カテゴリー「内澤旬子」の9件の記事

2009年10月23日 (金)

【読】高野秀行さんの新刊

まったく偶然に、こんな本を書店でみつけた。
時間つぶしに立ち寄った、上野のTSUTAYAでのこと。
高野さんの新刊がでていたことも知らず、旅行コーナーの棚をなにげなく見ていたら目にはいったのだ。
こういうことって、あるんだな。

Takano_asia_uma_2『アジア未知動物紀行』
 ― ベトナム・奄美・アフガニスタン ―
 高野秀行 講談社
 2009/9/1発行 260ページ 1400円(税別)

書棚から抜きだし、手にとって、しゃれた装幀に感心。
案の定、内澤旬子さんのイラストだった。

高野さんお得意の、UMA(ユーマ=未確認不思議動物)ものである。
電車のなかで「あとがき」を斜め読みしていると、興味ぶかい話が書かれていた。
柳田國男の『遠野物語』――高野さんが書くものの雰囲気からすると、意外な人物だ。
読書家の高野さんのことだから、この名著を読んでいてとうぜんなのだが。

<この三つの旅で、途中から私の頭にこびりついて離れなかったのは、柳田國男『遠野物語』だった。>

なんだ、なんだ、と驚きながら続きを読む。

<『遠野物語』は民俗学的な記録ではない。遠野出身の一青年が自分の知っている話を柳田に語って聞かせたものだ。天狗や川童(かっぱ)、幽霊などの物の怪や怪異現象がふんだんに登場するが、これはみな昔から伝わる話でなく、柳田國男が生きていたのと同時代の話である。>

ふん、ふん、そのとおりだが……。

<私は最初に読んだとき、「現地に行けばいいのにな」と思った。現場第一主義で、一次情報しか信用しない私なら絶対にそうする。ところが柳田は動かなかった。ただ青年の語る山の人の話を簡潔にまとめた。そして序文に『願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ』と書いた。/不思議な話を、不思議なままに読者の前に放り出したのである。>

このあたりが高野さんの真骨頂だと思うので、もう少し引用する。

<だが、柳田はその後、怪物や怪現象を民俗学的に研究するようになる。山の人の怖さを解体し、自分たち平地人の知識で理解しようとした。…(略)…どうやら、柳田國男は日本中の村々を武装解除して回り、二度と『遠野物語』の世界に帰ることはなかったようである。>

うーん。
鋭い「柳田批判」で、的を射ているし、私も同感だ。
続けて、高野さんは 「私は柳田國男と逆の道をたどっているような気がする」 と書いている。

高野さんが書くものの面白さは、徹底した 「現場主義」 というか、とにかく現地で体験してから考えるところにある。
読んでいて、わくわくするのだ。

楽しみな本ではある。
今日の収穫。

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2009年6月19日 (金)

【読】おやじがき(内澤旬子)

一週間前から読んでいる 『デルスウ・ウザーラ』 が、なかなか手ごわい。
面白いのだが、動植物や鉱物の名前、地名(どれもカタカナ語)がたくさんでてきて、つまりは、情報量が多いわりにはイメージがわかない部分が多く、疲れる。
せめて、詳細な現地地図がついているといいのに、と思う。

それでも、後半にさしかかり、沿海州の探検行も佳境にはいってきたので、だんだん入り込めるようになってきた。
無事に読み終わったら、感想文を書こう。

さて、そんな厳しい読書生活の気分転換に、こんな軽~い本を読んだ。
20分もあれば読みおえてしまうような軽さがいい。

Uchizawa_oyajigaki『おやじがき』  内澤旬子 (絵と文)
  にんげん出版  2008/12/1発行
  82ページ  1300円(税別)

ちょっと割高感のある本だが、内澤さんの絵と文章がいい。
「絶滅危惧種」「中年男性圖鑑」とサブタイトルにあるように、巷に生息する(内澤さんが電車の中や街でみかけた)おやじたちの肖像である。

