カテゴリー「【読】読書日誌」の1000件の記事

2021年11月 1日 (月)

【読】2021年10月に読んだ本(読書メーター)

10月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1580
ナイス数:101

村上さんのところ村上さんのところ感想
村上春樹さんの小説、わりと好きで、一時期、短編・中編・長編とりまぜて読みふけったた時期がある。『村上春樹はくせになる』(清水良典)という本もあったが、そのとおりかも。この本は、読者からのメールでの質問に答える膨大な量の人生相談風読み物で、それなりに面白い。「図書館で借りて読んでもいいですか?」(回答:買ってくれなくても、いっこうに構わない。読んでくれれば)だとか、「つまらない文学より実用書を読め!(と、社長に言われた)」(回答:小説はすぐには役に立たないが、長いあいだにじわじわ役に立ってくる)。いかにも。
読了日:10月07日 著者:村上 春樹


([も]4-1)わが盲想 (ポプラ文庫)([も]4-1)わが盲想 (ポプラ文庫)感想
大好きな高野秀行さんの『移民の宴』に登場する”アブ”と呼ばれるスーダン出身で盲目の著者を知り、この本が出ていることも知った。高野さんが描いている通りの、ちょっとおっちょこちょいな、好人物だと感じる。来日までの経緯、日本での苦労(波乱に満ちた体験の数々)、そして何よりも奥さまとの超スピード婚と、2011年3月の大震災・福島第一事故直後に北九州まで非難しての出産と、驚くべき体験がユーモラスに記述されている。文章もみごと。読み終えて、あたたかい気持ちになった。いい本です。巻末に高野秀幸さんとの対談を収録。
読了日:10月09日 著者:モハメド・オマル アブディン


軍隊マニュアルで読む日本近現代史 日本人はこうして戦場へ行った (朝日文庫)軍隊マニュアルで読む日本近現代史 日本人はこうして戦場へ行った (朝日文庫)感想
1971年生まれのまだ若い研究者による注目すべき研究。他の著書を読んだことがあるが、信頼できる人だ。親本は2004年刊行の光文社新書。明治の日清・日露戦争から昭和の戦争の中期にかけての「軍隊マニュアル」(巷間に氾濫していたことに驚いた)を蒐集、紹介し、日本人が戦争、徴兵制軍隊の存在をどのように受け入れていったのかという問題を考える内容。「玉砕」「敷島の大和心を人問わば朝日に匂う山桜花」などが、大正10年代にすでに現れていることに驚く。巻末解説は『日本軍兵士』(中公新書)を書いた吉田裕(1954年生れ)。
読了日:10月13日 著者:一ノ瀬 俊也


日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)感想
三年前に読み、手放してしまったものを、再度入手して読み直した。著者はアジア・太平洋戦争を四期に分け、1944年8月から敗戦までを「第四期=絶望的抗戦期」とする。読み直して、あらためて感じたことは「あの戦争は負けるべくして負けた」ということ。これは、今の時代から見ての「後知恵」ではなく、当時も「勝てるはずがない」とわかっていながら「精神力」でなんとかできるかも、という”空気”に支配されていた(内心はともかく、建前で)せいではないだろうか。今も言えるが、”空気”に逆らわずに生きることは、あんがい楽なのかも。
読了日:10月16日 著者:吉田裕


ナニカアル (新潮文庫)ナニカアル (新潮文庫)感想
林芙美子が戦後、密かにに残した「回想録」という形をとったフィクション。戦時中、軍部に協力したと思われている芙美子の内面(もちろん作者桐野の仮説・想像によるものだが)が生き生きと描かれている。戦時中、戦地に派遣された作家たちの姿と、その内心が伺い知れて興味をそそられる。あの時代、積極的にしろ消極的にしろ、軍部に従った作家たちのことを見直してみたいという気になった。桐野夏生の小説は、一作ごとに趣向が凝らされていて、この長い物語も最後まで飽きさせない。好き嫌いはあるだろうが、私が読み続ける理由もそこにある。
読了日:10月29日 著者:桐野 夏生

読書メーター

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2021年10月 5日 (火)

【読】村上さんのところ

新型コロナウイルスのせいで、あまり外に出なくなった。
ライブや映画祭からも、すっかり遠ざかっていて、ネット配信で視聴したり。

そんな中、家で本を読むことが多い。
気になる本を買うことも多くなった。

難しい本に手こずったとき、それを脇に置いて、別の軽い内容の本を読んだりしている。
ずっと前に買って、そのままになっていた『村上さんのところ』(新潮社、2015年)も、そういう本。
なかなか面白い。

村上春樹 『村上さんのところ』 新潮社 (2015/7/24) 253ページ

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e-honサイトより

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033309262&Action_id=121&Sza_id=C0

要旨
世界中から届いた3万7465通のメールを、たったひとりで完全読破し、せつせつと書き連ねた3716の回答から、笑って泣いて考えさせられる473の問答を厳選!フジモトマサル描き下ろしイラスト満載の愛蔵版!

おすすめコメント
1億PVの超人気サイトが早くも書籍化! 描き下ろしイラスト満載の愛蔵版。4ヶ月限定の質問・相談サイト上で、村上春樹が答えた約3700問の中から、笑って泣いて考えさせられる名問答473問を厳選。日常のお悩みから、ジャズ、恋愛、生き方、翻訳小説、社会問題、猫、人間関係、そして愛するスワローズまで。落ち込んだとき、迷ったときに何度でも読み返したい「人生の常備薬」。

村上春樹は、わりと好きで、いっとき、まとめて読みふけった時期もあった。
5年ほど前のことだった(自分のブログを見返してわかった)。

【読】読了、村上春樹作品集 2016年6月16日 (木)
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-c6c5.html

今読んでいるこの本に、興味深いことが書かれていた(村上さんが回答していた)ので、メモしておこう。

・村上さんは、インターネットやブログ、SNSから、できるだけ距離を置くようにしているという。
 私には、なかなかできないことだが、それもひとつの見識かなと思う。

・本は金を出して買って読んでほしい、図書館から借りて読まれるのは困る、と言う作家がいるらしい。
 村上さんは、「買って本棚に置いたまま、というよりは図書館で借りたり、友達に借りたりして実際に手にとって読んでもらえる方がずっといい」と言う。「いちばん望ましいのは、図書館で借りて読んだけど、やっぱり自分の手元に置いておきたいので、書店で買い直しました」と言われるような本を書きたいと。

こういうところが、好きだな。

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2021年10月 1日 (金)

【読】2021年9月に読んだ本(読書メーター)

9月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:5098
ナイス数:148

青春の門(第二部)自立篇(講談社文庫)青春の門(第二部)自立篇(講談社文庫)感想
主人公・信介が筑豊から上京。作家の青春時代(早稲田大学在籍時)の実体験が仄見える気がする。売血やら赤線やら、戦後の風俗が興味ぶかい。貧乏だが、大学生活で何をしたいのか定まらない、どこか能天気な信介の言動に、ちょっとイライラしながらも、次々と巻き起こる事件に目が離せない。信介と兄妹のような心の交流が感じられる織江の行方が気になり、自作の第三部放浪篇へ続く。この巻でいったん中断しようと思っていたが、止まらなくなりそうだ。図書館から次の2巻を借りてきた。
読了日:09月02日 著者:五木 寛之


