カテゴリー「北方謙三」の15件の記事

2023年11月29日 (水)

【読】北方謙三「チンギス紀」を読み始めた

昨年の暮れから、北方謙三の「大水滸伝」三部作を読み続けて、「岳飛伝」最終巻を今年の夏に読み終えた。

「水滸伝」全19巻
「楊令伝」全15巻
「岳飛伝」全17巻

フィクションなのだが、史実をベースに展開される多彩な人物伝に酔いしれた。

その続編にあたる「チンギス紀」の単行本全17巻が、この夏、完結。

北方謙三[チンギス紀](版元 集英社のサイト)
https://lp.shueisha.co.jp/kitakata/chingisuki/index.html

「大水滸伝」で描かれた世界とは、直接のつながりはないものの、モンゴルを舞台にした壮大な物語のはずだ。

文庫版が出るのは、まだまだ先になりそう。
単行本は、ブックオフでも高値で、手が出ない。
図書館は、どこも予約の行列。

そんななか、相互利用できる立川の、ここから近い地区館ですぐに借りられることを知った。

少しずつ、借りてきて読み始めたところ。
一巻目を読み終えて、いま、二巻目。

登場人物の名前がカタカナで覚えにくい。
広大なモンゴル一帯の、当時の部族・氏族、王国の分布も複雑。
巻頭の地図と登場人物一覧を、常に見返しながら、読み進めている。

北方謙三らしい、歯切れのいい、リズミカルな文体が心地よい。
登場人物たちの絡み合いや、食い物の話にも、ぐいぐい惹きつけられる。

なによりも、主人公のテムジンが魅力的だ。
「楊令伝」の主人公 楊令を思い起こさせる。

読みかけの本や、図書館から借りてきている別の本を差し置いて、しばらくハマりそうな予感。

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2023年7月16日 (日)

【読】読み終えたぞ、北方謙三「大水滸伝」三部作

昨年2022年の暮れから読み続けてきた、北方謙三「大水滸伝」三部作。
最後の『岳飛伝』最終巻を読み終えた。

じつに感慨深い。

読書メーターにあげた感想(255文字までという制限あり)を、載せておこう。

https://bookmeter.com/books/12716151

北方「大水滸伝」三部作読了。昨年暮れから7か月かかった。この巻の幕引きは岳飛の静かな退場(なんとなく予想していた)。史進が生き延びたのも自然な流れ、というか作者のメッセージが込められているのか。梁山泊軍、南宋軍、金軍の最後の決戦シーンには、あいかわらず戦場のイメージが沸かず不満がある。何十万の大軍というのが私の想像力を超える。それはともかく『水滸伝』19巻、『楊令伝』15巻、『岳飛伝』17巻、計51巻を読み終えて感慨深い。胡土児の将来が気になる。『チンギス紀』に繋がるのだろうか。北上次郎の文庫解説がいい。

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2023年7月 8日 (土)

【読】北方謙三「大水滸伝」三部作、あと4巻

昨年2022年暮れから、継続して読んでいる北方謙三の「大水滸伝」三部作。
『水滸伝』 全19巻
『楊令伝』 全15巻
『岳飛伝』 全17巻
いずれも集英社文庫。

北方謙三「大水滸伝」シリーズ ◆中国歴史小説『水滸伝』『楊令伝』『岳飛伝』◆|集英社
https://lp.shueisha.co.jp/dai-suiko/

『岳飛伝』13巻目まで読み終えて、最後の4巻を図書館から借りてきた。

 

『水滸伝』は、ブックオフで古本を買い集め、読み終えた後は、小平図書館友の会のチャリティ古本市に供出。
続く『楊令伝』は、地元の図書館から借りて読んだ。
『岳飛伝』は、文庫版が地元図書館になく、相互利用が始まった小平の図書館から借りて読んでいる。

文庫版にこだわるわけは、巻末の解説が読みたいから。

合わせて51巻の大作を読み続けるのは根気がいるが、それだけ魅力的な小説なのだ。
全巻読了後に、あらためて感想を書くつもりだ。
登場人物が膨大で、舞台も広いので(宋末から南宋時代の中国全土、さらに、西域、日本、南方まで)、内容の紹介は私には無理だが。

長い読書経緯を、記録としてメモ帳に残している読書記録から、コピペしておく。

●2022/12/24~12/27 北方謙三 『水滸伝 一 ―― 曙光の章』 集英社文庫 (2006/10/25) 388ページ 解説:北上次郎
●12/28~12/31 北方謙三 『水滸伝 二 ―― 替天光の章』 集英社文庫 (2006/11/25) 389ページ 解説:大沢在昌
●12/31~1/2 北方謙三 『水滸伝 三 ―― 輪舞の章』 集英社文庫 (2006/12/20) 388ページ 解説:逢坂剛
●2023/1/2~1/3 北方謙三 『水滸伝 四 ―― 道蛇の章』 集英社文庫 (2007/1/25) 390ページ 解説:池上冬樹
●1/4~1/5 北方謙三 『水滸伝 五 ―― 玄武の章』 集英社文庫 (2007/2/25) 390ページ 解説:志水辰夫
●1/6~1/8 北方謙三 『水滸伝 六 ―― 風塵の章』 集英社文庫 (2007/3/25) 388ページ 解説:吉田伸子
●1/8~1/11 北方謙三 『水滸伝 七 ―― 烈火の章』 集英社文庫 (2007/4/25) 389ページ 解説:縄田一男
●1/11~1/12 北方謙三 『水滸伝 八 ―― 青龍の章』 集英社文庫 (2007/5/25) 395ページ 解説:王勇
●1/13~1/16 北方謙三 『水滸伝 九 ―― 風翠の章』 集英社文庫 (2007/6/30) 390ページ 解説:馳星周
●1/16~1/18 北方謙三 『水滸伝 十 ―― 濁流の章』 集英社文庫 (2007/7/25) 398ページ 解説:大森望
●1/18~1/22 北方謙三 『水滸伝 十一 ―― 天地の章』 集英社文庫 (2007/8/25) 389ページ 解説:岡崎由美
●1/22~1/26 北方謙三 『水滸伝 十二 ―― 炳呼の章』 集英社文庫 (2007/9/25) 397ページ解説:張競
●1/26~1/29 北方謙三 『水滸伝 十三 ―― 白虎の章』 集英社文庫 (2007/10/25) 397ページ 解説:西上心太
●1-29~1/30 北方謙三 『水滸伝 十四 ―― 爪牙の章』 集英社文庫 (2007/11/25) 395ページ 解説:細谷正充
●1/30~2/1 北方謙三 『水滸伝 十五 ―― 折戟の章』 集英社文庫 (2007/12/20) 395ページ 解説:茶木則雄
●2/1~2/4 北方謙三 『水滸伝 十六 ―― 馳驟の章』 集英社文庫 (2008/1/25) 390ページ 解説:吉川晃司
●2/4~2/5 北方謙三 『水滸伝 十七 ―― 朱雀の章』 集英社文庫 (2008/2/25) 397ページ 解説:高井康典行(やすゆき)
●2/5~2/6 北方謙三 『水滸伝 十八 ―― 乾坤の章』 集英社文庫 (2008/3/25) 397ページ 解説:夢枕獏
●2/7~2/10 北方謙三 『水滸伝 十九 ―― 旌旗の章』 集英社文庫 (2008/4/25) 395ページ 解説:ムルハーン千栄子
●2/10~2/12 北方謙三 『北方謙三の「水滸伝」ノート』 NHK出版生活人新書300 (2009/9/10) 203ページ
●2/12~2/14 北方謙三(編著) 『替天行道 ―― 北方水滸伝読本』 集英社文庫 (2008/4/25) 419ページ

