図書館から借りて、ようやく読み終えた。
赤坂さんらしい難解な部分も多いが、なかなか刺激的で、読み応えのある本だった。
赤坂憲雄 『奴隷と家畜 物語を食べる』
青土社 2023/5/10 369ページ
https://amzn.to/4dkJeUN
この本を知ったのは、内澤旬子さんのブログ記事を読んでいて、下記の投稿をみつけてのことだった。
内澤旬子 空礫絵日記
https://kemonomici.exblog.jp/
2023/7/1投稿記事
「取り上げていただきました : 内澤旬子 空礫絵日記」
https://kemonomici.exblog.jp/33019650/
内澤さんは、赤坂さんが『飼い喰い 三匹の豚と私』を取りあげてくれたことに触れ、次のように感謝を述べている。
いかにも内澤さんらしい文章だ。
<予想をはるか彼方にぶっ飛ばして長尺で取り上げていてくださいました。しかも非常に的確に私の意図を掴み読んでいてくださっていて、こんなに嬉しいことはないと言うくらいの文章でした。/文中、三匹の豚を飼って食べた私のことを「この人」と書いているのも不穏な、ドン引きしていらっしゃる感じがよく出ていて痛快でした。ちょっと笑ってしまいました。>
内澤旬子 『飼い喰い 三匹の豚と私』 角川文庫
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内澤さんのこの本、面白かったな。
■赤坂さんのこの本では、桐野夏生さんの『燕は戻ってこない』も取りあげられていて、桐野夏生ファンの私には嬉しかった。
桐野夏生 『燕は戻ってこない 』 集英社文庫 2024/3/19
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私は単行本で読んでいたが、文庫化されたようなので、買い求めて再読したいと思う。
単行本はブックオフで買ったのだったが、読了後、手放してしまった。
面白い小説だったが、再読するとは思ってもいなかった。
赤坂さんの「読み」は、さすがで、触発されることが多い。
■さて、この『家畜と奴隷 物語を食べる』という本。
雑誌『ユリイカ』に連載していたものだという。
ネット検索してみたら、次のような記事があった。
まだ連載が続いているようだ。
2024年4月号:怪物はささやき、物語の使徒になった
2022年1月号:奴隷化、いじめの政治学へ
2022年9月号:二本足の豚たちが動物農場をゆく
2021年2月号:胃の腑と詩と官能のあいだ
赤坂さんは、本書のあとがきで、次のように書いている。
< まるで、いきなり荒海に乗りだした漂流記のような連載となりました。ほぼ手直し程度に留めて、そのままの形での刊行となります。とにかく、海図やら羅針盤のたぐいはなにひとつもたずに、流されてゆくことを選んだのです。(中略)そもそも、全体の構想といったものはかけらもなく、『性食考』以後に生まれた雑念をめぐって、あくまでそれを随想(エッセイ)風につずってみたいと考えていただけです。(後略)/すくなくとも、連載に取りかかる以前に、『奴隷と家畜』などというタイトルはどこにもなかったのです。>
『性食考』(2017/7/26 岩波書店)という挑発的なタイトルの本も、読んでみたいと思う。
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■本書では、さまざまな書籍(たとえば、大江健三郎の初期小説、宮澤賢治の童話、『家畜人ヤプー』という奇書、『ロビンソン・クルーソー』、G.オーウェル『動物農場』など多数)ばかりでなく、映像作品、コミックなど、多岐にわたって取りあげ、民俗学者・赤坂さんならではの考察を展開している。
読んでいて、どこに連れて行かれるかわからない戸惑いを感じながらも、赤坂さんらしい思索に引きずり込まれた。
なるほど、こういう読み方があったか、と。
第三章の”いじめ”に関する論考(中井久夫「いじめの政治学」他を取りあげて)には、ハッとさせられた。
子どもたちの”いじめ”の世界の”からくり”に触れた気がする。
■最後に、e-honサイトから、本書の紹介を転載しておく。
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000034466258&Action_id=121&Sza_id=C0
”スリリングな旅”とは、言い得て妙。
要旨
生きるために、捕って、殺して、わたしたちは食べる。食べるために、作物を栽培し、家畜を飼育し、人を奴隷にする。“食べるひと”ははてしない謎を抱いている。誰ものぞこうとしなかった意識の森深くへと、異端の民俗学者が下りてゆく。物語を食べ散らかすような、不遜にしてスリリングな旅。
目次
第1章
胃の腑と詩と官能のあいだ/憑依と観想から擬人法へ/ほか
第2章
奴隷農場は愛とともに昏れて/猿の惑星からの伝言/ほか
第3章
自己家畜化と道徳の発生/奴隷化、いじめの政治学へ/ほか
第4章
フォアグラ的な肥満のはてに/臓器提供者のいまわの恋/ほか
第5章
二本足の豚たちが動物農場をゆく/豚は知性的な生き物である/ほか
終章
奴婢訓の裂け目に
■さらに、ネット検索で、こんな記事(note ブログ)もみつけた。
赤坂憲雄『奴隷と家畜 物語を食べる』/寺田寅彦「詩と官能」/椹木野依「音を食って物がなくなる」|KAZE
https://note.com/novalisnova/n/n52bfd60caaf2
【追記】 2024/9/22
メモ:本書で取り上げられている膨大な書籍
(できるだけ拾いあげておく)
※この本には、残念なことに索引がないため、自分用のメモとして。
<第一章>
