カテゴリー「松浦武四郎」の22件の記事

2018年12月27日 (木)

【読】ぼちぼちいこうか総集編(2018年・読書編)

今年、2018年一年間に読んだ本のうち、強く印象に残ったものを書きだしてみる。

読んだ本の記録をPCに残しているが、今年は60冊ちょっとしか読めなかった。
夢中になって次々と読んでいた時期と、本から離れていた時期、といった具合で、まちまちだ。

■文庫10冊シリーズ 読破

池内紀・川本三郎・松田哲夫編 『日本文学100年の名作』 1~10
 新潮文庫 2014年9月~2015年5月発売

発売当時、毎月一冊ずつ購入して全巻揃っていたが、読まないまま本棚で眠っていた。
一念発起、2月から9月まで半年かけて読み継いだ。

『日本文学100年の名作 第1巻 1914-1923 夢見る部屋』
 新潮文庫 (2014/9/1) 490ページ
『日本文学100年の名作 第2巻 1924-1933 幸福の持参者』
 新潮文庫 (2014/10/1) 500ページ
『日本文学100年の名作 第3巻 1934-1943 三月の第四日曜日』
 新潮文庫 (2014/11/1) 514ページ
『日本文学100年の名作 第4巻 1944-1953 木の都』
 新潮文庫 (2014/12/1) 502ページ
『日本文学100年の名作 第5巻 1954-1963 百万円煎餅』
 新潮文庫 (2015/1/1) 555ページ
『日本文学100年の名作 第6巻 1964-1973 ベトナム姐ちゃん』
 新潮文庫 (2015/2/1) 543ページ
『日本文学100年の名作 第7巻 1974-1983 公然の秘密』
 新潮文庫 (2015/3/1) 555ページ
『日本文学100年の名作 第8巻 1984-1993 公然の秘密』
 新潮文庫 (2015/4/1) 503ページ
『日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003 アイロンのある風景』
 新潮文庫 (2015/5/1) 510ページ
『日本文学100年の名作 第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所』
 新潮文庫 (2015/5/1) 639ページ

馴染みの作家、名前だけ知っていて読んだことがなかった作家、まったく知らなかった作家など、幅広い作品が収録されていて、面白かった。

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これまで読んだことのなかった作家の他の作品も、図書館で借りて読んでみた。

道尾秀介 『光媒の花』 集英社 (2010/3/30) 258ページ
木内昇 『茗荷谷の猫』 平凡社 (2008/9/25) 238ページ

 

現代作家にも、すばらしい書き手がいることを知ったのも、収穫だった。

■沖縄への関心

今年もまた、沖縄に関する本を読んだ。
どれも、図書館で借りてきた本。

沖縄タイムス社編集局 編著 『これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地』
 高文研 (2017/3/25) 236ページ
行田稔彦(こうだ・としひこ) 『いまこそ、沖縄 ~沖縄に親しむ50問50答』
 新日本出版社 (2014/2/25) 173ページ
嬉田京子 『戦場が見える島・沖縄―50年間の取材から』
 新日本出版社 (2015/9/20) 158ページ
藤原書店編集部編 『「沖縄問題」とは何か――「琉球処分」から基地問題まで』
 藤原書店 (2011/2/28) 273ページ
アレン・ネルソン/國弘正雄 『沖縄に基地はいらない――元海兵隊員が本当の戦争を語る』
 岩波ブックレット444 (1997/12/19) 55ページ
金城実・松島泰勝 『琉球独立は可能か』 解放出版社 (2018/2/11) 310ページ
馳星周 『弥勒世(みるくゆー) 上』 小学館 (2008/2/25) 611ページ
馳星周 『弥勒世(みるくゆー) 下』 小学館 (2008/2/25) 589ページ
松島泰勝 『琉球 奪われた骨』 岩波書店 (2018/10/10) 264ページ
川満彰 『陸軍中野学校と沖縄戦』 吉川弘文館 (2018/5/1) 229ページ

   

フィクションだが、馳星周『弥勒世(みるくゆー) 上・下』が強烈だった。
また、松島泰勝『琉球 奪われた骨』は、琉球だけでなく北海道でもアイヌの遺骨が学者によって盗掘されたことを知っていたので、強く揺さぶられる内容だった。