●2/21~3/2 北方謙三 『楊令伝 一 ――玄旗の章』 集英社文庫 (2011/6/30) 390ページ 解説:宮部みゆき
●3/4~3/7 北方謙三 『楊令伝 二 ――辺烽の章』 集英社文庫 (2011/7/25) 395ページ 解説:北上次郎
●3/8~3/13 北方謙三 『楊令伝 三 ――盤紆の章』 集英社文庫 (2011/8/25) 395ページ 解説:唯川恵
●3/14~3/19 北方謙三 『楊令伝 四 ――雷霆の章』 集英社文庫 (2011/9/25) 397ページ 解説:後藤正治
●3/21~3/24 北方謙三 『楊令伝 五 ――猖紅の章』 集英社文庫 (2011/10/25) 397ページ 解説:小久保裕紀
●3/28~3/29 北方謙三 『楊令伝 六 ――徂征の章』 集英社文庫 (2011/11/25) 398ページ 解説:吉田戦車
●3/31~4/2 北方謙三『楊令伝 七 ――驍騰の章』 集英社文庫 (2011/12/20) 396ページ 解説:宇梶剛士
●4/2~4/3 北方謙三『楊令伝 八 ――箭激の章』 集英社文庫 (2012/1/25) 398ページ 解説:武田双雲
●4/4~4/5 北方謙三『楊令伝 九 ――遥光の章』 集英社文庫 (2012/2/25) 398ページ 解説:川上健一
●4/6~4/10 北方謙三『楊令伝 十 ――坡陀の章』 集英社文庫 (2012/3/25) 396ページ 解説:水森サトリ
●4/11~4/17 北方謙三『楊令伝 十一 ――傾暉の章』 集英社文庫 (2012/4/25) 390ページ 解説:吉田伸子
●4/17~4/22 北方謙三『楊令伝 十二 ――九天の章』 集英社文庫 (2012/5/25) 390ページ 解説:今野敏
●4/23~4/24 北方謙三『楊令伝 十三 ――青冥の章』 集英社文庫 (2012/6/30) 390ページ 解説:張競
●5/3~5/4 北方謙三『楊令伝 十四 ――星歳の章』 集英社文庫 (2012/7/25) 390ページ 解説:東えりか
●5/4~5/5 北方謙三『楊令伝 十五 ――天穹の章』 集英社文庫 (2012/8/25) 388ページ 解説:イオアニス・メンザス

●5/29~5/31 北方謙三 『岳飛伝 一 ――三霊の章』 集英社文庫 (2016/11/25) 390ページ 解説:原泰久
●5/31~6/2 北方謙三 『岳飛伝 二 ――飛流の章』 集英社文庫 (2016/12/25) 390ページ 解説:池上冬樹
●6/2~6/4 北方謙三 『岳飛伝 三 ――嘶鳴の章』 集英社文庫 (2017/1/25) 394ページ 解説:張競
●6/6~6/7 北方謙三 『岳飛伝 四 ――日暈の章』 集英社文庫 (2017/2/25) 384ページ 解説:鳴海章
●6/7~6/8 北方謙三 『岳飛伝 五 ――紅星の章』 集英社文庫 (2017/3/25) 386ページ 解説:諸田玲子
●6/9~6/11 北方謙三 『岳飛伝 六 ――転遠の章』 集英社文庫 (2017/4/25) 392ページ 解説:小梛治宣
●6/13~6/15 北方謙三 『岳飛伝 七 ――懸軍の章』 集英社文庫 (2017/5/25) 390ページ 解説:桜木紫乃
●6/15~6/16 北方謙三 『岳飛伝 八 ――龍蟠の章』 集英社文庫 (2017/6/30) 392ページ 解説:川合章子
●6/16~6/19 北方謙三 『岳飛伝 九 ――曉角の章』 集英社文庫 (2017/7/25) 390ページ 解説:末國善己
●6/19~6/26 北方謙三 『岳飛伝 十 ――天雷の章』 集英社文庫 (2017/8/30) 385ページ 解説:東山彰良
●6/26~7/2 北方謙三 『岳飛伝 十一 ――烽燧の章』 集英社文庫 (2017/9/25) 388ぺージ 解説:細谷正充
●7/3~7/5 北方謙三 『岳飛伝 十二 ――瓢風の章』 集英社文庫 (2017/10/25) 394ページ 解説:西上心太
●7/6~7/7 北方謙三 『岳飛伝 十三 ――蒼波の章』 集英社文庫 (2017/11/25) 392ページ 解説:小山進

●北方謙三 『岳飛伝 十四 ――撃撞の章』 集英社文庫 (2017/12/20) 394ページ 解説:吉田伸子
●北方謙三 『岳飛伝 十五 ――照影の章』 集英社文庫 (2018/1/25) 395ページ 解説:宇梶剛士
●北方謙三 『岳飛伝 十六 ――戎旌の章』 集英社文庫 (2018/2/25) 394ぺージ 解説:山田裕樹
●北方謙三 『岳飛伝 十七 ――星斗の章』 集英社文庫 (2018/3/25) 391ぺージ 解説:北上次郎


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2023年7月 1日 (土)

【読】2023年6月に読んだ本(読書メーター)

北方謙三『岳飛伝』10巻目まで読んだ。
他に2冊。

6月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:4044
ナイス数:137

岳飛伝 2 飛流の章 (集英社文庫)岳飛伝 2 飛流の章 (集英社文庫)感想
この巻で、また大きな展開が。子午山の公淑が静かに息を引き取り、王進がその後を追うように自死(といっていいだろう)する章はしんみりと胸に沁みる。王清と蔡豹は子午山を離れて自立。二人のこの先が気になる。また、自らの弱さを隠そうともしない岳飛の姿が魅力的。呉用を頭領とする梁山泊が思いをあらたに動き出し、金軍との大きな戦闘(決戦?)が始まる。若い宣凱は呉用の跡を継ぐのか? 次巻の展開がいよいよ楽しみ。北方大水滸伝の最終作は、じつに面白い。さすがだ。
読了日:06月02日 著者:北方 謙三

岳飛伝 3 嘶鳴の章 (集英社文庫)岳飛伝 3 嘶鳴の章 (集英社文庫)感想
3巻目。舞台がさらに南方まで広がり、この先のスケールの大きさを予感させる。カンボジアから、なんとビルマ(ミャンマー)まで! 梁山泊若手の活躍(宣凱、秦容、王貴、王清たち)からも目が離せない。老いてなお強い史進、人間味あふれる岳飛。さらに、前面に出てきた三人の個性的な若い女性たちも魅力的。北方謙三が描く人物の奥深さ! この巻の文庫解説(張強氏)は、北方大水滸伝の成り立ちを本家水滸伝と比較していて、たいへん興味深い。
読了日:06月04日 著者:北方 謙三

魂魄の道魂魄の道感想
これまで何冊も作品を読んだ作家の新刊(2023年2月刊)。2014年から2022年まで雑誌に発表された5編の中短編が集められている。生き延びた人たちの視点から沖縄戦での苦難と戦後の苦悩が語られる。ずっしりと重い内容。
読了日:06月05日 著者:目取真 俊