身につまされるところも多いけれど、腹をかかえて笑ってしまう。
そうそう、こういうおやじって、いるよな。
ほら、そこにも、ここにも。


<現代の人物絵師・内澤旬子が電車で、喫茶店で、路上で遭遇した哀しくも愛らしい「おやじ」の観察記録>
<すだれ、耳毛、肉だまり、大あくび……カレセン幻想を抱いている女子は、この本でリアルなおやじの姿を正視された方が良いでしょう/男は枯れるのではなく、煮詰まってゆく……濃厚なおやじ汁が余白から滴っています  辛酸なめ子(漫画家、コラムニスト)> (本書帯)

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2009年6月 7日 (日)

【読】雲取山の公衆便所

内澤旬子さんの 『世界屠畜紀行』 (解放出版社 2007年)を読みおえて、斉藤政喜・内澤旬子コンビによる 『東方見便録』 の続編、『東京見便録』 (文藝春秋 2009年) を読んでいる。

Saitoh_tokyo_kenbenroku『東京見便録』
 斉藤政喜(文)・内澤旬子(イラスト)
 文藝春秋 2009/3/15発行
 174ページ 1429円(税別)

前作 『東方見便録』 ほどのワイルドさはないが、身近な東京都内のトイレ事情が興味ぶかい。
たとえば、二子玉川駅から徒歩20分の場所にある「岡本公園民家園」の古民家の厠(かわや)など、行ってみたくなるほど魅力的だ。

まだ読みはじめたばかりなのだが、第二章「現役ですッ」に、雲取山山頂の公衆便所が紹介されていて、懐かしい。

東京都の最高峰 雲取山(くもとりやま・2017m)の山頂には、立派な避難小屋が建っていて、その横に公衆便所がある。
私の記憶にあるのは古いときのものらしく、避難小屋の改築後に公衆便所も改築されたのかもしれない。
展望のいい場所である。
水場こそないが(北側の雲取山荘の水場まで下って汲んでくる)、山頂の立派な避難小屋には私も泊まったことがある。

 ※当時の避難小屋の写真がどこかにあるはずだが、
  探しだすことはむずかしく(整理が悪いので)あきらめた。
  私のWebサイト(休眠状態だが)に、雲取山について書いたことがある。

  晴れときどき曇りのち温泉 > 山岳展望写真館
   http://yamaoji.hp.infoseek.co.jp/panorama.html


この本、例によって、内澤さんのイラストが楽しい。

雲取山、また登ってみたいなぁ……。

Saitoh_tokyo_kenbenroku_p45

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2009年5月31日 (日)

【読】「屠畜」ということ

内澤旬子さんがイラストを描いている 『東方見便録』 (斉藤政喜著/小学館)は、とても面白かった。
さきほど読了。

続いて、内澤さんじしんの文章とイラストによる、『世界屠畜紀行』 (解放出版社 2007年)にとりかかる。

Uchizawa_sekai_tochiku_kikou『世界屠畜紀行』 内澤旬子
 解放出版社 2007/2/10発行
 367ページ 2200円(税別)

「屠畜」 とは耳慣れない言葉だが、「屠殺」 を使わなかった理由を内澤さんはこう書いている(まえがき)。

<生きた動物を肉にするには、当然殺すという工程が含まれるのだけど、殺すということばにつきまとうネガティブなイメージが好きでなかったことと、…(略)…なによりも殺すところは工程のほんのはじめの一部分でしかない。そこからさまざまな過程があって、やっと肉となる。そう、ただ殺しただけでは肉にならないのだということを、わかってもらいたくて……>

この 「屠畜」 という言葉の由来は、「案外古く、明治期の専門書にはすでに登場している」 のだそうで、これを機会に 「屠畜」 という言葉が広まればいいな、と内澤さんは思っているという。

彼女がなぜこういう紀行を思いたったのか。
それは、モンゴル、中部ゴビの大草原に点在するゲル(遊牧民のテント)に滞在していたとき、ゲルの脇で夕食のもてなしのために、女性が数人がかりで羊の内臓を洗っていたのを見て、衝撃を受けたことからだという。

