カテゴリー「【演】演芸日誌」の36件の記事

2009年8月30日 (日)

【演】小米時代の音源

縁あって、ある方から小米(こよね)時代の音源をいただいた。
私が枝雀の落語を聴き始めたのは、1980年代にはいってからだった。

米朝の一番弟子だった十代目 桂小米が、二代目 桂枝雀を襲名したのが1973年(昭和48年)。
私は遅れてきたファンだから、後追いで小米時代の雰囲気を想像するしかなかった。
(初期の枝雀落語には、小米時代の雰囲気が残っていたと聞く)

今回いただいたMD二枚には、1968年(昭和43年)から72年(昭和47年)にかけての音源が七話はいっている。
「青菜」「寝床」「饅頭こわい」「夏の医者」「延陽伯」「代書屋」「軒づけ」。
どれも、枝雀が終生演じ続けた演目である。

まず、「青菜」(昭和44年7月27日)を聴く。
枝雀時代になっても早口だったが、それに輪をかけて早口である。
テンポがいい、とも言えるが、収録時間の関係からか急いで語っているようにも思える。
それと、声がかん高く、ときどき裏返るのは、小米時代の特徴。
この特徴は初期枝雀の頃まで続いたが、演じ方の研究を深めて、だんだんと落ち着いてきたのだろう、と私は考えている。

「青菜」は、ばかばかしい噺ではあるが、随所にクスグリがたくさんあるので聴衆のノリ具合がよくわかる。
とにかく、一言一言が、どっと受けるのだ。
ポンポンポン、とはなしを進めて客をひきつける技は、さすが。
人気者だったことがよくわかるし、後の枝雀の芸風につながる「秘密」を垣間見る気がする。

円熟期の枝雀の音源とくらべてみると、なかなかおもしろい。
貴重な音源を送ってくださったUさんへ、この場からあらためてお礼申しあげます。


写真は、1976年(昭和51年)10月1日、大阪サンケイホールで収録された音源。
東芝EMI TY-40064 「青菜、天神山」

Shijaku5

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2009年8月15日 (土)

【演】喜平橋落語の会(第三回)

盛夏の昼さがり、友人夫妻が訪ねてきてくれた。

お昼をいっしょに食べたあと、恒例の「喜平橋落語の会」を開催。
落語の会、といっても桂枝雀のDVD観賞会なのだが。

Shijaku_dvd_06_2『枝雀落語大全 第六集』
 高津の富/不動坊
 EMIミュージック・ジャパン GSB-1206

高津の富
 昭和63年(1988年)6月13日放送
 TBS 『落語特選会』
 (東京国立劇場)より収録
不動坊
 平成4年(1992年)2月14日放送
 ABC 『枝雀寄席』
 (ABCホール)より収録

「高津(こうづ)の富」は、私の大好きな噺のひとつ。
もともと上方の落語で、東京にはいってきて「宿屋の富」という演題になっている。
高津神社の境内で抽選がおこなわれていた「富くじ」、今でいうところの宝くじの噺だ。

枝雀の得意ネタのひとつで、これまでさまざまな演出のものを見たり聴いたりしてきた。
今回観たものは、演出が若干ちがっていた。
高津神社で富くじのあたり番号をたしかめる場面での、「一文なしのからっけつおやじ」の反応が、私の馴染んできたものとちがうが、これはこれで面白かった。
(どちらかというと、「ねーの、ねーの」と繰り返すバージョンのほうが好きなんだが)

同じDVDに収録されている「枝雀散歩道」で、弟子の桂九雀は、枝雀がこの噺をホールで演じたときの客席の反応を語っている。
枝雀の高座がはじまると客席の反応ががらりと変わり、ぐいぐいと舞台に引きつけられていく様子を、弟子入り前の九雀はホールの後ろの方の席から見ていたという。
枝雀の英語落語のことも話していて、外国人が英語落語に引きこまれていく様子も話している。
枝雀の一面を垣間見る思いがした。

「不動坊」は、どんな噺だったか忘れていたが、途中で思いだした。
ストーリーじたいは他愛のないものだが、枝雀の演出はさすが。
おおいに笑った。

さて、四回目の「落語会」はいつになるだろうか。

 

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2009年5月 5日 (火)

【演】喜平橋落語の会(第二回)