岳飛伝 4 日暈の章 (集英社文庫)岳飛伝 4 日暈の章 (集英社文庫)感想
南方であらたな試みを始めた秦容・李俊一行が、物語の広がりを予感させる。金軍と岳飛軍・南宋軍との大規模な戦闘シーンは、私には、あいかわらずイメージがつかみにくいが、波乱含みではある。北へ突出した岳飛軍は、南宋の秦檜たちの停戦への動きによって見捨てられるのだろうか。次巻に向かい、展開が楽しみだ。この巻の解説(鳴海章)が言う「遠大な物語でありながら、どのページを繰っても、熱く、7着ればいつでも血が噴き出しそうに躍動している」北方大水滸伝なんだな、と、あらためて思う。『岳飛伝』は全体のまだ四分の一弱(全17巻)。
読了日:06月07日 著者:北方 謙三

岳飛伝 5 紅星の章 (集英社文庫)岳飛伝 5 紅星の章 (集英社文庫)感想
呉用がひっそりと息を引き取った。その終焉シーンが、いい。西遼では韓成が「戦は、いやだ、人が死ぬ」と涙を流しながらも宣撫を続け、上青の許へ着く。その姿にもジーンとくる。遠く南方の宣凱たちの部隊では、ついに甘藷糖が完成。彼らの創意工夫が、すごい。さらに日本では、十三湊に着いた張朔が平泉の藤原基衡・秀衡父子に謁見する。物語の舞台はどんどん広がり、この先の梁山泊の交易のスケールがどこまで広がるのか。矛をおさめた岳飛の今後も、おおいに気になる。
読了日:06月08日 著者:北方 謙三

岳飛伝 6 転遠の章 (集英社文庫)岳飛伝 6 転遠の章 (集英社文庫)感想
文庫版カバー裏にあるように、「シリーズ前半、最大のクライマックスを迎える緊迫の第六巻」。まさか、岳飛がこの巻で死んでしまうことはないだろう(岳飛伝なのだから)と思いながらも、手に汗握る展開。頭領を失った岳家軍はどうなるのか。なにもかも失い、身ひとつで南方に逃亡する岳飛は? 全17巻のまだ三分の一だ。「水滸伝」「楊令伝」と続いてきて、登場人物たちの流れに大きな瑕疵がないのは、みごと。舞台のスケールがどんどん広がってきて、この先が楽しみだ。
読了日:06月11日 著者:北方 謙三

時々、慈父になる。時々、慈父になる。感想
この作家の熱心な読者でもないが、なんとなく読んでみようと図書館から借りてきた。面白かった。『スノードロップ』『パンとサーカス』は読んでいて、注目している作家ではある。「本書はフィクションです」とあるのが可笑しいが、ご自身の半生(ご子息誕生から現在まで)は、ほぼ実話だろう。ミロク(彌六)と名付けられたご子息が、活躍していることも知った。冒頭、エトロフ島訪問記が私には新鮮だった。芥川賞選考委員に選ばれ、石原慎太郎とやりあったくだりも面白い。全編を通じて反「アベ政治」への痛烈な批判は、この人らしく、いっそ痛快。
読了日:06月12日 著者:島田 雅彦

岳飛伝 7 懸軍の章 (集英社文庫)岳飛伝 7 懸軍の章 (集英社文庫)感想
湄公河(メコン川)の畔に落ち着いた岳飛。象の河で着々と「小梁山」を築き続ける秦容たち。西域では韓成が活躍。十三湊では藤原一族との結びつきを深める張朔。スケールの広がりに目を見張り、この先の展開への期待が増す。岳飛に懐いて子分のようになった猿の骨郎が可笑しい。
読了日:06月15日 著者:北方 謙三

 

岳飛伝 8 龍蟠の章 (集英社文庫)岳飛伝 8 龍蟠の章 (集英社文庫)感想
金国と南宋が組んで、梁山泊に挑んでこようとする。梁山泊致死軍の攪乱が頼もしい。海上でも大きな戦闘の予感。南方では「象の河」一帯(甘藷園、造船所、小梁山)の秦容・李俊らを頭とする梁山泊と、「湄公河」の岳飛たちが、ついに連携。南宋との戦が始まりそうで、この先の展開にますます期待が高まる。なお、この巻の文庫版解説(川合章子=歴史系フリーライター)には、歴史上の実在人物である岳飛と秦檜について詳しく書かれていて、きわめて興味深い。
読了日:06月16日 著者:北方 謙三

岳飛伝 9 曉角の章 (集英社文庫)岳飛伝 9 曉角の章 (集英社文庫)感想
全17巻の折り返し。撻懶の病死を契機に国内の矛盾が表面化してくる金国。水軍を強化して梁山泊の拠点(沙門島)と水軍を襲う南宋。この二国には滅亡の気配が感じられる。対照的に、梁山泊は秦容が率いる小梁山が発展を続け、岳飛との連携も進み、北方の高山の傭兵たちを配下に加えて、あたらしい国ができていく予感。このあたりの展開は、胸がすく思いだ。王清の悩みが微笑ましく、今後の命運が気になる。長大な物語(『水滸伝』19巻、『楊令伝』15巻に続く本作)を、まだしばらく楽しめそうだ。作者の技量にあらためて脱帽。
読了日:06月19日 著者:北方 謙三

岳飛伝 10 天雷の章 (集英社文庫)岳飛伝 10 天雷の章 (集英社文庫)感想
岳飛と秦容、それに蕭炫材が手を組み、南方の動きが激しくなった。水上戦で手痛い敗北を喫した南宋軍の動きも、興味深い。王貴と崔蘭がめでたく結ばれる一方で、蔡豹の悲しい死。あいかわらず、波乱万丈。ますます目が離せない。というか、次巻への期待が高まる。
読了日:06月26日 著者:北方 謙三

読書メーター

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2023年6月 1日 (木)

【読】2023年5月に読んだ本(読書メーター)

5月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3875
ナイス数:205

真珠とダイヤモンド 上真珠とダイヤモンド 上感想
今年2月に出たばかり。人気作家・桐野夏生の新作とあって図書館の順番待ちに並ぶこと2か月、ようやく手元に届いた。1986年、バブル最盛期の証券会社。マネーゲームの異様な熱気。その時代に一攫千金を夢みる3人の証券会社新入社員が主役。上巻の冒頭は、ホームレスに近い境遇まで身をやつした、そのうちの一人の女性の描写から始まり、遡って、過去の入社当時の"生き馬の目を抜く"証券会社の様子が異様な迫力で描かれる。話の展開が桐野夏生らしく、いかにも"ストーリーテラー"だなと、感心させられる。興奮しつつ、一気に読了。下巻へ。
読了日:05月01日 著者:桐野 夏生

真珠とダイヤモンド 下真珠とダイヤモンド 下感想
下巻もいっきに読了。プロローグで感じた謎が、エピローグで閉じる、みごとな展開。タイトルの謎も最後に明かされる(薄汚れた真珠と、輝かないダイヤ)。バブルの時代から、それがはじけて数十年。コロナ後の日本社会。この作品でも、女性の生き難さが描かれる。桐野夏生らしい、社会問題を扱った傑作。桐野作品は、どれも救いようのない話ばかりなのだが、私はこの作家が次々と生み出す作品を、これからも追い続けるだろう。
読了日:05月02日 著者:桐野 夏生