<血で赤く染まった鍋に浮かぶ長い腸を見てぐわんと衝撃を受けた。すごい! これをこれから食べるんだ。そうだよな。肉って血が滴るものなんだよな。グロテスクだとか、羊がかわいそうだとか、そんなところまでまったく気が回らなかった。>

この内澤さんという若い女性が(1967年生まれ)、斉藤政喜さん言うところの 「タフな女性」 だと私も思うのは、次のような部分だ。

<なによりもその辺を走っている羊が、鍋にちゃぷちゃぷ浮かぶ内臓や肉になるまでの過程を見損なってしまったことが悔しくてたまらない。どうやるのかな、羊の中身ってどうなってんのかな。肉ってどうついてんのかな。頭の中はもうそれだけでいっぱい。>

そして、いつも肉を食べているのに、これまでは 「肉になるまで」 のことをまるで考えたことがなかったのは、なぜなんだろう、と考える。

<日本の屠畜についての本はほとんどなかった。肉になるまでの過程について、まるでなにも想像してほしくないかのようだった。>


ここでひとつ、屠畜に携わる人々への 「差別」 という問題がある。
これについては、次のように書いている。すごい。

<このような状況は、日本でこの仕事にかかわる人々がずっと昔から差別を受けてきたことと、深く関係してるんだということはわかっていた。差別発言や嫌がらせを恐れる人が多いため、作業中の顔が映ったり写真や映像を公に出すことが非常にむずかしいのだということも。>

<けれども、日本人が肉をおおっぴらに食べられるようになって、もう150年も経ってるんだもの。いい加減、忌まわしいだの穢らわしいだの思う人も減って、私のようにどうやって肉を捌いているのか、単純に知りたいと思う人も、それなりに増えてるんじゃないだろうか。>

<第一この忌まわしいだの穢らわしいだのという、食べものに似つかわしくないくらい感情って、日本以外の国や地域の人たちも持ってるものなんだろうか。もっとあっけらかんとやっている国もたくさんあるはず。彼らと私たちではなにがどう違うんだろう。>


ということで、内澤さんの 「世界屠畜紀行」 につきあってみようと思う。
私も、日頃じぶんが口にしている畜肉が、どうやって私のもとまで来るのか知りたいという欲求を強く持っていた。
屠畜をタブー視したり、考えようとしない(見ないふりをする、見せない)この国の人々(私もその一員だが)のありようにも、強い不満があった。

この人は、あっけらかんとしていて、でも、芯の強い、精神的にタフな人だと思うので、なかなか楽しみなのだ。

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2009年5月30日 (土)

【読】楽しみにしていた本が届いた

楽しみにしていた本が、今日、書店に届いたので受けとってきた。
よく利用する 「e-hon」 サイトで注文したもの。
注文してから一週間もかかったのは、マイナーな出版社だからだろうか。

Uchizawa_sekai_tochiku_kikou_2『世界屠畜紀行』 内澤旬子
 解放出版社 2007/2/10発行
 367ページ 2200円(税別)

 解放出版社ホームページ JINKEN BOOK
  http://www.kaihou-s.com/

先に紹介した高野秀行さんの 『辺境の旅はゾウにかぎる』 (本の雑誌社 2008年)で知った本だ。
高野さんと内澤さんの対談も掲載されていて、本書のことも話題になっていた。
内澤旬子さんの行動力には頭がさがる。

― 『辺境の旅はゾウにかぎる』 高野秀行・内澤旬子 対談 より ―

高野 そもそも屠畜の現場を取材したい気持ちがスパークしたのは、何がきっかけだったんですか。
内澤 最初は手製本から入ったんです。素材の一つである皮革に興味を持って、皮なめしの現場を取材しようとしたんですけどダメで。出口がダメなら入り口から攻めたらどうかと、原皮を供給する屠畜場を取材しようと考えたのが始まりです。


