カテゴリー「山田風太郎」の12件の記事

2015年4月14日 (火)

【読】戦争小説集

小雨降る肌寒い日。

コープへ買い物にでたついでに、近所の新刊書店に寄り、ネット注文してあった本を受けとる。

こんな面白そうな本があったのだ。
私の好きな作家が並んでいる。

とりあえず、ツンドク本になりそうだが……。

『永遠の夏 戦争小説集』 末國善己 編
 実業の日本社文庫 614ページ 880円(税別)

― Amazonより ―
内容紹介
戦後70年特別編集。
戦争は終わったのか? 14人の作家が描いた魂の記録。

 

1945年、日本は降伏を決し、第二次世界大戦が終わった。
ノモンハン事件から、真珠湾攻撃、南洋戦線、従軍慰安婦、抗命事件、硫黄島、疎開先の女学生、広島原爆、外地脱出、沖縄基地問題まで、戦争を題材にした名作を収録。
文学だから描けた「本当の戦争」がここにある。
大岡昇平、小松左京、坂口安吾ほか強力作家陣による「文庫オリジナル戦争小説集」。
誰もが強く、弱かった……戦争を生きた人々の思いとは?
[編者解説/ 末國善己]

 

【収録作品】
■柴田哲孝 「草原に咲く一輪の花 ─異聞ノモンハン事件─」
■坂口安吾 「真珠」
■大岡昇平 「歩哨の眼について」
■田村泰次郎 「蝗」
■古処誠二 「糊塗」
■帚木蓬生 「抗命」
■城山三郎 「硫黄島に死す」
■山田風太郎 「潜艦呂号99浮上せず」
■皆川博子 「アンティゴネ」
■徳川夢声 「連鎖反応 ─ヒロシマ・ユモレスク─」
■島尾敏雄 「出孤島記」
■五木寛之 「私刑の夏」
■目取真俊 「伝令兵」
■小松左京 「戦争はなかった」


しばらく中断していた船戸与一『満州国演義』の続き(第7巻)を読みはじめている。
この卷までは、以前にいちど読んでいるので、再読。

時代は1940年(昭和15年)に移っている。
読んでいるうちに、この卷の展開を思いだしてきた。

各巻の巻頭に付けられている地図が、この卷ではアジア全体に広がっている。

船戸与一 『満洲国演義7 雷の波濤』 (いかずちのはとう)
 新潮社  2012/6/20発行 477ページ 2,000円(税別)

― Amazonより ―
昭和十六年。ナチス・ドイツによるソビエト連邦奇襲攻撃作戦が実施された。ドイツに呼応して日米開戦に踏み切るか、南進論を中断させて開戦を回避するか…敷島四兄弟が岐路に立つ皇国に見たものとは。「非常事態」の名の下、暴き出される人間の性。加速する満州クロニクル、ついに終焉へのカウント・ダウン開始。

この小説では、旧日本軍の「特務機関」の働きが詳細に描かれている。
たいへん興味ぶかい。
船戸さんは、膨大な史料を読みこんでいるようだ。
(最終巻=第9巻の巻末に参考文献一覧が掲載されている)

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2008年9月25日 (木)

【読】再読 『同日同刻』 (山田風太郎)

ちょっと読み直してみようと軽い気持ちで開いているうちに、がぜん面白くなってきたので、通読してしまった。
二年前に手に入れて読んでいるが、今回、再読。

Doujitsu_doukoku

山田風太郎 『同日同刻』
 ― 太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日 ―

ちくま文庫 2006.8.10  840円(税抜)
(立風書房 1979年8月/文春文庫 1986年12月)

