カテゴリー「浅田次郎」の14件の記事

2016年12月31日 (土)

【読】2016年総集編 今年読んだ本

今年も、目標の100冊読破を達成できず、読み終えたのは89冊。

 

村上春樹のエッセイ類を除く全作品を通して読んだことは、私にしては珍しい読書体験だった。

 

古山高麗雄の小説・エッセイ類も、まとめて読んだ。

 

宮里千里目取真俊という、沖縄の二人の書き手の本にも出会った。

 

いい読書体験ができた年だったと言えよう。

 

年末には、高橋美香さんという魅力的な写真家に出会い、出版記念イベントに参加した。
パレスチナについての講演会をお願いしたいな、などと目論んでいる。

 

煩雑になるが、今年読んだ本を下にあげておこう。
【図書館】とあるのは、近隣の図書館から借りて読んだ本だが、気に入って購入したものもある。
村上春樹は、作品集を借りてきて読んだ。
今年も、図書館にはお世話になった。

 

■2016年に読んだ本

 

■1月
・石牟礼道子 『苦海浄土』 河出書房新社 (池澤夏樹個人編集 世界文学全集 Ⅲ-04) (2011/1/20) 771ページ 【図書館】

 

 

・礫川全次 『独学の冒険 ―浪費する情報から知の発見へ』 批評社 (2015/10/31) 219ページ 【図書館】
・高橋源一郎×SEALDs 『民主主義ってなんだ?』 河出書房新社 (2015/9/30)
・高橋源一郎 『ぼくらの民主主義なんだぜ』 朝日新書 514 (2015/5/30) 255ページ
・都築響一 『独居老人スタイル』 筑摩書房 (2013/12/10) 351ページ 【図書館】
・ビートたけし 『たけしのグレートジャーニー』 新潮社 (2014/5/15) 238ページ 【図書館】

 

 

・安島太佳由(やすじま・たかよし) 『日本戦跡を歩く』 窓社 (2002/7/24) 201ページ 【図書館】
『口語訳 古事記 [神代篇]』 三浦佑之 訳・注釈 文春文庫 (2006/12/10) 313ページ
『口語訳 古事記 [人代篇]』 三浦佑之 訳・注釈 文春文庫 (2006/12/10) 521ページ

 

■2月
『古事記』 池澤夏樹訳 河出書房新社(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 01) (2014/11/20) 397ページ 【図書館】

 

 

・三浦佑之 『古事記を読みなおす』 ちくま新書 876 (2010/11/10) 301ページ
・常岡浩介 『イスラム国とは何か』 旬報社 (2015/2/25) 210ページ
・朴裕河(パク・ユハ) 『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』 朝日新聞出版 (2014/11/30) 324ページ 【図書館】
・岩波書店編集部 編 『私の「戦後民主主義」』 岩波書店 (2016/1/27) 185ページ【図書館】
・岩波書店編集部 編 『私の「戦後70年談話」』 岩波書店 (2015/7/3) 198ページ【図書館】

 

・古山高麗雄 『二十三の戦争短編小説』 文藝春秋 (2001/5/15) 574ページ【図書館】

 

 

・古山高麗雄 『反時代的、反教養的、反叙情的』 ベスト新書 (2001/7/1) 261ページ【図書館】

 

■3月
・古山高麗雄 『妻の部屋 遺作十二篇』 (2002/9/15) 397ページ【図書館】

 

 

・シャーウィン裕子 『戦争を悼む人びと』 高文研 (2016/2/8) 250ページ【図書館】
・室井尚 『文系学部解体』 角川新書 (2015/12/10) 238ページ
・和賀正樹 『これが「帝国日本」の戦争だ』 現代書館 (2015/11/30)127ページ【図書館】
・古山高麗雄 『断作戦』 文藝春秋 (1982/11/30) 323ページ【図書館】
・一ノ瀬俊也 『旅順と南京 日中五十年戦争の起源』 文春新書 605 (2007/11/20) 244ページ【図書館】
・古山高麗雄 『龍陵会戦』 文藝春秋 (1985/11/30) 365ページ【図書館】

 

■4月
玉居子精宏 『戦争小説家 古山高麗雄伝』 平凡社 (2015/8/5) 279ページ 【図書館】 のち購入

 

 

・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (1)』 講談社 (1990/5/21) 254ページ 風の歌を聴け/1973年のピンボール 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (3) 短篇集(1)』 講談社 (1990/9/20) 356ページ 中国行きのスロウ・ボート/他13篇(貧乏な叔母さんの話/ニューヨーク炭鉱の悲劇/カンガルー通信/午後の最後の芝生/土の中の彼女の小さな犬/シドニーのグリン・ストリート/蛍/納屋を焼く/めくらやなぎと眠る女/踊る小人/三つのドイツ幻想/雨の日の女#241・#242) 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (2)』 講談社 (1990/7/20) 376ページ 羊をめぐる冒険 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (8) 短篇集(3)』 講談社 (1991/7/22) 275ページ パン屋再襲撃/パン屋襲撃/象の消滅/ハイネケン・ビールの空き缶を踏む象についての短文/ファミリー・アフェア/双子と沈んだ大陸/ローマ帝国の崩壊・1881年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界/ねじまき鳥と火曜日の女たち/眠り/トニー滝谷/人喰い猫 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (4)』 講談社 (1990/11/20) 591ページ 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 【図書館】
・ジャン・ジオノ/寺岡襄(訳)・黒井健(絵) 『木を植えた男』 あすなろ書房(あすなろセレクション) (2015/10/30) 77ページ【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (6)』 講談社 (1991/3/20) 419ページ ノルウェイの森 【図書館】