午後、雨の中を友人夫妻が訪ねてきてくれたので、第二回の落語鑑賞会を開催。

「喜平橋落語の会(第二回)」
上方落語 桂枝雀のDVDを一枚、四人で鑑賞。

Shijaku_dvd_06『枝雀落語大全 第二集』
 くしゃみ講釈/鷺とり
 EMIミュージック・ジャパン GSB-1202

くしゃみ講釈
 昭和54年(1979年)11月25日放送
 ABC 『枝雀寄席』
 (ABCホール)より収録

枝雀が若いころから得意としていた噺。
同じDVDに収録されている「枝雀散歩道」(枝雀の思いでを関係者が語るもの)で、弟弟子の桂ざこば(ざこば襲名前は桂朝丸)が、枝雀の「くしゃみ講釈」がお客に大受けした時の体験談を語っている。
枝雀・朝丸の「兄弟会」、後に「二人会」をやっていた頃のこと。
あまりに大受けしたので、その後、朝丸がとてもやりにくかったことを、なかば恨みをこめて、しかし、兄弟子への哀惜が感じられる語り口でしゃべっている。

鷺とり
 昭和58年(1983年)1月30日放送
 ABC 『枝雀寄席』
 (ABCホール)より収録

これも若い頃からの得意ネタ。
私は、この「鷺とり」と「壺算」をレコードで聞いてから、すっかり枝雀落語のとりこになった。


今日も友人夫妻に、枝雀の死亡記事の新聞切り抜き(注)をあらためて読んでもらったのだが、枝雀が亡くなったのが1999年(平成11年)、五十九歳のときだ。
そうすると、このDVDに収録された高座は、枝雀がまだ三十代おわりから四十代はじめの頃のものだ。
絶頂期といっていい。

やはり、枝雀落語は映像でアクションを見ることで魅力が伝わってくる。
まさに枝雀落語の醍醐味を、たっぷり味わった。

手慣れたネタをトントンと語っていく進行はみごとなもの。
ときおり、くすぐりの部分を忘れてしまい、思いだそうとする、それもまた芸にしてしまう余裕が感じられる。

今回、「鷺とり」でも、例の「にわか」のところでそんな場面もあったが、安心して見ていられた。
もうひとつ気づいたのだ、鷺が腰帯にはさまれたまま目をさます場面(鷺が、風邪をひいたんだろうかと自問するところ)、ちょうど客席で誰かが大きなくしゃみをしたのだろう。
すかさず、それもギャグに取り入れてしまう芸の余裕。

やはりすごい人だった。


【注】
1999年(平成11年)4月20日の朝日新聞朝刊に、死亡記事が掲載された。
枝雀師が亡くなったのは、10年前の4月19日のことだった。


Shijaku18ban_2枝雀十八番
 昭和56年(1981年)10月1日~7日
 大阪サンケイホール
 六日間連続独演会のライブ録音
 (東芝EMI TYX-90098~106)
 9枚組LP

宿替え/寝床/蛇含草/代書屋/天神山/くっしゃみ講釈/延陽伯/高津の富/鴻池の犬/壺算/仔猫/夏の医者/鷺とり/口入屋/八五郎坊主/くやみ/愛宕山/親子酒

何度も聞いたレコードだ。
この独演会も、すごい評判を呼んだものだったらしい。


【参考】
最近発売された「枝雀十八番」という名演集のCD/DVDセットは、なぜかこの時の演目と同じものを集めているが、まったく別物である。
 Amazon 枝雀十八番(おはこ) [DVD]
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B001P3SASA

また、昭和60年(1985年)9月30日~10月5日にも、同じ大阪サンケイホールで二度目の六日間連続独演会をおこない、ライブ盤レコードとして発売された。

Shijaku_18ban_1985枝雀十八番
 昭和60年(1985年)9月30日~10月5日
 サンケイホール(大阪)
 六日間連続独演会のライブ録音
 (東芝EMI TY-60063~71)
 9枚組LP

子ほめ/饅頭こわい/親子茶屋/煮売屋/船弁慶/雨乞い源兵衛/兵庫船/崇徳院/蔵丁稚/ちしゃ医者/こぶ弁慶/貧乏神/道具屋/質屋蔵/かぜうどん/つる/胴乱の幸助/茶漬えんま

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2009年2月13日 (金)

【演】喜平橋落語の会(第一回)

