで含めるように教えられてきた

・カムイがいつも見ている

・カムイは”見える”(宇梶さんは何度も見た)

・アイヌ社会での障がい者への視線
 障がいを持っている人には、”別のモノが与えられている”
 (特別な能力が与えられている)

 アイヌ社会に障がい者差別はなかった

・アイヌの知恵
 夜空をよく見る
 土地の地質を判断できる(危ない土地に家を建てない)
 災害(天災)の記憶の継承
 和人の”科学”に劣らない、別の”モノ”

いっぽう、関野さんからは、アマゾンの熱帯林の先住民の話や、人類の進化の話など、興味深い話がたくさん。

幸福度は数式であらわすと、分母が「欲望」分子が「財産」
これまでは、分子にあたる「財産」を増やすことで幸福度をあげようとしてきた
「財産」を増やすのではなく、分母の「欲望」を減らすことで、幸福度はあがるはず

「欲望」は必要なものだが、肥大した欲望がダメ。「ほどほどに」

「Happy」みんなの幸福 ←→ 「Lucky」個人の幸福

最後に、北海道にできた「ウポポイ」を活性化させようと、美術館を作る計画が宇梶さんにはあるという。
「関野先生、協力してください」と、何度もおっしゃっていた。

蛇足だが、俳優の宇梶剛士さんが宇梶静江さんのご子息だということを、イベントの後、ネットで調べていて知った。

(2024/4/15 記)

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2024年4月 7日 (日)

【遊】この夏の予定(北海道)

まだ先のことだが、北海道行き(帰郷)の予定をたてている。

とりあえず、美瑛の宿だけは確保。

大洗~苫小牧のフェリーは、二か月前にならないと予約がとれない。

北海道では車での長距離移動になる。

ルートを研究するのが楽しい。

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2024年4月 2日 (火)

【遊】2024年春、小金井公園

きのう4/1、小平の日帰り温泉で散髪、入浴、昼食の後、小金井公園へ寄ってみた。

ソメイヨシノは、まだ一分咲きといったところ。

早咲きの桜が満開で、それなりにきれいだった。

花見客が多かった。

保育園の一行なのか、母親と子どもたちの団体がいた。

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2024年4月 1日 (月)

【読】2024年3月に読んだ本(読書メーター)

2024年3月。
月末になって、まとまった読書ができなかった。
今、複数の本を並行して読んでいる。

■3/25~ 今井むつみ・秋田喜美
『言語の本質 ―ことばはどう生まれ、進化したか』
 中公新書 (2023/5/25) 277ページ
■3/27~ ベフルーズ・ブチャーニー/オミド・トフィギアン(英訳)/一谷智子・友永雄吾(監修・監訳)
『山よりほかに友はなしー―マヌス監獄を生きたあるクルド難民の物語』
 明石書店 (2024/2/29) 443ページ
■3/28~ 野呂邦暢/岡崎武志(編)
『夕暮の緑の光 野呂邦暢随筆選』(大人の本棚)
 みすず書房 (2010/5/7) 227ページ
■3/31~ 野呂邦暢 『野呂邦暢小説集成3 草のつるぎ』
 文遊社 (2014/5/1) 595ページ

3月の読書メーター

読んだ本の数:8
読んだページ数:1893
ナイス数:160

サバイバル登山家サバイバル登山家感想
再読。15年ほど前に読んだはずだが、内容の記憶はまったくない。著者が20代から30代の頃の山行記録。初々しさを感じる。「日高全山ソロサバイバル」(2003年8月2日~26日)の記録が圧巻。この頃はまだ、文明の利器(時計、ヘッドランプ、ラジオなど)を携帯。それでも常人には為し得ない、きわめてハードな山歩きだ。ほぼ無人の日高山系で出会った登山者から携帯電話を借りて自宅に電話したときの、奥さん(服部小雪さん)の反応がおかしい。開口一番「生きてたの……」と。そんな奥さんやお子さんたちにも、あとがきで感謝している。
読了日:03月05日 著者:服部 文祥

山旅犬のナツ山旅犬のナツ感想
2016年に服部家にもらわれてきて、”山旅犬”として文祥さんのサバイバル登山や狩猟の相棒となっている”ナツ”。つい最近、そのナツが失踪したというが、見つかったようだ(大ケガをしていたらしい)。カラー写真満載。文祥さんの文も、いい。いい顔してるな、ナツ。
読了日:03月06日 著者:服部 文祥