間違う力 (角川新書)間違う力 (角川新書)感想
タイトルがずっと気になっていた本。ようやく手に入れて読むことができた。高野さんには珍しい新書(親本は2010年刊行の単行本)。世に「〇〇する力」の類いの本は多いが、これはいかにも高野さんらしい内容。災い転じて…というが、何でもポジティブに捉える高野さんらしく、爽快な逸話満載。仲のいい内澤旬子さんのことも書かれていて、内澤ファンの私にはうれしい。革張り本を作りたいために屠畜の世界へ(『世界屠畜紀行』)、さらに自分で豚を飼育してしまう(『飼い喰い』)…そんな内澤さんと高野さんは似ているのかも。好奇心と実践力。
読了日:05月03日 著者:高野 秀行

楊令伝 14 星歳の章 (集英社文庫)楊令伝 14 星歳の章 (集英社文庫)感想
いよいよ終盤。この巻の最終章が泣かせる。南宋との戦で郭盛が壮烈な死を遂げ、史進は愛馬を死なせてしまう。史進の人間味がいい。この巻を読んでいて思ったのだが、楊令が思い描く「国」の姿には、作者・北方謙三の想いが込められている気がする。「岳飛伝」につながる次巻・最終巻が楽しみだ。文庫解説の東えりかは、元北方事務所の秘書だったとか。この解説もいい。
読了日:05月04日 著者:北方 謙三

楊令伝 15 天穹の章 (集英社文庫)楊令伝 15 天穹の章 (集英社文庫)感想
最終巻をいっきに読了。15巻、長かった。楊令の死は、はじめから予想(覚悟)していたが、こんな最期になるとは…。大将どうしの一騎打ちというか決闘で終わらせるところに、ちょっと違和感もあるが、北方流ハードボイルド的味わい。このあと『岳飛伝』で、楊令が願った民の国への想いは、岳飛に受け継がれるのだろうか。「大水滸伝」三部作の最終作品『岳飛伝』がどのような展開になるのか知らないが、岳飛も秦檜も南宋の実在人物だと知ったので、期待しよう。日本や西域も、ますます、からんでくるのだろうな。
読了日:05月05日 著者:北方 謙三

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)感想
積読本を思いだして読んだ。新書にしては分厚い本だったが、軽快な文章で、すいすい読めた。写真も満載。ひさしぶりの「エンタメノンフ」を堪能。本書に記載されている「ナショジオ日本語版」の「【研究室】研究室に行ってみた。モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所 サバクトビバッタ 前野ウルド浩太郎」連載記事をみつけた。https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140114/379960/ 私が敬愛する高野秀行さんとのつながりも、読後の検索で知った(Twitter)。
読了日:05月07日 著者:前野ウルド浩太郎

無言館 (アートルピナス)無言館 (アートルピナス)感想
地元の図書館の片隅に、利用者が不要になった本を置いていく「無料交換棚」がある。ほしい本があれば勝手に持ち帰ってよい。そこでみつけた一冊。上田市の「無言館」のことは知っていたが、行ったことはない。戦没画学生たち(ほとんどが繰上卒業、学徒動員で戦地に赴いた)の遺作集。私の父親より少しだけ年長の青年たちの経歴を読む。こういう才能ある画家・彫刻家まで動員しなければいけなかった(戦える兵士が残っていなかった)、あの戦争の理不尽を思う。
読了日:05月08日 著者:窪島 誠一郎

私たちはどこから来て、どこへ行くのか: 科学に「いのち」の根源を問う (単行本)私たちはどこから来て、どこへ行くのか: 科学に「いのち」の根源を問う (単行本)感想
これも積読本だったもの。古書店の店頭均一棚にあったのをタイトルに惹かれて買った。1999年から2003年に書かれたエッセイを集めたもの。タイトルは著者が制作した映画『A』『A2』に因む。オウム信者を扱ったこの2本の映画に関するエッセイがほとんど。私は知らなかった映画なのだが、なるほど、そんなことがあったのかと。この著者の小説『千代田区一番一号のラビリンス』(2023年3月)や『日本国憲法』(2007年/太田出版)も読んだが、どんな人かわかった気がする。『放送禁止歌』(知恵の森文庫/2003年)も読みたい。
読了日:05月10日 著者:森 達也

放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法感想
つい先日読んだ高野さんの『間違う力』(角川新書/親本は2010年出版)で知った本。絶版だったので中古本を入手。2009年11月出版だから、その少し前に上智大学で非常勤講師を務めたとき(東南アジア文化論)、ご自身の知り合い9人を呼んで、高野さんを聴き手に話してもらったときの内容。自由でユニークな生き方をしてきたゲストたちと、高野さんとの、掛け合い漫才を聴くようで、じつに面白い。卒業後の就職・進路に悩む学生の気もちが”癒された”というのも納得。こういう人生もあるのかと思うと、たしかに、生きていくのが楽になる。
読了日:05月11日 著者:高野 秀行,二村 聡,下関 崇子,井手 裕一,金澤 聖太,モモコモーション,黒田 信一,野々山 富雄,姜 炳赫

アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)感想
「アフリカの日々」は、長大で、私には散漫な印象。読むのに苦労した(途中でやめようかと思ったが、なんとか読み通した)。メイ・サートンの『夢見つつ深く植えよ』に通じる味わいではあったが…。独立前のケニヤ、野生動物をやたらとハンティングする感覚には違和感も。いっぽう、「やし酒飲み」は抜群に面白く、いっきに読み終えた。私だけの印象かもしれないが、アイヌに伝わるユカラやウェペケレを想起させる。なんという豊饒な世界! この作者チュツオーラにも興味がわく。
読了日:05月17日 著者:イサク・ディネセン,エイモス・チュツオーラ

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)「空気」と「世間」 (講談社現代新書)感想
この著者の『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』 (講談社現代新書/2017年)を読んだことがあるのと、本書のタイトルに惹かれて買ったままだった積読本。かつて阿部謹也が論じた「世間」と、山本七平が論じた「空気」を引き合いに出して、「空気を読む(読め)」と言われるようになった昨今の「空気」とは、「世間」が流動化したものなのだと喝破。興味深くはあったし、視点の鋭さを感じるところもあったが、いまひとつピンとこなかった。導入としてお笑い番組の「空気」をとりあげているところから、ちょっと読む気が半減。
読了日:05月22日 著者:鴻上 尚史

岳飛伝 1 三霊の章 (集英社文庫)岳飛伝 1 三霊の章 (集英社文庫)感想
ついに北方謙三「大水滸伝」三部作の最終作に突入。期待を裏切らないスケールの大きな物語の始まりだ。偉大な頭領・楊令を失った喪失感をそれぞれの胸に秘めながら、梁山泊の生き残りたちの人間味あふれる苦悩がよく描かれている。王貴や張朔といった梁山泊二世たちの今後の活躍や、あらたに登場した耿魁(こうかい)という魅力的な人物のこれから先も楽しみだ。岳飛と一兵卒との会話が印象的だった。子午山の公淑・郝嬌の二人の女性の会話も胸を打つ。原泰久(漫画家)による巻末解説がいい。
読了日:05月31日 著者:北方 謙三

読書メーター

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2023年4月 1日 (土)

【読】2023年3月に読んだ本(読書メーター)