青春の門 第三部 放浪篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)青春の門 第三部 放浪篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)感想
大河小説の第三部。青函連絡船(私には懐かしい)で北海道に渡る信介たち一行。洞爺丸事故の翌年と書かれているので、昭和30年(1955年)頃の時代の空気が濃厚。函館でドラマチックな展開があり、挫折を味わって札幌へ。札幌の街の描写にもなにやら懐かしさを感じる。織江との再会にホッとした。尻の青い演劇青年たちの行動に鼻白むところもあるのだが、函館の食堂の娘トミちゃんや織江のような、地に足の着いた登場人物たちに救われる思いがする。それにしても信介の性の悩みには苦笑(作者の狙いなのだろうが)。続編も楽しみだ。
読了日:09月04日 著者:五木寛之


もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら (宝島SUGOI文庫)もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら (宝島SUGOI文庫)感想
文体模写というアイディアは面白いが、いまひとつ。何も考えずに暇つぶしに読むにはいいかもしれない。ちょっと笑える部分もある。図書館本。
読了日:09月05日 著者:神田桂一,菊池良

 


青春の門(第四部)堕落篇(講談社文庫)青春の門(第四部)堕落篇(講談社文庫)感想
大河小説の第四部。第一部から通読してきて、いよいよ面白くなってきた。この『堕落篇』では、北海道から東京に戻ってきた主人公・信介が、学生運動に足を踏み入れたものの、内ゲバもどきの凄惨な事件に巻き込まれて失望し、新宿二丁目の闇の世界に、まさに”堕ちて”いく、その絶望感が伝わってくる。物語としてちょっと出来過ぎの感もあるが(暴力事件からの危機脱出)、1950年代の社会状況、風俗が生々しくよみがえってくる。信介や彼を取り巻く人物たちがどうなるのだろうか、と、期待を持たせるところで終わっている。続巻第五部に期待。
読了日:09月06日 著者:五木 寛之


白夜の旅人 五木寛之白夜の旅人 五木寛之感想
たまたま図書館でみつけた本。1939年生まれの著者が1972年に大成出版から刊行した同名の本に一部加筆、訂正。五木寛之が鮮烈なデビューを果たした後、最初の旧筆にはいった時期(1972年)までの足跡をたんねんに追っている。著者は「週間読書人」編集長の経歴をもつ。取材で得たエピソード、五木さんのエッセイや対談、新聞・雑誌記事など、膨大な資料を元に、五木寛之という類いまれな作家の姿を描いている。五木さんの朝鮮半島での体験、早稲田大学での学生時代とその後、金沢への隠遁といったあたりの経緯が詳しく書かれ、興味深い。
読了日:09月07日 著者:植田 康夫


青春の門(第五部)望郷篇(講談社文庫)青春の門(第五部)望郷篇(講談社文庫)感想
大河小説の第五部。「望郷篇」とあるように、主人公の伊吹信介が故郷に帰り、恩人(塙竜五郎)の死に立ち会う。故郷での信介の体験には”任侠”の世界の匂いが濃厚。信介のその後の再上京、さまざまなドラマチックな展開が胸躍らせる。この巻では信介を取り巻く織江、カオル、石井といった人物がクローズアップされていて、物語の幅が広がっているように感じる。青春の彷徨を続けてきた信介に大きな転機がおとずれて、続巻がますます楽しみだ。次巻・再起篇で、信介の”再起”やいかに?
読了日:09月09日 著者:五木 寛之


青春の門 第六部 再起篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)青春の門 第六部 再起篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)感想
勢いづいて第六部まで読んでしまった。次々と巻き起こる事件に、ついつい”この後どうなるのだろう”と期待させる物語の展開は、さすが。文庫版「改訂新版」六巻目にして、はじめて解説(高橋康雄)が付いていた。
読了日:09月10日 著者:五木寛之

 


誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか? (扶桑社BOOKS)誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか? (扶桑社BOOKS)感想
2021年7月に執筆校了、8月末に出版された本書。図書館に収蔵されていなかったのでリクエストして購入してもらった。執筆時は、ちょうど”第5波”の入口で、さまざまな言説がいまだに飛び交っている(ネット、マスコミで)。著者の視点は科学的で(信頼できる統計や論文、報道を精査)、きわめて冷静。”専門家”連中や厚労省の”トンデモ説”、”トンデモ政策”を厳しく糾弾している。今や定説になった”空気感染”に対するマスクの効果的な使用、ワクチンの種類、PCR検査の信頼度、など、おおいに勉強になった。数ある類書の中の良書。
読了日:09月12日 著者:牧田 寛


むずかしい天皇制むずかしい天皇制感想
大澤真幸の著作は初めてだが、とても面白く、刺激的。憲法学者木村草太との対談。ほとんど大澤社会学・日本史分析が占めていて、法律学者としての木村氏がときどき見解を挟む。天皇制が現行憲法にしっかり記述されているわりには、どういうものなの?と考えてみると、とても曖昧。”象徴”って何?不思議であり、この本のタイトルどおり”むずかしい”のだ。”空気の空気”(メタ空気)という捉え方が面白い。ただ、大澤さんの難しいカタカナ語には閉口(その都度、検索して勉強にはなったが)。皇室の先行きが怪しくなっている今、タイムリーな本。
読了日:09月14日 著者:大澤真幸,木村草太


青春の門 第七部 挑戦篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)青春の門 第七部 挑戦篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)感想
第六部再起篇から13年のブランクの後、刊行された第七部。北海道の江差と函館を舞台に、信介を取り巻く世界が大きく変わる。冒頭から小説の語り口も大きく変わった気がする。エスペラントや北方領土についての解説じみた記述が多く、あれ?という感じもする(それはそれで面白く勉強になるが)。第六部で残された謎(織江の新曲、謎の作曲者)が放置されたままなのも、ちょっと不満。あらたな物語を展開させたい思いが、長いブランクを経て五木氏に生じたのだろうか。とはいえ、この第七部は国際的な物語の展開を予感させ、続編の第八部が楽しみ。
読了日:09月15日 著者:五木寛之


青春の門 第八部 風雲篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)青春の門 第八部 風雲篇 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)感想
ついにソ連に渡った信介たち一行。ハバロフスクでの活劇。1960年代初頭のソ連の複雑な事情(信介たちの渡航も密航)。先の戦争後、シベリアに抑留された多くの日本人。けっして一枚岩ではなかった大国・ソ連の国内事情。93年7月から94年4月まで週刊現代に連載された本作は、古さを感じさせない躍動感あふれる内容だった。続編・第九部がますます楽しみ。この文庫版の解説(山内亮史=旭川大学学長=当時)が、解説としては珍しく読ませる。五木さんの盟友・川崎彰彦氏が登場人物・西沢洋平のモデルだったのでは、という指摘が興味ぶかい。
読了日:09月17日 著者:五木寛之


