カテゴリー「内澤旬子」の12件の記事

2022年12月25日 (日)

【読】いつも読みたい本ばかり(2022年総集編に代えて)

毎年、年末に「総集編」と題して一年間の振り返りをしている。

今年は、「読書メーター」というサイトでの毎月のまとめ記事をアップしてきたこともあり、別の形でここにまとめておこう。

読書メーター(読んだ本)
https://bookmeter.com/users/466409/books/read

「いつも読みたい本ばかり」、これは渡辺一枝さんの本の題名。

 

 Photo_20221225215601  

私も「読みたい本」が手元に山のようにある。
一生かけても読み切れないほどの「つんどく本」がありながら、図書館から借りたり、新刊・古本を買い求めたりしている。
「読みたい本」は増え続けるのに、読める時間には限りがある、このジレンマ。

増え続ける蔵書については、手元にあることの効用、ということも信じているのだが、はたして。

死ぬ前までには整理しなくては。
もしも、整理できずにぽっくり逝ってしまったら、馴染みの古本屋さんにまとめて引き取ってもらおう。
残された人たちには、なんでここまで溜め込んだのかと、呆れられることだろうな。

さて、今年一年間に読んだ本。
作者別にまとめてあげておこう。
なかには、読めなかったが、いつか読みたい本も混じっている。

★印は図書館本 ●印は手元にあって未読

岸政彦 ・・・今年知った人
『街の人生』 勁草書房 (2014/5/20) 306ページ ★
『マンゴーと手榴弾 -生活史の理論-』 勁草書房 (2018/10/20) 341ページ ★

五木寛之 ・・・この先、あまり読まないかも(昔の本で再読したいものはある)
『一期一会の人びと』 中央公論新社 (2022/1/10) 222ページ ★
『捨てない生きかた』 マガジンハウス新書 (2022/1/27) 197ページ ★
『重箱の隅』 文春文庫 (1984/11/25) 367ページ (単行本1979/5文芸春秋社刊)
 ※1975/12/10~1976/4/11夕刊フジ連載

『僕はこうして作家になった―デビューのころ―』 幻冬舎文庫 (2005/9/30) 255ページ ●未読
『にっぽん漂流』 文春文庫 (1977/11/25) 236ページ ※単行本をAmazonで購入 ●未読

■桐野夏生 ・・・たくさん読んだ(既刊の小説は、ほぼすべて)

桐野夏生: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat24350732/index.html

『砂に埋もれる犬』 朝日新聞出版 (2021/10/30) 494ページ ★

『バラカ(上)』 集英社文庫 (2019/2/25) 400ページ
『バラカ(下)』 集英社文庫 (2019/2/25) 468ページ
『夜の谷を行く』 文春文庫 (2020/3/10) 329ページ
『だから荒野』 文春文庫 (2016/11/10) 459ページ
『ジオラマ』 新潮文庫 (2001/10/1) 294ページ ※自著あとがき(解題)あり
『残虐記』 新潮文庫 (2007/8/1) 255ページ
『水の眠り 灰の夢』 文春文庫 (2016/4/10) 476ページ ※村野ミロシリーズ
『ローズガーデン』 講談社文庫 2003/6/15 279ページ ※短編集
『はじめての文学 桐野夏生』 文藝春秋 (2007/8/10) 273ページ ★
『リアルワールド』 集英社文庫 (2006/2/25) 282ページ
『奴隷小説』 文春文庫 (2017/12/10) 187ページ ※解説 白井聡 ★
『冒険の国』 新潮文庫 (2005/10/1) 166ページ ★
『天使に見捨てられた夜』 講談社文庫 (1997/6/15) 420ページ ★
『玉蘭』 文春文庫 (2005/6/10) 388ページ ★
『顔に降りかかる雨』 講談社文庫 (1996/7/15) 404ページ ★
『ダーク(上)』 講談社文庫 (2006/4/15) 296ページ ★
『ダーク(下)』 講談社文庫 (2006/4/15) 349ページ ★
『錆びる心』 文春文庫 (2000/11/10) 397ページ
『対論集 発火点』 文春文庫 (2012/12/10) 278ページ
『光源』 文春文庫 (2003/10/10) 428ページ
『とめどなく囁く』 幻冬舎 (2019/3/25) 445ページ ★
『白蛇教異端審問』 文春文庫 (2008/1/10) 303ページ ※エッセイ集
『ポリティコン(上)』 文春文庫 (2014/2/10) 494ページ ★
『ポリティコン(下)』 文春文庫 (2014/2/10) 468ページ ※解説:原武史 ★
『燕は戻ってこない』 集英社 (2022/3/10) 445ページ
『ロンリネス』 光文社文庫 (2021/8/20) 504ページ
『ハピネス』 光文社文庫 (2016/2/20) 450ページ
『魂萌え!(上)』 新潮文庫 (2006/12/1) 335ページ

『魂萌え!(下)』 新潮文庫 (2006/12/1) 292ページ
『抱く女』 新潮文庫 (2018/9/1) 362ページ
『猿の見る夢』 講談社文庫 (2019/7/12) 609ページ
『メタボラ』 文春文庫 (2011/8/10) 684ページ (ブックオフ 2022/3/21 ¥520)
『優しいおとな』 中公文庫 (2013/8/25) 371ページ
『路上のX』 朝日文庫 (2021/2/28) 510ページ
『グロテスク(上)』 文春文庫 (2006/9/10) 397ページ
『グロテスク(下)』 文春文庫 (2006/9/10) 453ページ
『I'm sorry, mama』 集英社文庫 (2007/11/25) 262ページ
『緑の毒』 角川文庫 (2014/9/25) 332ページ
『IN』 集英社文庫 (2012/5/25) 376ページ
『夜また夜の深い夜』 幻冬舎文庫 (2017/8/5) 430ページ
『デンジャラス』 中公文庫 (2020/6/25) 330ページ

【関連本】・・・桐野さんに凝って、こんな本にまで手を出した
現代女性作家読本刊行会(編)
『現代女性作家読本⑰ 桐野夏生』 鼎書房 (2013/11/15) 163ページ