このブログのカテゴリにも、「山田風太郎」 を追加したので、ご興味のある方はカテゴリをクリックしてご覧いただきたい。

すでに、前回読んだときの付箋がいっぱい付いていたのだが、付箋のない箇所で今回気になったところを紹介しておこう。


「最後の一日 八月十五日」 の項から。

九日前の八月六日に原子爆弾を投下された広島での逸話。
昭和天皇の 「玉音放送」 を聞いた人たちのことだ。
出典は、峰谷道彦 『ヒロシマ日記』 (朝日新聞社)。

<広島の病院では、天皇の放送をきいて俄然静まりかえった。 寂(せき)として声なく、しばらく沈黙がつづいていたが、間もなくすすり泣きの声が聞え出した。
 突然、誰か発狂したのではないかと思われるほど大声で、「このまま敗けられるものか」 と怒鳴った。
 それにつづいて、矢つぎばやに、「今さら戦争をやめるとは卑怯だ」 「人をだますにもほどがある」 「敗けるより死んだ方がましだ」 「何のために今まで辛抱したのだ」 「これでは死んだ者が成仏出来るか」 いろんな表現で鬱憤が炸裂した。
 病院は上も下も喧々囂々(けんけんごうごう)全く処置のない昂奮に陥った。 日ごろ平和論者であった者も、戦争に厭き切っていた者も、すべて被爆のこの方俄然豹変して徹底的抗戦論者になっていた。
 「東条大将の馬鹿野郎、腹を切って死ね」
 と、怒鳴った者もあった。>

この本では、広島の被爆後の地獄絵図が、たくさんの書き物(日記、手記、文集)を引用して、微細にえがかれている。
それを読んだ後だったので、私には、広島の病院の被爆者たちの反応が意外に思えた。

人間とは、なんと不思議なものか。


もう一箇所、ちょっと、ひっかかった部分がある。
堀田善衛(当時十七歳)の文章。
出典は、勁草書房 堀田善衛 『上海にて』。

<上海にあった二十七歳の堀田善衛は、同様に戦争中日本に協力してくれた中国人の運命について、天皇が 「何をいうか、何と挨拶するか」 ひたすらにそればかりを注意して聞いていた。 そして天皇がそのことについて、ただ 「遺憾ノ意ヲ表セザルヲ得ズ」 という曖昧な二重否定をしたきりで、ほかには触れなかったその薄情さ加減、エゴイズムが躯(からだ)に応えた。
 「放送が終ると、私はあらわに、何という奴だ、何という挨拶だ。 お前の言うことは、それっきりか、それで事がすむと思っているのか、という怒りとも悲しみともなんともつかぬものに身がふるえた」>

中国、朝鮮半島の人々にとって、この日(八月十五日)は、解放の日だったことを忘れてはいけないと思う。


ちょっと愉快だったのは、永井荷風の逸話だ。
この人だけは、飄々としていた。
出典は、『断腸亭日乗』 (荷風全集)。

<絶望し、悲嘆し、慷慨し、狼狽し、虚脱する者ばかりではなかった。 ひそかに、あるいは公然と喜悦する人もまたあった。
 谷崎潤一郎に見送られたあと、永井荷風は記す。
 「……出発の際谷崎夫人の贈られし弁当を食す。白米のむすびに昆布佃煮及び牛肉を添えたり。 欣喜措く能わず。 (中略=山田風太郎) 午後二時過岡山の駅に安着す。 焼跡の町の水道にて顔を洗い汗を拭い、休み休み三門の寓舎にかえす。 S君夫婦、今日正午ラジオの放送、日米戦争突然停止せし由を公表したりと言う。 恰もよし日暮染物屋の婆、鶏肉葡萄酒を持来る。 休戦の祝宴を張り皆々酔うて寝に就きぬ。」>


この本は、じつに面白い。
面白いと言うにはつらすぎる話が満載されているが、きわめて興味ぶかい本だ。
あらためて、推奨。



【参考】 ― Wikipedeiaより ―
堀田善衛(ほった よしえ、1918年7月7日 - 1998年9月5日)は、日本の小説家。
富山県高岡市出身。生家は伏木港の廻船問屋であり、当時の日本海航路の重要な地点であったため、国際的な感覚を幼少時から養うことができた。旧制金沢二中から慶應義塾大学に進学し、文学部仏文科卒業。大学時代は詩を書き、雑誌「批評」で活躍、その方面で知られるようになる。戦争末期に国際文化振興会の上海事務所に赴任し、そこで終戦を迎え、国民党に徴用される。引揚後、一時期新聞社に勤務したが、まもなく退社し、作家としての生活にはいる。