いや、まあ、落語の会といってもDVDの鑑賞会だったのだけれど。

水曜日、三鷹から友人夫妻が訪ねてきてくれた。
MOTELというユニットで活躍している、あのお二人。
正月に、三鷹の「野崎庵」と称するご自宅を訪ねてお会いしていらい、約一ヵ月ぶりだ。

わが家で四人一緒に食事をして、楽しいひとときを過ごした。
こんなDVDを買ったんだよと、桂枝雀のDVDをお見せしたところ、ぜひみてみたいというので急遽DVD鑑賞会となった。
名づけて「喜平橋落語の会」、その第一回。
(次回開催日は未定)

もんさんのリクエストで、「夏の医者」と、もうひとつ、大ネタ 「地獄八景亡者戯」(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)の二つをみた。

Shijaku_dvd_01『枝雀落語大全 第七集』
 三十石 夢の通い路/夏の医者
 EMIミュージック・ジャパン GSB-1207

夏の医者
 平成5年(1993年)8月24日放送
 関西テレビ 『やる気タイム10』
 (大阪サンケイホール)より収録

単純なストーリーの短い噺だが、枝雀の得意ネタ。
夕食前、四人で大笑いする。


夕食後、じっくり腰をおちつけて。

Shijaku_dvd_10_4『枝雀落語大全 第十集』
 地獄八景亡者戯 (前編)(後編)
 EMIミュージック・ジャパン GSB-1210

 昭和58年(1983年)9月25日放送
 ABC 『枝雀寄席』 (ABCホール)より収録

この噺は、1982年の初演(レコードになっている)いらい、枝雀がなんども演じている大ネタ。
長いので、途中休憩をはさんで演じられる。

要所要所のクスグリ(ギャグ)は、当初からほとんで変わっていないようだ。
たとえば、閻魔大王の前で一芸を演じる亡者の、「曲芸」ならぬ「曲屁(きょくべい)」に出てくる「松田聖子をひりだしてみせます」「ぶり~」。
松田聖子=ぶりっこ、なんて今の人たちは知らないだろうなあ。

トチリも多いのだけれど、さすがは枝雀である。
トチリやど忘れも芸に変えて、とっさに切り抜けてしまう。
みている方は、はらはらするのだけれど、しらけることがない。

「勉強をしなおしてまいります」 と、高座をおりてそのまま引退してしまった文楽(八代目、黒門町)とは対照的だ。


この「地獄八景」の終盤、閻魔大王の裁きで地獄行きとなる四人の亡者の名前が、どうしても三人しか出てこない。
そこをうまく切り抜けるところは、さすがだ。
四人の亡者とは、山伏、軽業師、医者、歯抜師。
地獄の釜、針の山、人呑鬼(じんどんき)といったお決まりの地獄の責苦を、四人の得意技でもって切り抜けていくのである。

「地獄」というと、とても落語で笑える世界と思われないかもしれないが、この噺の地獄はあくまでもジョーク。
ブラック・ジョークなどではない。
暗さがみじんもない。
はじめからしまいまで、笑いっぱなしの世界だ。


あらためて感じたことがある。

枝雀の落語は、どこか痛々しいところがある。
枝雀本人も語っていたことだが、枝雀じしんはきわめて真面目な人で、「笑いの仮面」をつけているうちに、いつかそれがじぶんの素顔になるというのだ。
あの笑顔、オーバーなアクションは仮面で、その陰に、うつ病の素顔があったのだろうか。

それでも笑わせてくれるのは、「緊張と緩和」の笑いの理論にもみられる研究熱心さと(理屈っぽさともいえるが)、並はずれた修練(稽古好きだった)のたまものだろう。
生きていてほしかった、と、しみじみ思う。



私の 「地獄八景」 二席。

(左)
昭和59年(1984年)3月28日
 東京 「歌舞伎座」 桂枝雀独演会

 「地獄八景亡者戯」「かぜうどん」

上のDVDでも、この独演会の盛況ぶりが紹介されていた。
歴史的と言ってもよい高座を生でみることができたしあわせ。

(右)
昭和57年(1982年)年10月4日~7日
 サンケイホール (大阪)
 サンケイホール開館30周年記念
 桂枝雀独演会 (収録は10月6日か)
 東芝EMI TY-60038・39

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2009年1月 3日 (土)

【演】枝雀落語大全DVD(第三集)