松岡理英子・江國香織・角田光代・町田康・金原ひとみ・島田雅彦・日和聡子・桐野夏生・小池昌代
『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』 新潮社 (2008/10/30) 285ページ ★ ●未読

佐々木敦
『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 メディア総合研究所 (2011/7/24) 389ページ ★
 ※第10章 桐野夏生 「作家がものを書く」

阿川佐和子/東浩紀/岩田健太郎/桐野夏生/他
『私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2』 朝日新書831
(2021/8/30) 192ページ ★ ◎一部読

『小説新潮別冊 Shincho Mook The COOL! 桐野夏生スペシャル』 (2005/9/28) 159ページ ◎一部読

■原武史 ・・・この人の本は、今後も少しずつ読みたい
『最終列車』 講談社 (2021/12/8) 328ページ ★
『滝山コミューン一九七四』 講談社文庫 (2010/6/15) 343ページ ※解説:桐野夏生

『増補新版 レッドアローとスターハウス もうひとつの戦後思想史』 新潮選書 (2019/5/20) 442ページ ★ ●未読

■森達也 ・・・話題になった新作、他
『千代田区一番一号のラビリンス』 現代書館 (2022/3/20) 382ページ ★

『日本国憲法』 太田出版 (2007/1/30) 276ページ ★

■島田雅彦 ・・・東京新聞連載で読んでいたものを、単行本でいっきに
『パンとサーカス』 講談社 (2022/3/22) 597ページ ★

■朝倉喬司 ・・・この人にも関心がある
『戦争の日々―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント―(上)』 現代書館 (2009/1/25) 230ページ ★
『戦争の日々―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント―(下)』 現代書館 (2009/12/8) 238ページ ★

■左巻健男 ・・・何で知ったのか覚えていないが、たまにはこういう本も面白い
『こんなに変わった理科教科書』 ちくま新書1644 (2022/4/10) 257ページ

■藤原辰史(ふじはら・たつし) ・・・この人にも注目、読みたい本がたくさんある
『食べるとはどういうことか 世界の見方が変わる三つの質問』 農文協 (2019/3/1) 175ページ ★
『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』 中公新書2451 (2017/9/25) 270ページ
『[決定版]ナチスのキッチン 「食べること」の環境史』 共和国 (2016/7/10) 477ページ ●未読

『カブラの冬 第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆 レクチャー第一次世界大戦を考える』
 人文書院 (2011/1) 154ページ ●未読

■岡崎武志 ・・・ひさしぶりに読んだオカタケさんの近刊
『ドク・ホリディが暗誦するハムレット――オカタケのお気軽ライフ』 春陽堂書店 (2021/11/20) 238ページ ★

■南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ) ・・・岡崎武志さんつながり
『古本マニア採集帖』 皓星社 (2021/12/15) 271ページ ★

■河田桟 ・・・与那国島在住、馬と猫と暮らす人
『ウマと話すための7つのひみつ』 偕成社 (2022/10) 47ページ ★ ※池澤夏樹さんのネット記事で知った

■高野秀行 ・・・私の好きな高野さんの新刊、大ヒットして入手困難だった
『語学の天才まで1億光年』 集英社インターナショナル (2022/9/10・2022/10/26第3刷) 334ページ ★

高野秀行: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat21181618/index.html

■向井透史(むかい・とし/古書現生店主) ・・・これもネットと新聞書評で知った

『早稲田古本劇場』 本の雑誌社 (2022/9/5) 377ページ ★

東京新聞書評(評者:内澤旬子) 2022年10月30日 掲載
<書評>『早稲田古本劇場』向井透史(とうし) 著 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
https://www.bookbang.jp/review/article/743416

■内澤旬子 ・・・私が大好きな内澤旬子さんの新刊、大ヒットらしい
『カヨと私』 本の雑誌社 (2022/7/16) 252ページ ★

<書評>『カヨと私』内澤旬子 著 2022年9月25日 (評者:服部文祥
https://www.tokyo-np.co.jp/article/204405

内澤旬子: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat21379484/index.html

【関連本】
ヴェルマ・ウォーリス/亀井よし子(訳)
『ふたりの老女』 草思社 (1995/2/20) 190ページ ★ ※内澤旬子さんのツイッターで知った

宮田珠己/網代幸介(画)
『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』 大福書林 (2021/10/10) 367ページ
 ※内澤旬子さんのブログで知った ●未読

■群ようこ/牧野伊三夫(挿画)
『かもめ食堂』 幻冬舎文庫 (2008/8/10) 216ページ

■小松由佳
『人間の土地へ』 集英社インターナショナル (2020/9/30) 251ページ ※再読

小松由佳: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat24342002/index.html

■関野吉晴
『えほんのひろば 草原の少女プージェ』 小峰書店 (2006/12/26) 35ページ ★

関野吉晴: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat21692270/index.html

■金井真紀(文・絵) ・・・今年の収穫
『日本に住んでる世界のひと』 大和書房 (2022/11/30) 239ページ ★

『世界はフムフムで満ちている――達人観察図鑑』 ちくま文庫 (2022/6/10) 237ページ

■奥野克巳 ・・・この本もネットで知った
『一億年の森の思考法 人類学を真剣に受け取る』 教育評論社 (2022/5/26) 279ページ ★

■野田サトル ・・・今年、シリーズ完結を機に、一気読み
『ゴールデンカムイ 1』 集英社 (2015/1/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 2』 集英社 (2015/2/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 3』 集英社 (2015/5/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 4』 集英社 (2015/8/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 5』 集英社 (2015/12/23) ※再読
『ゴールデンカムイ 6』 集英社 (2016/2/23) ※再読
『ゴールデンカムイ 7』 集英社 (2016/4/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 8』 集英社 (2016/8/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 9』 集英社 (2016/11/23) ※再読
『ゴールデンカムイ 10』 集英社 (2017/3/22) ※再読
『ゴールデンカムイ 11』 集英社 (2017/8/22) ※再読
『ゴールデンカムイ 12』 集英社 (2017/12/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 13』 集英社 (2018/2/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 14』 集英社 (2018/6/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 15』 集英社 (2018/9/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 16』 集英社 (2018/12/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 17』 集英社 (2019/3/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 18』 集英社 (2019/6/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 19』 集英社 (2019/9/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 20』 集英社 (2019/12/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 21』 集英社 (2020/3/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 22』 集英社 (2020/6/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 23』 集英社 (2020/9/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 24』 集英社 (2020/12/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 25』 集英社 (2021/3/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 26』 集英社 (2021/6/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 27』 集英社 (2021/9/22) ※初読
『ゴールデンカムイ 28』 集英社 (2021/12/22) ※初読
『ゴールデンカムイ 29』 集英社 (2022/4/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 30』 集英社 (2022/6/22) ※初読
『ゴールデンカムイ 31』 集英社 (2022/7/24) ※初読