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2008年9月21日 (日)

【読】『銃後の絵日記』

今日、図書館でこんな本をみつけた。

Juugo_no_enikki『太平洋戦争 銃後の絵日記』
 青木正美 編
 東京堂出版 1995.3  325ページ

編者略歴
青木正美(あおき・まさみ)
1933年、東京に生まれる。 50年、都立上の高校定時制中退。 53年、現住所に古本屋を開業。 営業のかたわら生涯の生業となった古書業界史に興味を抱く一方、近代作家の原稿・書簡、無名人の自筆日記などの蒐集に励む。 著書に 『昭和の子ども遊びと暮らし』 『古本屋四十年』 『古本屋控え帳』 『古本屋奇人伝』 『自筆本蒐集狂の回想』 『古本探偵追跡簿』 など。

この本は、編者が昔入手してあった二人の太平洋戦争の戦時下日記を編集したもの。
絵日記というところに魅かれて、借りてきた。
ユニークな本だ。

「はじめに」 のなかで、昭和20年度に克明な日記を残した文学者として、永井荷風、内田百閒、伊藤整、高見順、一色次郎、山田風太郎らの名前をあげている。

この本でとりあげている絵日記は、一般の無名人のものである。

一人目は、昭和17年から書き始めている絵日記作者、鈴木長三郎。
総武線幕張駅近くに住み、県立商業校の満四十歳の教員らしい。
用紙、筆記用具が極端に不足し、まして絵具などは一般には手に入りにくくなっていた時世に、みごとな絵日記を残している。

二人目は、都心の会社の労務課に勤める四十六歳の男性、松波盛太郎。
もともと文学青年くずれだったことが日記作者となったその背景としてあった、と編者はいう。
王子に世帯を持っていたが、弟が出征、昭和19年に戦死。
日暮里谷中の実家に年老いた父母と、母に先立たれた弟の娘がいる。
弟の戦死が伝わってからは、勤めの帰りには必ず実家に立ち寄って家をみるようになった。

<昭和二十年の年頭、彼はこの理不尽な弟の死を嘆き、この上は日々逼迫する戦争を、日本の運命を、とことん見てやろうと、まるではかない抵抗をこころみるように、一日々々を日記(こちらはとても絵日記とは言えないまでも、所々図解まで入れて)に刻みつけたのである。> (本書「はじめに」)



そういえば、ずいぶん前に、このブログでとりあげた山田風太郎の本があった。
なにやら付箋がたくさん付いている。
よほど夢中になって読んでいたらしいが、よく憶えていない。

Futaro_doujitsu『同日同刻 太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日』
 山田風太郎  ちくま文庫 2006.8

発売当時、読んだときの感想を、このブログに書いていたっけ。
じぶんのブログ記事ながら、こういうときに役にたつもんだ、と感心した。

2006年9月7日
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/__4e45.html

2006年9月8日
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/_2_1e0a.html

2006年9月9日
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/_3_09f1.html

この本の内容は、もうほとんど忘れていたのだが、今日、二年ぶりに読み返してみると、とても面白いのだ。

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2007年10月17日 (水)

【歩】【読】さわやかな朝

ひさしぶりにさわやかな朝だった。
いい季節になった。
すこーしずつ、秋の気配がちかづいている、そんな気分の朝。
もったいないのでケイタイで撮ってみた。
案の定、はっきりした写真にならなかったが、せっかくなので。
朝の斜光線があたって、きれいだった。