食べものから学ぶ世界史: 人も自然も壊さない経済とは? (岩波ジュニア新書 937)食べものから学ぶ世界史: 人も自然も壊さない経済とは? (岩波ジュニア新書 937)感想
新聞書評(2021.9.4東京新聞)で知り、図書館から借りてきた。岩波ジュニア新書。わかりやすい記述。産業革命後の世界、明治以降の日本の食料から見た歴史、私たちがあたりまえにスーパーやコンビニで買って消費している食べものの由来を知る。”経済成長・発展”といった言葉に惑わされることなく、現代の世界的食料事情、生産と消費、貿易のからくりに目を向けさせてくれた。参考図書としてあげられている本(『砂糖の世界史』『テブの帝国』『中国のブタが世界を動かす』『世界の半分が飢えるのはなぜ?』等)も興味深く、読んでみたい。
読了日:09月19日 著者:平賀 緑


新 青春の門 第九部 漂流篇新 青春の門 第九部 漂流篇感想
大河小説の既刊最終巻。第一部から通して読了。シベリアでの信介の物語(ロマノフ王朝の幻の財宝の謎がからむ)と、日本の織江の物語(なんと『艷歌』『海峡物語』の高円寺竜三が登場)が交互に繰り広げられる。スリリングでスケールの大きな展開。有名な”織江の唄”(五木寛之作詞・山崎ハコ作曲)が牧織江の作詞として出てきたのには驚いた。何年何月と時代設定が明示されているため、1961年頃の状況がリアルに浮かび上がる。シベリアで知り合った”ドクトル”といっしょに日本に戻る信介。最終巻(未刊行)での展開に期待が広がる。
読了日:09月20日 著者:五木 寛之


蒼ざめた馬を見よ (1972年) (五木寛之作品集〈1〉)蒼ざめた馬を見よ (1972年) (五木寛之作品集〈1〉)感想
デビュー後6年(1972年)という早い時期に刊行された作品集の第1巻。発売当時に買い揃えて全巻持っていたのだが、手放してしまったのが残念。この巻だけは、その後、古本を購入して持っていた。五木さんのデビュー作「さらばモスクワ愚連隊」、直木賞受賞作「蒼ざめた馬を見よ」は、今、読み返してみても新鮮。巻末解説(五木さんと親しかった川崎彰彦氏による)も、なかなかいい。
読了日:09月23日 著者:五木 寛之


霧のカレリア (1972年) (五木寛之作品集〈2〉)霧のカレリア (1972年) (五木寛之作品集〈2〉)感想
「GIブルース」を再読したくなって図書館から借りてきた。五木寛之の初期作品集。「GIブルース」は「蒼ざめた馬を見よ」と同時に直木賞候補にあげられただけあって、さすがの面白さ。他には「霧のカレリア」「夜の斧」(シベリア抑留体験者の怖い話)、「夜の世界」(車の運転が好きだった著者らしい作品)が面白かった。デビュー後数年にわたる五木さんの創作意欲に感心する。ただ、この作品集は活字が小さすぎて老眼にはつらかった。
読了日:09月25日 著者:五木 寛之


作家のおしごと作家のおしごと感想
2019年2月刊行。五木さんの50年にわたる作家生活の小説以外の”おしごと”の数々(対談、作詞、解説や月報への寄稿、インタビュー、コラム、自著へのあとがき、講演、紀行文など)を採録。それぞれに書き下ろしならぬ”語り下ろし”が添えられている。気合のはいった一冊だ。1983年の村上春樹さんとの”幻の対談”が面白いが、これは『風の対話』(1986年単行本、1994年河出文庫)に収録。デビュー間もない村上さんの五木さんへのリスペクトが感じられる。自著への解説文を許さない(?)村上さんがよく収録を許可したものだ。
読了日:09月26日 著者:五木 寛之


移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活 (講談社文庫)移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活 (講談社文庫)感想
東日本大震災を挟んだ時期に取材したルポ(2012年11月単行本刊行)。高野さんのあたたかいまなざしが感じられて、とても後味のいい本だった。高野さんの人徳だろう。”移民”という言葉には、さまざまなイメージが付着していて微妙なのだが(この言葉を嫌う外国人もいるという)、高野さんの意図するところは”日本に移り住んだ外国人”を指す言葉として、これしかないとのこと(第5章P.155-の「付記」)。高野さんのスーダン出身の盲目の友人・アブディンさんの話が、いい。彼が書いた『わが盲想』を読んでみようと思う。
読了日:09月30日 著者:高野秀行

読書メーター

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2021年9月 1日 (水)

【読】2021年8月に読んだ本(読書メーター)

8月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4815
ナイス数:110

ま・く・ら (講談社文庫)ま・く・ら (講談社文庫)感想
装幀と挿絵が南伸坊さんのこの本、南伸坊『装丁』(いい本だったが手放してしまった。この機に中古本を購入)で知っていて、いつか読もうと思っていた。「まくらの小三治」の噂は以前から聞いていたが、これほど面白い”まくら”を延々と、時には演目の落語をしないで”まくら”だけで高座が終わってしまうこともあるという。それでも小三治師の独演会は前売りがあっという間に売り切れてしまうと聞いたことがある。なるほど、と納得させられる面白さ。続編『もうひとつま・く・ら』も読みたい。コロナ禍の一服の清涼剤。
読了日:08月02日 著者:柳家 小三治


世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル)世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル)感想
高野秀行さんのファンなので買ってあった積読本。日本中世史専攻の歴史学者・清水克行さんとの絶妙な対談。初めから終わりまで目を見開かされることばかり。高野さんお得意の「世界の辺境」と清水さんの専門領域「室町時代の日本」の話が縦横無尽に展開されていて、想像力をかきたてられ、自分の固定観念(日本の歴史の捉え方、世界の国々の見方)が気持ちいいほどひっくり返される。痛快。先に読んだ二人の読書会風対談集『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』(2018年刊行)に繋がる内容。清水さんの著書も読んでみたいと思う。
読了日:08月08日 著者:高野秀行,清水克行


辺境メシ ヤバそうだから食べてみた (文春文庫)辺境メシ ヤバそうだから食べてみた (文春文庫)感想
”辺境作家”を名乗る高野秀行さんが”ヤバそうな”食べ物を求めて、アフリカ、南アジア、東南アジア、東アジア、中東、南米などを訪ね回り、どんなに奇妙な食べ物・飲み物でも、現地の人が口にするものなら何でも試してみる。読みやすいレポート。イモムシ、アリ、ムカデ、さまざまな昆虫、ヤギの糞ならぬ未消化物、カエルのスープ、等々。我々にはゲテモノとしか思えない飲食物が、現地の人々のご馳走だったりする。なんと世界は広いことか。たんなる食レポートを超えて、文化人類学的と呼ぶべき考察が高野さんらしい。この文庫版にはオマケあり。
読了日:08月10日 著者:高野 秀行


親鸞(上) (講談社文庫)親鸞(上) (講談社文庫)感想
新聞連載当時に毎日読んでいた。その挿絵を集めた山口晃さんの『親鸞全挿画集』を眺めているうちに、読み直してみたいと思うようになった。文庫版全6冊の1巻目。人間親鸞の生々しい幼少期から青春期。新聞連載当時のワクワク感がよみがえる。さすが、物語り(ストーリーテラー)の名手である。
読了日:08月17日 著者:五木 寛之