目次をざっとみると、韓国、バリ島、エジプト、イスラム世界、チェコ、モンゴル、それに沖縄、東京・芝浦屠場と、世界を股にかけた取材。

いま読んでいる 『東方見便録』 (斉藤政喜さんとの共著・小学館) でわかったことだが、内澤さんはじつに好奇心旺盛で、ものごとに偏見をもたない人である。
リクツ抜きに、まずじぶんの目で見て、体験して、それから考える、そういうタイプの好ましい人だと感じた。

ペーパーバックの軽い(内容ではなく重量が)本ながら、愛着のわく本の造りだ。
内澤さんのイラストがじつにいい(左の画像、表紙イラストもそうだ)。

楽しみな本である。



まったく関係ないけど、解放社のサイトにこんなタイトルの本があった。
いっちゃん
二宮由起子・文  村上康成・絵
 http://www.kaihou-s.com/book_data07/978-4-7592-2240-1.htm

『世界屠畜紀行』 はこちら
 http://www.kaihou-s.com/book_data07/978-4-7592-5133-3.htm

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2009年5月29日 (金)

【読】「もの出す人々」から見たアジア考現学

昨日から読んでいる本のサブ・タイトルである。
「考現学」の字が、MS-IMEのかな漢字変換ではでてこない。
やはり造語なのだろうか。
南伸坊とか、あのあたりの人たちが言いだした言葉かもしれない。
(『ハリガミ考現学』 なんて本があって、私は好きだったが)

「もの出す人々」 とは、言いえて妙である。
椎名誠氏は、「くう、ねる、のむ、だす」 と言ったが、人間にとって基本的でたいせつなことなのだ。

Saitoh_toho_kenbenroku『東方見便録』
  ― 「もの出す人々」から見たアジア考現学 ―
 斉藤政喜(文)/内澤旬子(装幀、イラスト、本文レイアウト)
 小学館 1998年 302ページ 1500円(税別)

著者の斉藤政喜氏は、シェルパ斉藤というペンネームだった。
そこで思いだした。
ずっと前に、『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』 というこの人の本を読んだことがあったのだ。
自称、バックパッパー。
八ヶ岳に自らの手で家を建てて住んでいるという。
(この本の中でも、八ヶ岳の家での排泄物処理について触れていて興味ぶかい)

斉藤氏の本文もさることながら、文をそえたイラストを描いている内澤さんが、とてもいい。
彼女の細密なイラストと文をコピーして、ここに載せたいぐらいだ。
この本のカバーに印刷されている澄まし顔の写真(美形である)からは考えられないほど、ユーモアがあり、大胆さを持ち合わせた旅慣れた人のようで、ファンになってしまいそうだ。
内澤さんについては、いずれあらためて書くこともあるだろう。


全部で八章からなる。
それぞれ、中国、サハリン、インドネシア、ネパール、インド、タイ、イラン、韓国と、アジア圏を二人で歩きまわって、ひたすらトイレ事情を見てまわるという、考えようによっては贅沢な旅。

アジアのトイレ事情は、ひと昔まえの日本の厠(かわや)を思いださせて、なにやらほっとする。
いまやシャワー付き水洗便所の便利さに慣れきって、すっかり堕落してしまったわが身が悲しくなる。
こどもの頃、田舎の便所は外にあって、木でつくられた簡単なものだった。
今でも古い山小屋などでは排泄物の行方とその後の処理方法が目に見えて、人間的とも言えるが、水洗便所でジャーっと流してしまっているようでは、じぶんの出したブツがどこへ行ってどう処理されるのか、その行方を思いやることもなくなってしまった……。


本書の各章の節タイトルには、「第1便」「第2便」……と振られていて、なにやらおかしい。
この「便」はあくまでも「ベン」と読むべし。

沢木耕太郎の名著 『深夜特急』(新潮社 1986年) は、「第一便 黄金宮殿」「第二便 ペルシャの風」「第三便 飛光よ、飛光よ」 (ビンである)というぐあいで、言ってみれば芥川賞的世界だが、こちらは、なんたって 「エンタメ・ノンフ」 、直木賞の世界である。