2023年3月は、北方謙三『楊令伝』(『水滸伝』の続編)を読み続けている。
あいまに、岡崎武志さんの本を3冊。

3月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:3301
ナイス数:108

楊令伝 1 玄旗の章 (集英社文庫)楊令伝 1 玄旗の章 (集英社文庫)感想
北方『水滸伝』に続けて読み始めた。梁山泊の生き残りたち、楊令、梁山泊二世たちが、あらたな物語を展開していく予感。子午山の王進のもとに、あらたな梁山泊二世が預けられる。北の遼・金では”幻王”の正体が巻末で明かされ、次巻以降につながる。この先が楽しみだ。この巻の解説は宮部みゆき。
読了日:03月02日 著者:北方 謙三

楊令伝 2 辺烽の章 (集英社文庫)楊令伝 2 辺烽の章 (集英社文庫)感想
楊令が梁山泊に復帰。岳飛(実在の人物だと知った)という少年がこの巻で登場。なるほど、彼が後続の『岳飛伝』の主人公になるのか。この巻の解説は北上次郎(見黒孝二、つい先日、惜しくも亡くなった)。その解説によれば、『楊令伝』第九巻で大転換があるという。この先も楽しみな大作ではある。
読了日:03月07日 著者:北方 謙三

楊令伝 3 盤紆の章 (集英社文庫)楊令伝 3 盤紆の章 (集英社文庫)感想
この巻で物語は大きく動き始める。楊令が梁山泊の頭領として北から復帰。金と遼の戦い。江南では方臘というとてつもない宗教指導者が大きな叛乱を起こし、その懐に趙仁を名乗って潜入している呉用の運命や如何。まだまだ先は長い。
読了日:03月13日 著者:北方 謙三

楊令伝 4 雷霆の章 (集英社文庫)楊令伝 4 雷霆の章 (集英社文庫)感想
梁山泊二世たちの活躍が目立つ。楊令を筆頭とする、子午山の王進の許で鍛えあげられた若者たち。なかでも花飛麟が頼もしい将校に成長。この巻の終盤、子午山で修行した楊令、史進、鮑旭、馬麟、花飛麟、楊平の六人が集い、王母(王進の母)の死を焚火を囲んで悼むシーンにはジーンときた。あたらしい梁山泊の周辺で、にわかに戦の匂いが。次巻が楽しみだが、ここらで毛色のちがう別の本も読んでみようか、というところ。
読了日:03月19日 著者:北方 謙三

楊令伝 5 猩紅の章 (集英社文庫)楊令伝 5 猩紅の章 (集英社文庫)感想
江南での長い長い方臘の乱が、ようやく童貫軍によって鎮圧された。気分の悪くなりそうな宗教叛乱の鎮圧。信徒たちの「度人」という行為が不気味。趙仁がようやく呉用に戻って梁山泊に復帰(というか半ば拉致された格好)。北では金の阿骨打が死亡。青蓮寺の李富と聞煥章の競り合いも興味津々。全15巻のこの先の展開がまったく予測できない。まだ5巻目。道のりは遠い、という感じ。
読了日:03月24日 著者:北方 謙三

憧れの住む東京へ憧れの住む東京へ感想
個人的にもよく知っている岡崎武志さんの新刊。ご本人から出版記念イベントの案内をいただいて知った本。三部作とも言える『上京する文學 春樹から漱石まで』(新日本出版社のち、ちくま文庫)『ここが私の東京』(扶桑社のち、ちくま文庫)に続く三冊目。赤瀬川原平、洲之内徹、浅川マキ、田中小実昌、山之口貘、耕治人の6人
表現者(いずれも上京者)の上京後の足取りが、緻密な下調べに依って、ていねいに描かれている。私もまた上京者。岡崎さん(大阪出身)の思いがよくわかる。なかでも浅川マキと山之口貘の章が、私には特にうれしかった。
読了日:03月28日 著者:岡崎武志

楊令伝 6 徂征の章 (集英社文庫)楊令伝 6 徂征の章 (集英社文庫)感想
最終章にいたく感動。扈三娘が絶体絶命のピンチから脱出。聞煥章の死。童貫が子午山の王進を訪ねる。…思いがけない展開だった。楊令が洞庭山を訪れて呉用を梁山泊に復帰させる。いよいよ梁山泊軍と童貫率いる宋禁軍との戦が始まるのか。まだ6巻目。この先、どういう展開が待っているのだろう。
読了日:03月29日 著者:北方 謙三

ここが私の東京 (ちくま文庫 お-34-10)ここが私の東京 (ちくま文庫 お-34-10)感想
単行本も持っているが文庫で読んだ。文庫版には「草野新平」の章が追加されており、牧野伊三夫さん(画家で岡崎さんと親しい。本書の装画・挿画も担当)の解説文がある。この本の前に読んだ『憧れの住む東京へ』(2023年1月刊)の前作にあたる(単行本は2016年刊)。文庫巻末に追加されている岡崎さん自身の上京記「これが私の東京物語」が興味ぶかい。さまざまな”上京者”にそそぐ岡崎さんの眼差しは、優しく、あたたかい。それにしても、とりあげる人物たちについてよく調べあげたものだと感心する。
読了日:03月30日 著者:岡崎 武志

上京する文學 (ちくま文庫)上京する文學 (ちくま文庫)感想
岡崎さんの「上京者シリーズ」と呼びたい一連の著作の一冊目。2012年上梓の単行本を持っているが、書棚で眠ったまま。文庫化(2019年)されたものを買い求め、勢いで読んだ。単行本とは収録順序が違う。冒頭が村上春樹(単行本では斎藤茂吉)。書名の副題も「漱石から春樹まで」が「春樹から漱石まで」に変わっているのが興味を引く。そのほか、文庫版には岡崎さんが敬愛する野呂邦暢の章が加えられ、重松清による自身の上京記が「解説」代わりに添えられている。岡崎さんの人がらを感じさせるウイットに富んだ文章に、あらためて感心した。
読了日:03月31日 著者:岡崎 武志

読書メーター

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2023年3月 1日 (水)

【読】2023年2月に読んだ本(読書メーター)

昨年の暮れから一か月半ほどかけて、北方『水滸伝』を読了。
続編の『楊令伝』(集英社文庫全15巻+読本)を図書館から借りてきて読み始めているところ。

2月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3517
ナイス数:153

水滸伝 15 折戟の章(集英社文庫 き 3-58)水滸伝 15 折戟の章(集英社文庫 き 3-58)感想
梁山泊軍と宋軍の戦は、ぎりぎりのところで思いもかけない展開を見せる。この巻で面白かったのは、巵三娘と王英とのエピソード、官軍から拾われた少年・趙林や、王進の許に預けられた張平の成長ぶり、官軍の奥深く入り込む候健の苦悩など。紙一重のところで全滅をまぬがれた梁山泊は、これからどうなる? 次巻に期待。
読了日:02月01日 著者:北方 謙三

 

水滸伝 16 馳驟の章 (集英社文庫 き 3-59)水滸伝 16 馳驟の章 (集英社文庫 き 3-59)感想
梁山泊の豪傑が何人も殺されるいっぽう、青蓮寺の頭目も梁山泊の影の部隊・致死軍の急襲によって、ついに…。この巻でも、間諜・候健の息子・候真が前面に出てくる。漢=豪傑たちばかりでなく女性や少年たちの姿をきっちり描く北方謙三の筆は、すばらしい。巻末の文庫解説、あの”ロックン・ローラー”吉川晃司が”北方オヤジ”へ熱いオマージュを捧げていて、ちょっとびっくり。北方謙三ファン層の広さを知る。いよいよ残すところあと3巻。物語が大きく動きそうな予感。
読了日:02月04日 著者:北方 謙三