親鸞(しんらん)(下) 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)親鸞(しんらん)(下) 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)感想
『親鸞』三部作の第一部(青春篇)完結。師の法然が讃岐に流され、みずから親鸞と名乗ることにした善信は藤井善信という流人として越後へ。河原での安楽坊遵西の処刑シーンが圧巻。新聞連載時の挿絵(山口晃画伯)を収めた『親鸞全挿画集』と並行して読みすすんでいる。続いて第二部「激動篇」へ。
読了日:08月19日 著者:五木寛之


親鸞(しんらん) 激動篇(上) 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)親鸞(しんらん) 激動篇(上) 【五木寛之ノベリスク】 (講談社文庫)感想
かつて新聞連載された『親鸞』三部作の第二部(上巻)。三部作中盤のクライマックスともいえる雨乞いの祈祷の場面が圧巻。全巻を通してドラマチックな物語の運びに感動しながら読みすすめている。神がかりとなったサトという娘と、親鸞の妻女・恵心の妹・鹿野の娘・小野の行く末は?
読了日:08月21日 著者:五木寛之


親鸞 激動篇(下) (講談社文庫)親鸞 激動篇(下) (講談社文庫)感想
越後から関東へ、そして再び京へ。ドラマチックな展開が続く。いよいよ完結編へと進む。山口晃『親鸞全挿画集』(新聞連載時の挿画をすべて集め、さらに山口画伯のコメント付き)の挿絵を見ながら小説を読みすすめている。『親鸞全挿画集』の感想は、読了後に。 余談だが講談社文庫の初版(2013年6月刊行)には、あきらかな誤植が2か所あった。改版で訂正されているのだろうか。
読了日:08月23日 著者:五木 寛之


親鸞 完結篇(上) (講談社文庫)親鸞 完結篇(上) (講談社文庫)感想
三部作の第三部上巻。謎の女性”竜夫人(りゅうぶにん)”が唐突に登場。やがて、親鸞とゆかりの深いあの女性だと知れる。親鸞をとりまくさまざまな人物が、皆、生き生きしている。なかでも唯円(歎異抄の作者とされている)が魅力的。いかにも新聞連載小説らしく、次々と予想しない展開が続き、引き込まれる。いよいよ最終巻にはいる。
読了日:08月25日 著者:五木 寛之


親鸞 完結篇(下) (講談社文庫)親鸞 完結篇(下) (講談社文庫)感想
三部作の最終巻。いっきに読了。五木さんが「あとがき」に書いているが、事実をもとにしたフィクション、「稗史(はいし)小説」(中国で民間に語りつがれる噂や風聞を、身分の低い役人が集めて献上したもの)と捉えて読むべきだろう。文庫版解説(末國善己)に「大胆不敵なフィクションの部分は多々あるが、親鸞思想の根本はいささかも踏み外さずに捉えている」と宗門からも高く評価されている、とあるが、なるほどと思う。親鸞をとりまく多彩な登場人物が皆、魅力的。ちなみに、新聞連載当時の挿絵を集めた山口晃『親鸞全挿画集』と同時に読んだ。
読了日:08月26日 著者:五木 寛之


山口晃 親鸞 全挿画集山口晃 親鸞 全挿画集感想
五木寛之の新聞連載小説『親鸞』三部作の挿絵をすべて集めた大部のカラー画集。私は小説(文庫版6冊)と並行して読んだ。すこぶる面白い体験だった。書き損じ、下書き、山口画伯のコメントもあり、五木さんとのバトル(登場人物の顔を描くなという小説家の強い要望に悩む)、言葉遊び・ダジャレ・連想といった自由闊達な挿絵の数々、親鸞の長男・善鸞の顔を卵(全卵)にしてしまう山口画伯の大胆さ、等々、この挿画集を手元に、小説『親鸞』を読むのも一興かも。なお、『親鸞』の”特装版”には挿絵もすべて掲載されているようだが、入手困難。
読了日:08月26日 著者:山口 晃


はじめての親鸞 (新潮新書)はじめての親鸞 (新潮新書)感想
2015年に開催された新潮講座「人間・親鸞をめぐる雑話」(3回講座)で話した内容。先頃読んだ小説『親鸞』三部作(2008年から2014年まで足かけ7年にわたって全国の新聞に連載)のベースになっている、五木さんの親鸞観・仏教観がよくわかった。仏教を巡ってインド・中国などを歩いたときに五木さんが感じたこと、小説『親鸞』が「琉球新報」にも連載された後で、仏教色の薄い沖縄での反応を五木さんが新聞社に尋ねたエピソードなどが興味深い。
読了日:08月28日 著者:五木 寛之


青春の門(第一部)筑豊篇(講談社文庫)青春の門(第一部)筑豊篇(講談社文庫)感想
ずいぶん前、刊行直後に読んだはずの「筑豊篇」。この大河小説は第二部「自立篇」まで読んでやめてしまったはず。今、このコロナ禍の時期、本を読むことが多くなったので、全巻読んでみようと思いたった。先日読んだ『親鸞』三部作に続き五木さんの作品。ちっとも古めかしさを感じさせない、生き生きとしたビルドゥングスロマン(教養小説)だと、あらためて感じる。登場人物のひとりひとりが魅力的だ。著者によって手を入れられた改訂新版(図書館本)。二年前に第九部「漂流篇」が刊行されたという。少しずつ最新刊まで読み通してみたい。
読了日:08月30日 著者:五木 寛之

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2021年8月26日 (木)

【読】五木寛之『親鸞』三部作と全挿画集

約2週間かけて、ついに読了。

五木寛之『親鸞』三部作(講談社文庫6冊)。
並行して読んだ画集、山口晃『親鸞全挿画集』(695ページ)。

新聞連載当時、購読紙(東京新聞)で毎日、読んでいた。
数年ぶりの再読だったが、挿絵とあわせて読むことで、当時のワクワク感を再び体験できた。

新聞連載データ(『親鸞全挿画集』より)

【第一部】2008/9/1~200/8/31 354回連載 北海道新聞他26紙
【第二部】2011/1/1~2011/12/11 336回連載 北海道新聞他43紙
【第三部】2013/7/1~2014/7/6 361回連載 北海道新聞他36紙

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以下、「読書メーター」に投稿した感想文。

【第一部(上巻)】8/14~8/17
新聞連載当時に毎日読んでいた。その挿絵を集めた山口晃さんの『親鸞全挿画集』を眺めているうちに、読み直してみたいと思うようになった。文庫版全6冊の1巻目。人間親鸞の生々しい幼少期から青春期。新聞連載当時のワクワク感がよみがえる。さすが、物語り(ストーリーテラー)の名手である。

【第一部(下巻)】8/17~8/19
『親鸞』三部作の第一部(青春篇)完結。師の法然が讃岐に流され、みずから親鸞と名乗ることにした善信は藤井善信という流人として越後へ。河原での安楽坊遵西の処刑シーンが圧巻。新聞連載時の挿絵(山口晃画伯)を収めた『親鸞全挿画集』と並行して読みすすんでいる。続いて第二部「激動篇」へ。

【第二部(上巻)】8/19~8/21
かつて新聞連載された『親鸞』三部作の第二部(上巻)。三部作中盤のクライマックスともいえる雨乞いの祈祷の場面が圧巻。全巻を通してドラマチックな物語の運びに感動しながら読みすすめている。神がかりとなったサトという娘と、親鸞の妻女・恵心の妹・鹿野の娘・小野の行く末は?