【関連本】
中川裕
『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』 集英社 (2019/3/20) ※再読 (初読:2019/5/13)

瀬川拓郎(監修)
『カラー版 1時間でわかるアイヌの文化と歴史』 宝島社新書 (2019/6/24) 223ページ

アイヌ民族・アイヌ語: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat20297702/index.html

山岳関係、旅の本

高橋大輔
『剱岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む』 朝日新聞出版 (2020/8/30) 259ページ ★

山と渓谷社(編)
『日本人とエベレスト―植村直己から栗城史多まで』 山と渓谷社 (2022/3/1) 446ページ ★

近藤謙司
『ぼくは冒険案内人』 山と渓谷社 (2014/12/5) 237ページ ★

『近藤謙司とシミュレートするエベレスト登山 Kindle版』 ゴマブックス (2014/4/25) 115ページ
下川裕治
『「おくの細道」をたどる旅 路線バスと徒歩で行く1612キロ』 平凡社新書999 (2022/3/15) 235ページ ★

服部文祥
『You are what you read. あなたは読んだものにほかならない』 本の雑誌社 (2021/2/22) 261ページ ★

服部文祥: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat22703334/index.html

『お金に頼らず生きたい君へ 廃村「自力」生活記』 河出書房新社(14歳の世渡り術シリーズ)
(2022/10/30) 270ページ ※10/21「地球永住計画」トークイベント会場で購入(著者サイン本)


ジョン・クラカワー/梅津正彦(訳)
『空へ 悪夢のエヴェレスト 1996年5月10日』 ヤマケイ文庫 (2013/8/1) 509ページ

トミー・コールドウェル/堀内瑛司(訳)
『ザ・プッシュ ヨセミテ エル・キャピタンに懸けたクライマーの軌跡』 白水社 (2019/8/15) 449ページ ★

石川直樹
『 補新版 いま生きているという冒険』 新曜社 (2019/5/15) 311ページ ★

『ぼくの道具』 平凡社 (2016/1/20) 217ページ ★
アレックス・オノルド/デイビッド・ロバーツ/堀内瑛司(訳)
『ALONE ON THE WALL 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡』 山と渓谷社 (2016/3/5) 342ページ ★

以上、全部ではないが、主な本をあげてみた。
今日12/25現在、今年読んだ本は130冊
コミックで稼いでいるが、これは私の年間新記録。

そして、来年にかけて読破したいのが、北方謙三版「水滸伝」(全19巻)。
20代の頃から、何度も読もうとしたが果たせず。
「水滸伝」にはいろいろな版があるようだが、物語性に富んでいそうな北方版を選んでみた。
中古の文庫本を、とりあえず2冊買ってきて読み始めた。
こういう大河小説を読み通すには、気合と根気が必要。

北方謙三
『水滸伝 一 ―― 曙光の章』 集英社文庫 (2006/10/25) 388ページ ※解説:北上次郎

<北宋末、中国。砂塵をまいて、泥河をこえて、英雄たちが奔る! 原典を読み込み大胆に再構築、中国古典英雄譚に新たな生命を吹き込んだ、21世紀に蘇る決定版「水滸伝」いよいよ登場!> Amazonより

北方謙三: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat24379193/index.html

【了】

 

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2011年7月25日 (月)

【読】気になっていた本を

『千年震災』(都司嘉宣/ダイヤモンド社)を読みはじめてすぐ、内澤旬子さんの気になっていた本を思いだし、図書館から借りて読んでいる。
イラストも文章も味があって、私の好きな人だ。

『センセイの書斎』 ―イラストルポ「本」のある仕事場―
 内澤旬子 文・イラストレーション
 幻戯書房 2006年 163ページ 2200円(税別)
 河出書房新社(河出文庫) 2011年 240ページ 788円(税別)

文庫の装幀の方が楽しい。
私が借りたのは単行本(左)。
本日、読了。 

 

同時に何冊かの本を読むことに、なんとなく抵抗があったのだが、内澤さんのこんな言葉を読んで気が楽になった。
好きなように読めばいいのだ。

<本にはいろんな読み方がある。枕元に一冊だけ置いて、毎晩毎晩その本だけを繰り返して読んだっていいし、一度に五冊を同時進行で読んだっていい。そんなこと誰かに習う必要もない。> (内澤旬子 『センセイの書斎』)

もう一冊は、これから読むところ。

『身体のいいなり』 (からだのいいなり)
 内澤旬子
 朝日新聞出版 2010年 215ページ 1300円(税別)

内澤さんは、乳癌で「二度の部分切除を経て乳腺全摘出、そして乳房再建と手術を重ね」た経験をもつ。
(38歳でステージIの乳癌に罹患)
その体験記なのだが、いわゆる「闘病記」にはしたくなかったという。

以下、「はじめに」より。

<今年で43歳になった。この数年の身辺変化のようなものを書いてほしいと言われ、しばらく迷っていた。書くことがないのではない。この五年の間に私の身体(からだ)とそのまわりに起きたことはとても奇妙で、自分でもおもしろいと思う。……癌治療について書くのを避けることはできない。だが、いわゆる闘病記になってしまうことは避けたかった。>