桂枝雀のDVDを今夜も観た。

Shijaku_dvd_03_3枝雀 落語大全 第三集
 「宿替え」 「池田の猪買い(ししかい)」
 東芝EMI GSB1203

どちらも若い頃からの得意ネタというだけあって、安心して観ていられる。
とくに 「宿替え」 は、十八番中の十八番だから、細かい演出、クスグリが随所にちりばめられていて面白い。
レコードやカセット・テープ、テレビ番組の録画などで、私もずいぶん聴いたものだ。

「池田の猪買い」 は、ストーリー性のある旅の話で、ぐいぐい引き込まれる。


昨日、あらためて気づいたのだが、このDVDシリーズには字幕だけの「演目解説」が付いており、噺の背景が細かく解説されていて、興味ぶかい。


この巻の「枝雀散歩道」は、枝雀の弟子の桂雀三郎。
枝雀がまだ小米(こよね)だった時代に、桂べかこ(現 桂南光)に続いて弟子入りした人である。
小米、べかこ、雀三郎の三人で、落語の稽古をしていた頃のエピソードが面白かった。

酔っ払いを演じるコツを、雀三郎が枝雀から教わったときの再現シーンには笑ってしまった。
枝雀の酔っ払いの演技はピカイチである。

枝雀は稽古熱心というより、稽古が好きでたまらない人だったようだ。
第二集の桂ざこば(米朝の弟子、つまり枝雀の弟弟子で、当時は桂長丸)もそうだったが、枝雀に稽古をつけてもらった人たちは多い。
もちろん、枝雀自身も稽古をずいぶんやったそうで、道を歩きながら、あるいは電車の中で「ネタ繰り」をしていて、周りからへんな目で見られていたというエピソードも有名だ。


「宿替え」
 昭和59年10月9日放送 ABC『枝雀寄席』(ABCホール)より収録
「池田の猪買い」
 昭和55年12月28日放送 ABC『枝雀寄席』(ABCホール)より収録

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【演】初代 桂枝雀

1999年(平成11年)4月19日に亡くなった桂枝雀は二代目である。
初代桂枝雀は、明治から大正にかけて活躍した噺家。
二代目枝雀によると、爆笑落語だったというが、当然のことながら音源はほとんど残されていない。

私の手もとに、一本のカセット・テープがある。
20年前に発売されたものだ。

Yumeno_meijinyose1Yumeno_meijinyose2『明治大正 夢の名人寄席』
 コロンビア CTY-9158
 1987年10月発売 3000円

歴史的録音というやつで、ノイズまみれの音源だが、快楽亭ブラック、初代三遊亭円遊、曽呂利新左衛門、初代柳家こせん、初代桂春団治、四代目古今亭志ん生、四代目笑福亭松鶴、などの名前が並んでいる。

その中に、初代桂枝雀の音源がある。
「芋の地獄」という、三分ほどの短い録音。
ノイズだらけだし、内容もよくわからないが、こういう話芸だったのかという程度のことはわかる。

― カセット・テープの解説より ―
初代 桂枝雀
本名澤木勘次郎。二代目桂文枝門人で枝雀。そして終生名を変えなかった。音曲を得意とし、昭和三年十一月二十三日、六十六才で亡くなっている。没年から逆算すれば文久三年頃の生まれ。
この一篇は明治四十二年以降の明治の録音でいわゆる滑稽説教というもの。


Wikipedeiaには、もっと詳しい紹介がある。

― Wikipedia 初代 桂枝雀 ―
初代 桂枝雀(1862年 - 1928年11月22日)は、本名: 入江清吉。享年66。
大阪の足袋商「古滿屋」の子として生まれ、家業を継ぐ傍ら、地歌や舞踊の稽古に通う。後、友人の勧めで、上町にあった素人落語の「緑連」に加わり、喜代丸を名乗る。1884年11月、2代目桂文枝(後の桂文左衛門)に入門し、枝雀を名乗り、生涯変えなかった。
桂派が凋落の一途をたどる中、桂仁左衛門(2代目桂南光)、3代目桂文三らと共に同派を良く支える。仁左衛門の死後は、1912年に4代目笑福亭松鶴らと共に自身の名にちなんで寿々女会を組織するも、本人は出演せず。間もなく当時の元号にちなみ大正派を立ち上げ、平野町第一此花館を本拠とするが、1916年に解散。その後すぐ新桂派を結成するが、2年と持たなかった。その後、反対派に加入。1926年頃に引退。
痩躯にあばた面、片目が不自由といった風体だったが、笑いの多い愛嬌ある高座で、桂派でも一番の人気者だった。三友派の2代目桂米喬と共に、初代桂春團治出現以前の爆笑王として名を馳せた。十八番は『尻餅』『借家怪談』『野崎参り』『稽古屋』など。音曲も独特なもので、一席終えた後、「フェー」といった奇声を発してから、大津絵節などを聴かせたという。
引退後は東大阪市の布施に住み、平穏な余生を過ごした。同業者との連絡は一切絶っていたため、死期も分からず仕舞だったという。
弟子には2代目桂小文枝、3代目桂萬光、2代目桂談枝らがいる。
出典 『古今東西落語家事典』(平凡社、1989年)