金城実・松島泰勝 『琉球独立は可能か』は、ふたりの考え方の微妙な違いはあるものの、熱い思いが伝わってきた。
空想的かもしれないが、琉球も北海道も、独立を考えていいと思う。
元々、ヤマトとの支配の届かない、別の土地だったのだから……。

■イザベラ・バード 『日本奥地紀行』

金坂清則(訳注)で読む。
ただし、全4巻中、3巻目まで。
「完訳」とうたっているだけあって、翻訳にあたっての考証が半端ではない。

『イトウの恋』は、イザベラ・バードの従者だった”イトウ”をモデルにした小説。
以前から気になっていた小説だが、読んでみると面白かった。

イザベラ・バード/金坂清則(訳注) 『完訳 日本奥地紀行1 横浜―日光―会津―越後』
 平凡社東洋文庫819 (2012/3/21) 391ページ
イザベラ・バード/金坂清則(訳注) 『完訳 日本奥地紀行2 新潟―山形―秋田―青森』
 平凡社東洋文庫823 (2012/7/10) 439ページ
イザベラ・バード/金坂清則(訳注) 『完訳 日本奥地紀行3 北海道・アイヌの世界』
 平凡社東洋文庫823 (2012/11/16) 415ページ

中島京子 『イトウの恋』 講談社 (2005/3/5) 276ページ

   

■あの戦争

先の大戦(アジア・太平洋戦争)への関心は、ずっと続いている。
このところ目に余るほど顕在化してきた、戦争美化、戦争責任の忌避、といった風潮に抵抗するために、もっともっと「あの戦争」の実相を知りたい。

全部で20巻(他に別巻)もある膨大なシリーズ、『コレクション 戦争と文学』を買い揃えたのは、今から5年前だったか。
ようやく、そのうちの一巻を読破した。
全巻読破まで、まだまだ先は長い……。

鈴木明 『「南京大虐殺」のまぼろし』 文藝春秋 (1973/3/10) 274ページ
北村稔 『「南京事件」の探求』 文春新書207 (2001/11/20) 197ページ
笠原十九司 『「百人斬り競争」と南京事件』 大月書店 (2008/6/20) 282ページ
石川達三 『生きている兵隊 【伏字復刻版】』 中公文庫 (1999/7/18) 214ページ
吉田裕 『日本軍兵士――アジア・太平洋戦争の現実』
 中公新書2465 (2017/12/25) 228ページ

『コレクション 戦争と文学 7 日中戦争』 集英社 (2011/12/10) 743ページ

 

■印象に残った本

興味のおもむくまま読んだ雑多な本の中から、印象に残った本。
小説あり、エッセイあり、ノンフィクションあり。

木村友祐 『幸福な水夫』 未來社 (2017/12/15) 189ページ
池澤夏樹 『知の仕事術』 インターナショナル新書 001(集英社) (2017/1/17) 221ページ
河治和香 『がいなもん 松浦武四郎一代』 小学館 (2018/6/13) 317ページ
五木寛之 『七十歳年下の君たちへ こころが挫けそうになった日に』
 新潮社 (2018/7/30) 190ページ
篠原勝之 『戯れの魔王』 文藝春秋 (2018/11/20) 189ページ
植田絋栄志(うえだ・ひさし) 『冒険起業家 ゾウのウンチが世界を変える。』
 ミチコーポレーション (2018/10/23) 396ページ
斎藤美奈子 『日本の同時代小説』 岩波新書1746 (2018/11/20) 269ページ

      

(2018/12/27記)

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2013年10月29日 (火)

【読】松浦武四郎の「一畳敷」

図書館から借りたのではなく、ネット注文で本当に「手に入れた」本。
ビジュアルで、すばらしいものだった。
装幀も凝っていて、楽しめる。
これは買ってよかった。

『幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷』
 INAX BOOKLET 1,500円(税別)