 

■5月
・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (5) 短篇集(2)』 講談社 (1991/1/21) 426ページ 32篇 カンガルー日和/四月のある晴れた朝に 100パーセントの女の子に出会うことについて/眠い/タクシーに乗った吸血鬼/彼女の町と、彼女の緬羊/あしか祭り/鏡/1963/1982年のイパネマ娘/窓/五月の海岸線/駄目になった王国/32歳のデイトリッパー/とんがり焼の盛衰/チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏/スパゲティーの年に/かいつぶり/サウスベイ・ストラット――ドゥービー・ブラザーズ「サウスベイ・ストラット」のためのBGM/図書館奇譚//あしか/月刊「あしか文芸」/書斎奇譚/おだまき酒の夜//はじめに・回転木馬のデッド・ヒート/レーダー・ホーゼン/タクシーに乗った男/プールサイド/今は亡き王女のための/嘔吐1979/雨やどり/野球場/ハンティング・ナイフ//沈黙 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1979~1989 (7)』 講談社 (1991/5/20) 591ページ ダンス・ダンス・ダンス 【図書館】
・磯田道史 『天災から日本史を読みなおす』 中公新書 2295 (2014/11/25) 221ページ
・小倉志郎 『元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ』 彩流社 2014/7/1発行 206ページ 【図書館】
村上春樹 『村上春樹全作品 1990~2000 (1) 短篇集(1)』 講談社 (2002/11/20) 307ページ 44篇 【図書館】
村上春樹 『村上春樹全作品 1990~2000 (2) 』 講談社 (2003/1/20) 501ページ 国境の南、太陽の西/スプートニクの恋人 【図書館】
・三浦しをん 『舟を編む』 光文社文庫 (2015/3/20) 347ページ

 

■6月
・村上春樹 『村上春樹全作品 1990~2000 (4) ねじまき鳥クロニクル1』 講談社 (2003/5/20) 563ページ ねじまき鳥クロニクル (第1部 泥棒かささぎ編/第2部 予言する鳥編) 【図書館】

 

 

・村上春樹 『村上春樹全作品 1990~2000 (5) ねじまき鳥クロニクル2』 講談社 (2003/7/20) 434ページ ねじまき鳥クロニクル (第3部 鳥刺し男編) 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1990~2000 (6) アンダーグラウンド』 講談社 (2003/9/20) 699ページ 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1990~2000 (7)』 講談社 (2003/11/20) 395ページ 約束された場所で/村上春樹、河合隼雄に会いにいく 【図書館】
・村上春樹 『村上春樹全作品 1990~2000 (3) 短篇集(2)』 講談社 (2003/3/20) 275ページ 【図書館】
・村上春樹 『海辺のカフカ(上)』 新潮社 (2002/9/10) 397ページ 【図書館】
・村上春樹 『海辺のカフカ(下)』 新潮社 (2002/9/10) 429ページ 【図書館】
・村上春樹 『アフターダーク』 講談社 (2004/9/7) 288ページ 【図書館】
・村上春樹 『東京奇譚集』 新潮社 (2005/9/18) 210ページ 【図書館】
・清水良典 『村上春樹はくせになる』 朝日新書 004 (2006/10/30) 236ページ 【図書館】

 

・村上春樹 『1Q84 BOOK1』 新潮社 (2009/5/30) 554ページ 【図書館】

 

 

・村上春樹 『1Q84 BOOK2』 新潮社 (2009/5/30) 501ページ 【図書館】

 

■7月
・村上春樹 『1Q84 BOOK3』 新潮社 (2010/4/16) 602ページ 【図書館】
・村上春樹 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 文藝春秋 (2013/4/15) 370ページ 【図書館】
・村上春樹 『女のいない男たち』 文藝春秋 (2014/4/20) 285ページ 【図書館】
・加藤典洋 『村上春樹は、むずかしい』岩波新書(新赤版) 1575 (2015/12/18) 259ページ
・薬師寺克行 『公明党 創価学会と50年の軌跡』 中公新書 2370 (2016/4/25) 274ページ

 

■8月
・須知徳平 『北の詩(うた)と人 アイヌ人女性・知里幸恵の生涯』 岩手日報社 (2016/5/20) 429ページ 【図書館】のち購入
・菅野完(すがの・たもつ) 『日本会議の研究』 扶桑社 (2016/5/1) 302ページ

 

・鈴木邦男 『<愛国心>に気をつけろ!』 岩波ブックレット 951 (2016/6/3) 71ページ

 

 

・前泊博盛(編著) 『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』 創元社  (「戦後再発見」双書2)(2013/3/1) 397ページ
・吉田敏浩・新原昭治・末浪靖司 『検証・法治国家崩壊』 創元社  (「戦後再発見」双書3)(2014/7/20) 347ページ
・内田樹・鈴木邦男 『慨世の遠吠え―強い国になりたい症候群』 鹿砦社 (2015/3/20) 277ページ 【図書館】
・内田樹・白井聡 『日本戦後史論』 徳間書店 (2015/2/28) 245ページ  【再読】

 

■9月
・礫川全次 『雑学の冒険―図書館にない100冊の本』 批評社 (2016/6/10) 223ページ 【図書館】

 

白崎映美 『鬼うたひ』 亜紀書房 (2016/7/9) 199ページ 【図書館】

 

 

・内田樹・福島みずほ 『「意地悪」化する日本』 岩波書店 (2015/12/15) 198ページ 【図書館】
・久生十蘭 『従軍日記』 講談社 (2007/10/4) 426ページ 【図書館】

 

 