【第二部(下巻)】8/21~8/23
越後から関東へ、そして再び京へ。ドラマチックな展開が続く。いよいよ完結編へと進む。山口晃『親鸞全挿画集』(新聞連載時の挿画をすべて集め、さらに山口画伯のコメント付き)の挿絵を見ながら小説を読みすすめている。『親鸞全挿画集』の感想は、読了後に。 余談だが講談社文庫の初版(2013年6月刊行)には、あきらかな誤植が2か所あった。改版で訂正されているのだろうか。

【第三部(上巻)】8/24~8/25
三部作の第三部上巻。謎の女性”竜夫人(りゅうぶにん)”が唐突に登場。やがて、親鸞とゆかりの深いあの女性だと知れる。親鸞をとりまくさまざまな人物が、皆、生き生きしている。なかでも唯円(歎異抄の作者とされている)が魅力的。いかにも新聞連載小説らしく、次々と予想しない展開が続き、引き込まれる。いよいよ最終巻にはいる。

【第三部(下巻)】8/26~8/26
三部作の最終巻。いっきに読了。五木さんが「あとがき」に書いているが、事実をもとにしたフィクション、「稗史(はいし)小説」(中国で民間に語りつがれる噂や風聞を、身分の低い役人が集めて献上したもの)と捉えて読むべきだろう。文庫版解説(末國善己)に「大胆不敵なフィクションの部分は多々あるが、親鸞思想の根本はいささかも踏み外さずに捉えている」と宗門からも高く評価されている、とあるが、なるほどと思う。親鸞をとりまく多彩な登場人物が皆、魅力的。ちなみに、新聞連載当時の挿絵を集めた山口晃『親鸞全挿画集』と同時に読んだ。

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2021年8月15日 (日)

【読】五木寛之『親鸞』三部作再読

ノンフィクションライターの高野秀行さんが好きだ。

数日前にネットで高野さんの話を視聴。
コロナ禍のなかで読むといいという、高野さんの推薦本の一冊がこれ。

『親鸞全挿画集』 山口晃/著
青幻舎 2019年2月
ISBNコード 978-4-86152-479-0
(4-86152-479-2)
税込価格 6,050円
頁数・縦 695P 26cm

山口晃 親鸞 全挿画集|青幻舎 SEIGENSHA Art Publishing, Inc.
https://www.seigensha.com/books/978-4-86152-479-0/

山口晃『親鸞 全挿画集』が刊行。五木寛之による新聞小説『親鸞』挿画の全容と背景が一冊に (美術手帖)
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/19297

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五木寛之さんが、かつて新聞連載していた小説『親鸞』(三部作)の挿絵画家・山口晃さんが、連載当時の挿絵を全て公開。
大判で分厚い本を図書館から借りて読み始めた。

これが、じつに面白い。

掲載紙のひとつ、東京新聞を購読しているので、連載初回からずっと読んでいたのは、懐かしい思い出。
毎回、新聞を切り抜いて取ってあったのだが、いつだったか捨ててしまった。
惜しいことをしたものだ。

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山口晃さんの挿画集を読んで(見て)いたら、小説『親鸞』を読んでみたいと思った。
市内の図書館に文庫6冊が揃っていたので、昨日、思いたって雨の中を車で駆けつけて借りてきた。

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さっそく読み始めている。
山口さんの挿画集の絵と見比べながら、新聞連載当時のワクワク感を思い出している。

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2021年8月 1日 (日)

【読】2021年7月に読んだ本(読書メーター)

7月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2330
ナイス数:126

東京島 (新潮文庫)東京島 (新潮文庫)感想
これは、よくできた小説。この前に読んだ同じ作家の『OUT』が生々し過ぎて印象がよくなかっただけに、架空の無人島を舞台にしたこの話(つくり話)を楽しむことができたように思う。結末がみごと。突飛な連想だが、池澤夏樹『マシアスギリノ失脚』に通じるスピリットを感じた(シチュエーションはだいぶんちがうけれど)。それにしても、一作ごとに工夫を凝らした物語世界を紡ぎ出す桐野夏生という作家はすごい。多作の作家なので、読んでいない作品がたっぷりあって、まだまだ楽しみは続く。
読了日:07月01日 著者:桐野 夏生


女神記 (新・世界の神話)女神記 (新・世界の神話)感想
古事記のイザナミ・イザナキ神話を核にしながら、琉球弧の神世界(久高島がモデルと思われる)にまで懐を広げたスケールの大きさに圧倒された。ヤマトの神話世界を、もっと広い視野で見直す作者の想像力・創造力の凄さに舌を巻く。いっきに読了。
読了日:07月03日 著者:桐野 夏生

 


辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 (集英社インターナショナル)辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 (集英社インターナショナル)感想
ひさしぶり、高野秀行さんの本(2018年発行、積読本)。日本中世史専門の歴史家・清水克行さんとの対談本(二人の読書会)。面白そうな本が8冊、取り上げられていて刺激的。「今まで信じていたことが、くるんとひっくり返されるという読書の醍醐味」(高野さんの弁)が味わえそうな、一風変わった本ばかり。イブン・バットゥータ『大旅行記』(東洋文庫・全8巻)なんか、よく読んだなと感心する(図書館にあるけど、ちょっと根性が必要だろうな)。町田康『ギケイキ』なども読んでみたくなった。これまでの日本史の常識がひっくり返りそう。
読了日:07月05日 著者:高野秀行,清水克行


インドラネット (角川書店単行本)インドラネット (角川書店単行本)感想
桐野夏生の最新長編(2021年5月刊行)。面白く、いっきに読了。”間抜け”と言っていいほど頼りない主人公が、思わぬ事態に巻き込まれ、カンボジアに渡る。さまざまな危機に遭遇、翻弄される。そのさまに、ハラハラドキドキしながら結末まで引き込まれた。現代カンボジアの闇を垣間見た。作者と高野秀行さんとのネット対談記事にあるように、よくもまあ、これだけ”邪悪”な登場人物を揃えたものだ。
『インドラネット』刊行記念対談
https://kadobun.jp/feature/talks/9duned36124g.html
読了日:07月06日 著者:桐野 夏生


おらおらでひとりいぐも (河出文庫)おらおらでひとりいぐも (河出文庫)感想
なぜ、こんな本(芥川賞受賞作・純文学!)を買ったのか。話題作だったからだろう。読み始めて後悔したのだが、徐々に作者の思惑に嵌って読了。お国言葉(東北弁)を駆使していなければ、つまらない老女の独白に終わっていたかも。ふと「遠野物語」の不思議な世界を連想してしまったのは、著者が遠野生まれだからか。たぶん著者のバックボーンには遠野があるのだろう、きっと。それにしても主人公の桃子さんは不思議な人だ。人類のアフリカからの長い旅に思いを馳せるとは(終盤の独白)。老いと生と死が明るく語られているのが救い。ラストがいい。
読了日:07月07日 著者:若竹千佐子