節のタイトルのいくつかを紹介しておこう。
これだけでも、この本の楽しさが伝わるのではないかと思うので。

(中国) 流しそうめんスライダー/上海特製簡易式トイレ/天安門広場に273の穴/薄暗がりに男の尻3つ/不思議便座と高齢化社会/焚き火式集団放尿の図……
(サハリン) 木製便座にアジアを見た/個室と美女とバケツと/北の和式便器は治外法権
(インドネシア) 水と左手で尻を洗う法/全方位開放トイレの恐怖/神の御許で排泄すれば/足元グラグラ止まり木式/ウンチリサイクルは魚で/黄色いウンチ魚を食う
(ネパール) ブタトイレを求める旅へ/思い出のあの白いウンチ/空港の女子トイレ潜入/枯れ葉トイレの安らぎ……


半分ほど読んだところ。
こういうノンフィクションはいいものだ。
電車通勤の友。


― e-honサイトより ―

斉藤 政喜 (サイトウ マサキ)        
1961年長野県生まれ。一人旅と野宿を愛するバックパッカー&作家。八ヶ岳山麓に自らの手で家を作り、田舎暮らしと旅暮らしの日々を過ごしている。著書に、「犬連れバックパッカー」(小学館)「野宿の達人、家をつくる」(地球丸)「シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅」1~5(小学館文庫)など。
内沢 旬子 (ウチザワ ジュンコ)        
1967年神奈川県生まれ。東アフリカ、イスラム諸国を始め、各国の古本、装飾、様々な道具を収集して巡るイラストルポライター。共著に下川裕治編「アジア路地裏紀行」(徳間文庫)「遊牧民の建築術」(INAX出版)がある。

この本の文庫版はこちら
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000030808915&Action_id=121&Sza_id=Z2
東方見便録 「もの出す人々」から見たアジア考現学
文春文庫
斉藤政喜/著 内沢旬子/著
出版社名 文芸春秋
出版年月 2001年4月
ISBNコード 978-4-16-715717-3
(4-16-715717-9)
税込価格 630円
頁数・縦 429P 16cm
分類 文庫 /日本文学 /文春文庫
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― Wikipediaより ―

考現学(こうげんがく、the study of modern social phenomena)とは、現代の社会現象を場所・時間を定めて組織的に調査・研究し、世相や風俗を分析・解説しようとする学問。考古学をもじってつくられた造語、モデルノロジー(modernology)。
考現学は、1927年(昭和2年)、今和次郎が提唱した学問である。今はそれまで柳田國男に師事し、民俗学研究の一環として民家研究などで業績を挙げていたが、本人の語るところによると考現学研究のため柳田に「破門」されたという。その研究のはじまりは、1923年(大正12年)の関東大震災後の東京の町を歩き、バラックをスケッチしたことからであった。
これを機に新しく都市風俗の観察の学問をはじめ、1925年(大正14年)には「銀座街風俗」の調査をおこなって雑誌『婦人公論』に発表した。「考現学」の提唱は、1927年の新宿紀伊国屋で「しらべもの(考現学)展覧会」を催した際のことであった。1930年(昭和5年)には『モデルノロジオ』が出版されている。今の提唱した「考現学」の発想から、生活学、風俗学、そして路上観察学などが生まれていった。

「考現学」関連図書
泉麻人『「お約束」考現学』ソフトバンククリエイティブ<SB文庫>、2006年
鷲田清一『てつがくを着て、まちを歩こう ファッション考現学』筑摩書房<ちくま学芸文庫>、2006年
辰巳渚『なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか ミステリアス・マーケット考現学』光文社<Kobunsha paperbacks>、2004年
斉藤政喜・内沢旬子『東方見便録 「もの出す人々」から見たアジア考現学』文藝春秋<文春文庫>、2001年
江夏弘『お風呂考現学 日本人はいかにお湯となごんできたか』TOTO出版、1997年