・竹村公太郎 『水力発電が日本を救う 今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる』 東洋経済新報社 (2016/9/1) 190ページ 【図書館】
・渡辺豪 『日本はなぜ米軍をもてなすのか』 旬報社 (2015/10/25) 230ページ 【図書館】
・佐伯啓思 『経済学の犯罪―稀少性の経済から過剰性の経済へ』 講談社現代新書 (2012/8/20) 326ページ
・徳間書店出版局編(渡辺豪) 『この国はどこで間違えたのか―沖縄と福島から見えた日本』 ・徳間書店 (2012/11/30) 309ページ 【図書館】 内田樹/小熊英二/開沼博/佐藤栄佐久/佐野眞一/清水修二/広井良典/辺見庸

 

池澤夏樹 『沖縄への短い帰還』 ボーダーインク (2016/5/25) 334ページ

 

 

・宮里千里 『島軸紀行―シマサバはいて―異風南島唄共同体』 ボーダーインク (1993/12/15) 234ページ 【図書館】

 

■10月
・宮里千里 『ウーマク!―オキナワ的わんばく時代』 小学館 (2000/7/20) 223ページ 【図書館】

 

 

・宮里千里 『沖縄 時間がゆったり流れる島』 光文社新書 097 (2003/5/20) 241ページ 【図書館】
・目取真俊 『水滴』 文藝春秋 (1997/9/30) 188ページ 【図書館】
・大田昌秀 『戦争と子ども―父から戦争を知らない子たちへ』 那覇出版社 (1980/3/3) 175ページ 【図書館】
・宮里千里 『シマ豆腐紀行―遥かなる<おきなわ豆腐>ロード』 ボーダーインク (2007/8/30) 247ページ 【図書館】
・池澤夏樹 『カデナ』 新潮社 (2009/10/30) 434ページ 【図書館】

 

 

・宮下奈都 『神さまたちの遊ぶ庭』 光文社 (2015/1/20) 281ページ 【図書館】

 

■11月
・浅田次郎 『帰郷』 集英社 (2016/6/30) 252ページ 【図書館】

 

 

・目取真俊 『目取真俊短編小説集3 面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)』 影書房 (2013/11/20) 365ページ 【図書館】
・目取真俊 『目取真俊短編小説集1 魚群記』 影書房 (2013/3/28) 330ページ 【図書館】
・目取真俊 『目取真俊短編小説集2 赤い椰子の葉』 影書房 (2013/7/5) 386ページ 【図書館】
・草野真一 『SNSって面白いの? ―何が便利で何が怖いのか』 講談社ブルーバックス (2015/7/20) 254ページ

 

■12月
・大岡敏昭 『幕末下級武士の絵日記 ―その暮らしと住まいの風景を読む』 相模書房 (2007/5/24) 201ページ 【図書館】

 

高橋美香 『パレスチナ・そこにある日常』 未来社 (2010/10/30) 222ページ 【図書館】

 

 

・中村尚弘 『現代アイヌ文化とは ―二風谷アイヌ文化博物館の取り組み』 東京図書出版会 (2009/6/29) 100ページ 【図書館】
『これならわかる ―パレスチナとイスラエルの歴史Q&A』 大月書店 (2005/2/18) 142ページ 【図書館】

 

■読みかけの本
・草野真一 『メールはなぜ届くのか ―インターネットのしくみがよくわかる』 講談社ブルーバックス (2014/5/20) 213ページ

 

高橋美香 『それでもパレスチナに木を植える』 未来社 (2016/11/30) 230ページ 【図書館】 のち購入

 

 

・川上量生(かわかみ・のぶお) 『鈴木さんにもわかるネットの未来』 岩波新書1551 (2015/6/19) 343ページ
・寒川旭 『歴史から探る21世紀の巨大地震―揺さぶられる日本列島』 朝日新書392 (2013/3/30) 283ページ
・北原糸子 『日本災害史―復旧から復興への歩み』 ちくま新書 1210 (2016/9/10) 334ページ

 

他にも、欲しくて買ったものの、まだ読めない本がたくさんある。

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2011年1月28日 (金)

【読】「満洲」をめぐって

先日読んだ澁谷由里さんの本の続編を、図書館から借りて読んでいた。

Shibutani_manshu澁谷由里(しぶたに・ゆり)
  『「漢奸」と英雄の満洲』
 講談社選書メチエ 404 2008年発行
 194ページ 1500円(税別)

「満洲」を舞台に、歴史の転変に翻弄された五組の父子の数奇な生を描いた、ユニークな歴史書だ。
本書でとりあげられているのは、張作霖・張学良、張景恵・張紹紀、王永江・王賢湋、袁金鎧・袁慶清、于冲漢・于静遠、の五組の父子。
張学良以外の「子」は、一般的には知られていないと思う。私も知らなかった。

著者のねらいを、まえがき(はじめに)から引用。
すこし長くなる。

<「満洲」がブームだという。現在の閉塞した世相が、「満洲国」のあった1930~40年代に似ているともいうし、「満洲国」におけるさまざまな実験……が戦後の日本に影響を与えたともいう。なるほどとは思う。またそのようにして多くの人々が「満洲」に関心をもつ現況を、研究者としてはありがたいとも思う。しかし、何か違和感がある。> (P.7)

<前著『馬賊で見る「満洲」――張作霖のあゆんだ道』では、「満洲」に対して日本人が抱く郷愁を打破してみたかった。……今回は、前著の問題意識も継承しつつ、近代史が帰着する現代史の問題に取り組みたい。しかし現代史をあつかう場合、中共公式見解の壁と文革の悲劇という二重の困難は避けて通れない。これが日中両国の歴史認識に距離を作る原因にもなっているからなおさらむずかしい。だがせめて日本人読者にだけでも筆者の考える「満洲」の近現代史像を伝え、関心を持ってもらいたい。そう考えた時、最も親近感を持ってもらえるアプローチ方法として、「父子」という枠組みを思いついた。> (P.9)