― Amazonより ―
■内容紹介
 明治の評論家・内田魯庵が「好事の絶頂」と評した畳一畳の書斎がある。幕末に北海道探検に命をかけた松浦武四郎が、晩年全国各地の有名な社寺仏閣から古材を寄付してもらい建てたものだ。松浦武四郎(1818-1888)とは型破りな才人で、生涯にかけて日本全国を旅し、それを240以上のすぐれた画と文章で著作に表した著述家である。また和歌や篆刻にも優れ、各地の文物を蒐集し、広いネットワークを誇る趣味人でもあった。彼の八面六臂の人物像と、旅の足跡を集約させた小さなセルフビルドの庵は、今も不思議な異彩を放つ。
 本書では、日本の国防を憂い6度も一人で蝦夷へ向かった集大成・蝦夷山川地理取調地図を導入に、アイヌ語で全地名を書き入れた驚くべき緻密さと、山地を立体的手法で描いた独特の表現をご覧いただきたい。旅の記録を描きとめた直筆の野帳や覚書から、特に暮らしや道具、動植物など民俗学的視点で描かれたページを多数紹介する。後半は「一畳敷」内部空間のディテールを細かく考察、伊勢神宮や厳島神社、嵐山の渡月橋など木片の来歴が照合できる。旅をもとに奇想天外な発想で創られた背景に注目すると、かつて旅した地を思い出すインデックスのような役割の場所であることが分かる。激動の時代に生きながら、ダイナミックな行動で様々なものを残した武四郎。真摯な中にもユーモア溢れる彼のまなざしに迫る初のビジュアル本。類稀なる知識欲と冒険心が滲み出る一冊。
■著者について
・高木崇世芝 Takayoshi TAKAGI
 古地図研究家。1938年北海道生まれ金沢美術工芸大学卒業。松浦武四郎、伊能忠敬をはじめ、最上徳内・近藤重蔵・間宮林蔵ら北方探検家の業績に関わる資料、北海道古地図を主な研究テーマとする。著書に『北海道の古地図 江戸時代の北海道のすがたを探る』(五稜郭タワー)、『松浦武四郎「刊行本」書誌』『松浦武四郎関係文献目録』(以上、北海道出版企画センター)
・安村敏信 Toshinobu YASUMURA
 板橋区立美術館館長。1953年富山県生まれ。東北大学大学院修了。日本近世絵画史専攻。同館で江戸文化シリーズとして、江戸時代美術史のユニークな企画展を開催し注目を集める。編・著に『美術館商売』(勉誠出版)、『もっと知りたい狩野派 探幽と江戸狩野派』(東京美術)、『江戸の絵師「暮らしと稼ぎ」』(小学館)、『別冊太陽 河鍋暁斎 奇想の天才絵師』(平凡社)、『暁斎百鬼画談』(筑摩書房)など多数。
・坪内祐三 Yuzo TUBOUCHI
 評論家・エッセイスト。1958年東京都生まれ。早稲田大学大学院修了。主な研究テーマは、明治大正文化史、アメリカ文学など。著書に『ストリートワイズ』『古くさいぞ私は』(以上、晶文社)、『シブい本』『文学を探せ』(以上、文藝春秋)、『靖国』(新潮社)、『風景十二』(扶桑社)、『酒中日記』(講談社)、『極私的東京名所案内増補版』(ワニブックス)など多数。2001年『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲がり』
・ヘンリー・スミス Henry D.Smith
 コロンビア大学教授、京都アメリカ大学コンソーシアム所長、日本近代史家。1940年アメリカ・アリゾナ州生まれ。イエル大学卒業、ハーバード大学にて博士号取得。1985~87年、カリフォルニア大学東京スタディーセンター長として国際基督教大学で教鞭をとる。主に、19世紀日本の視覚文化を研究。著書に『広重名所江戸風景』『浮世絵にみる江戸名所』(以上、岩波書店)、『泰山荘 松浦武四郎の一畳敷の世界』(国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館)。
・山本命 Mei YAMAMOTO
 松浦武四郎記念館学芸員。1976年大阪府生まれ。奈良大学卒業。2001年三重大学大学院中退、同年4月より現職。武四郎の魅力を広く全国に発信するために、調査・研究活動・普及活動に努める。

【写真】 上から
背表紙
絵双六(蝦夷土産道中双六)
蝦夷地図(蝦夷地北端とリイシリ=利尻島)

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松浦武四郎 (1818~88)
文化15年、伊勢に通じる街道沿い、現在の松阪市小野江町で生まれた。蝦夷地探検家であり「北海道」の名付け親として知られる。その活動は広範・多彩で、全国を旅し、山に登り、生涯に240を超える著作を残した。吉田松陰は武四郎を盟友とし「奇人で強烈な個性の持ち主」と評した。明治政府より開拓判官に任じられたが、政府のアイヌ政策を批判して辞任する。古物を収集した好事家でもある。幕末から明治への激変の時代に、独自の仕事を成し遂げた稀有な人物の軌跡を、残された多様な「断片」からたどる。
(本書 P.11 上の写真のページから)