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朝のスタートはよかったのだけれど、昼休みに勤務先近くの BOOK OFF で買った文庫本には、がっかりした。
家に帰ってから気づいたのだけれど、何ページか隅を折ってあったのだ。
しおり紐がついているのに、こんなことをする人もいるんだなあ。
何か気になることでも書いてあって、目印をつけたのだろうか。
謎である。
(私なら付箋をつけるんだが・・・私の方が異常なのか)

Murakami_uten_enten_3村上春樹 『雨天炎天』 (新潮文庫)
このブログを読んでくれている友人が教えてくれた本。
副題 「ギリシャ・トルコ辺境紀行」 が示すように、旅行記だ。
薄くて安価な文庫本なのだから、新刊で買えばよかったのかも。
本を買うのは控えようと自制していたのだが、また3冊、ネットで新刊を注文してしまった。
いやはや。

どれも、私を強く惹きつける本なのだ。
五木寛之 『21世紀仏教への旅 日本・アメリカ編』 (講談社) 2007.9
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062802066
勢古浩爾 『会社員の父から息子へ』 (ちくま新書) 2007.10
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480063897
山田風太郎 『死言状』 (小学館文庫) 2005.12
  ※山田風太郎のこの本だけ少し古い
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4094080619

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2007年10月 2日 (火)

【楽】【読】若くして…

Portrait_in_jazz『ポートレイト・イン・ジャズ』 (和田誠/村上春樹、新潮文庫) には、ミュージシャンたちの生年、没年が書かれている。
何歳ぐらいで亡くなったのか気にしながら読んでいたら、驚いたことにずいぶん若い年齢で亡くなっている人が多いのだった。
この本でとりあげられている、20世紀アメリカのジャズ・ミュージシャンたちを、亡くなった年代ごとに羅列してみた。

ただし、没年齢は亡くなったときの満年齢ではなく、没年から生年を単純に引き算しただけ。
正確な没年齢は、亡くなった年に誕生日をむかえていたかどうかで、一歳ちがってくる。
丸括弧内が単純計算で私が出した没年齢だ。

また、この本の中でとりあげられているグループ(MJQ=モダン・ジャズ・カルテット、ジャッキー&ロイ)のメンバーは除外した。

山田風太郎の 『人間臨終図鑑』 ふうに、何十歳代で亡くなったかで分けてみた(生年順)。
Huutarou_rinjuu1Huutarou_rinjuu2山田風太郎 『人間臨終図鑑』 (上/下)
 徳間書店 1986年
徳間文庫からも三分冊で出版されている
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/419891477X/



20世紀の著名なミュージシャンたちの多くは、私が漠然と思っていたよりも若くしてこの世を去っている。
酒や麻薬に負けて命を縮めた人も多いが、そもそも、ジャズ・ミュージシャンというのは、命をすり減らしながら演奏し、死んでしまう人が多いのかもしれない。 ことにアメリカでは。

今の私よりも若くして亡くなった人がたくさんいることに、なにやら感慨をおぼえる。
写真で見ると、みんな老成した風貌なんだがなぁ……。

20代で亡くなった人たち
1903-1931 (28) ビックス・バイダーベック Bix Beiderbecke
1916-1942 (26) チャーリー・クリスチャン Charlie Christian
1930-1956 (26) クリフォード・ブラウン Clifford Brown

30代で亡くなった人たち
1904-1943 (39) ファッツ・ウォーラー Fats Waller
1920-1955 (35) チャーリー・パーカー Charlie Parker
1928-1964 (36) エリック・ドルフィー Eric Dolphy
1935-1974 (39) ボビー・ティモンズ Bobby Timmons
1938-1972 (34) リー・モーガン  Lee Morgan

40代で亡くなった人たち
1904-1944 (40) グレン・ミラー Glenn Miller
1910-1953 (43) ジャンゴ・ラインハルト Django Reinhardt
1915-1959 (44) ビリー・ホリデイ Billie Holiday
1917-1965 (48) ナット・キング・コール Nat “King” Cole
1925-1968 (43) ウェス・モンゴメリー Wes Montgomery
1928-1975 (47) ジュリアン・キャノンボール・アダレイ Julian Cannonball Adderley