感染症の日本史 (文春新書)感染症の日本史 (文春新書)感想
タイミングが遅れてしまったが(2020年9月発行)、新型コロナウイルスの終息が見えない今(2021年7月)、読んでみようと思った積読本。過去に日本で蔓延した感染症(麻疹、「スペイン風邪」)から学ぶことは多い。感染症の時代を生きた人々の体験に着目する「患者史」という視点に惹かれた。第七章以降の皇室・宰相・文学者(志賀直哉、宮沢賢治、斎藤茂吉、永井荷風)の体験も興味深い。著者が師と仰ぐ速水融(あきら)が提唱した「歴史人口学」をもっと知りたくなった。速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』も読んでみたい。
読了日:07月10日 著者:磯田 道史


ギケイキ 千年の流転 (河出文庫)ギケイキ 千年の流転 (河出文庫)感想
高野秀行・清水克行『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』で知った。なるほど、高野さんたちが勧めるだけある。古典の「義経記」をベースに、バリバリの現代上方ことば・若者ことばが、リズミカルに踊る。そもそも「義経記」は「語り物」で、それを現代に蘇らせたという体(てい)。講談のようでもあり、上方落語のようでもある。いいところで「つづく」となっているので、続編も読みたい。
読了日:07月12日 著者:町田康


シャクシャインの戦い (童心社・新創作シリーズ)シャクシャインの戦い (童心社・新創作シリーズ)感想
たまたま図書館除籍本を入手。児童向けの本だが、本格的な歴史読み物。1669年というから、今より450年も昔、江戸時代(寛文年間)のアイヌの大規模な蜂起。リーダー シャクシャインは伝説の英雄だが、どういう史料が残っているのだろうか(あったとしても和人側の記録だろう)。参考文献が記載されているとよかった。どこまで史実が捉えられているか疑問もあるが、蜂起の経緯、和人側のだまし討ち(またか)がリアルに描かれている。入門書として読めた。もっと学術的な本も読んでみたい。アイヌの歴史に関心があるので。
読了日:07月14日 著者:木暮 正夫


ギケイキ2 奈落への飛翔ギケイキ2 奈落への飛翔感想
「義経記」をベースに、現代語(若者のミーハー言葉)を駆使し、伝説の源義経を現代に蘇らせる。まことにもって痛快な読み物(2巻目)。きっと義経というのはこういう人物だったのだろうな、と妙に納得させられる。全4巻の予定らしいので、続巻が楽しみだ。初出は「文藝」2015年秋季号~2018年夏季号。
参考サイト
https://web.kawade.co.jp/special/sp-gikeiki/
読了日:07月18日 著者:町田康


世界史のなかの戦国日本 (ちくま学芸文庫)世界史のなかの戦国日本 (ちくま学芸文庫)感想
高野秀行・清水克行の両氏の対談本『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』で高野さんが賞賛していたので読んでみた。歴史学者による学術的・専門的な内容に、途中でギブアップ(史料を細かくあげていて目がくらむ)。しかし、高野・清水両氏が言及しているように「世界史の流れの中から日本列島を眺める」という着眼点は、きわめてユニーク。目を見開かされること多々あり。なかでも蝦夷地と琉球についての言及が、私にはとても興味深かった。
読了日:07月27日 著者:村井 章介


臨床の砦臨床の砦感想
図書館で長らく予約待ち行列ができていた本をようやく読了。長野県のとある感染症指定病院でコロナ感染症患者の治療にあたる医師を主人公に、医療最前線の医師や看護師たちの様子がリアルに描かれている。2021年1月の”第三波”と呼ばれる感染急拡大の頃。主人公の「コロナ診療における最大の敵は、もはやウィルスではなく、行政や周辺医療機関の無知と無関心ではないか」という言葉が当時の状況をよく物語っている。”第五波”を迎える今も、それほど改善されているとは思いないが…。現職の医師でもある作家ならではの、緊迫感あふれる作品。
読了日:07月30日 著者:夏川草介

読書メーター

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2021年7月 1日 (木)

【読】2021年6月に読んだ本(読書メーター)

6月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2903
ナイス数:131

マスクは踊るマスクは踊る感想
書名にひかれて読んだ図書館本。2019年3月から2020年11月にかけて「オール讀物」「週刊文春」に連載された文章・マンガから抜粋した内容。たしかに「コロナ禍」の時期にひっかかっているが、もっと面白いと思ったのは、オリンピック(東京五輪)や安倍政権(当時)への辛辣な批判。もちろんショージさんのことだから、正面切っての堅苦しい批判ではなく、皮肉まじりのウィットにとんだもの。こういう軽い読み物を楽しむのも「コロナ頭」になりがちなこの時期、一服の清涼剤的な効力があるものだ。けっこうスルドイ考察もあって、さすが。
読了日:06月10日 著者:東海林 さだお


「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書)「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書)感想
苦労して読了。部分的に興味深いエピソードはあったけれど<現在私たちが享受する「当たり前の日常」の起源を問い、政治の生活への介入があからさまになった「withコロナ」の暮らしを見つめ直す>(本書カヴァー裏のコピー)という著者の狙いが伝わってこなかった。戦時下と現在とのアナロジーがピンとこない。たしかにコロナ禍での同調圧力に共通するものはありそうだが。花森安治や太宰治、小池知事の発言の分析は面白い。別の方が感想に書いていたが、これだけ調べあげたのだから、巻末に参考図書・出典一覧があってもよかったのではないか。
読了日:06月11日 著者:大塚 英志


われらの世紀 真藤順丈作品集われらの世紀 真藤順丈作品集感想
直木賞受賞作『宝島』に"やられた"作家の短編集。雑誌やアンソロジーに掲載・収録された10作。なかでも”お笑い”の世界の奇人を描いた3作「笑いの世紀」「ダンデライオン&タイガーリリー」「終末芸人」に引き込まれた。アイヌを登場させた「レディ・フォックス」は「宝島」を彷彿とさせるが、もっとふくらませて長編にしてもいいように思う。「われらの世紀」という書名どおり、すでに遠い過去になりつつある20世紀の世界を予想外の視点から切り取っていて興味が尽きない。あまり見かけないワード(単語)の選択も新鮮。文章がうまいな。
読了日:06月13日 著者:真藤 順丈


土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎感想
縄文土偶の謎をたんねんに解読した人類学者の新刊。これまでの根拠の薄い通説(教科書などでなんとなく流布してきた)を根底からくつがえす丁寧な研究だ。いわゆる思いつきの”とんでも説”とは全く違って説得力がある。簡単にまとめると、縄文土偶は縄文人たちが生きるために必要とした彼らの食物=果実などの植物・貝類のフィギュアであり、植物などに宿る精霊を祭るための呪具だったのだという。縄文人がいっそう身近に感じられるようになった。発表するにあたって考古学界からの抵抗・妨害もあったという。日本の学問の偏狭さにも言及している。
読了日:06月22日 著者:竹倉 史人