【目次】
松浦武四郎の蝦夷地図 (高木崇世芝)
記録 野帳/図会/日誌/絵双六/刊行本/北海道人樹下午睡図
奇想の仏画北海道人樹下午睡図 (安村敏信)
武四郎年表
交流 渋団扇帖/篆刻/蝦夷屏風/古器縦横/骸骨図縫付傘
松浦武四郎は山中共古の名付け親 (坪内祐三)
幕末の探検家 松浦武四郎の一畳敷
一畳敷内細部/一畳敷外細部
インタビュー 唯一無二の書斎 一畳敷の魅力を語る (ヘンリー・スミス)
解説 旅を愛し歩き続けた松浦武四郎の生涯 (山本命)

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2013年10月13日 (日)

【読】「北海道人―松浦武四郎」 を読む

さわやかな秋晴れ。
自転車に乗ってどこかへ行こうかとも思ったが、徒歩で近くのスーパーまで買い物に行ったきり、家でのんびり本を読む。
ときどき、テレビでプロ野球セ・パ両リーグ、クライマックスシリーズ(ファーストステージ第2戦)の経過を見る。

佐江衆一 『北海道人――松浦武四郎』
 新人物往来社 1999/10/15発行

第一章 竜飛崎へ
第二章 蝦北の雁
第三章 秘めおくべし
第四章 松前の刺客
第五章 黒船来航
第六章 天地動乱

ここまで読んだ。
第四章では、寛政元年(武四郎の時代より半世紀以上前)のクナシリ・メナシの蜂起を、武四郎が思いおこす場面がある。
第五章ではペリーの来航、第六章では嘉永七年と安政元年の大地震が、時代背景になっている。
あらためて、武四郎が生きた激動の幕末期について、歴史のおさらい。

残り120ページほど。
いよいよ、武四郎が正式に幕府に雇い入れられ(蝦夷御用御雇)、蝦夷地踏査に本格的に取り組むところ。

第七章 天性うるわしき性
第八章 花と風雪
第九章 維新の腥風

― 以下、Wikipedia 松浦武四郎 より ―
<文化15年(1818年)、伊勢国一志郡須川村(現在の三重県松阪市小野江町)にて郷士・松浦桂介の四男として生まれる。松浦家は、肥前国平戸の松浦氏の一族で中世に伊勢国へ来たといわれている。
 山本亡羊に本草学を学び、早くから諸国をめぐった。天保9年(1838年)に平戸で僧となり文桂と名乗るが、弘化元年(1844年)に還俗して蝦夷地探検に出発し、その探査は択捉島や樺太にまで及んだ。安政2年(1855年)に蝦夷御用御雇に抜擢され再び蝦夷地を踏査、「東西蝦夷山川地理取調図」を出版した。明治2年(1869年)には開拓判官となり、蝦夷地に「北海道」の名を与えたほかアイヌ語の地名をもとに国名・郡名を選定した。翌明治3年(1870年)に開拓使を批判して職を辞してからは余生を著述に過ごしたが、死の前年まで全国歴遊はやめなかったという。
 また、明治3年(1870年)には北海道人と号して、「千島一覧」という錦絵を描き、晩年の68歳より富岡鉄斎からの影響で奈良県大台ケ原に登り始め、自費で登山道の整備、小屋の建設などを行った。
 明治21年(1888年)、東京神田五軒町の自宅で死去。遺骨は、武四郎が最も好きだったという西大台・ナゴヤ谷に1889年に建てられた「松浦武四郎碑」に分骨されてもいる。
 なお、生地の三重県松阪市小野江町には「松浦武四郎記念館」が建っている。>

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2013年10月12日 (土)

【読】佐江衆一 「北海道人―松浦武四郎」 を読みはじめる

今日も夏のような天気。
気温は28度まであがっている。

午後からまた、小平へ行く。
小平図書館友の会主催 「声に出して本を読む会」 の朗読会二日目だ。

きのう、会場に行く前に図書館に寄って、朗読される佐江衆一の時代小説を探していたところ、それとは別の本をみつけて借りてきた。
さっそく読みはじめている。

佐江衆一 『北海道人――松浦武四郎』
 新人物往来社 1999/10/15発行
 309ページ 1,800円(税別)