50代で亡くなった人たち
1905-1964 (59) ジャック・ティーガーデン Jack Teagarden
1909-1959 (50) レスター・ヤング Lester Young
1922-1979 (57) チャールズ・ミンガス Charles Mingus
1925-1982 (57) アート・ペッパー Art Pepper
1929-1980 (51) ビル・エヴァンズ Bill Evans
1929-1988 (59) チェット・ベイカー Cet Baker

60代で亡くなった人たち
1904-1973 (69) エディー・コンドン Eddie Condon
1909-1973 (64) ジーン・クルーパ Gene Kurupa
1920-1982 (62) セロニアス・モンク  Thelonious Monk
1920-1984 (64) シェリー・マン Shelly Manne
1923-1990 (67) デクスター・ゴードン Dexter Gordon
1925-1990 (65) ジューン・クリスティ June Christy
1926-1991 (65) マイルズ・デイヴィス Miles Davis
1927-1991 (64) スタン・ゲッツ Stan Getz
1927-1996 (69) ジェリー・マリガン Gerry Mulligan

70代で亡くなった人たち
1899-1974 (75) デューク・エリントン Duke Ellington
1901-1971 (70) ルイ・アームストロング Louis Armstrong
1902-1972 (70) ジミー・ラッシング Jimmy Rushing
1909-1986 (77) ベニー・グッドマン Benny Goodman
1912-1986 (74) テディ・ウィルソン Teddy Wilson
1912-1988 (76) ギル・エヴァンズ Gil Evans
1917-1993 (76) ディジー・ガレスピー  Dizzy Gillespie
1918-1996 (78) エラ・フィッツジェラルド Ella Fitzgerald
1919-1990 (71) アート・ブレイキー Art Blakey
1925-1999 (74) メル・トーメ Mel Torme
1926-2002 (76) レイ・ブラウン Ray Brown
1930-2003 (73) ハービー・マン Herbie Mann

80代・90代で亡くなった人たち
1899-1981 (82) ホーギー・カーマイケル Hoagy Carmichael
1904-1984 (80) カウント・ベイシー Count Basie
1907-1994 (87) キャブ・キャロウェイ Cab Calloway
1915-1998 (83) フランク・シナトラ Frank Sinatra
1918-2006 (88) アニタ・オデイ Anita O'Day
1909-2002 (93) ライオネル・ハンプトン Lionel Hampton

存命
1925- オスカー・ピーターソン Oscar Peterson
1926- トニー・ベネット Tony Bennett
1928- ホレス・シルバー  Horace Silver
1929- ソニー・ロリンズ Sonny Rollins
1930- オーネット・コールマン  Ornette Coleman
1940- ハービー・ハンコック Herbie Hancock

※ 『ポートレイト・イン・ジャズ』 から、手作業で文字入力したものをEXCELで編集した。
転記ミスがあるかもしれない。 ここから転載していただいても、内容の正確さは保証しかねる。
なお、日本語人名表記は、村上春樹氏の原文に従った。
村上春樹氏が書いているように、Miles=マイル、Evans=エヴァン、Charles=チャール、と濁音で表記するのが正しいのだろう。

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2006年9月10日 (日)

【歩】【読】きょうの収穫

団地のトチノキが実をつけて、それがたくさん落ちている。
実(種子)はなく、外皮というのか殻ばかりだったが。

P9100021P9100022 クルミのように、まわりに厚い皮をつけていて、中に固い種子がある。
直径2cmほどの丸い種子は、小ぶりの栗の実を思わせる。

【科/属名】 トチノキ科トチノキ属
【名前の由来】 トは10で、果実の多い木をあらわす
ほんまかいな。
トチの実団子というのを食べたことがある。 これは、五木寛之さんの好物らしい(何かの本に書いていたっけ)。
素朴な味ではあるが、ぼくはあまり好きになれなかった。