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【演】枝雀落語を観るヨロコビ

正月休みがまだ続いているので、夜更けではあるが、枝雀落語のDVDを観ていた。

Shijaku_dvd_02枝雀落語大全 第二集
 「くしゃみ講釈」 「鷺とり」
 東芝EMI GSB1202

「くしゃみ講釈」
 昭和54年11月25日収録 ABC「枝雀寄席」(ABCホール)
「鷺とり」
 昭和58年1月30日収録 ABC「枝雀寄席」(ABCホール)


昭和54年の映像では頭にうっすらと髪の毛が残っていて、小米時代の名残りを感じさせるところがおかしい。
昭和58年の映像では、髪の毛がなくなっている。

そんなことはともかく、どちらの演目も私がレコードやカセットテープで聴いていたのとほぼ同じ話の運びで、この頃すでに枝雀一流の演出が完成されていたと思われる。


「鷺とり」は、私にとって思い入れのあるものだ。

桂枝雀というおもろい上方の噺家がいることを教えてくれたのは、私が勤めていた会社の後輩である神戸出身の女性だった。
その人が、枝雀の「鷺とり」や「壺算」のことをじつに懐かしそうに話してくれたのだった。
(神戸や大阪で、生の枝雀落語を体験していた人だった)

演目の内容までは教えてもらえなかったが、「枝雀さん」と呼ぶその人の嬉しそうな話しぶりだけで、私も聴いてみたいと思うようになったのが、枝雀落語にはまりこむきっかけだった。

今日観た映像では、いくつかのトチリはあるものの、聴衆をしらけさせるどころか、失敗までも芸に変えてしまう上手さに、あらためて感心した。

音源を耳で聴くだけではわからなかった身ぶり手ぶりの面白さも体験できて、枝雀落語を「観る」ことのヨロコビをあらためて感じることができた。


また、このシリーズには、どの巻にも「枝雀散歩道」と題して、愛弟子や兄弟弟子が故枝雀のエピソードを語る映像が収録されている。

桂ざこば(桂朝丸=枝雀の弟弟子)が語る思い出話がとてもよかった。
小米(枝雀襲名前の芸名)時代から細かい演出に気を配っていたという兄弟子「枝雀にいちゃん」の芸風を語りながら、当時を思いだしてしばし言葉に詰まるざこばを見ていると、こちらまでじーんときてしまう。


いいDVDを手に入れたと、あらためて思う。

Dvdset枝雀落語大全 第一期(第一集~第十集)
 DVD10枚組:38,000円(税込)
 東芝EMI

http://www.emimusic.jp/st/rakugo/sijaku/dvd/part1.htm






【参考】 Wikipedia 「二代目桂枝雀」 より
2代目枝雀襲名
1973年(昭和48年)10月に大阪道頓堀の角座で「2代目桂枝雀」を襲名。(笑福亭枝鶴、桂福團治とのトリプル襲名であった。)これを機にそれまでの落語を大きく変える。高座では笑顔を絶やさず、時にはオーバーリアクションを用い、それまでの落語スタイルの概念を大きく飛躍させ、どんな客も大爆笑させる落語であった。それまでの小米ファンには戸惑うものもいたが、客の受けは非常によく、枝雀の評判はどんどん上がっていき、米朝と時期を分けて独演会を行うようになっていった。

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2008年12月21日 (日)