水滸伝 17 朱雀の章 (集英社文庫 き 3-60)水滸伝 17 朱雀の章 (集英社文庫 き 3-60)感想
双頭山への官軍の猛攻。春風山・秋風山からの胸のすくような脱出劇。致死軍と高廉軍との壮絶な決戦。盧俊義と魯達の死。子午山で王進に預けられている楊令と張平。等々、描き切れないほど、この巻は中身が濃い。残り2巻に向けて盛りあがっていく。
読了日:02月05日 著者:北方 謙三

 

水滸伝 18 乾坤の章 (集英社文庫)水滸伝 18 乾坤の章 (集英社文庫)感想
たくましく成長した楊令の頼もしさ。『楊令伝』への布石か、舞台が北の遼の国まで広がり、遼に叛旗を翻す阿骨打(あくだ)という女真族の好漢(16巻目から登場)もクローズアップ。そして、私が好きだった林冲がとうとう…(あれほどの強敵=宋を相手の激闘で死んでいく好漢がいない方がおかしいのだが)。胸のすくような奇策でピンチを脱する梁山泊軍。作者の心憎い物語展開に胸を躍らせながら読了。いよいよ童貫率いる官軍との全面決戦となるのが最終巻なのだろう。あと1巻で終わってしまうのかと思うと、ちと寂しい。文庫巻末解説は夢枕獏。
読了日:02月06日 著者:北方 謙三

水滸伝 19 旌旗の章 (集英社文庫)水滸伝 19 旌旗の章 (集英社文庫)感想
昨年末から一か月半かけて全巻通読。さすがに達成感がある。最終巻、いい終わり方だ。替天行道の旗が宋江から楊令に手渡される。梁山泊の生き残りの何人かは、続編『楊令伝』にも登場するようだ。読んでみたい気もするが、全15巻かあ…。気分を変えて少し別系統の本を読んだ後にでも挑戦してみよう。(東京に雪が降った日に読了)
読了日:02月10日 著者:北方 謙三

北方謙三の「水滸伝」ノート (生活人新書 300)北方謙三の「水滸伝」ノート (生活人新書 300)感想
北方版『水滸伝』(集英社文庫)全19巻読破後、作者自身の”メイキング・オブ”ということで読んでみた。作者がこの大作に込めた想いは伝わってくる。続編の『楊令伝』をますます読みたくなる。
読了日:02月12日 著者:北方 謙三

 

替天行道 北方水滸伝読本 (集英社文庫)替天行道 北方水滸伝読本 (集英社文庫)感想
本編の北方版『水滸伝』を読んでいるときに、この本の「人物事典」には、ずいぶん助けられた。あらためて通読。『水滸伝』執筆・出版の裏話満載で面白かった。北上次郎ほかによる評論、対談、年表なども。「文庫版・特別増補の章」がいい。北方謙三デビュー当時からの担当編集者(Yこと山田裕樹氏)との絶妙なコンビネーションが『水滸伝』完成の大きなちからとなっていたことがよくわかる。蛇足だが「読本」を「とくほん」と読むのが正しいことを、この本のルビで知った。長い間「どくほん」と読んでいた(恥)。
読了日:02月14日 著者:北方 謙三

中央線がなかったら 見えてくる東京の古層 (ちくま文庫)中央線がなかったら 見えてくる東京の古層 (ちくま文庫)感想
雑誌「東京人」2012年4月~9月号連載。2012年12月に刊行された単行本の文庫化。巻末の陣内秀信氏と三浦展氏の対談には触発されることが多い。中央線は私にも馴染みの深い鉄道。阿佐ヶ谷、中野界隈に住んでいたこともり、国分寺駅も通勤に使っていた。今も立川駅をよく利用する。そんな中央線を頭から消し去って、古い地形・川・湧水・古道をたんねんに辿ってみることで見えてくる、新宿~中野、高円寺、阿佐ヶ谷の昔の姿が新鮮(第一部)。私には第二部多摩編の方が面白かった。惜しむらくは巻頭のカラー地図が文庫では小さすぎる。
読了日:02月21日 著者:陣内 秀信,三浦 展

魂込め(まぶいぐみ)魂込め(まぶいぐみ)感想
7年ほど前、目取真俊の小説群をまとめて読んでいるので、この短編集も再読のはず。収録されている6編の物語は、どれも沖縄の風土と暮らしの匂いが濃厚。芥川賞受賞作「水滴」の後に書かれた作品群。何度か訪れたことのある沖縄本島や周辺の島々で感じた琉球弧の島々の独特な空気が蘇る。『水滴』も再読したい。明日2023/2/25、パギやんこと趙博さんが「水滴」の一人芝居を演じるのを観に行くので、思いたって読み返してみた。目取真俊、恐るべき作家だと、あらためて思う。
読了日:02月24日 著者:目取真 俊

水滴水滴感想
7年ぶりの再読。芥川賞受賞作「水滴」をパギやんこと趙博さんが一人芝居で演じるイベントがあり、その前に読み直してみた。1985年に沖縄タイムスに連載、加筆修正された「風音」もいいのだが、特攻隊で死んだ戦友の足跡をたどるテレビ局ディレクターが、ちょっと型通りの印象。「オキナワン・ブック・レビュー」の仮構も面白い試みだが、もう少しのひねりが欲しいと感じた。「水滴」は、さすがに傑作。
読了日:02月26日 著者:目取真 俊

沖縄と国家 (角川新書)沖縄と国家 (角川新書)感想
6年前の辺見庸と目取真俊の対談。図書館本。辺野古での座り込み、カヌーでの反対行動を続ける目取真俊、腰が据わっている。その発言は辺見庸をタジタジとさせるほどラジカル。第三章「沖縄戦と天皇制」には刮目させられた。旧日本軍の農民兵と学徒兵、どちらが残酷だったかと古山高麗雄に聞いたところ「そりゃあ、農民兵だよ」と言っていたという辺見庸に対して、出身階層というより社会経験の差だろうと返す目取真俊。沖縄戦での慰安婦の実態、縄ピーと呼ばれた沖縄の慰安婦たち。これまで私の脳裏に浮かばなかったことも。
読了日:02月28日 著者:辺見 庸,目取真 俊

パレスチナに生きるふたり ママとマハパレスチナに生きるふたり ママとマハ感想
パレスチナに通い、現地の人たちに溶け込んで取材を続け、ツイッターを中心とするSNSで発信を続ける高橋美香さん。ビリン村とジェニン難民キャンプで暮らすふたりの女性(美香さんのパレスチナでの居候先)に焦点をあてた新刊の写真絵本。パレスチナ問題は難しいと言われる。が、そこで暮らす人たちの日常をとらえた愛情あふれる写真の数々を見ると、土地を奪われ、日々、死(イスラエルによるに暴虐)と隣り合わせの状況にも、人間の営みがあることが伝わってくる。この本が、おとなたちだけでなく次世代のこどもたちに何かを伝えられることを。
読了日:02月28日 著者:高橋 美香

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2023年2月 2日 (木)

【読】2023年1月に読んだ本(読書メーター)