今日は、郊外型大型新古書店(要するにBOOK OFF)を三軒まわって、まとめ買い。
こんなに読めるのかな、と自分でもあきれるほどだが、安いのでついつい買ってしまう。

P9100024『20世紀はどんな時代だったのか』 読売新聞社編
左側が今日みつけたもの。
右は、つい先日、別の店でみつけた。
このシリーズは面白い。 1998年から2000年にかけて出版された。
「革命編」「戦争編 ヨーロッパの戦争」「戦争編 日本の戦争」「戦争編 大戦後の日本と世界」「思想・科学編」「ライフスタイル・産業経済編」「政治・社会編」「アメリカの世紀・総集編」があり、一冊を除き手に入れることができた。(読まなくちゃ)

P9100023岩波ジュニア新書 シリーズ
一冊105円とか350円という値段で売られている。
すこし太平洋戦争のことを勉強しようと思って、まとめ買い。




Seisho_vs_sekaishi_1『聖書vs.世界史』 岡崎勝世 講談社現代新書
何度も紹介した『晴読雨読日記』(岸本完司)に書評が載っていたので、気になっていた本。 新刊では入手困難になっている新書を、こういう店でみかけることが多い。ありがたいことだ。



この他、吉本隆明さんの『日々を味わう贅沢』(青春出版社)、関川夏央の文庫本3冊、山田風太郎『くノ一忍法帖』(文庫)も購入。
収穫多数。

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2006年9月 9日 (土)

【読】さらに山田風太郎

図書館から借りてきた。

Futaro_tensairoujin関川夏央 『戦中派天才老人・山田風太郎』 ちくま文庫
 1998年12月3日 (1995年4月 マガジンハウス刊 の文庫化)
関川夏央(1949年生まれ、ノンフィクション作家)が、山田風太郎に取材した内容をインタビュー形式に仕立てあげたもの。
カバーイラスト(南伸坊)が、いい味をだしている。

この本は、岸本完司 『晴読雨読日記』 でも紹介されていた。
 「新・晴読雨読日記」 P.145 「山田風太郎の小宇宙(4)」
関川夏央は、『海峡を超えたホームラン』 『ソウルの練習問題』 『東京からきたナグネ』 『韓国読本』 などの著作で知っていたが、まともに読んだことはなかった。
ぼくらとほぼ同世代のライターだ。
1922年生まれ(吉本隆明さんよりも2歳年長)の山田風太郎と四つに組んだこの本は、面白そうだ。 

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【読】山田風太郎 『同日同刻』 (3)

読み終えた。
Futaro_doujitsu_4巻末の高井有一(小説家)による解説が、この本の魅力をうまくまとめてくれているので、引用させてもらう。(旧仮名づかい)
<「同日同刻」は、太平洋戦争の最初の一日と、最後の十五日間に、日本、アメリカ、ヨーロッパの各地で起つた出来事、信頼出来る記録にもとづいて再現する試みである。 同日同刻の出来事を、空間の隔たりを超えて対照させる事によつて、見え難い過去の現実が立体的に見えて来る。>

<真珠湾の戦果を知つて、日本国内は沸き立つた。 興奮し、感動した作家の文章がいくつも遺されてゐる。 作家は民衆の「語りべ」だと山田風太郎は言ふが、この日の文章の大半は彼等の名誉になるものではない。 ・・・いづれも強制されて書いたものではない。 ・・・志賀直哉は、文士には安普請の人間が多い、と言つたさうだが、声を揃へて無邪気に万歳を叫ぶやうな現象は、そんな言葉を思ひ出させる。>

「ゆっくり、しかし強くこの宣戦布告のみことのりを頭の中で繰りかえした。頭の中が透きとおるような気がした」 (高村高太郎)
「言葉のいらない時が来た。必要ならば、僕の命を捧げねばならぬ」 (坂口安吾)
「この開始された米英相手の戦争に、予想のような重っ苦しさはちっとも感じられなかった。方向をはっきりと与えられた喜びと、弾むような身の軽さとがあって、不思議であった」 (伊藤整)