著者は真摯な歴史学者だから(まだ若いが)、緻密な文章で内容に正確を期している。
気楽な読み物、というわけにはいかないが、私にはとても興味ぶかい内容だった。

巻末に、著者の歴史観、中国観が率直に述べられていて、好感がもてた。
そうか、こういうふうに考えれば、迷うことなどないのだな。

かなり長い引用(転載)になるが、ご容赦願いたい。

<歴史認識と謝罪が足りないといわれ、内心忸怩たる日本人は多いと思うが、それは中華人民共和国という国家における、国民意識の高揚と確認作業であり、中国人民内部に向けられたメッセージとして静観すべきだと筆者は考える。すぐに日本にひきつけて即応しようとするあまり、過剰な謝罪に走る、あるいは逆にひらきなおるケースもあるが、いずれも適切な対応ではない。中国を「わかってあげている」(「わかってやるものか」)というのはじつは日本人の甘えであって、「こんなにわかってあげているのにわかってもらえない」(「わかってやらないのだからわかってもらえなくてもいい」)という、さらなる身勝手を生みやすい。こうした日本側の空回りは、戦前の対中観と同工異曲になってはいないだろうか。>

<今後も日中間のすれ違いは時に政治・外交問題になるだろう。その時、日本が中国を異文化として客観視せず、共通点を拡大解釈してむりやり同化させようとすれば、かつてと同じ悲劇に見舞われる。いかに善意や熱意、理想に基づこうとも、価値観の押しつけは相手にとって束縛であり、相手が望まないことをしてはならないというのは、人間でも国家でも同じ、大切なルールである。>

<中国は大きい。漠たる大地を思い浮かべてしまうと、どうつきあっていいのかわからない。しかしそこにも血の通った人間が住んでいて、親子の情があり、さまざまな困難を乗り越えて今日がある。この隣人と末永く友好を保つには、人間としての普遍的な情熱と、異文化を尊重する冷静な理性とをバランスよく持ち合わせなけれなならない。そのように筆者は思うのである。> (P.177-178)

至極くまっとうな考え方だ。
こういう本は、ながく手もとに置いておきたくなる。
前著もそうだったが、巻末の註や、参考文献一覧、詳細な索引がありがたい。
資料としての価値も高いのだ。

著者の澁谷さんの人がらは、あとがき(P.188-)によくあらわれていて、好感がもてる。
前著 『馬賊で見る「満洲」』 脱稿後、出版社の担当者(山崎さん)との対話。
(以下、「あとがき」より)

担当者: 「次は『カンカン』について書いてみませんか?」

著者: 「『漢簡』ですか? それは専門外だから書けませんよ」
(漢簡とは、漢代の竹簡や木簡のこと)

担当者: 「発音が違ったかな? 『カンガン』 ですか?」

著者: 「『宦官』? あの、後宮に仕えている?」

<今にして思うとそれこそ「汗顔」の至りです。>

担当者: 「漢字の『漢』に、次の「カン」は女へんに干す、という字で……」

<「漢奸」。ようやく氏の意図が理解できたところで、それがとびきりむずかしいテーマであることに思い至り、私は気が重くなりました。一度はお断りしたのですが、山崎氏の励ましに根負けしてお引き受けした次第です。……>


そして、なんと、小説家の浅田次郎氏にふれている。
驚いた。
私は知らなかったが、澁谷さんは浅田次郎氏と昵懇らしい。

<じつは私、氏(山崎氏)のような「父兄」的な方々から多大な恩恵を受けて今日ここにいたっております。私の考える「父兄」的な人とは、聞き上手・ほめ上手で、見識豊かにして包容力に満ちた年長男性のことです。/まず、浅田次郎先生。人間的な成長の機会を与えてくださった、かけがえのない方です。どのような謝辞を述べても足りませんが、今後も研究を通して、先生のご参考になる史実をお知らせしたいと思います。> (P.189)

これを読んで、思わず膝を打った。
浅田次郎氏の 『中原の虹』 のような小説の陰に、若く気鋭の歴史学者のバックアップがあったのか、と。


Asada_taidan浅田次郎 『歴史・小説・人生』
 河出書房新社 2005年発行 (対談集)
 269ページ 1600円(税別)

澁谷由里との対談 「張作霖の実像に迫る!」 所収
(初出 『小説現代』 2004年10月号)

この対談も、なかなか面白かった。
「父兄」であるところの浅田氏も、歴史学者の前では、まるで先生に対する生徒のようで、可笑しい。
浅田氏なりの綿密な調査と作家の想像力とで書きあげた小説(『中原の虹』)の登場人物について、「あれでよかったのでしょうか?」と、とても気にして訊ねている。
澁谷センセイからは、おおむねOKの答えを得て、浅田氏のほっとしている様子が目にうかぶ。

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2011年1月12日 (水)

【読】日本人はなぜ戦争を選んだのか(続)

加藤陽子著 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』 を読みおえた。
書店にいくと、この本が目につくところに置いてあって、なるほど、よく読まれている本なんだろうなと思う。

Katou_sensou加藤陽子 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
 朝日出版社 2009/7/30発行
 414ページ 1700円(税別)