<……癌に罹患し、治療をすることのすべてを不治の病と闘うと表現する人がとても多い。しかしそれはあくまでもステージIII以上に進行した状態の癌の治療に向き合う場合だろう。初期癌の治療で「闘う」と言われても、気恥ずかしく申し訳ない気持ちで一杯になる。>

<……現在にいたるまで、癌と闘っていると感じたことはほとんどない。……それなりに大変な思いはした。けれども手術のひとつひとつ自体は盲腸並みに簡単なものだったように思う。盲腸の手術を受けたことがないから本当のところはわからないのだが。ともかく世の中にはもっともっと苦しい、それこそ文字通りの「闘病生活」を送っている人がたくさんいる。それに比べたら私の癌なぞ……>

さらに、内澤さんの真骨頂は、次のように言ってのけるところにある。
 「人間なんてどうせ死ぬ」
だから、私はこの人が好きなのだ。

<それになにより顰蹙を買うことを承知で言わせていただくと、人間なんてどうせ死ぬし、ほっとけばいつか病気に罹る可能性の方が高い生き物なのに、なぜみんな致死性の病気のことになると深刻になり、治りたがり、感動したがり、その体験談を読みたがるのかが実のところ自分にはよくわからないのだ。そんな体験談なぞ癌になる前から読みたいと思ったこともない。>

それでもなお、このような体験談を書こうという気になったのは、
<癌治療そのものだけではなく、今現在の自分が癌以前の自分と比べて異常に元気になってしまった経緯もすべて書いてほしいと言われた>
からだという。
あとは、読んでのお楽しみだ。


内澤旬子さんのブログ
 内澤旬子 空礫絵日記
 http://kemonomici.exblog.jp/

私の好きな本は、下の二冊。
『世界屠畜紀行』(2007年/解放出版社)は文庫になったんだな(2011年5月/角川文庫)。
『東方見便録』(1998年/小学館)も文庫化されているが(2001年/文春文庫)、新本は在庫切れ。私は古本を手に入れた。

 
 

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2009年10月23日 (金)

【読】高野秀行さんの新刊

まったく偶然に、こんな本を書店でみつけた。
時間つぶしに立ち寄った、上野のTSUTAYAでのこと。
高野さんの新刊がでていたことも知らず、旅行コーナーの棚をなにげなく見ていたら目にはいったのだ。
こういうことって、あるんだな。

Takano_asia_uma_2『アジア未知動物紀行』
 ― ベトナム・奄美・アフガニスタン ―
 高野秀行 講談社
 2009/9/1発行 260ページ 1400円(税別)

書棚から抜きだし、手にとって、しゃれた装幀に感心。
案の定、内澤旬子さんのイラストだった。

高野さんお得意の、UMA(ユーマ=未確認不思議動物)ものである。
電車のなかで「あとがき」を斜め読みしていると、興味ぶかい話が書かれていた。
柳田國男の『遠野物語』――高野さんが書くものの雰囲気からすると、意外な人物だ。
読書家の高野さんのことだから、この名著を読んでいてとうぜんなのだが。

<この三つの旅で、途中から私の頭にこびりついて離れなかったのは、柳田國男『遠野物語』だった。>

なんだ、なんだ、と驚きながら続きを読む。

<『遠野物語』は民俗学的な記録ではない。遠野出身の一青年が自分の知っている話を柳田に語って聞かせたものだ。天狗や川童(かっぱ)、幽霊などの物の怪や怪異現象がふんだんに登場するが、これはみな昔から伝わる話でなく、柳田國男が生きていたのと同時代の話である。>

ふん、ふん、そのとおりだが……。

<私は最初に読んだとき、「現地に行けばいいのにな」と思った。現場第一主義で、一次情報しか信用しない私なら絶対にそうする。ところが柳田は動かなかった。ただ青年の語る山の人の話を簡潔にまとめた。そして序文に『願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ』と書いた。/不思議な話を、不思議なままに読者の前に放り出したのである。>

このあたりが高野さんの真骨頂だと思うので、もう少し引用する。

<だが、柳田はその後、怪物や怪現象を民俗学的に研究するようになる。山の人の怖さを解体し、自分たち平地人の知識で理解しようとした。…(略)…どうやら、柳田國男は日本中の村々を武装解除して回り、二度と『遠野物語』の世界に帰ることはなかったようである。>

うーん。
鋭い「柳田批判」で、的を射ているし、私も同感だ。
続けて、高野さんは 「私は柳田國男と逆の道をたどっているような気がする」 と書いている。

高野さんが書くものの面白さは、徹底した 「現場主義」 というか、とにかく現地で体験してから考えるところにある。
読んでいて、わくわくするのだ。

楽しみな本ではある。
今日の収穫。

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2009年6月28日 (日)

【読】読書日誌 2009年上半期

6月も残すところあと二日。
今年は、一年間に100冊読もうと目標をたてた。
たんなる目安ではあるが、それぐらいのペースで読もうと思ったのだ。

今年も半分になるので、リストアップしておこうと思う。
自分のための記録である。

最後の49冊目は、現在進行中。

今年出会ったのは、高野秀行さんと、内澤旬子さん。
服部文祥さんという魅力的な人に出会うこともできた。
読みたい本はたくさんあるけれど、今の生活スタイルの中で読めるのはこれぐらいなんだろうな。

Hattori_survival_climberUchizawa_sekai_tochiku_kikou_2Takano_kaijuuki_3_2『サバイバル登山家』
 服部文祥 みすず書房
 ※未読
『世界屠畜紀行』
 内澤旬子 解放出版社
『怪獣記』
 高野秀行 講談社





1月
宮部みゆき 『あやし』 角川文庫
山田順子 『なぜ、江戸の庶民は時間に正確だったのか?』 実業之日本社
水木しげる 『猫楠』 角川文庫
水木しげる 『水木しげるのラバウル戦記』 ちくま文庫
石川直樹 『いま生きているという冒険』 理論社
水木しげる 『コミック昭和史①』 講談社文庫
船戸与一 『満州国演義1』 新潮社
船戸与一 『満州国演義2』 新潮社