敗戦。
レイテ島の米軍捕虜収容所にあって、すでに十日に日本の条件付き降伏表明を知っていた大岡昇平は、のちに憤慨してこう書いた(「俘虜記」)。
「俘虜の生物学的感情から推せば、八月十一日から十四日まで四日間に、無意味に死んだ人達の霊にかけても、天皇の存在は有害である」

著者 山田風太郎の 「戦中派不戦日記」 十一月十二日の項
「余思うに、日本人に天皇は必要である。われわらは八月十五日に於ける天皇に対する戦慄的な敬愛の念を忘れることは出来ない」

高見順 「高見順日記」 (玉音放送を聞く直前に、彼の妻が)
「ここで天皇陛下が、朕とともに死んでくれと仰有ったら、みんな死ぬわね」と言い、自分もその気持ちだった。

・・・考えさせられることの多い、ずっしりと重い一冊だったなぁ。

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2006年9月 8日 (金)

【読】山田風太郎 『同日同刻』 (2)

まだ読み終えていないけれど、きのうの続き。
山田風太郎 著 『同日同刻』 (ちくま文庫)
 1979年 立風書房 刊行の文庫化

Futaro_doujitsu_2昭和20年8月9日、長崎に二発目の原爆が投下され、ソ連軍が満州・朝鮮への侵攻を開始。
長崎に原爆を投下したB29(広島の時と同じくテニアンから出発)は、帰途、燃料がなくなって沖縄の読谷(よみたん)飛行場に着陸した。
<不時着に近い着陸だった。 長い滑走着陸をする余力もないので、緊急着陸をする旨地上に信号したが、管制塔は気づかなかった。>
ヨタヨタと飛んでいるB29から、「被害甚大」「機内に死傷者あり」など、ありとあらゆる発火信号が打ち上げられた。
<やっと無事着陸したB29に、基地の軍曹が駆け寄って聞いた。/「死傷者はどこですか」/スウィニー少佐は北東の長崎の方を指した。/「あっちだ」>

満州も大混乱だった。
<・・・その満州では、恐ろしい混乱の中に、関東軍関係につづいて満鉄関係の家族が新京から逃れようとしていた。>
職業軍人や軍属たちは、民間人を見捨ててわれ先にと逃げはじめたのである。ひどい話だ。

悲惨な話は山ほどあるが、次の逸話が胸を打った。
東満州の永安屯の群馬部落でのできごと。
<・・・移民以来営々と汗を流して拓いた田畑を捨てて逃げることになお踏み切れない人々も多かった。・・・やっと十一日に避難開始ときまったが、この朝物見台に立っていた開拓民の一人が、早くも地平線に巻きあがる砂塵が刻々と大きくなって来るのをみた。/「ソ連の戦車団だ!」>
村は極度の混乱に陥り、若い女たちは、ソ連軍の暴行を恐れて次々と自決していった。
<・・・部落には硝煙と血の臭いが渦巻いた。 この朝、女、子供をふくめてみずから死を求めた者四十九名。>
そして・・・地平線から近づいて来たのは、隣の村に住む日本開拓民の避難の馬車の行列だった。

これにくらべたら、阿南陸相の割腹自殺など、なにほどのものか、と思う。

緊迫する御前会議、天皇の決断、陸軍のクーデター未遂、「玉音放送」レコード盤の争奪、など、敗戦までの数日間が、山田風太郎の手によって活写されている。
ところどころに、当時の文人・文化人たち(川端康成、徳川夢声、志賀直哉、谷川徹三、谷崎潤一郎、永井荷風ら)のエピソードや証言がはさまれていて、興味ぶかい。
フィリピンで俘虜となった大岡昇平、奄美群島加計呂麻島の島尾敏雄、新京放送局に勤めていた森繁久弥らの体験記も引用されている。
いいかげんなテレビドラマよりも、よほど勉強になる。