寺田寅彦 『寺田寅彦随筆集 第三巻』 岩波文庫 「夏目漱石先生の追憶」
高山辰雄 『存在追憶 限りなき時の中に』 角川書店
保阪康夫・小澤俊郎 『宮沢賢治 友への手紙』 筑摩書房
山本聡美 『九相図をよむ』 角川選書
スーザン・ソンダク 『他者の苦痛へのまなざし』 みすず書房
宮澤賢治 『宮沢賢治全集 7』 ちくま文庫 「フランドン農学校の豚」
『グリム童話集』 「ヘンゼルとグレーテル」
宮澤賢治 『宮沢賢治全集 5』 ちくま文庫 「蜘蛛となめくじと狸」
雑賀恵子 『エコ・ロゴス』 人文書院
宮崎学 『死を食べる』 <アニマルアイズ・動物の眼で環境を見る 2> 偕成社
正田陽一 『家畜という名の動物たち』 中央公論新社
ブライアン・フェイガン 『人類と家畜の世界史』 河出書房新社
https://amzn.to/3N0IJEF
藤子・F・不二雄 『箱舟はいっぱい 異色短編集3』
『ミノラウロスの皿 異色短編集1』 小学館文庫
大江健三郎 『死者の奢り・飼育』 新潮文庫 「飼育」「人間の羊」
三島由紀夫 『三島由紀夫文学論集Ⅱ』 講談社文芸文庫 「裸体と衣裳」
『シートン動物記1』 講談社 「ぎざ耳 あるわた尾ウサギの物語」
村上克尚 『動物の声、他者の声』 新曜社
<第二章>
安部公房 『内なる辺境』 中央公論社
小説 『マンディンゴ』 河出書房新社 1968年邦訳初版
新装版1975年
『猿の惑星』 創元SF文庫 1968年
スウィフト 『ガリヴァー旅行記』
『賭ケグルイ』 ガンガンコミックスJOKER
小林多喜二 『蟹工船』
沼正三 『家畜人ヤプー』
芥川龍之介 『上海遊記 江南遊記 』 講談社文芸文庫
金子光晴 『どくろ盃』 中公文庫 「上海灘」
イザベラ・バード 『日本奥地紀行』
沼正三 『集成「ある夢想家の手帖から」』 太田出版
<第三章>
小原秀雄 『自己家畜化論』 群羊社 1984年
小原秀雄・羽仁進 『ペット化する現代人』 NHKブックス 1995年
リチャード・ランガム 『善と悪のパラドックス』 NTT出版 2020年
エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ 『自発的隷従論』 ちくま学芸文庫
中井久夫 『中井久夫集6 いじめの政治学』 みすず書房 「いじめの政治学」
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中井久夫 『いじめのある世界に生きる君たちへ』 中央公論新社
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山下正男 『動物と西欧思想』 中公新書 1974年
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大塚久雄 「ロビンソン・クルーソウの人間類型」「『経済人』のユートピア的具象化としてのロビンソン物語」
デフォー 『ロビンソン・クルーソー』 中公文庫(増田康雄 訳)
カレル・チャペック 『ロボット』(戯曲) 『山椒魚戦争』
渡辺京二 『逝きし世の面影』
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<第四章>
ノーマン・コルパス 『フォアグラの歴史』 原書房
メルヴィル 『白鯨』
『グリム童話集』 岩波文庫 「ヘンゼルとグレーテル」
『今昔物語』 巻第二十六 (猿神退治譚)
イーサン・ガットマン 『臓器収奪 消える人々』 ワニ・プラス
カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』 ハヤカワepi文庫 2005年
『約束のネバーランド』 集英社
戸田慧 『英米文学者と読む「約束のネバーランド」』 集英社新書
柳田国男 『遠野物語』 (第六話 神隠し譚)
桐野夏生 『燕は戻ってこない』 集英社
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大野和基 『代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳』 集英社新書
<第五章>
ジョージ・オーウェル 『動物農場』
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https://amzn.to/3zvxGjP
ライアル・ワトソン 『思考する豚』 木楽舎
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栗原康 『はたらかないで たらふく食べたい』 タバブックス
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網野善彦 『無縁・苦界・楽』
ジョン・シェスカ 『三びきのコブタのほんとうの話』 岩波書店
『三びきのこぶた(イギリスの昔話)』 福音館書店
ブルーノ・ベッテルハイム 『昔話の魔力』 評論社
『3びきのこぶた』 講談社
飯沢匠 『ブーフーウー』 理論社
デイヴィッド・ウィズナー 『3びきのぶたたち』 BL出版
ユージン・トリビザス 『3びきのかわいいオオカミ』 冨山房
内澤旬子 『飼い喰い 三匹の豚とわたし』 角川文庫
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中村生雄 『祭祀と供犠』 法蔵館文庫
<終章>
寺山修司 『奴婢訓』
中野好夫 『スウィフト考』 岩波新書
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