【演】枝雀さんのDVD

一週間前のことだが、桂枝雀(1999年4月没)のライブDVDを手に入れ、その一巻目を観た。
ライブ映像は、いいなあ。

『枝雀落語大全 第一集』
  寝床/代書
 EMIミュージック・ジャパン GSB1201
 3800円(税込)
 http://www.emimusic.jp/st/rakugo/sijaku/dvd/part1.htm

Shijaku_dvd_01寝床
 昭和61年10月13日放送
 TBS「落語特選会」(東京国立劇場)より収録
代書
 平成4年8月14日放送
 関西テレビ「トナリnoとなり(米朝一門会)」より収録


「寝床」
いろんなバージョンの音源や放送録画を聴いたり観たりしてきたが、これはちょいと危うさを感じるような口演。
もう少し完成度の高いものもあったはずなのにと、残念に思ったりもするが、これもライブの面白さなのだな。
やはり映像のちからは大きいものだ。
枝雀一流のアクションによって、浄瑠璃好きの旦那の心理の動きが表現されている。
会場を爆笑のうずに巻き込む演技はさすが。

「代書」 (「代書屋」とも呼ばれる演目)
これもいろんなバージョンがあって、ちょっと間抜けな主人公(代書屋に履歴書を書いてもらいにくる)の描き方がそれぞれ微妙にちがう。
私が聴いてきたものは、履歴書を「ゲレキショ」と言ったり、「あんたの本当の職業は何です?」という代書屋の問いに「ガタロー!」と答えるもので、私は好きだったが、この口演の「ポンでーす!」も爆笑もの。
「ガタロー」は、どぶ掃除の仕事。
「ポン」は、「ポン菓子」屋。私がちいさな頃にもまわってきたこの職業、「ドン」と読んでいたが、正式にはなんと呼ぶのだろう。
米やとうもろこしを持っていくと、釜に入れてポップコーンにしてくれる。
代書屋の、「ポンて何ですかあ?」と途方にくれる様子が、おかしくてたまらない。
名演である。


まあ、よけいな講釈はおいといて、二度と観ることができなくなった枝雀師の落語を楽しめる幸せに感謝している。
このシリーズ、全40巻という厖大なものだが、10巻ずつセットになっているので、少しずつ買い求めていこうと思う。


【おすすめサイト】
松本留五郎の部屋

http://www11.ocn.ne.jp/~tomegoro/

※松本留五郎……「代書」の主人公の名前

 

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2008年12月11日 (木)

【読】今年読んだ本 (上方落語)

年末近くになって、上方落語家が書いた本を二冊読んだ。
いずれも、桂枝雀の弟子が書いた本である。

半月ほど前に書いた内容と一部重複するが、あらためて書いておきたい。
→ 【演】【読】枝雀の弟子たち
 http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-13ab.html


Jakujaku_hisshi桂 雀々 『必死のパッチ』
 幻冬舎 2008/10/25発行
 1300円(税別)

なかなか感動的な内容だった。

雀々自身のこんな公式サイトがある。

落語家・桂雀々の必死のパッチ - ほ~む -
http://www.jak2.net/


もう一冊は、まじめな落語の歴史の本である。

Bunga_rakugo_tsuu桂 文我  『落語「通」入門』
 集英社文庫 2006/10発行
 735円(税込)

枝雀のもとで桂雀司として修業していた頃、師匠の枝雀にこう言われたことがきっかけで、演芸関係の資料を収集し、研究するようになったという。

「最近は米朝師匠(枝雀の師匠)のように、落語の資料を集めながら、落語の歴史も熟知した上で本を著せるようなタイプの噺家がいないから、米朝師匠の万分の一でもいいから、そのジャンルを押さえなさい」

また、枝雀師に言われたこんなことばが忘れられないとも。

「アイデアに頼り過ぎると、知的には面白いかも知れんが、ハートに響いてこない。 見た目も普通のスタイルで、〝知恵のある声〟が出る噺家を目指しなさい」

枝雀らしい、温かみの感じられることばだと思う。
いい弟子をたくさん残した桂枝雀は、やはり偉大な落語家だった。



ところで、今日、ようやく待望の本を手に入れた。
はじめて見かけたのが、御茶ノ水の「丸善」だった。
気にはなったが買わずにいたら、次に寄ったときには売れていた。
その後、浜松町(モノレール乗り場近く)の書店に平積みされていたのを見たときも、迷った末、買わなかった。
ネットで注文したら、到着までずいぶん日数がかかった。