書名も装幀も秀逸だ。
書店で目にしたら、つい手にとってしまうような本で、私もそのようにして購入した。
いろいろ勉強させてもらったが、「あとがき」から引用しよう。

― あとがき より ―
<……本屋さんに行きますと、「大嘘」「二度と謝らないための」云々といった刺激的な言葉を書名に冠した近現代史の読み物が積まれているのを目にします。地理的にも歴史的にも日本と関係の深い中国や韓国と日本の関係を論じたものにこのような刺激的な惹句のものが少なくありません。>

「自虐史観」とかいって、思い込みの強い歴史観(「反・自虐史観」)で暴論を並べたてている書物のことだろう。
私も、かねがね、このての本を目にするたびに、苦々しく思っていた。
著者は続けてこう言う。
なかなか爽快。

<しかし、このような本を読み一時的に溜飲を下げても、結局のところ「あの戦争はなんだったのか」式の本に手を伸ばし続けることになりそうです。なぜそうなるかといえば、一つにはそのような本では戦争の実態を抉る「問い」が適切に設定されていないからであり、二つには、そのような本では史料とその史料が含む潜在的な情報すべてに対する公平な解釈がなされていないからです。これでは、過去の戦争を理解しえたという本当の充足感やカタルシスが結局のところ得られないので、同じような本を何度も何度も読むことになるのです。……>

このように考える著者による講義録だから、面白くないはずがない。
まさしく、「本当の充足感」「カタルシス」を感じることができる内容だった。
「あの戦争はなんだったのか」という問いを抱き続ける人(私もそのひとり)には、オススメの一冊だ。


さて、続いて読みはじめたのが、張作霖について掘り下げて書かれた、この本。

Shibutani_bazoku澁谷由里 (しぶたに・ゆり) 『馬賊で見る「満洲」』
  ― 張作霖のあゆんだ道 ―
 講談社選書メチエ(317) 2004年発行
 242ページ 1600円(税別)

この人も大学の先生だが(加藤陽子さんよりも少し若い)、文章がしっかりしていて、なおかつわかりやすく、すいすいと読める。
張作霖という、あまり人気のない(評判のよくない)人物にスポットをあてている貴重な本である。
じつは、図書館から借りてきたのだが、あまりにも今の私の関心事に近い題材なので、手もとに置いておきたくて新本を買ってしまったのだ。
(このようにして、わが家の「場所取り」である本が増えていく……)

帯の「浅田次郎氏推薦!」が泣かせる。


Itsuki_senpyou張作霖といえば、浅田次郎の小説 『中原の虹』(全四巻)の強烈な印象が尾をひいている。
話はそれるが、五木寛之の選評集『僕が出会った作家と作品』(東京書籍、2010年)に、この小説の選評が載っている。
吉川英治文学賞の第42回(2008年3月)の選評だ。

その中で、五木さんは、「一種の歴史講談である、という評もあったが、それは作者が最初から構想した手法であったにちがいない」と言って、浅田作品の「物語性」を肯定し、さらに、次のように高く評価している。

<……なみの小説家なら、とても張作霖などという一世の梟雄(きゅうゆう)を登場させる力業を試みようなどとは思わないだろう。/その世界に堂々と筆を進めた作者の大胆不敵なエネルギーは、作中の満洲馬賊たちの無頼なイメージと重なって見える。>

<パール・バックの「大地」に共通する史観を背後に秘めつつ、あくまで歴史書ではなく、小説の王道をめざした野心作として評価すべきだというのが、私の感想だった。>

浅田氏のあの小説の評価が、私のなかでぐらついていたところだったので、我が意を得たような心持ちになったのだった。
うれしいね。

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2010年12月28日 (火)

【読】読了 「中原の虹」(浅田次郎)

三週間かけて、ようやく読みおえた。
四巻。読みごたえがあった。

さんざん誉めておいて今さらなのだが……。
浅田次郎の小説は、読み終えた途端になにかもの足りなさを感じるのは、私だけか。

『マンチュリアン・リポート』 も、Amazonの書評(というか、クチコミ)なんかをみると、けっこう手厳しいものが多い。

それでも、別の小説を読んでみたいと思わせるのは、浅田次郎の小説の「うまさ」かもしれない。
語り口の歯切れがいい。
その一方で、構成に凝りすぎるところが、ちょっと鼻につく。


浅田次郎 『中原の虹』 (一)~(四)
 講談社 2006年~2007年

Asada_chugen_niji_1Asada_chugen_niji_2Asada_chugen_niji_3Asada_chugen_niji_4_2

しかし、まあ、史実はどうにしろ、登場人物たちのなんと生き生きしていることか。
張作霖、袁世凱、溥儀、西太妃、……歴史上の有名人が、誰もみな、とても魅力的に描かれている。
人間臭くて、いいのだ。

歴史書ではけっしてわからない歴史の「真実」とは、あんがいこういうフィクションに込められているのかもしれない。
ちょうど、船戸与一の 『蝦夷地別件』 のように。


引き続き、満洲に関する本(学者さんの書いたもの)を読んでいる。
書店でたまたま目ついたので買ってみた。

Miyawaki_manshu宮脇淳子 『世界史のなかの満洲帝国と日本』
 ワック 2010/10/28発行
 新書版 280ページ 933円(税別)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4898316352

いきなり「自虐史観」などというぶっそうな言葉でてきて、この人は右寄りの人かと心配したが、そうでもない。
いたってニュートラル(中立・不偏不党)な視点から書かれた本のように思う。
(まだ四分の一しか読んでいないけど)