旅がくれたもの旅がくれたもの感想
美しいカラー写真満載。著者が旅先で手に入れたさまざまなグッズ(工芸品、絵画、布・服・絨毯、焼き物・食器、アフリカの仮面や布・小物、世界中の小物など)が、それを手に入れた旅のエピソードとともに紹介されている。写真を見ているだけでも楽しくなる。大量生産される土産物にはない、手作りの温かみが伝わってくる”もの”たち。そこには世界各国に暮らす人々の美意識があらわれていて、あらためて世界は広いと思う。『ゴーゴ・インド』で一世を風靡した著者ならではのコレクションに圧倒される(著者はコレクターではないが)。
読了日:06月23日 著者:蔵前 仁一


デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)感想
評判の本ということで読んでみた。栗城史多(くりき・ふみかず)という"登山家"のことは全く知らなかった。登山家と呼んでいいのか疑問。SNSにどっぷり漬かった”パフォーマー”と呼ぶべきか。栗城氏と関わっていた著者が描く人物像、無謀と思えるエベレスト登頂の試み、失敗、遭難死。読んでいると、あんがい憎めない人物だったように思える。私が知っている登山家・冒険家たちと比べると、邪道としか思えないが、いっとき、ネットでもてはやされ、一部の人たちの共感を得たのかもしれない。たんねんに取材を重ねた著者には敬意を表したい。
読了日:06月25日 著者:河野啓


ウイルスとは何か 〔コロナを機に新しい社会を切り拓く〕ウイルスとは何か 〔コロナを機に新しい社会を切り拓く〕感想
つい先日、所属する団体で中村桂子さんのオンライン講演会を開催。そのつながりで購入して読んでみた。村上陽一郎(科学史家)・中村桂子(生命誌研究者)・西垣通(情報学者)の三人と、藤原書店の藤原良雄の司会による鼎談。得るところが多い。さすが藤原書店、いい本を出している。新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)の蔓延の兆しが日本でもあらわれ始めた2020年夏(出版は2020年11月)、ワクチンがこれほどまで普及するとは思えなかった頃のもの。それを差し引いても、三人の顕学の発言から学ぶものは多い。
読了日:06月27日 著者:中村 桂子,村上 陽一郎,西垣 通


日没日没感想
話題作ということで読んでみた。桐野さんの書くものが好きだし。主人公がどうなるかと目が離せなくなって、最後までいっきに読んでしまった。物語の結末、最後の数ページの展開には、ハラハラドキドキ。ハッピーエンドのわけはないと思いながらも、まさに鳥肌のたつ結末。登場人物や舞台設定がリアリティにあふれ、こういうこと(内容はネタバレになるので書かない)が起きてもおかしくない時代に向かっている気がしてぞっとする。作者の力量に舌を巻く。さすがだ。
読了日:06月28日 著者:桐野 夏生


OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)感想
引き込まれるように上巻読了。”神の目”からの三人称小説だが、奇妙なバラバラ事件に関わる人間たちの内面に立ち入った描写に引きつけられる。文章のテンポがよく、さすが。事件の顛末、事件に関わった人間たちの運命やいかに。下巻への興味がいや増す。
読了日:06月29日 著者:桐野 夏生

 


OUT 下 (講談社文庫 き 32-4)OUT 下 (講談社文庫 き 32-4)感想
先の見えないストーリー展開にわくわくしながら下巻にとりかかり、作者の仕掛けに感心しながら読んでいたが…結末にはちょっと違和感あり。
読了日:06月30日 著者:桐野 夏生

読書メーター

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2021年6月 3日 (木)

【読】2021年5月に読んだ本(読書メーター)

5月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2839
ナイス数:85

動物感覚 アニマル・マインドを読み解く動物感覚 アニマル・マインドを読み解く感想
河田桟『くらやみに、馬といる』で紹介されていたので知った本。自閉症の女性 テンプル・グランディンと、自閉症の子どもを持つ女性 キャサリン・ジョンソンの共著。日本語訳文が読みやすい。自閉症であるがゆえに、ふつうの人とはことなる感覚をもっていること、どうやらそれは動物のものに似ているらしいことに気づき、そこを出発点にして「動物感覚」(動物はどんなふうに見たり、聞いたりして、考えるのか)について、これまで考えられてこなかった視点から、たくさんの新しい知見が展開されている。私の目から何枚もウロコが落ちた思い。
読了日:05月04日 著者:テンプル グランディン,キャサリン ジョンソン


我輩は施主である我輩は施主である感想
古書店の百均棚で見かけて知った本。赤瀬川原平が好きで『老人力』『新解さんの謎』、路上観察のトマソン本など楽しんで読んできたが、この本は知らなかった。藤森照信さんが設計した、あの”ニラハウス”ができあがるまでの顛末が、赤瀬川さんらしい温かみのある文章で綴られている。いちおう小説の体裁をとっているが、仮名で出てくる人たちは全部、実在の、よく知られている人たち。夫人の名前と飼い犬の名前が、わざと反対になっているのも、クスっと笑わせる。やっぱりいいなあ、赤瀬川原平ワールド。どんなことも面白がることの大切さ。
読了日:05月05日 著者:赤瀬川 原平


はみだしルンルンはみだしルンルン感想
軽~い本なので、あっという間に一気に読んでしまった。 『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』(ナナロク社)を読んだときに感じた、この著者のやさしさが感じられ、ほのぼのとした読後感。モンドくん(奥村門土)の絵も、ほのぼの感に味を添えている。東京新聞に毎月一回、連載していた短文を集めたものなので、読みやすい。
読了日:05月05日 著者:鹿子裕文


「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか (ブルーバックス)「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか (ブルーバックス)感想
ヒトを含む動物の顔の構造、顔を構成する口・鼻・目・耳といった器官の役割、その進化の過程、等々が図表を駆使してわかりやすく書かれている。くだけた口調にも親しみが持てる好著。第4章(ヒトの顔はどう進化したか)では人類史、第5章(日本人の顔)では日本人の進化(縄文人、弥生人、それらの混血が進んできたこと)について書かれていて、とくに興味深かった。著者は、固い食物を噛まなくなったことで日本人の顔(顎)が華奢になってきていることに警鐘を鳴らしている。「アジの干物の素揚げ給食」(座間市での試み)を普及させたいという。
読了日:05月09日 著者:馬場 悠男


ブードゥーラウンジブードゥーラウンジ感想
鹿子裕文さんの2冊目の著作。彼が愛した福岡のライブハウス”ブードゥーラウンジ”の熱狂がひしひしと伝わってくる。”ボギー”(モンドくん=奥村門土の父親)とその家族、”オクムラユウスケ”(”ボギー”の弟)、奥村隆子さん(奥村兄弟の母親)等々、魅力的な人たちが生き生きと描かれている。処女作『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』(ナナロク社)誕生の舞台裏話も私には興味深かった。リズム感のある文章が、また、いい。ライブハウスって、いいなあ。
読了日:05月11日 著者:鹿子 裕文