その森繁久弥のことば。
「何が一番悲しかったかといえば、ソ連の攻撃が始まった直後でしたが、包丁を出せといわれたことでした。 包丁を竹の先にしばりつけて、それでソ連軍と渡り合うんだ、というんですよ。 精鋭だと信じ込んでいた関東軍がね」

それにしても、と思う。
なぜ、軍人たちは、あれほど「勝ち」にこだわったのだろう。
ほとんど望みのない負け戦だったのに、正気の沙汰とは思えない。

すこし前に読んだ、吉本隆明さんの本を思い出した。
吉本さんも戦争中は軍国少年だったが、その体験をごまかさず、戦後、とことんまで総括をした人だ。
吉本さんは、繰りかえし、こう言っていたように思う。
「戦争そのものがダメなんだ。 正義の戦争なんて、ないんだぜ。 戦争なんかやっても、いいことは何もないんだよ」

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2006年9月 7日 (木)

【読】山田風太郎 『同日同刻』 (1)

今年も9月11日が近づいて、またぞろ騒がしくなるんだろうな。
9・11よりも、8・6や8・9のほうが大切だよ。・・・そんなことを考えさせる本だ。

山田風太郎 『同日同刻 太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日』 (ちくま文庫)

Futaro_doujitsu_1「最後の十五日 ―昭和20年8月―」 を読み始めた。
8月1日(水) マッカーサーはじめて原爆を知る
8月2日(木) 極秘目標――広島


ここに興味深い記述がある。
テニアン(マリアナ諸島)にいた特別爆撃隊に対する極秘の作戦命令。
予定日、8月6日。
爆撃高度2万8千フィートから3万フィート、飛行速度時速200マイル、爆撃は目測による。
攻撃第一目標 広島市中心部工業地域
予備第二目標 小倉の造兵厰と同市中心部
予備第三目標 長崎市中心部

<8月9日にトルーマン大統領は、「世界は最初の原爆が広島という軍事基地に投下されたことを心に留めるであろう。われわれがこうしたのは、出来る限り非戦闘員の殺傷を避けたいと思ったからである」と声明したが、それが偽りであることはこの8月2日の作戦命令書を見れば明らかである。> (P.112~113)

彼の国のブッシュ大統領が「9・11」を忘れるな、と言うのなら、ぼくらは、61年前の「8・6」「8・9」を忘れてはいけないのだ。

8月5日(日) 広島の夜空には満点の星
<テニアンでは、その日昼間のうちに原爆攻撃隊長ティベッツ大佐が、自分の搭乗機の操縦席の窓の下に、ペンキで「エノラ・ゲイ」と書かせた。それは彼の母親の名であった。そのとき「日本帝国と天皇ヒロヒトに不運あれ」と落書した者もあった。>

8月6日(月) スベテアッタコトカ
山田風太郎のすごいところは、広島上空のB29搭乗員の様子を、米国の資料を引用しながら冷徹に描いた後、一転して原爆投下直後の地獄図絵を、淡々と語っているところだ。
まるで、映画のシーンを見ているようである。
原民喜や峠三吉の文章・詩も引用されているが、それよりも、名もない人びとの書いた記録が胸をうつ。

「スベテアッタコトカ アリエタコトカ / パット剥ギトッテシマッタ アトノセカイ」
(原民喜 「夏の花」)

8月9日の項の途中まで読んだ。
もうすこし後、8月13日の項に、奄美群島加計呂麻島にいた第18震洋隊長島尾敏雄と、その恋人ミホ(後の島尾夫人)も登場する・・・。

巻末解説(高井有一)のタイトル 「立体化されて迫る過去の現実」 は、山田風太郎ならではの独特の視点を、みごとに言いあらわしている。
これは、いい本ですよ。

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