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2009年5月28日 (木)

【読】エンタメ・ノンフの面白本

エンターテインメント・ノンフィクション、略して「エンタメ・ノンフ」。
ずいぶん思いきった略称だけれど、これは高野秀行さんの命名。
肩のこらない、ノンフィクション界のいわば直木賞対象となるような本を指す。


Takano_zou1高野秀行 『辺境の旅はゾウに限る』 (本の雑誌社 2008年)の中で、「エンタメ・ノンフ」の面白本がたくさん紹介されていたのを読んで、手にはいりやすいものを何冊か入手した。

どんな本が書評でとりあげられているか、すこし前に書いた。

 【読】この本が面白そうだ(書物を知る楽しさ)
  2009年5月23日
 http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-ee20.html

足(古本屋=BOOK OFF)とネット販売を駆使してあつめた本が、こんなにも。

 『素晴らしきラジオ体操』/高橋秀実 (小学館文庫)
 『魔境アジアお宝探索記』/島津法樹 (講談社+α文庫) ※続編も入手
 『秘境駅へ行こう!』/牛山隆信 (小学館文庫) ※続編も入手
 『KAMIKAZE神風』/石丸元信 (文春文庫)
 『世界屠畜紀行』/内澤旬子 (解放出版社) ※到着待ち

このほかに、内澤旬子さんのイラストにひかれて、こんな本も。

 『東方見便録』/斉藤政喜(イラスト 内澤旬子) (小学館)
 『東京見便録』/斉藤政喜(イラスト 内澤旬子) (小学館)

さらに、高野さん推薦の 『サバイバル登山家』/服部文祥 (みすず書房) の関連本。

 『サバイバル!』/服部文祥 (ちくま新書)


どれも読むのがたのしみで、ワクワクする本ばかり。
さっそく読んだのがこれ。

Takahashi_radio_taisou『素晴らしきラジオ体操』
 高橋秀実(たかはし・ひでみね)
 小学館文庫 2002/9/1発行
 264ページ 552円(税別)

私たちがこどもの頃からやっていたラジオ体操(今でも日本全国で熱心に行われている)が、こんなにも奥深いものとは思わなかった。
1925年(大正14年)、ニューヨーク。
生命保険会社がはじめた 「ラジオで体操する」 が起源だったとか、戦前・戦中の日本での 「国民体操」 とか、戦後の占領軍支配下での 「民主的な」 ラジオ体操の復活だとか、興味ぶかい話が独特の語り口で綴られていて、後半はいっきに読んでしまった。

ラジオ体操をやりたくなる気分にさせる本だ。


続いて読みはじめたのがこれ。

Saitoh_toho_kenbenroku『東方見便録』
 斉藤政喜(文)・内澤旬子(イラスト)
 小学館 1998/5/1発行
 302ページ 1500円(税別)

単行本、文庫版ともに絶版(または版元品切れ)。
手に入れるのに苦労した。
Amazonでは、古書に驚くほど高値がついていたため、「日本の古本屋」 というネット販売サイトで古書店に注文。
代金を先に振り込む方式なのでめんどうだったが、届いたときは嬉しかった。
古本だが、きれいな状態だった。

 日本の古本屋
  https://www.kosho.or.jp/servlet/top

タイトルがふるっている。
「東方見聞録」 ならぬ 「見便録」。
ウンチ(アジア各国のトイレ事情)の話である。
このての話が、じつは大好きなのだ。

食事、排泄、睡眠。
この三つがニンゲンの生きていくことの基本で、その他は皆、「余分」なことだと私は思う。


斉藤政喜さんは、以前、雑誌「BE-PAL」で連載を読んだことがある。
小学館文庫で何か読んだおぼえもあるが、内容は忘れてしまった。
リヤカーで日本全国を旅した話だったか。