2月
船戸与一 『満州国演義3』 新潮社
船戸与一 『満州国演義4』 新潮社
上笙一郎(かみ・しょういちろう) 『満蒙開拓青少年義勇軍』 中公新書
船戸与一 『満州国演義5』 新潮社
平岡正明 『日本人は中国で何をしたか』 潮文庫
平岡正明 『石原莞爾試論』 白川書院

3月
朝日新聞山形支局 『聞き書き ある憲兵の記録』 朝日文庫
澤地久枝 『わたしが生きた昭和』 岩波現代文庫
澤地久枝 『もういとつの満州』 文藝春秋社
赤塚不二夫 『これでいいのだ 赤塚不二夫自叙伝』 文春文庫
野島博之 『謎とき 日本近現代史』 講談社現代新書
森史朗 『松本清張への召集令状』 文春新書
高野秀行 『ミャンマーの柳生一族』 集英社文庫
船戸与一 『河畔に標なく』 集英社(2006年)
高野秀行 『アヘン王国潜入記』 集英社文庫

4月
高野秀行 『世界のシワに夢を見ろ!』 小学館文庫
高野秀行 『ワセダ三畳青春期』 集英社文庫
高野秀行 『幻獣ムベンベを追え』 集英社文庫
美しい日本の常識を再発見する会編 『日本人は桜のことを何も知らない』 学研
盛口満 『わっ、ゴキブリだ!』 どうぶつ社(2005年)
植松黎 『毒草を食べてみた』 文春新書
エマニュエル・ドンガラ/高野秀行訳 『世界が生まれた朝に』 小学館
高野秀行 『メモリークエスト』 幻冬舎
蔵前仁一 『ホテルアジアの眠れない夜』 凱風社
高野秀行 『異国トーキョー漂流記』 集英社文庫
高野秀行 『怪しいシンドバッド』 集英社文庫

5月
高野秀行 『巨流アマゾンを遡れ!』 集英社文庫
高野秀行 『西南シルクロードは密林に消える』 講談社
高野秀行 『神に頼って走れ!』 集英社文庫
高野秀行 『怪魚ウモッカ格闘記』 集英社文庫
高野秀行 『辺境の旅はゾウにかぎる』 本の雑誌社
高橋秀実(たかはし・ひでみね) 『素晴らしきラジオ体操』 小学館文庫
斉藤政喜/内澤旬子(イラスト) 『東方見便録』 小学館(1998年)

6月
内澤旬子 『世界屠畜紀行』 解放出版社(2007年)
斉藤政喜/内澤旬子(イラスト) 『東京見便録』 小学館(2009年)
高野秀行 『怪獣記』 講談社(2007年)
服部文祥 『サバイバル!』 ちくま新書(2008年)
アルセーニエフ/長谷川四郎訳 『デルスウ・ウザーラ』 東洋文庫(1965年)
内澤旬子 『おやじがき』 にんげん出版(2008年)
平岡泰博 『虎山(こざん)へ』 集英社(2003年)
スティーヴン・ヘレロ 『ベア・アタックス I』 北海道大学図書刊行会(2000年)

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2009年6月19日 (金)

【読】おやじがき(内澤旬子)

一週間前から読んでいる 『デルスウ・ウザーラ』 が、なかなか手ごわい。
面白いのだが、動植物や鉱物の名前、地名(どれもカタカナ語)がたくさんでてきて、つまりは、情報量が多いわりにはイメージがわかない部分が多く、疲れる。
せめて、詳細な現地地図がついているといいのに、と思う。

それでも、後半にさしかかり、沿海州の探検行も佳境にはいってきたので、だんだん入り込めるようになってきた。
無事に読み終わったら、感想文を書こう。

さて、そんな厳しい読書生活の気分転換に、こんな軽~い本を読んだ。
20分もあれば読みおえてしまうような軽さがいい。

Uchizawa_oyajigaki『おやじがき』  内澤旬子 (絵と文)
  にんげん出版  2008/12/1発行
  82ページ  1300円(税別)

ちょっと割高感のある本だが、内澤さんの絵と文章がいい。
「絶滅危惧種」「中年男性圖鑑」とサブタイトルにあるように、巷に生息する(内澤さんが電車の中や街でみかけた)おやじたちの肖像である。

身につまされるところも多いけれど、腹をかかえて笑ってしまう。
そうそう、こういうおやじって、いるよな。
ほら、そこにも、ここにも。


<現代の人物絵師・内澤旬子が電車で、喫茶店で、路上で遭遇した哀しくも愛らしい「おやじ」の観察記録>
<すだれ、耳毛、肉だまり、大あくび……カレセン幻想を抱いている女子は、この本でリアルなおやじの姿を正視された方が良いでしょう/男は枯れるのではなく、煮詰まってゆく……濃厚なおやじ汁が余白から滴っています  辛酸なめ子(漫画家、コラムニスト)> (本書帯)

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2009年6月 7日 (日)

【読】雲取山の公衆便所

内澤旬子さんの 『世界屠畜紀行』 (解放出版社 2007年)を読みおえて、斉藤政喜・内澤旬子コンビによる 『東方見便録』 の続編、『東京見便録』 (文藝春秋 2009年) を読んでいる。

Saitoh_tokyo_kenbenroku『東京見便録』
 斉藤政喜(文)・内澤旬子(イラスト)
 文藝春秋 2009/3/15発行
 174ページ 1429円(税別)

前作 『東方見便録』 ほどのワイルドさはないが、身近な東京都内のトイレ事情が興味ぶかい。
たとえば、二子玉川駅から徒歩20分の場所にある「岡本公園民家園」の古民家の厠(かわや)など、行ってみたくなるほど魅力的だ。

まだ読みはじめたばかりなのだが、第二章「現役ですッ」に、雲取山山頂の公衆便所が紹介されていて、懐かしい。

東京都の最高峰 雲取山(くもとりやま・2017m)の山頂には、立派な避難小屋が建っていて、その横に公衆便所がある。
私の記憶にあるのは古いときのものらしく、避難小屋の改築後に公衆便所も改築されたのかもしれない。
展望のいい場所である。
水場こそないが(北側の雲取山荘の水場まで下って汲んでくる)、山頂の立派な避難小屋には私も泊まったことがある。