これが、なかなか面白い。

― Amazonより ―
幕末、迫りくる列強の魔手を憂え、海防献策のため蝦夷地に渡った青年、松浦武四郎。彼の目に映じたのは、松前藩の圧政に呻吟するアイヌの姿だった。水戸の志士や吉田松陰との交遊を重ねながら、彼は時代の怒涛に呑み込まれてゆく。北に一生を捧げ、「北海道」の名付け親として今に知られる探検家の雄渾な生涯。

佐江衆一を読むのは、これが初めてだ。
小説ならではの臨場感にあふれている。

カバー・扉図版は、「近世蝦夷人物誌」と「東西蝦夷山川地理取調図」で、どちらも武四郎が描いたものだろう。

【参考サイト】
松浦武四郎記念館 | 松阪市の文化情報
http://www.city.matsusaka.mie.jp/www/genre/0000000000000/1000000000729/index.html

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2013年9月30日 (月)

【読】林蔵から武四郎へ

間宮林蔵に関する本を何冊か読んだ。
林蔵から数十年後の江戸末期、当時の蝦夷地に渡って探査し、アイヌの人々の窮状を書き残した人物が、松浦武四郎だ。

Wikipediaには、簡単にこう書かれている。

<松浦 武四郎(まつうら たけしろう、文化15年2月6日(1818年3月12日) -明治21年(1888年)2月10日は、江戸時代末期(幕末)から明治にかけての探検家、浮世絵師。雅号は北海道人(ほっかいどうじん)。蝦夷地を探査し、北海道という名前を考案した。
 文化15年(1818年)、伊勢国一志郡須川村(現在の三重県松阪市小野江町)にて郷士・松浦桂介の四男として生まれる。松浦家は、肥前国平戸の松浦氏の一族で中世に伊勢国へ来たといわれている。
 山本亡羊に本草学を学び、早くから諸国をめぐった。天保9年(1838年)に平戸で僧となり文桂と名乗るが、弘化元年(1844年)に還俗して蝦夷地探検に出発し、その探査は択捉島や樺太にまで及んだ。安政2年(1855年)に蝦夷御用御雇に抜擢され再び蝦夷地を踏査、「東西蝦夷山川地理取調図」を出版した。明治2年(1869年)には開拓判官となり、蝦夷地に「北海道」の名を与えたほかアイヌ語の地名をもとに国名・郡名を選定した。翌明治3年(1870年)に開拓使を批判して職を辞してからは余生を著述に過ごしたが、死の前年まで全国歴遊はやめなかったという。
 また、明治3年(1870年)には北海道人と号して、「千島一覧」という錦絵を描き、晩年の68歳より富岡鉄斎からの影響で奈良県大台ケ原に登り始め、自費で登山道の整備、小屋の建設などを行った。
明治21年(1888年)、東京神田五軒町の自宅で死去。遺骨は、武四郎が最も好きだったという西大台・ナゴヤ谷に1889年に建てられた「松浦武四郎碑」に分骨されてもいる。
 なお、生地の三重県松阪市小野江町には「松浦武四郎記念館」が建っている。>

<作品
「蝦夷大概之図」 嘉永3年 松浦武四郎記念館所蔵
「蝦夷変革図」 嘉永4年
「千島一覧」 大判 錦絵3枚続 明治3年 和泉屋市兵衛版 松浦武四郎記念館所蔵
 著作
北海道出版企画センター 『松浦武四郎選集』を刊行中 同社では、多数の著作と関連書籍が出版されている。
吉田武三校註 『三航蝦夷日誌』 上下巻 吉川弘文館、2007年(オンデマンド版)
更科源蔵・吉田豊訳『アイヌ人物誌』 平凡社ライブラリー
 伝記文献
横山健堂『松浦武四郎』北海出版社、1944年
吉田武三 『白い大地 北海道の名づけ親・松浦武四郎』 さ・え・ら書房、1972年
新谷行『松浦武四郎とアイヌ』麦秋社、1978年
花崎皋平 『静かな大地 松浦武四郎とアイヌ民族』 岩波書店、1988年/岩波現代文庫、2008年
佐江衆一 『北海道人 松浦武四郎』 新人物往来社、1999年
中村博男 『松浦武四郎と江戸の百名山』 平凡社新書、2006年
早川禎治 『アイヌモシリ紀行 松浦武四郎の『東西蝦夷日誌』をいく』 中西出版、2007年
高木崇世芝・安村敏信・坪内祐三 『幕末の探検家松浦武四郎と一畳敷』 INAX出版〈Inax booklet〉、2010年>