武蔵野マイウェイ武蔵野マイウェイ感想
武蔵野といっても広うござんす。この著者、よく歩くなあと感心した。東京のはずれ、埼玉に接する北多摩に住む私には、馴染みのある場所と、それほどよく知らない場所が混じっているが、縦横無尽に歩きまわる著者の足取りを、地図を片手に追った。寺社の記述が多いが、行く先々で図書館や古書店に寄るのが好きな著者に親しみを感じる。この人の本は初めて読んだが、数えきれないほどの著作があることを知って、びっくり。武蔵野の一画に住むしあわせを再認識した一冊だった。
読了日:05月14日 著者:海野 弘


漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)感想
知人の「この小説、いいよ~」という薦めで読んでみた西加奈子の初作品。強烈なタイトルどおり、主人公の”肉子ちゃん”と呼ばれる愛すべき女性の強烈な個性、語り手の小学生少女の独白と”肉子ちゃん”の奇妙な関西弁、登場する人たち(漁港の大人たち、思春期に向かう子どもたち)の織りなす世界が多彩。ぐいぐい引き込まれる。北陸の港町が舞台として設定されているのだが、東北の女川港との縁(えにし)を文庫版あとがきで作者が明かす。単行本は2011年8月発行。その前に幻冬舎の雑誌に連載されていたという。あの震災をはさむ時期だ。
読了日:05月16日 著者:西 加奈子


音楽プロデューサーとは何か 浅川マキ、桑名正博、りりィ、南正人に弔鐘は鳴る音楽プロデューサーとは何か 浅川マキ、桑名正博、りりィ、南正人に弔鐘は鳴る感想
若い頃から浅川マキのファンだったので、彼女のアルバムにあった寺本幸司さんの名前は見知っていた。数年前、小さなイベントスペースで浅川マキを回想するトークイベントがあり、そこに出演されていた寺本さんの話を聞いた。この本が出版される話を知り、発売前に予約して購入。浅川マキだけでなく、りりィ、桑名正博らと深く関わった寺本さん。浅川マキのデビュー前後の話、旅先でのライブ中にホテルで急死したときの話など、とても興味深く、浅川マキファンにはたまらない内容。感情を表に出さない淡々とした文章も、いい。
読了日:05月22日 著者:寺本 幸司


〈沈黙〉の自伝的民族誌(オートエスノグラフィー) サイレント・アイヌの痛みと救済の物語〈沈黙〉の自伝的民族誌(オートエスノグラフィー) サイレント・アイヌの痛みと救済の物語感想
博士学位論文がベースのこの本は、学術的な難解な論考記述に手を焼いたが、著者自身のルーツ(曾祖母から続くアイヌの出自)に向き合い、自身の問題として「サイレント・アイヌ」の世界を「自伝的民族誌(オートエスノグラフィー)」と著者が呼ぶ手法で論考している。第四章「家族史」、第五章「真衣」から読み始めて他の章を通読する方が読みやすいと思う(先頭から読もうとすると途中でギブアップしそう)。著者についてネットで調べてみると、まだ若い現代風の女性であることに驚いた。アイヌ問題に関心のある人に推奨したい良書。
読了日:05月31日 著者:石原 真衣

読書メーター

 

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2021年5月 3日 (月)

【読】2021年4月に読んだ本(読書メーター)

4月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1327
ナイス数:55

はしっこに、馬といる ウマと話そうⅡはしっこに、馬といる ウマと話そうⅡ感想
池澤夏樹さんの『終わりと始まり2.0』で紹介されているのを読んで、この本を知った。著者は2009年、馬と暮らすために与那国島に移住した女性。カディという名前の与那国馬とのつきあいから生まれた3冊の本のうちの1冊。与那国島の風が感じられるような、爽やかな本。他の2冊は『馬語手帖 ウマと話そう』2012年、『くらやみに、馬といる』2019年(いずれもカディブックスから)。”カディ”は与那国のことばで”風”を意味する。著者によるイラストもかわいい。
読了日:04月04日 著者:河田 桟


くらやみに、馬といるくらやみに、馬といる感想
与那国島に移住して、与那国馬の”カディ”とともに島での生活を続ける河田桟という女性の3冊目の著作。はがきサイズのかわいらしい本。自身が立ち上げた”カディブックス”という地方出版社から、他の2冊とともに出版されている。Amazonには登録されていないが、地元の図書館に収蔵されていた。前作2冊とあわせて読んだ。馬との自然の中での交流が、おだやかな筆致で綴られている。いい本だ。与那国島へ与那国馬を見に行きたくなった。
読了日:04月07日 著者:河田 桟


へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々感想
読む人を惹きつける温かい文章。温かな読後感にひたっている。まさに手作りというしかない特別養護老人ホームの開所までの道のりが、おもしろおかしく描かれている。おもしろおかしいのだが、現実は想像を絶するものだったのだろう。老いとともにボケていくのは人としてあたりまえのこと。その老人を企業が経営する施設に囲い込んでいく昨今の流れは、やっぱりおかしい。そんな思いで作られていく「宅老所よりあい」に谷川俊太郎さんが魅かれる気持ちがよくわかる。「介護を地域に返す」この言葉の重みをかみしめている。明日は我が身。
読了日:04月13日 著者:鹿子 裕文


鄙(ひな)への想い鄙(ひな)への想い感想
月刊『清流』2011年5月号~2013年11月号に連載されたもの。連載最初の稿を書いた2011年2月のすぐ後、3.11を経験。大震災の体験を踏まえての論考となったという。第三章が白眉。従来の学問の枠から大きく踏み出した「江戸学」に込める筆者の想いが伝わってくる。この本で、さまざまな興味深い書物を知った。私の手元の積読になっている渡辺京二『逝きし世の面影』も読まなくては。
読了日:04月18日 著者:田中 優子


NHK 100分 de 名著 吉本隆明『共同幻想論』 2020年 7月 [雑誌] (NHKテキスト)NHK 100分 de 名著 吉本隆明『共同幻想論』 2020年 7月 [雑誌] (NHKテキスト)感想
若い頃、手にして、たぶん途中でギブアップしたと記憶する(でも、まだ文庫版を手放さずにいる)『共同幻想論』を、もういちど読んでみようという気にさせられた。『古事記』や『遠野物語』も敬遠せずに読むようになったこの年齢になって、ようやく、先入観なしに吉本隆明の著作に触れてみようという気になってきたか。
読了日:04月20日 著者:

 


黄泉の犬黄泉の犬感想
田中優子『鄙への想い 日本の原風景、そのなりたちと行く末』(清流出版)を読んでこの本を知った。オウム真理教の松本智津夫(麻原彰晃)と、その生まれ故郷である八代、不知火海の水銀中毒(水俣病)との関係に触れられていた。本書の冒頭では藤原新也が松本智津夫の生家を訪ね、その実兄を追い、ついに会うことができて、この仮説を裏付ける証言を得るところから始まる。ただ、その後の展開はインドを放浪した若い頃の話が続き、これは?と戸惑ったものの最後まで読んで事情がわかった。初出の週間プレイボーイ連載当時の事情だ。重い読後感。
読了日:04月23日 著者:藤原 新也

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