 ※当時の避難小屋の写真がどこかにあるはずだが、
  探しだすことはむずかしく(整理が悪いので)あきらめた。
  私のWebサイト(休眠状態だが)に、雲取山について書いたことがある。

  晴れときどき曇りのち温泉 > 山岳展望写真館
   http://yamaoji.hp.infoseek.co.jp/panorama.html


この本、例によって、内澤さんのイラストが楽しい。

雲取山、また登ってみたいなぁ……。

Saitoh_tokyo_kenbenroku_p45

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2009年5月31日 (日)

【読】「屠畜」ということ

内澤旬子さんがイラストを描いている 『東方見便録』 (斉藤政喜著/小学館)は、とても面白かった。
さきほど読了。

続いて、内澤さんじしんの文章とイラストによる、『世界屠畜紀行』 (解放出版社 2007年)にとりかかる。

Uchizawa_sekai_tochiku_kikou『世界屠畜紀行』 内澤旬子
 解放出版社 2007/2/10発行
 367ページ 2200円(税別)

「屠畜」 とは耳慣れない言葉だが、「屠殺」 を使わなかった理由を内澤さんはこう書いている(まえがき)。

<生きた動物を肉にするには、当然殺すという工程が含まれるのだけど、殺すということばにつきまとうネガティブなイメージが好きでなかったことと、…(略)…なによりも殺すところは工程のほんのはじめの一部分でしかない。そこからさまざまな過程があって、やっと肉となる。そう、ただ殺しただけでは肉にならないのだということを、わかってもらいたくて……>

この 「屠畜」 という言葉の由来は、「案外古く、明治期の専門書にはすでに登場している」 のだそうで、これを機会に 「屠畜」 という言葉が広まればいいな、と内澤さんは思っているという。

彼女がなぜこういう紀行を思いたったのか。
それは、モンゴル、中部ゴビの大草原に点在するゲル(遊牧民のテント)に滞在していたとき、ゲルの脇で夕食のもてなしのために、女性が数人がかりで羊の内臓を洗っていたのを見て、衝撃を受けたことからだという。

<血で赤く染まった鍋に浮かぶ長い腸を見てぐわんと衝撃を受けた。すごい! これをこれから食べるんだ。そうだよな。肉って血が滴るものなんだよな。グロテスクだとか、羊がかわいそうだとか、そんなところまでまったく気が回らなかった。>

この内澤さんという若い女性が(1967年生まれ)、斉藤政喜さん言うところの 「タフな女性」 だと私も思うのは、次のような部分だ。

<なによりもその辺を走っている羊が、鍋にちゃぷちゃぷ浮かぶ内臓や肉になるまでの過程を見損なってしまったことが悔しくてたまらない。どうやるのかな、羊の中身ってどうなってんのかな。肉ってどうついてんのかな。頭の中はもうそれだけでいっぱい。>

そして、いつも肉を食べているのに、これまでは 「肉になるまで」 のことをまるで考えたことがなかったのは、なぜなんだろう、と考える。

<日本の屠畜についての本はほとんどなかった。肉になるまでの過程について、まるでなにも想像してほしくないかのようだった。>


ここでひとつ、屠畜に携わる人々への 「差別」 という問題がある。
これについては、次のように書いている。すごい。

<このような状況は、日本でこの仕事にかかわる人々がずっと昔から差別を受けてきたことと、深く関係してるんだということはわかっていた。差別発言や嫌がらせを恐れる人が多いため、作業中の顔が映ったり写真や映像を公に出すことが非常にむずかしいのだということも。>

<けれども、日本人が肉をおおっぴらに食べられるようになって、もう150年も経ってるんだもの。いい加減、忌まわしいだの穢らわしいだの思う人も減って、私のようにどうやって肉を捌いているのか、単純に知りたいと思う人も、それなりに増えてるんじゃないだろうか。>

<第一この忌まわしいだの穢らわしいだのという、食べものに似つかわしくないくらい感情って、日本以外の国や地域の人たちも持ってるものなんだろうか。もっとあっけらかんとやっている国もたくさんあるはず。彼らと私たちではなにがどう違うんだろう。>


ということで、内澤さんの 「世界屠畜紀行」 につきあってみようと思う。
私も、日頃じぶんが口にしている畜肉が、どうやって私のもとまで来るのか知りたいという欲求を強く持っていた。
屠畜をタブー視したり、考えようとしない(見ないふりをする、見せない)この国の人々(私もその一員だが)のありようにも、強い不満があった。

この人は、あっけらかんとしていて、でも、芯の強い、精神的にタフな人だと思うので、なかなか楽しみなのだ。

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2009年5月30日 (土)

【読】楽しみにしていた本が届いた

楽しみにしていた本が、今日、書店に届いたので受けとってきた。
よく利用する 「e-hon」 サイトで注文したもの。
注文してから一週間もかかったのは、マイナーな出版社だからだろうか。

Uchizawa_sekai_tochiku_kikou_2『世界屠畜紀行』 内澤旬子
 解放出版社 2007/2/10発行
 367ページ 2200円(税別)

 解放出版社ホームページ JINKEN BOOK
  http://www.kaihou-s.com/

先に紹介した高野秀行さんの 『辺境の旅はゾウにかぎる』 (本の雑誌社 2008年)で知った本だ。
高野さんと内澤さんの対談も掲載されていて、本書のことも話題になっていた。
内澤旬子さんの行動力には頭がさがる。

― 『辺境の旅はゾウにかぎる』 高野秀行・内澤旬子 対談 より ―

高野 そもそも屠畜の現場を取材したい気持ちがスパークしたのは、何がきっかけだったんですか。
内澤 最初は手製本から入ったんです。素材の一つである皮革に興味を持って、皮なめしの現場を取材しようとしたんですけどダメで。出口がダメなら入り口から攻めたらどうかと、原皮を供給する屠畜場を取材しようと考えたのが始まりです。