― e-honサイトより ―
[要旨]
「王道楽土」とまで呼ばれた、今はなき満洲帝国―。なぜ日本人は満洲にむかったのか?それは、日本と満洲の関係だけでなく、清朝中国、モンゴル、朝鮮、ロシアそれぞれの思惑と利害を眺めてこそ見えてくる。「歴史に道徳的価値判断を介入させてはいけない。歴史は法廷ではないのである」と語る著者による、歴史学的な位置づけの「満洲」入門書。
[目次]
第1章 満洲とは何か―もともと種族名だった満洲。地名になったのは日本がはじまり;第2章 満洲の地理と古代―中国文明とは「漢字」と「都市」と「皇帝」;第3章 東アジアの民族興亡史―日本人と朝鮮人は、中国から同時に独立した“双子の関係”;第4章 元朝から清朝へ―モンゴル人の元朝、満洲人の清朝による中国の支配;第5章 ロシアの南進と日露関係―ロシアが奪うアムール北岸と沿海州;第6章 日本の大陸進出 日清・日露戦争―近代化できない清国・朝鮮にロシアの触手が…;第7章 日露戦争後の満洲と当時の国際情勢―欧米列強が承認、南満洲と韓国という日本の勢力圏;第8章 満洲帝国の成立―ソ連の謀略と中国の排日運動、満蒙権益を守るための満洲建国;第9章 日本史のなかの満洲―官・民あげて満洲投資、最大二百二十万人の日本人が満洲に;第10章 日本敗戦後の満洲―満洲帝国の“遺産”が現代中国をつくった

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2010年12月19日 (日)

【読】いよいよ最終巻へ(浅田次郎「中原の虹」)

三巻目も残すところ50ページほど。
図書館から最終巻を借りてきた。

清朝末期の中国大陸を舞台に繰り広げられるスペクタクルとでも言おうか。
壮大な小説。
いろいろ書きたいこともあるが、後日。

Asada_chugen_niji_3_2Asada_chugen_niji_4浅田次郎 『中原の虹』(三)   
 講談社 2007/5/15発行
 376ページ 1600円(税別)

『中原の虹』(四)
 講談社 2007/11/8発行
 363ページ 1600円(税別)

最終巻に参考資料の掲載されていないのが残念だが、著者はそうとう詳しく調べたのだろうと思う。
とても面白く、勉強になる小説だ。
登場人物が多彩で、それぞれ生き生き描かれているのがいい。

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2010年12月 9日 (木)

【読】第二巻へ(浅田次郎「中原の虹」)

浅田次郎という作家は、さすがだ。感心した。

Asada_chugen_niji_2_3浅田次郎 『中原の虹』(二)
 講談社 2006/11/1発行
 371ページ 1600円(税別)

この先がいよいよ楽しみだ。

第一巻のおわり、感動的な場面があった。
張作霖(チャンヅオリン)の手下のひとりが、昔別れた妻を殺さなければいけない羽目におちいった。
なぜなら、八年前に別れてからずっと行方の知れなかった妻と再会できたとき、彼女は敵対する馬賊の一員になっていたから。
その男(馬占山=秀芳 シウフアン)のせりふ。

<別れてから八年の間、ずっと考え続けていた。俺は命知らずの馬賊だけれど、賛賛(ツアンツアン)は俺の命だった。かけがえのない命は、俺のこの命じゃなくって、賛賛だった。>

<俺はもう神も仏も信じねえ。観音様も文殊菩薩も、太上老君も孔夫子も関帝様も、くそくらえだ。/信じられるのは人間だけだと、俺はあのとき思い知らされた。神仏のひどいいたずらを、あんたは体を張って被い隠そうとした。>

<なあ、雷哥(レイコオ)。あんたはあんな芝居が、白虎張(=張作霖)に通用すると思ったか。たぶん自信はなかったろう。だとすると、あんたはてめえがぶち殺されるのを覚悟で、賛賛の命を助けようとしたことになる。/たしかに神仏は信じられねえ。だが、人間は信じられると、俺はあのとき初めて思い知ったんだ。……>

「信じられるのは人間だけだ」 ―― ひさしぶりに温かい言葉に出会って、電車の中で読みながら涙が出そうになった。

さて、明日からはいよいよ二巻目だ。
『マンチュリアン・リポート』 で馴染みのある、李春雲(リイチュンユン=春児 チュンル)や、日本軍の少尉・吉永将(よしなが・まさる)、新聞記者の岡 圭之介といった面々が、はやくも登場。
面白くなってきたぞ。


【2010/12/12追記】
参考サイト 「中原の虹」特集 (講談社のサイト)
講談社BOOK倶楽部:中原の虹
http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/chugen/index.html

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2010年12月 7日 (火)

【読】こいつは面白い(浅田次郎「中原の虹」)

きのうから今日にかけて、一巻目の半分ほど読みすすんだ。
まだ全体(四巻)の八分の一だが、なかなかいい。

Asada_chugen_niji_1浅田次郎 『中原の虹』 (一)
 講談社 2006年

今日読んだ部分で、とくに印象に残ったところを引用してみよう。
 <生まれ育ったこの国がいったいどんなことになっているのか、春雷(チュンルイ)は知らなかった。シベリアからやってきた何十万人もの大鼻子(ダアビイヅ)と海を渡ってきた何十万人もの東洋鬼(トンヤンクイ)が、満州の大地を戦場に変えてしまった。清国はその両方から金を貰って、戦場を貸したのだという。
 そもそも満州は皇帝陛下のふるさとである。だから永らく聖なる封禁の地とされて、漢族でさえ立ち入ることはできなかった。その侵すべからざる大地で、こともあろうに日本とロシアが派手な戦をしたというのだから、話はまるでわからない。>
<満州の民を守ることができるのは、自警団として立ち上がった馬賊だけであった。みなが無知で野蛮ではあるけれども、壮士なり義士なりという呼称は、あながちお題目ではなかった。>