先月は、北方謙三の『水滸伝』を読み続けていた。
全19巻の16巻目まで進んだところ。

1月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4744
ナイス数:182

水滸伝 3 輪舞の章 (集英社文庫)水滸伝 3 輪舞の章 (集英社文庫)感想
2022年の大晦日から読み始めて新年2日に読了。三巻目になって、ようやく梁山泊をとり巻く人間たちの姿が私にも見えてきた。この巻の最終章、重要人物である宋江が、ついに役人という世を忍ぶ仮の姿を捨て、叛乱軍の首謀として動き始める。宋江の弟・宋清、彼らをサポートする武松、朱仝といった脇役が、この先、活躍していきそうな予感。1巻目、2巻目、3巻目と読み進むうちに、壮大な物語の展開に嵌ってしまいそう。頑張って最終巻まで読み通したい。
読了日:01月02日 著者:北方 謙三

水滸伝 4 道蛇の章 (集英社文庫 き 3-47)水滸伝 4 道蛇の章 (集英社文庫 き 3-47)感想
シリーズ4巻目。どんどん増えてくる登場人物の多彩さ、地理的舞台の広さ、物語全体のスケールの大きさに圧倒されつつ、寸暇を惜しんで読むようになってきた。それほど読者を惹きつける小説。次巻に続く楊志と宋江に迫る危機。さて、どうなるか。
読了日:01月03日 著者:北方 謙三

 

水滸伝 5 玄武の章 (集英社文庫 き 3-48)水滸伝 5 玄武の章 (集英社文庫 き 3-48)感想
この第5巻は、これまで以上に熱い。大きく本格的な戦闘がふたつ。仲間の裏切り、謀略。そして重要な頭目の死。これ以上書くとネタバレになるので詳しく書かないが、まさに息つく暇もないほどの展開。文庫巻末の志水辰夫による解説がいい(ネタバレがあるので本編の前に読まなくてよかった)。そこには、こうある。<それまで押さえに押さえてきたマグマのようなエネルギーが、地下から噴き上げて耳を聾せんばかりの大音響とともに爆発したのが、ほかならぬこの第五巻なのだ。>…続巻がますます楽しみになってきた。
読了日:01月05日 著者:北方 謙三

水滸伝 6 風塵の章 (集英社文庫 き 3-49)水滸伝 6 風塵の章 (集英社文庫 き 3-49)感想
<面白いから、読め! この一行だけでいいのだ、本当は。>――巻末解説(吉田伸子)にこうある。まさにその通り。六巻目に入って、またあらたな人物が梁山泊の豪傑たちに加わる。その経緯が細かく描かれていて、人物像が目に浮かぶ。文体の簡潔さも、この物語の魅力。故井上ひさし氏が書評でこう指摘しているのも頷ける。――<文体の冒険 私がまず一番に注目したことは、北方さんがこの大長編の文章で、ほとんど形容句というものを使っていないことです。> https://allreviews.jp/review/1716
読了日:01月08日 著者:北方 謙三

水滸伝 7 烈火の章 (集英社文庫 き 3-50)水滸伝 7 烈火の章 (集英社文庫 き 3-50)感想
この巻でも重要な人物が死んでいく。それが、ごく自然な展開で、さすが北方謙三。この先、どうなる? どうなる? と目が離せない展開。壮大な物語世界。時間がかかるが最終巻まで読み通したい。
読了日:01月11日 著者:北方 謙三

 

水滸伝 8 青龍の章 (集英社文庫 き 3-51)水滸伝 8 青龍の章 (集英社文庫 き 3-51)感想
梁山泊軍勢と宋との大規模な戦(いくさ)。戦闘シーンの描写は迫力があるのだが、イメージがわかないのが残念。それでも、物語は次々と意外な展開が続いて、面白い。林冲の妻は? …時間に期待。この巻の文庫解説(王勇)も、とても参考になる。「水滸伝よもやまばなし」(「青春と読書」連載)、どこかで読めないかなあ。
読了日:01月12日 著者:北方 謙三

 

水滸伝 9 嵐翠の章 (集英社文庫 き- 3-52)水滸伝 9 嵐翠の章 (集英社文庫 き- 3-52)感想
文庫解説(馳星周)がいい。<男はどう生き、どう死ぬべきか>という北方謙三の世界を揶揄しながらも、抗しがたい魅力に「参った」と。<百八人の北方謙三もどきが、これでもか、これでもかと男の生き様を説き、死に様を見せつける。百八人分のナルシシズムに翻弄されるのだ>――たしかに、この物語の「漢(おとこ)の世界」は、私にも鬱陶しい。馳星周氏が言うように「替天行道」は象徴であって、その中身が明かされない。彼らの「志」がいまひとつ理解できない(腐りきった国への怨恨は理解できるが)。それでも、この物語は抜群に面白いのだ。
読了日:01月16日 著者:北方 謙三

水滸伝 10 濁流の章 (集英社文庫 き 3-53)水滸伝 10 濁流の章 (集英社文庫 き 3-53)感想
全19巻のちょうど折り返しの巻。大きな戦のさまがダイナミックに描かれていて、巻措く能わずといった感じで読み終えた。梁山泊にまた何人かの豪傑が加わり、いっぽうで何人かが命を落とす。この文庫の解説(大森望)もいい。北方謙三が「水滸伝」で描きたかったのが、あのキューバ革命だったという話――北方本人も『北方謙三の「水滸伝」ノート』NHK出版生活人新書/2009年に書いているのだが――にも納得。晁蓋と宋江がゲバラとカストロの関係、などと聞かされると、なにやら嬉しくなる。北方謙三の説話=自身の青春の熱さの再現だとか。
読了日:01月18日 著者:北方 謙三

水滸伝 11 天地の章 (集英社文庫 き 3-54)水滸伝 11 天地の章 (集英社文庫 き 3-54)感想
戦闘シーンはなかなかイメージが沸かないが、登場人物たちの内面描写が面白く、読むのをやめられない。この巻では、晁蓋の生死が気になり(これまで、だめかと思われていても命拾いをした豪傑がいたので)、男勝りの扈三娘(こさんじょう)が見せる恥じらいが面白い。官軍側(青蓮寺)にも、悪役ながら魅力的な人物が。晁蓋を狙う刺客も人間味あふれる。それにしても、登場人物の多さよ。巻頭の登場人物一覧をしょっちゅう見ながら読み続けている。
読了日:01月22日 著者:北方 謙三


水滸伝 12 炳乎の章 (集英社文庫 き 3-55)水滸伝 12 炳乎の章 (集英社文庫 き 3-55)感想
この巻はひとつの山場。前の巻で晁蓋がやはり暗殺され――晁蓋の末期らしいシーンで終わっていたが、もしやと思っていた――、この巻では、梁山泊の経済的支柱だった蘆俊義が捕獲されて酷い拷問を受けたものの、奇跡的に救出される。拷問シーンは凄絶。官軍の将軍・関勝がじつに魅力的な人物。官軍側(青蓮寺)の者たちも陰影に富んでいて魅力的な人物として描かれている。それにしても登場人物が多すぎて、名前を見ても、はて、どのような経緯で梁山泊に参加したのだっけ? と思い出せなかったりする。ともあれ残り7巻の展開に期待したい。
読了日:01月26日 著者:北方 謙三

水滸伝 13 白虎の章 (集英社文庫 き 3-56)水滸伝 13 白虎の章 (集英社文庫 き 3-56)感想
全19巻の三分の二ほどまできた。この巻でも激烈な戦闘が続き、何人かの主要人物と多数の無名戦士たちが命を落とす。あれだけの戦を続けていれば将兵が死んでいくのが当然で、惜しまれつつ戦死していく豪傑もいれば、あたらしく梁山泊に加わる豪傑もいる。この巻で印象に残ったのは、官軍の船から救い出された下働きの少年(趙林)だ。楊志の遺児・楊令とともに、殺伐とした大人の世界にこういう少年を登場させるところが心憎い。また、何人かの女性たちも魅力的だ。巻末解説(西上心太)もいい。余談だが、1巻目の解説者・北上次郎が亡くなった。
読了日:01月29日 著者:北方 謙三