目次をざっとみると、韓国、バリ島、エジプト、イスラム世界、チェコ、モンゴル、それに沖縄、東京・芝浦屠場と、世界を股にかけた取材。

いま読んでいる 『東方見便録』 (斉藤政喜さんとの共著・小学館) でわかったことだが、内澤さんはじつに好奇心旺盛で、ものごとに偏見をもたない人である。
リクツ抜きに、まずじぶんの目で見て、体験して、それから考える、そういうタイプの好ましい人だと感じた。

ペーパーバックの軽い(内容ではなく重量が)本ながら、愛着のわく本の造りだ。
内澤さんのイラストがじつにいい(左の画像、表紙イラストもそうだ)。

楽しみな本である。



まったく関係ないけど、解放社のサイトにこんなタイトルの本があった。
いっちゃん
二宮由起子・文  村上康成・絵
 http://www.kaihou-s.com/book_data07/978-4-7592-2240-1.htm

『世界屠畜紀行』 はこちら
 http://www.kaihou-s.com/book_data07/978-4-7592-5133-3.htm

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2009年5月29日 (金)

【読】「もの出す人々」から見たアジア考現学

昨日から読んでいる本のサブ・タイトルである。
「考現学」の字が、MS-IMEのかな漢字変換ではでてこない。
やはり造語なのだろうか。
南伸坊とか、あのあたりの人たちが言いだした言葉かもしれない。
(『ハリガミ考現学』 なんて本があって、私は好きだったが)

「もの出す人々」 とは、言いえて妙である。
椎名誠氏は、「くう、ねる、のむ、だす」 と言ったが、人間にとって基本的でたいせつなことなのだ。

Saitoh_toho_kenbenroku『東方見便録』
  ― 「もの出す人々」から見たアジア考現学 ―
 斉藤政喜(文)/内澤旬子(装幀、イラスト、本文レイアウト)
 小学館 1998年 302ページ 1500円(税別)

著者の斉藤政喜氏は、シェルパ斉藤というペンネームだった。
そこで思いだした。
ずっと前に、『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』 というこの人の本を読んだことがあったのだ。
自称、バックパッパー。
八ヶ岳に自らの手で家を建てて住んでいるという。
(この本の中でも、八ヶ岳の家での排泄物処理について触れていて興味ぶかい)

斉藤氏の本文もさることながら、文をそえたイラストを描いている内澤さんが、とてもいい。
彼女の細密なイラストと文をコピーして、ここに載せたいぐらいだ。
この本のカバーに印刷されている澄まし顔の写真(美形である)からは考えられないほど、ユーモアがあり、大胆さを持ち合わせた旅慣れた人のようで、ファンになってしまいそうだ。
内澤さんについては、いずれあらためて書くこともあるだろう。


全部で八章からなる。
それぞれ、中国、サハリン、インドネシア、ネパール、インド、タイ、イラン、韓国と、アジア圏を二人で歩きまわって、ひたすらトイレ事情を見てまわるという、考えようによっては贅沢な旅。

アジアのトイレ事情は、ひと昔まえの日本の厠(かわや)を思いださせて、なにやらほっとする。
いまやシャワー付き水洗便所の便利さに慣れきって、すっかり堕落してしまったわが身が悲しくなる。
こどもの頃、田舎の便所は外にあって、木でつくられた簡単なものだった。
今でも古い山小屋などでは排泄物の行方とその後の処理方法が目に見えて、人間的とも言えるが、水洗便所でジャーっと流してしまっているようでは、じぶんの出したブツがどこへ行ってどう処理されるのか、その行方を思いやることもなくなってしまった……。


本書の各章の節タイトルには、「第1便」「第2便」……と振られていて、なにやらおかしい。
この「便」はあくまでも「ベン」と読むべし。

沢木耕太郎の名著 『深夜特急』(新潮社 1986年) は、「第一便 黄金宮殿」「第二便 ペルシャの風」「第三便 飛光よ、飛光よ」 (ビンである)というぐあいで、言ってみれば芥川賞的世界だが、こちらは、なんたって 「エンタメ・ノンフ」 、直木賞の世界である。

節のタイトルのいくつかを紹介しておこう。
これだけでも、この本の楽しさが伝わるのではないかと思うので。

(中国) 流しそうめんスライダー/上海特製簡易式トイレ/天安門広場に273の穴/薄暗がりに男の尻3つ/不思議便座と高齢化社会/焚き火式集団放尿の図……
(サハリン) 木製便座にアジアを見た/個室と美女とバケツと/北の和式便器は治外法権
(インドネシア) 水と左手で尻を洗う法/全方位開放トイレの恐怖/神の御許で排泄すれば/足元グラグラ止まり木式/ウンチリサイクルは魚で/黄色いウンチ魚を食う
(ネパール) ブタトイレを求める旅へ/思い出のあの白いウンチ/空港の女子トイレ潜入/枯れ葉トイレの安らぎ……


半分ほど読んだところ。
こういうノンフィクションはいいものだ。
電車通勤の友。


― e-honサイトより ―

斉藤 政喜 (サイトウ マサキ)        
1961年長野県生まれ。一人旅と野宿を愛するバックパッカー&作家。八ヶ岳山麓に自らの手で家を作り、田舎暮らしと旅暮らしの日々を過ごしている。著書に、「犬連れバックパッカー」(小学館)「野宿の達人、家をつくる」(地球丸)「シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅」1~5(小学館文庫)など。
内沢 旬子 (ウチザワ ジュンコ)        
1967年神奈川県生まれ。東アフリカ、イスラム諸国を始め、各国の古本、装飾、様々な道具を収集して巡るイラストルポライター。共著に下川裕治編「アジア路地裏紀行」(徳間文庫)「遊牧民の建築術」(INAX出版)がある。