この本、内澤旬子さんのイラストが、味があってじつに楽しい。
小学館 「週刊ヤングサンデー」 に連載していた旅行記とのこと。


【2009/5/31 紹介した本の画像を掲載】

Shimazu_makyou_asia_otakaraShimazu_hikyou_asia_kottouUshiyama_hikyouekiUshiyama_motto_hikyoueki











Ishimaru_kamikaze_2Hattori_survival_2    

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2009年5月23日 (土)

【読】この本が面白そうだ(書物を知る楽しさ)

高野秀行さんの 『辺境の旅はゾウにかぎる』 (本の雑誌社)を読んでいて、気になる本がでてきた。

Sekai_tochiku_kikou『世界屠畜紀行』
 内澤旬子 解放出版社
 2007年2月 2315円(税込)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031824476&Action_id=121&Sza_id=GG
<「食べるために動物を殺すことを可哀相と思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じる文化は、日本だけなの?」 屠畜という営みへの情熱を胸に、アメリカ、インド海外数カ国を回り、屠畜現場をスケッチ!! 国内では東京の芝浦屠場と沖縄をルポ。「動物が肉になるまで」の工程を緻密なイラストで描く。> (e-honサイトより)

私の知らなかった人だが、調べてみると、とても魅力的だ。
さっそく、e-honで注文。

高野さんは、この本(『辺境の旅はゾウにかぎる』) で内澤さんと対談していて、のっけに、『世界屠畜紀行』の話題になっている。
本の後半、書評集でもとりあげている。
(そこまでまだ読んでいないけど)

高野さんの読書範囲もすごい。

書評でとりあげている本に興味ぶかいものが多いので、書名を列挙しておこう。
知らない本がほとんどだが、私が好きな本、手元にある本も(*印)。

気になる本は、e-honサイトの「お気に入り」にメモしておくことにしている。


『ゴールデン・トライアングル秘史』
  鄧賢/増田政広訳 (日本放送出版協会)
『サバイバル登山家』
  服部文祥 (みすず書房)
『アマゾン源流生活』
  高野潤 (平凡社)
『シャクルトンに消された男たち』
  ケリー・テイラー=ルイス/奥田祐士訳 (文藝春秋)
『海の漂白民族バジャウ』
  ミルダ・ドリューケ/畔上司訳 (草思社)
『日本奥地紀行』 *
  イザベラ・バード/高梨健吉訳 (平凡社ライブラリー)
『均ちゃんの失踪』
  中島京子 (講談社)
『例えばイランという国 8人のイランの人々との出会い』
  奥圭三 (新風舎)
『忘れられた日本人』 *
  宮本常一 (岩波文庫)
『世界屠畜紀行』
  内澤旬子 (解放出版社)
『アフリカにょろり旅』 *
  青山潤 (講談社)
『ふしぎ盆栽ホンノンボ』
  宮田珠己 (ポプラ社)
『素晴らしきラジオ体操』
  高橋秀実 (小学館文庫)
『魔境アジアお宝探索記』
  島津法樹 (講談社+α文庫)
『秘境駅へ行こう!』
  牛山隆信 (小学館文庫)
『KAMIKAZE神風』
  石丸元信 (文春文庫)
『ビルマ商人の日本訪問記』
  ウ・フラ/土橋泰子訳 (連合出版)
『X51.ORG THE ODYSSEY』
  佐藤健寿 (夏目書房)
『信長公記』
  太田牛一/中川太古訳 (新人物往来社)
『金門島流離譚』 *
  船戸与一 (新潮文庫)
『流木』
  西木正明 (徳間文庫)

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2009年5月22日 (金)

【読】高野熱、続く

高野秀行さんの本を、続けて読んでいる。

Takano_zou1『辺境の旅はゾウにかぎる』 高野秀行
 本の雑誌社  2008/6/25
 253ページ  1500円(税別)

軽いエッセイと対談、それに書評を集めたペーパーバック。
対談相手は、角田光代、井原美紀、内澤旬子、船戸与一、大槻ケンヂという面々。
井原さんと内澤さんは、わたしの知らない人だが。
「辺境読書 エンタメ・ノンフ+・ブックガイド」 と題された書評も興味ぶかい。