武四郎が書き残した書物の現代語訳は、なかなか手に入らず、公立図書館にもあまり置いていない。
(国会図書館に行けば別。また、Amazonでも入手可能だが高価だ)
しかし、彼の業績を知ることができる何冊かの本が、さいわい私の手もとにもある。

二冊の文庫本を読み直してみようかと思う。
いずれも、池澤夏樹さんが解説を書いている。
ずいぶん前から手もとにあったのだが、まだ、きちんと読んでいなかったか。
花崎さんの本は5年前に読み通したはずだが、細部を憶えていないのが悲しい。
良い本は繰り返して読め、か。

『アイヌ人物誌』 (蝦夷近世人物誌) 松浦武四郎
 更科源蔵・吉田豊 訳
 解説 池澤夏樹
 平凡社ライブラリー 423 2002/1/9発行
 367ページ 1,300円(税別)

その雅号、北海道人から北海道と名付けたといわれる松浦武四郎。
数十巻にのぼる旅日記とともにまとめられた 原書『近世蝦夷人物誌』には ヒューマニストとしての松浦の本質が 刻み込まれている。
日本人による収奪と不徳に厳しい批判を向け、アイヌ人への敬愛の眼差しをもって綴られた名著。

(本書カバーより)

『静かな大地』 花崎皋平
 解説 池澤夏樹
 岩波現代文庫 2008/2/15発行
 390ページ 1,200円(税別)

幕末の蝦夷地を十数年間も探検・調査し、アイヌ民族の風俗・文化を記録する中で和人による虐待を告発した松浦武四郎。大地に根を張り、固有の習俗を育んできたアイヌ民衆の輝きとは何か。なぜ彼らは抑圧の下で呻吟することを強いられているのか。記録者としてアイヌ民族の受難に向き合うなかで、自己変革を遂げていく松浦を描き出す入魂の評伝。
(本書カバーより)

 

そういえば、北海道企画センターから出版されている目録を2冊、持っている。
役立てなくては。

 

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2013年9月26日 (木)

【読】曇天、図書館へ

朝からどんより曇り空。
北風が強い。秋風という感じだ。
ひさしぶりに、西の山々がくっきりと見える。

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家の中の用事を済ませてから、すぐ近くの図書館へ。
間宮林蔵がらみの本を、また3冊借りてきた。
どこまで読めるかわからないけれど。

赤羽榮一 『間宮林蔵 ―北方地理学の建設者』
 清水書院 人と歴史シリーズ 日本24 1974年
秦 新二 『文政十一年のスパイ合戦 ―検証・謎のシーボルト事件』
 文藝春秋 1992年 (文庫版もある)
間宮林蔵 述/村上貞助 編/洞富雄・谷澤尚一 編注
 『東韃地方紀行 他』 平凡社 東洋文庫484 1988年

   

昨夜、いっきに読みおえた高橋大輔 『間宮林蔵・探検家一代 ――海峡発見と北方民族』 が、とても面白かった。
オランダのライデン博物館まで出かけて、シーボルトが持ち去った林蔵の地図 『黒龍江中之洲幷天度』 を探しあてるくだり(第五章「持ち去られた古地図」)。
林蔵が蝦夷地でアイヌ女性と夫婦になり、女子を設けたことを、松浦武四郎研究家の秋葉實氏に会って確かめるくだり(第六章「血族」)。
林蔵の 『蝦夷全図』 を国会図書館まで見に行って、そこに記載されている「タナシ」という地名(林蔵がアシメノコというアイヌ女性と一緒になった土地)を発見したくだり(同上)。
……等々、著者の興奮が伝わってくる。

この本は、手元に置いておきたいほどの良書だった。
絶版らしいが、アマゾンで中古を入手できる。
私は、必要ならまた図書館で読むか借りることにしよう。
これ以上、本を増やすのも何だから。

間宮林蔵、松浦武四郎については、アイヌ民族とのからみで関心がある。
すこし読み込んでみようかな、と思ったりして。

高橋大輔さんのブログがあった。
探検家髙橋大輔のブログ
http://blog.excite.co.jp/dt/
林蔵の妻子の謎を追う : 探検家髙橋大輔のブログ
http://blog.excite.co.jp/dt/7771960/