この本の文庫版はこちら
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000030808915&Action_id=121&Sza_id=Z2
東方見便録 「もの出す人々」から見たアジア考現学
文春文庫
斉藤政喜/著 内沢旬子/著
出版社名 文芸春秋
出版年月 2001年4月
ISBNコード 978-4-16-715717-3
(4-16-715717-9)
税込価格 630円
頁数・縦 429P 16cm
分類 文庫 /日本文学 /文春文庫
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― Wikipediaより ―

考現学(こうげんがく、the study of modern social phenomena)とは、現代の社会現象を場所・時間を定めて組織的に調査・研究し、世相や風俗を分析・解説しようとする学問。考古学をもじってつくられた造語、モデルノロジー(modernology)。
考現学は、1927年(昭和2年)、今和次郎が提唱した学問である。今はそれまで柳田國男に師事し、民俗学研究の一環として民家研究などで業績を挙げていたが、本人の語るところによると考現学研究のため柳田に「破門」されたという。その研究のはじまりは、1923年(大正12年)の関東大震災後の東京の町を歩き、バラックをスケッチしたことからであった。
これを機に新しく都市風俗の観察の学問をはじめ、1925年(大正14年)には「銀座街風俗」の調査をおこなって雑誌『婦人公論』に発表した。「考現学」の提唱は、1927年の新宿紀伊国屋で「しらべもの(考現学)展覧会」を催した際のことであった。1930年(昭和5年)には『モデルノロジオ』が出版されている。今の提唱した「考現学」の発想から、生活学、風俗学、そして路上観察学などが生まれていった。

「考現学」関連図書
泉麻人『「お約束」考現学』ソフトバンククリエイティブ<SB文庫>、2006年
鷲田清一『てつがくを着て、まちを歩こう ファッション考現学』筑摩書房<ちくま学芸文庫>、2006年
辰巳渚『なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか ミステリアス・マーケット考現学』光文社<Kobunsha paperbacks>、2004年
斉藤政喜・内沢旬子『東方見便録 「もの出す人々」から見たアジア考現学』文藝春秋<文春文庫>、2001年
江夏弘『お風呂考現学 日本人はいかにお湯となごんできたか』TOTO出版、1997年

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2009年5月28日 (木)

【読】エンタメ・ノンフの面白本

エンターテインメント・ノンフィクション、略して「エンタメ・ノンフ」。
ずいぶん思いきった略称だけれど、これは高野秀行さんの命名。
肩のこらない、ノンフィクション界のいわば直木賞対象となるような本を指す。

高野秀行 『辺境の旅はゾウにかぎる』 (本の雑誌社 2008年)の中で、「エンタメ・ノンフ」の面白本がたくさん紹介されていたのを読んで、手にはいりやすいものを何冊か入手した。

どんな本が書評でとりあげられているか、すこし前に書いた。

 【読】この本が面白そうだ(書物を知る楽しさ)
  2009年5月23日
 http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-ee20.html

足(古本屋=BOOK OFF)とネット販売を駆使してあつめた本が、こんなにも。

 『素晴らしきラジオ体操』/高橋秀実 (小学館文庫)
 『魔境アジアお宝探索記』/島津法樹 (講談社+α文庫) ※続編も入手
 『秘境駅へ行こう!』/牛山隆信 (小学館文庫) ※続編も入手
 『KAMIKAZE神風』/石丸元信 (文春文庫)
 『世界屠畜紀行』/内澤旬子 (解放出版社) ※到着待ち

このほかに、内澤旬子さんのイラストにひかれて、こんな本も。

 『東方見便録』/斉藤政喜(イラスト 内澤旬子) (小学館)
 『東京見便録』/斉藤政喜(イラスト 内澤旬子) (小学館)

さらに、高野さん推薦の 『サバイバル登山家』/服部文祥 (みすず書房) の関連本。

 『サバイバル!』/服部文祥 (ちくま新書)

どれも読むのがたのしみで、ワクワクする本ばかり。
さっそく読んだのがこれ。

『素晴らしきラジオ体操』
 高橋秀実(たかはし・ひでみね)
 小学館文庫 2002/9/1発行
 264ページ 552円(税別)
 ※のち草思社文庫

私たちがこどもの頃からやっていたラジオ体操(今でも日本全国で熱心に行われている)が、こんなにも奥深いものとは思わなかった。
1925年(大正14年)、ニューヨーク。
生命保険会社がはじめた 「ラジオで体操する」 が起源だったとか、戦前・戦中の日本での 「国民体操」 とか、戦後の占領軍支配下での 「民主的な」 ラジオ体操の復活だとか、興味ぶかい話が独特の語り口で綴られていて、後半はいっきに読んでしまった。

ラジオ体操をやりたくなる気分にさせる本だ。

続いて読みはじめたのがこれ。

『東方見便録』
 斉藤政喜(文)・内澤旬子(イラスト)
 小学館 1998/5/1発行
 302ページ 1500円(税別)
 ※のち文集文庫

単行本、文庫版ともに絶版(または版元品切れ)。
手に入れるのに苦労した。
Amazonでは、古書に驚くほど高値がついていたため、「日本の古本屋」 というネット販売サイトで古書店に注文。
代金を先に振り込む方式なのでめんどうだったが、届いたときは嬉しかった。
古本だが、きれいな状態だった。

 日本の古本屋
  https://www.kosho.or.jp/servlet/top

タイトルがふるっている。
「東方見聞録」 ならぬ 「見便録」。
ウンチ(アジア各国のトイレ事情)の話である。
このての話が、じつは大好きなのだ。

食事、排泄、睡眠。
この三つがニンゲンの生きていくことの基本で、その他は皆、「余分」なことだと私は思う。

斉藤政喜さんは、以前、雑誌「BE-PAL」で連載を読んだことがある。
小学館文庫で何か読んだおぼえもあるが、内容は忘れてしまった。
リヤカーで日本全国を旅した話だったか。

この本、内澤旬子さんのイラストが、味があってじつに楽しい。
小学館 「週刊ヤングサンデー」 に連載していた旅行記とのこと。

【2009/5/31 紹介した本の画像を掲載】

Shimazu_makyou_asia_otakaraShimazu_hikyou_asia_kottouUshiyama_hikyouekiUshiyama_motto_hikyoueki








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