「 大鼻子(ダアビイヅ)」とは、日露戦争に敗れたロシア兵の残存部隊を指すことばである。
よそさまの国に土足で踏み込んだ日本軍はもちろん、日本との戦争に敗れたはずのロシア兵(コサック兵)によっても、「満洲」の地は踏みにじられていたのだ。
「坂の上の雲」が日本とロシアという軍事大国の視点からの日露戦争の物語りとするなら、この小説は、中国の民衆の立場から日露戦争後の混迷する「満洲」を生き生きと描いたものだ。

ちなみに、「東洋」とは、もともと中国から日本を指す呼称だった。
だから「東洋鬼(トンヤンクイ)」なのである。

私たちが学校で教わった歴史の授業では、「馬賊」だの「軍閥」だのと簡単に片づけられていたが、この物語に登場する、張作霖(チャンヅオリン)や馬占山(マーチャンシャン)といった「馬賊」の男たちの、なんと魅力的なことか。

中国語の地名や人名の読み方が難しいのだが、ルビがふんだんに振られているので、ありがたい。
これからしばらくのあいだ、どっぷりと浸かることができそうな長篇小説だ。


― Wikipedia 張作霖 より ―
張 作霖(ちょう さくりん, Zhang Zuolin)は中華民国初期の軍閥政治家で、北洋軍閥の流れを汲む奉天派の総帥。満州の統治者であり張学良・張学銘・張学思の父。字は雨亭。
 遼東半島の付け根に位置する海城県で生まれる。生家はあまり豊かではない上に早くに父と死別、継父とは気が合わず、家を飛び出したと言われている。その後吉林省に渡り、馬賊に身を投じた。当時の東三省は警察力が弱く、非合法組織が数多く存在した。張はその中でたちまち頭目となり、朝鮮人参や、アヘンの密売で利益を得ていたと考えられる。彼の仲間には後に満州国の国務総理を務めた張景恵などがいた。
 1904年に日露戦争が勃発し、東三省は戦場となった。張はロシア側のスパイとして活動し、日本軍に捕縛されたが、張に見所を認めた陸軍参謀次長・児玉源太郎の計らいで処刑を免れた。この時、児玉の指示を受けて張の助命を伝令したのが、後に首相として張と大きく関わることとなる田中義一(当時は少佐)である。その後は日本側のスパイとしてロシアの駐屯地に浸透し、多くの情報を伝えた。
 日露戦争後の1905年、東三省の統治体制を引き締める為に八旗兵の出身である趙爾巽が同地に派遣された。彼は行政手腕を以て知られ、財政収入の確保に奔走するとともに、地域の治安向上にも努め、馬賊に対しては帰順すれば軍隊に任用する旨を頭目たちに伝えた。張はこうした状況の変化にいち早く対応し、清朝に帰順して2千程度の規模を持つ軍の部隊長となった。この帰順は形式的なものであり、馬賊として広く知られていた張の下には更に多くの馬賊が集まり、隠然たる勢力を形成していった。
 この時期の東三省は、中国各地からの漢族の大量移住とロシア・日本による介入のため急速に開発が進んでいた。……

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2010年12月 6日 (月)

【読】読んでみようかね(浅田次郎「中原の虹」)

図書館から借りてきたのだが、いったい幾人の手を経てきたのだろう。
本がかなり傷んでいるのは、それだけ人気のある証拠か。

Asada_chugen_niji_1浅田次郎 『中原の虹』 (一)
 講談社 2006年9月発行
 313ページ 1600円(税別)

張作霖(チャンヅオリン)の物語りである。
『マンチュリアン・リポート』でも、張作霖が魅力的な人間として描かれていたが、あの時代の「馬賊」の魅力は、船戸与一『満州国演義』で先刻承知している。
船戸さんの小説にはとうていかなわないけれど、また、ちょいと読みにくいところもあるけれど、辛抱して読んでみようかね。
全四巻というのは長いなあ。

― e-honサイトより ―
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031778158&Action_id=121&Sza_id=B0
<英雄たちが、大地を駆ける。隠された王者の証「龍玉」を求めて、壮大な冒険が、いま幕を開ける。人間の強さと美しさを描ききった中国歴史小説、刊行開始!「鬼でも仏でもねえ。俺様は、張作霖だ」「汝、満洲の覇者となれ」と予言を受けた貧しき青年、張作霖。のちに満洲馬賊の長となるその男は、大いなる国の未来を、手に入れるのか。栄華を誇った王朝に落日が迫り、新たなる英雄が生まれる。>

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2010年12月 2日 (木)

【読】浅田次郎 「マンチュリアン・リポート」 を読む

浅田次郎の小説を読むのは、これが二作目。
『終わらざる夏』 もそれなりに面白かったが、この小説もなかなかのもの。
楽しめた。

Asada_manchurian_report浅田次郎 『マンチュリアン・リポート』
 講談社 2010/9/17発行
 303ページ 1500円(税別)

『終わらざる夏』(上下二巻)は、敗戦まぢかの千島列島 占守島が主な舞台だったが、こちらは「満州」が舞台。
時は、張作霖爆殺の翌年、昭和4年(1929年)だ。

なぜ 『マンチュリアン・リポート』 などと気取ったタイトルなのか、不思議なきもちで読んでいたが、後半に、タイトルの謎を明かす会話が綴られていて、はたと膝を打った。

― 以下 引用 (本書P.192-193) ―
「そりゃああなた、報告書じゃなくて上奏文でしょうに」
「いえ、儀礼的な言辞は一切無用と命じられておりますので」
「しかし、報告書じゃいくら何だって畏れ多い――あんた、軍人やろ。満州報告書なんぞと新聞の特派員のようなこと言うて、よう口が腐らへんな」
(中略)
「せめてモダンな名ァを付けたらどうや。英語でいうなら、マンチュリアン・リポートやね」
― 引用 ここまで ―