水滸伝 14 爪牙の章 (集英社文庫 き 3-57)水滸伝 14 爪牙の章 (集英社文庫 き 3-57)感想
梁山泊と宋軍との全面的な戦闘が幕をあける。この先の展開がますます楽しみになってきた。この巻でも、張平という気になる小年(張横の次男)が登場。隠棲する王進の許に預けられる。そこには楊令もいる。この二人の行く末も気になるところだ。梁山泊軍の新兵器の威力は、果たして?
読了日:01月30日 著者:北方 謙三

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2023年1月 6日 (金)

【読】北方謙三と船戸与一

北方謙三『水滸伝』全19巻(集英社文庫)を、いま、夢中になって読んでいる。
5巻目を読み終えたところ。

壮大な物語だが、あくまでも北方謙三の「水滸伝」だ。
中国民間説話としての「水滸伝」を、思いきって再構築し、筋の通った活劇にしている。

ところで、私がずっと愛読してきた船戸与一さんと、この北方謙三氏の関係が気になって、ネット検索してみた。

ともに「日本冒険作家クラブ」(今はもうない)に所属、個人的にも親交があったはず。

日本冒険作家クラブ(Wikipediaより)
1981年の冒険小説ファンの団体日本冒険小説協会の発足を受けて、1983年5月、「作家の団体を」という森詠の提唱により、13人の発起人(田中光二、伴野朗、谷恒生、北方謙三、西木正明、船戸与一、南里征典、川又千秋、大沢在昌、内藤陳、関口苑生、森詠、井家上隆幸)を中心に創設。事務局長は井家上隆幸、会計役は大沢在昌だった。
その後はあまり顕著な活動がなかったが、1987年に再度、新生「日本冒険作家クラブ」として賛助会員を徳間書店として、書き下ろしアンソロジー『敵!』を発行。会報「冒険主義」を刊行開始。
1994年、大藪春彦に「功労賞」を授賞。
また、2001年から、会員が選考して編集者に授賞する「日本赤ペン大賞」を主催していた。
その後も、親睦団体として活動を継続したが、2010年に「役目を終えた」として解散された。

ネット検索で、船戸さんが亡くなった(2015/4/22)のすぐ後、北方氏のインタビュー記事にぶつかった。

「北方謙三」があなたの人生の疑問を一刀両断 | デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2015/08050815/

2015年8月5日のこの記事で、船戸さんの死を、こう語っている。(以下、記事から)

<この間、船戸与一って作家が亡くなりましたけど、生前、「がんで死ぬかボケて死ぬかどっちがいいか考えるんだけれど、どっちでもいいよな、死ぬんだから」と言っていた。彼は6年ぐらい闘病してましたよ。で、我々のところに手紙くれて、「あと1年で死ぬ」って。びっくりするじゃないですか。で、死ぬのかなあと思っていると、死なない。1年経っても死なない。2年経っても死なない。3年経っても死なない。4年経っても死なない。5年経っても死なない。「あの野郎、嘘言いやがったのか」と思いながら見舞いに行くと、やはり彼は闘病はしているわけですよ。体がぎゅっと縮んできてね。それで彼はその間に何やってたか、本当に書きたい小説を完成させたんです。『満州国演義』っていうんですけどね、これは本当に素晴らしい小説ですよ。それをね、きちんと完成させるまでは生命力を失わなかった。命の力を失わなかった。それが終わったら、ふうーっと少しずつ少しずつ力が抜けるように、なんかこう炎が消えていくように、すーっとそのまま亡くなってしまった。だけども、それを書いている間は生命力を失わなかった。人間はね、何かやろうとすることを持つ、やるべきことを持てばいいんです。
 何でもいいんです。持てばいいんです。もし、持つことができないっていうならば、その船戸与一の『満州国演義』を読んで。これはね、「がんで余命1年を宣告された人が書いた小説なんだ、だけどそんなはずないだろう」っていうような小説ですから、読めばいい。それでもダメだったら、私の『水滸伝』を読めばいい。>

船戸ファンの私には、嬉しい記事だったので書いてみた。

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2023年1月 2日 (月)

【読】北方謙三版「水滸伝」に嵌る

年末に観た「新宿梁山泊」の芝居がきっかけで(劇団名に刺激されて)、大作「水滸伝」を読み始めた。
民間説話がベースになっている物語なので、定本といったものはない。
わが国では、吉川英治の「新・水滸伝」、柴田錬三郎の「われら梁山泊の好漢」といった翻案があり、原典(中国語版)を忠実に翻訳したものも多数あるようだ。
中国語版も、七十回本、百回本、百二十回本と、さまざまなバージョンがあるという。

若い頃、平岡正明や竹中労に関心を持っていた時期があり(今でも関心はある)、その影響から「水滸伝」を手に取ったことも。

ただ、読むことはできなかった。

いい機会だ。
北方謙三版「水滸伝」は、ブックオフなどで安く簡単に手に入るので、試しに読み始めたところ、これが面白くてたまらない。
集英社文庫で全19巻の大長編。
その第1巻の文庫解説が北上次郎(目黒孝二の別名)。
この北方版「水滸伝」の魅力を余すところなく紹介している。

の後、年末から年始にかけて第3巻まで読み進めて、いまは第4巻。

ちなみに、第2巻の解説は大沢在昌、第3館は逢坂剛。
錚々たるハードボイルド畑の作家たちが、北方版を絶賛している。

 

北方謙三版は、原典のテキストをベースにしながら、それを大胆に解体し、あらたな小説として作りあげている。

北上次郎の解説によると、
<二百数十年に渡って語り継がれてきた民間説話なので、中国語版は「ヘンな物語」> なのだそうで。
<人物のキャラクターがはっきりしないし、バランスも悪く、物語として壊れているといってもいい> とまで。

中国語版原典を翻訳しただけの版に手を出さなくてよかったと思う。
(若い頃、読もうと思ったのも駒田信二訳の、このてのものだった)

ただ、この北方版でも登場人物の多彩さ、人数の多さ、地名の煩雑さは障害になっている。
文庫の各巻冒頭に、登場人物一覧と当時の中国の簡単な地図が載っているが、なかなか頭にはいってこない。

第3巻あたりで、ようやく主要な人物の名前が区別できるようになった。

そんな悩みを抱えていたところ、同じ作者(北方謙三)が著した「読本」があることを知り、文庫の新本を年末に注文した。
書店が営業を始める頃には届くことだろう。

さらに、平岡正明が書いたこんな本も発見。
こちらはすでに絶版のようなので、中古を発注。
まもなく手元に届く。

『中国 水滸伝・任侠の夢 (世界・わが心の旅)』
単行本 – 1996/4/1
日本放送出版協会

平岡 正明 (著), 黄 波 (著)

「水滸伝」への思い強く、「水滸伝」を行動する男である著者が、乱世を生きた好漢の末裔が住む山東省へ旅立つ。徹底的に現地を取材した水滸伝研究書でもある。世界・わが心の旅シリーズ。

昨年、たて続けに読んだ「ゴールデンカムイ」(コミック、全31巻)のときのように、この小説に嵌りそうな予感。

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