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2008年3月18日 (火)

【読】トンコリ

Shizukana_daichi_bunko_2まだ読んでいる。
花崎皋平 『静かな大地』 (岩波現代文庫)

トンコリがでてきた。
松浦武四郎 、四十一歳のとき、最後の蝦夷地の旅(安政五年)。
箱館から日本海まわりで銭函までの海岸を除き、蝦夷地の全海岸と、十勝、阿寒など道北、道東の内陸部を縦横に踏みわたり、さらに、日高沿岸の川筋をひとつひとつ遡行する、という徹底した探索行である。
1月2日(陽暦3月7日)から、8月21日(陽暦9月27日)まで、203日間の旅。

彼は、旧暦五月の中頃、トコロ(常呂)川上流のプトイチャンナイという土地で、宿泊先でトンコリの演奏を聴く。

Tonkori<その夜、老人は五弦琴(トンコリまたはトンクル)でチカフノホウエ(鳥の鳴声の曲)を弾いてくれる。 これは、春の日に沢山の鳥がさえずるさまをうつしたものでいかにもおもしろく、五弦でよくさまざまな鳥の鳴声を弾きわけられるものだとふしぎな気がした。>
 ― 『静かな大地』 第7章 シャリ・アバシリの惨状 ―

このエカシ(老爺)は、武四郎一行が帰路に立ち寄って、残った米やタバコを贈ると、そのお礼にトンコリをくれると言いだした。
武四郎は、一度は断ったものの、あまりに強く言われたため受け取っている。

この他、『近世蝦夷人物誌』(アイヌ人物誌)にも、樺太東海岸でトンコリを演奏する八十余歳の翁に出会ったことが書かれている。

江戸末期、松前と江戸幕府の支配下で、悪徳商人らの非道な扱いに苦しんでいたアイヌの人々は、トンコリのような伝統楽器を楽しむ余裕も奪われていたのだ。

滅びかけていたこの楽器を、OKI が現代に甦らせたことの意義は、とても大きい。

(トンコリの写真画像はWikipediaのサイトから拝借した)


【参考】 トンコリ奏者 OKI のサイト
CHIKAR STUDIO
http://www.tonkori.com/

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2008年3月17日 (月)

【読】北海道文献年表から(松浦武四郎)

Shomin_shiryou_shusei三一書房 『日本庶民生活史料集成 第四巻』 (探検・紀行・地誌 北辺編) の巻末にあった長大な年表を、EXCELの表にしてみた。
けっこう時間がかかった。

せっかくだから、その中から、松浦武四郎に関するものをピックアップしてみよう。

1845 弘化 2 松浦武四郎松前に来る(「蝦夷日誌」)
1846 弘化 3 松浦武四郎西蝦夷地樺太を旅行す(「再航蝦夷日誌」)
1849 嘉永 2 松浦武四郎千島に渡り「三航蝦夷日誌」を著す
1855 安政 2 松浦武四郎「於幾能以志」「後方羊蹄おろし」刊行
1856 安政 3 松浦武四郎「東西蝦夷場所境目取調書」
1856 安政 3 阿部喜任著・松浦武四郎校「蝦夷行程記」刊行
1856 安政 3 松浦武四郎「箱館往来」「蝦夷葉那誌」刊行
1857 安政 4 松浦武四郎「武四郎回浦日記」「丁巳東西蝦夷山川地理取調日記」
1857 安政 4 松浦武四郎「まわるべし」刊行
1858 安政 5 松浦武四郎「壺の石」
1859 安政 6 松浦武四郎「燼心余赤」「蝦夷訓蒙図会」「蝦夷名産図会」
1860 万延 1 松浦武四郎『近世蝦夷人物誌』
1860 万延 1 松浦武四郎「石狩日誌」「夕張日誌」「北蝦夷余志」刊行
1861 文久 1 松浦武四郎「十勝日誌」刊行
1862 文久 2 松浦武四郎「天塩日記」「夕張日誌」「納紗布日誌」「知床日誌」刊行
1864 元治 1 松浦武四郎「箱館往来」「蝦夷土産双六」「箱館道中双六」「西蝦夷日誌」刊行
1865 慶応 1 松浦武四郎「東蝦夷日記」刊行
1869 明治 2 新井白石著・松浦武四郎校「蝦夷志」刊行
1870 明治 3 松浦武四郎「蝦夷年代記」刊行