冒頭の50ページほど読んだところだが(「ケシの花ひらくアジアの丘」)、期待にたがわず面白い。

たとえば、ミャンマー(ビルマ)での体験記に、ちょっと驚いてしまった。
ヤンゴンで床屋をみつけて髪を切ってもらおうとしたところ、店の兄ちゃんから「ガソリンを買いに行くからちょっと待っていてくれないか」と言われた話。
そのワケはここに書かないけれど(ネタバレになるから)、高野さんはこう書いている。
考えさせられる。

文脈を無視して引用すると――

<…ミャンマーにいると、物事のつながりがよくわかることに気づいた…/…日本ではどうなのか。電灯をつけるにもバリカンをつかうにもスイッチ一つだ。 スイッチを押しさえすれば、すべて片付くと思い込んでいる。 そのスイッチの向こうにいったい何があるのか、考えてみることさえない。>

「アヘン王国脱出記」 のドタバタも、何やらおかしく、これまた考えさせられる話だ。
アジアはほんとうに面白い。


ところで、今日たまたま入ったBOOK OFFでみつけてしまった。
昨日書いた、吉田敏浩さんの本だ。
BOOK OFFの書棚分類は、整理されているようで、あんがいいい加減なのだが、歴史だか地理だかのコーナーで、まったく偶然に目にとまったのがこの本。

「本との出会い」の不思議。
なんといっても、昨日の今日のことだもの。

Yoshida_morinokairou『森の回廊 ―ビルマ辺境民族解放区の1300日―』
 吉田敏浩  NHK出版 1995/9/20発行
 494ページ  2500円(税別)

きのう画像を載せたNHKライブラリー版(大き目の文庫サイズ)は再販で、このハードカバーがオリジナル版だ。
(第27回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞)
すでに絶版となっているこの本が、定価のほぼ半額で入手できた。
しかも、古書店に入って数分後に目に飛び込んできたのだ。

図書館から借りると返却期限に追われるようで、かえって読めなかったりするのだが(途中であきらめたりする)、手もとにあればしめたもの。
と言いながら、「積んどく」本がたまっていくのも事実だが……。


― e-honサイトより ―
吉田 敏浩 (ヨシダ トシヒロ)   
1957年、大分県臼杵市に生まれる。1981年、明治大学文学部卒業後、フリーのジャーナリストに。現在、フリーのジャーナリスト集団「アジアプレス・インターナショナル」に所属。1977年にビルマ・シャン州の解放区を訪れて以来、ビルマ、タイ、アフガニスタン、インド、バングラデシュなど、アジアの諸民族の世界を訪ねる。1985年3月から88年10月まで、ビルマ北部のカチン州、シャン州へ長期取材。その記録をテレビ番組「回想のジャングル」(NHKスペシャル:1989年6月18日放映)で発表する。『森の回廊』で1996年に、第27回・大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。著書に『宇宙樹の森』(現代書館)、『北ビルマ、いのちの根をたずねて』(めこん)、『生命の森の人びと』(理論社)がある。共著に『アジア大道曼陀羅』(現代書館)、『世界の民・光と影』(明石書店)などがある。


高野さんの 『辺境の旅はゾウにかぎる』 のおしまいのほうに、こんなことが書いてある。
(書評 「探検部のカリスマは最上のペテン師だった ―― 『流木』 西木正明」 より抜粋)

<突然だが、世間に名の知れたマスコミ・出版関係者の名前をいくつか挙げてみる。
本多勝一/関野吉晴/吉田敏浩/高山文彦/長倉洋海/星野道夫/惠谷治/船戸与一/西木正明
年も仕事も志向性もまったく異なる九名だが、彼らには一つだけはっきりした共通点がある。 なんだか、おわかりだろうか。
「行動派」「硬派」「辺境をテーマにしている」「冒険的」……。
どれも近い。だが、もっと具体的な共通点というか共通体験がある。>

さて、正解は?

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