あまり書くと、まだ読んでいない人へ「ネタバレ」になるので、これ以上は書かない。

各章の扉に印刷されている章題が凝っている。
すなわち、「満洲報告書 第一信」は楷書体(?)で、その上に英語で「A Manturian Report No.1」とあり、これが第七信まで。
報告書の合間に、「鋼鉄の独白 1」と、こちらは明朝体。その上に英語で「A Monologue of Iron No.1」とある。こちらは、No.6まで。
(書体に詳しくないので、ちがっていたらお許しを願うが、要は書体を変えるという芸の細かさを言いたい)

「鋼鉄の独白」とは何ぞや。それも、ここには詳しく書かないが、意表をつく発想で、この作品に厚みをもたせている。

浅田次郎氏の他の著作を知らないが、小説の構成に凝る作家のように思える。
構成に凝りすぎると小説としての面白さをそぐことになりがちだが、ここではみごとに成功していると思う。

それはともかく、有名な「張作霖爆殺」(当時は「満洲某重大事件」と呼ばれていた)を、このようにユニークな視点で小説に仕立てたあげたことに、驚き、感心した。
私には、ひさしぶりのヒットだった。

この作家の他の作品も読んでみたいきもちになってくるが、読みたい本が山ほどあるので、買わずにいよう。……そう言いながら、古本屋でつい買ってしまいそうな予感がして、自信はない。
例えば 『蒼穹の昴』、『中原の虹』 といったタイトルに食指がうごく。


― オンライン書店 e-honサイトより ―
『蒼穹の昴』 全4巻セット
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000008248015&Action_id=121&Sza_id=A0
『中原の虹』 第1巻
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032477428&Action_id=121&Sza_id=B0

……市立図書館にあったので(貸出中ばかりだったが地区館の一部に数冊)、ネットで「予約ボタン」をプチっとやってしまった。便利だなあ。
とりあえず、『中原の虹』(全4巻中、1・2の二巻、単行本)を予約。週末には受け取れるだろう。

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2010年11月26日 (金)

【読】勉強になるなあ

このところ、こんな本を読んでいる。
明治からあと、この国が「近代国家」の体裁をととのえるまでのあいだ、いろんなことがあったのだなあ。
私たちが学校で教わらなかったこと、通り一遍の知識しかなかったこと。
知るだけでは不十分だけれど、知るところから始まると思う。
知るは力なり、なんちゃって。

Matsumoto_nationalismMatsumoto_nationalism2松本健一 『日本のナショナリズム』
 ちくま新書846 2010年5月発行
 187ページ 680円(税別)
『畏るべき昭和天皇』(毎日新聞社)も面白かったが、この新書も読みごたえがあった。
それにしても、マツケン(私が今勝手に名づけた)という人がこんな顔をしていたとは……。ちょっとイメージがくずれてしまった。
今話題の仙石由人氏とお友達だというのも、「ん?」なのだが、素直に読めばこの人の主張には頷けるところも多い。
『北一輝論』(講談社学術文庫)も、そのうち読んでみたいと思う。



― 『日本のナショナリズム』 著者略歴より ―
松本健一(まつもと・けんいち)
1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。麗澤大学教授。評論・評伝・小説など多方面で活躍する。著書に『評伝 北一輝』(全5巻、岩波書店)、『近代アジア精神史の試み』『大川周明』『竹内好論』『開国のかたち』(以上、岩波現代文庫)、『日本の近代1 開国・維新』(中央公論社)、『泥の文明』(新潮選書)、『海岸の歴史』(ミシマ社)、『司馬遼太郎の「場所」』(ちくま文庫)など、共著に『占領下日本』(筑摩書房)などがある。

Matusmoto_nihon_kindai1_2Matsumoto_kita_ikki_2Matsumoto_nihon_shippai_2   


もうすぐ読み終えようとしている、この本も面白い。

Yamamoto_ikenai_ryodo山本皓一 『日本人が行けない「日本領土」』
 小学館 2007年6月発行
 286ページ 1800円(税別)
竹島尖閣諸島の歴史を知り、勉強になった。
鈴木宗男氏や、安部晋三氏との対談も、面白い。
安部サンはともかく、鈴木宗男サンの主張は、それなりにまっとうである。
いわゆる北方領土に関して、日本はもっとねばり強くロシアと交渉しなければいけない、と私も思う。
鈴木宗男氏の主張は、歯舞諸島と色丹島の「2島先行返還論」で、ロシアが柔軟な姿勢を示しはじめていた時期に、せっかくの好機を逃した、というもの。
たしかに、日本政府の弱腰は情けない。
(そもそも北方四島や千島列島は、日本の領土でもなく、ロシアの領土でもなかった。先住民の暮らす場所だった。北海道と呼ばれるようになった島も同様――というのが私の考えだが、それは措いておく)


しかし、まあ、こういう本ばかりでは疲れるので、次は小説でも読もうかな、と思っている。

Asada_manchurian_report浅田次郎 『マンチュリアン・リポート』
 講談社 2010年9月発行
 書き下ろし 303ページ 1500円(税別)

話題の小説で、とても気になっていた。とうとう買ってしまった。
浅田次郎の小説は、『終わらざる夏』しか読んでいないが(『終わらざる夏』には不満もあったのだが)、テーマがテーマなだけに、楽しみにしている。

こうしてみると、「あの戦争」がらみの本ばかり読んでいるなあ。

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