 三一書房 『日本庶民生活史料集成 第四巻』 (探検・紀行・地誌 北辺編)
   1973/4/1 第一版第四刷  巻末 「北海道文献年表」 (高倉新一郎) から抜粋

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【読】松浦武四郎をめぐって

ネット販売で、こんな本を手に入れた。
このブログにコメントを寄せてくださった、北海道の方に教わって知った本だ。

古本ではあるが、読まれた形跡がなく、新品同様だった。
おまけに、セロハン紙をかけてある。
セロハン紙をはずすのも手間なので、そのままスキャナーで読み取ったら、霞んだ画像になった。

Yokoyama_takeshiro_2横山孝雄 著
 『北の国の誇り高き人びと』
  ― 松浦武四郎とアイヌを読む ―
 かのう書房 1992.5.25
 (人の世界シリーズ 11)

横山孝雄
1937年、中国北京で生まれる。 敗戦後帰国、福島県相馬高校卒。
赤塚不二夫のブレーンとして約25年行動を共にした後フリー。
著書に 『少数民族の旅へ』(新潮社) 『アイヌって知ってる』(汐文社) 『アイヌ語イラスト辞典』(蝸牛社) 『ボクは戦争をみた』(ポプラ社) 漫画「諸葛孔明グラフィティー」(新人物往来社) 『地球汚染・公害読本』 『怖い食品動物工場』(ナショナル出版) 『中国知識百科』(主婦と生活社・共著) 等がある。 ― 本書 著者略歴 ―

『少数民族の旅へ』 は、図書館から借りてきた。

Yokoyama_takao_shosuminzoku横山孝雄 著 『少数民族の旅へ』
 新潮社 1984.8.25

この本の49ページに 「アイヌ・コタン シャモといわれて赤塚不二夫は」 という一文があり、面白そうなエピソードと、若い頃の赤塚不二夫の写真が載っている。
まだ読んでいない。

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2008年3月12日 (水)

【読】読中感想 静かな大地

「読中」なんてことばはないのかな。

Shizukana_daichi_bunko『静かな大地』 花崎皋平 (岩波現代文庫)

この本は、とてもいい。
松浦武四郎という、江戸末期から明治にかけて生きた人物は、なんと魅力的な人だろう。
こいう行動的な人を 「探検家」 というのだろう、と思う。
彼は、樺太へ二度足を運んでいる。
宗谷(現在の稚内)までは、むろん徒歩だ。
(一部、川を舟で遡ったりもしているようだが)

樺太の、当時の地図が載っている。
地名は、どれもアイヌ語地名である。
樺太アイヌは、蝦夷地(北海道)に住んでいたアイヌの人たちとは、微妙に生活ぶりがちがっていたようだ。
オロッコや、タライカ(これは初めて聞いた)といった北方民族、山丹と呼ばれたニブヒ、オロチ族とも交易が盛んだった。
(このあたりの民族名称をよく理解していないので、違っているかもしれない)

とにかく、当時の樺太やエトロフ、クナシリといったあたり、国境なんてものはなく、自由に動きまわっていたのだ。

【参考】
市立函館博物館のサイト内
 トップ > 収蔵情報 > 民族の窓
山丹服
http://www.museum.hakodate.hokkaido.jp/collection/minzoku/14.html

そういえば、トンコリという伝統楽器も樺太アイヌの楽器だったはずだ。
樺太・・・いちど訪ねてみたい島だ。

TonkoriOKI 「TONKORI」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0009OAW2I/

アイヌ音楽とレゲエ~ダブ、エレクトロニカを融合させたミクスチャー・スタイルでおなじみのOKIが原点とも言えるトンコリ(カラフト・アイヌに伝わるアイヌ民族の弦楽器)のみで作ったアルバム。


【2008/3/13追記】
ちょっとした間違いに気づいたので、訂正しておきたい。
1. 宗谷と稚内は、厳密にいえばちがう場所だ。
 樺太に渡るには、当時は宗谷岬から舟を出した。
2. 松浦武四郎が樺太へ行ったときは、陸路を宗谷までたどったようだ。
 その後、別の機会に石狩川を舟で遡行する探索をしている。
 歩いていくにしろ、舟を使うにしろ、今とはちがってたいへんな探検だった。
 その陰には、いつもアイヌの人たちの援助があったのはいうまでもない。

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