 

アイヌもやもや: 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。アイヌもやもや: 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。感想
書名にひかれて読んでみたが、横書きの本が、これほど読みにくいものだとは思わなかった。著者は樺太アイヌ・北海道アイヌ・和人(和民族という呼び方をしている)をルーツに持つ。1976年生まれと、まだ若いが、北海道大学アイヌ・先住民研究センターの教授。「アイヌ問題」と正面切って構えずに「アイヌもやもや」とした姿勢はよい。もう少し、著者自身の体験に基づく事例があると、もっとよかったと思う。巻末の参考文献が役立ちそうだ。
読了日:03月08日 著者:北原モコットゥナシ

ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義感想
パレスチナの歴史的な背景、現状をあらためて知る。イスラエル建国の経緯についても、シオニズムが必ずしもユダヤ人の多数の支持を集めていたのではないという指摘に、ハッとした。今のパレスチナはイスラエルによる不当な占領、植民地主義的な侵略、というストレートな主張にも頷ける。「憎しみの連鎖」「暴力の連鎖」と捉える考え方は、他人事として判断停止することだと。巻末の参考文献なども読み、ファクトチェックしながら、これからも”正しい”理解を深めていきたい。2023年10月の講演録ということもあり、タイムリーな良書だと思う。
読了日:03月10日 著者:岡 真理

デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界感想
さすが、ジャズをこよなく愛する村上春樹。まさに”ジャケ買い”の極致。デヴィッド・ストーン・マーティン(DSM)という、ジャケット・デザイナーの雰囲気のあるジャケットの絵と、アルバム内容の紹介(”ジャケ買い”なので、村上氏の評価は必ずしもいいとは限らないが)は、おおいに参考になる。ビリー・ホリデイと秋吉敏子のアルバム(ともにLP)などは、たまたま私も持っているので、それだけで嬉しくなった。膨大な美しいジャケット写真を見ていると、ネット販売サイトを探して、思わずポチっとしそうになる。あぶない、あぶない。
読了日:03月12日 著者:村上 春樹

もひとつ ま・く・ら (講談社文庫)もひとつ ま・く・ら (講談社文庫)感想
三年ほど前に読んだ『ま・く・ら』の続編。小三治師(十代目)は、私が前編を読んだ数か月後、2021年10月7日、惜しくも亡くなった。私より、ちょうど一回り上、1939年生まれ。もっともっと、あの独特の語り口の「まくら」を聞きたかった。私は生で聞いたことはなく、それも心残り。あとがきにあるように「厚い本だからと先を急がないで」「黙読でも、私(小三治師)がおしゃべりしてるのと同じ速度で」味わいながら読みたい本。
読了日:03月15日 著者:柳家 小三治

本は眺めたり触ったりが楽しい (ちくま文庫 あ-15-4)本は眺めたり触ったりが楽しい (ちくま文庫 あ-15-4)感想
どこで知ったのか覚えていないが(あるいは書店で見かけたのか)、書名に魅かれて買った。買う本の方が読む本(読める本)よりも多い私には「本の読み方は自由なんだよ」「眺めたり触ったりするだけでもいいんだよ」と言われているようで、うれしい。知的障がいのある子どもが、図書館で本を眺めているだけで楽しそうにしている、それを見た図書館司書が「本は読まなきゃダメ」とえらそうに言う。この司書に著者はフンガイする。あるいは「ダイジェスト版はうちの図書館に置かない」と言い切る、やはり図書館司書に対しても苦言を呈する。いいなあ。
読了日:03月16日 著者:青山 南

ユーカラおとめユーカラおとめ感想
1922年5月に上京、金田一京助宅で「アイヌ神謡集」を完成させた直後の9月18日、心臓麻痺で急逝するまでの知里幸恵を描いた小説。金田一の妻・静江と中條百合子(のちの宮本百合子)が意地悪気に、金田一京助がなんとも頼りなげに、描かれている。幸恵の内面のつぶやき、葛藤は、いかにも作者のたくましい想像力のたまもの。桐野夏生が「ナニカアル」で描いた林芙美子を思い出した。巻末に参考資料としてあげられている藤本英夫氏の著作を、ずっと前に読んだことがあり、知里幸恵に深い関心を持ってきた。藤本氏の本を読み直してみようかな。
読了日:03月20日 著者:泉 ゆたか

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