気になった本は、見かけたその場で買うべきものだなあ。


Komigata_engei_taizen『上方演芸大全』
 大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)編
 創元社  2008/11/20発行
 535ページ  2800円(税別)

この分厚さで(35mmもある)この価格は、むちゃくちゃに安い。
内容も充実している。

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032165028&Action_id=121&Sza_id=G1

[要旨]
漫才、落語、喜劇、浪曲、講談、諸芸、メディア、作家・裏方、劇場・寄席―。上方演芸の総覧としてその歴史と魅力を集大成。笑いの芸、その源流から現在まで、そして未来をも展望する。 
[目次]
第1章 漫才;第2章 落語;第3章 喜劇;第4章 浪曲;第5章 講談;第6章 諸芸;第7章 上方演芸とメディア;第8章 作家・裏方;第9章 劇場・寄席・小屋;資料編 
[出版社商品紹介] 
上方演芸の歴史と魅力を集大成した初の書。10章立てで、その全容と細部に迫った貴重な記録。図版、資料多数。 

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2008年12月10日 (水)

【演】今年聴いた落語

この数年、落語会や寄席はもちろんのこと、テレビ、ラジオでも落語を聴くことがなくなった。
もっぱら、過去に撮り溜めたビデオや、レコードなどの音源で聴いている。

Shijaku_jigoku_bakkei今年は、故 桂枝雀の音源をいくつか聴いた。
同じ音源を何度聴いても楽しめるのは、落語が「知」ではなく「情」の部分に働きかける芸だからだと思う。
これは、枝雀が言っていたことでもある。

「知」とは、理屈で理解する部分。
あれが、ああなって、こうなる、と理屈で理解している領域は、何度もおなじことを繰り返すと、もうわかっているという気持になり、飽きてしまうものだ。
いっぽう、「情」の部分に働きかけられると、そのたびに反応するのが人間というものらしい。

音楽もそうだが、同じ音源を何度聴いてもその都度あらたな感動があるのは、人間に「情」というありがたいものがそなわっているからなんだろう。
枝雀の口癖ではないが、「ありがたいことでございます」。


ところで、枝雀の落語の映像が、全40巻のDVDで発売されている。

SoundTown / 落語 桂枝雀
 東芝EMIによる桂枝雀の「枝雀落語大全」「THE 枝雀」紹介 収録作品一覧
http://www.emimusic.jp/st/rakugo/sijaku/dvd/index_j.htm

さすがに全巻まとめて買うことはできないが、このたび、第一期(第一集~第十集)を東芝EMIの通販で購入した。
これだけでも、まとまった金額になったが、これから年に二回(夏・冬)、十巻ずつ買っていこうかな、なんて思っている。


枝雀落語大全 第一期(第一集~第十集)
 DVD10枚組:38,000円(税込)
枝雀落語大全第一期(第一集~第十集)のDVD10枚組
字幕映像…落語のビデオとしては初めての字幕スーパーを収録
演目解説…演目解説を収録画面で分かりやすく説明
購入者には特典DVDをプレゼント!

各巻に、「枝雀散歩道」と題する映像が入っているらしく、この第一期には枝雀の弟子たちが案内人で勢ぞろいしている。
楽しみだな。

http://www.emimusic.jp/st/rakugo/sijaku/dvd/part1.htm


Dvdset_3第一集  寝床/代書
  枝雀散歩道:案内人 桂 南光
第二集  くしゃみ講釈/鷺とり
  枝雀散歩道:案内人 桂 ざこば
第三集  宿替え/池田の猪買い
  枝雀散歩道:案内人 桂 雀三郎
第四集  饅頭こわい/替り目
  枝雀散歩道:案内人 桂 雀松
第五集  住吉駕籠/八五郎坊主
  枝雀散歩道:案内人 桂 雀々
第六集  高津の富/不動坊
  枝雀散歩道:案内 桂 九雀
第七集  三十石 夢の通い路/夏の医者
  枝雀散歩道:案内人 桂 文我
第八集  愛宕山/貧乏神
  枝雀散歩道:案内人 桂 む雀
第九集  舟弁慶/かぜうどん
  枝雀散歩道:案内人 桂 紅雀
第十集  地獄八景亡者戯(前編・後編)
  枝雀散歩道:案内人 桂 南光

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