カテゴリー「南方熊楠」の20件の記事

2016年1月 9日 (土)

【読】独学のススメ、ブログの効用

どういうきっかけで知った本か忘れてしまったが、図書館から借りてきたこの本が面白い。

礫川全次(こいしかわ・ぜんじ)
 『独学の冒険 ――消費する情報から知の発見へ』
 批評社 2015/10/31発行 219ページ 1,700円(税別)

Amazonには書影が載っていないので、私がよく利用しているe-honサイトから画像を拝借。

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著者は1949年生まれの「在野史家」と、巻末著者略歴にある。

自分のブログの過去記事と読書記録を見直して、わかった。
2014年10月から11月にかけて、この人の本を続けて読んでいた。

礫川全次 『異端の民俗学 ―差別と境界をめぐって』
  河出書房新社 2006/4/20発行 210ページ (図書館から借りて)
礫川全次 『戦後ニッポン犯罪史』
 批評社 2000/6/10発行 332ページ (図書館から借りて)
礫川全次 『日本人はいつから働きすぎになったのか ―<勤勉>の誕生』
 平凡社新書744 2014/8/12発行 254ページ (購入)

   

他にもたくさん、興味ぶかい本を出版している人だ。

2014年10月19日の東京新聞書評ページに掲載されていた記事と写真を見て、ますます好きになった。

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さて、今読んでいる 『独学の冒険』 だが、独学入門、独学のすすめ、といった内容。

独学とはなにか。
まえがきによると、「自分ひとりの意思に基づき、基本的に自分ひとりの力に頼っておこなう学問」 という。

「学問」といわれると、私などは腰が引けてしまうが、自分ひとりを頼みに、何かしらの探求を続けること、と解釈すれば、私なども独学の徒のはしくれと言えそうだ。

この本でとりあげられている独学の先達の顔ぶれも興味ぶかい。

柳田國男、家永三郎、千葉徳爾、佐藤忠男、清水文弥、南方熊楠、中山太郎、佐々木喜善、橋本義夫、谷川健一、吉本隆明、杉本つとむ。

はじめて見る名前も多いが、読みすすむうちに、いずれ、どういう人たちかはわかるはず。

あとがきにも書かれているが、「独学」と「在野学」の関係が微妙だ。
独学とは対照的なアカデミズムの世界に身を置きながら、独学的な発想で研究を続けた例として、家永三郎があげられている。


本書巻頭のQ&Aが面白い。
そのなかで、ブログの効用が述べられている。

 ・ 毎日更新することで、文章の練習になる (同感)
 ・ 研究日誌になる (私のブログは「研究」には程遠いが)
 ・ 未知の人々と交流する媒体になる (コメントを通して・・・私にも経験あり)
 ・ ひとつの「ファイル」になる (アーカイブ=書庫としてのブログ)
 ・ 出版の代わりになりうる

最後の効用だが、これまた興味ぶかいブログが紹介されていて、参考になった。
さっそく、ブックマークに追加。
著者自身も、ブログを書いている。

部落学序説 (吉田向学)
 http://blog.goo.ne.jp/eigaku

巫研 Docs Wiki
 http://docs.miko.org/index.php/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
 日本巫女史
  http://docs.miko.org/index.php/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%B7%AB%E5%A5%B3%E5%8F%B2

礫川全次のコラムと名言
 http://blog.goo.ne.jp/514303

なるほど、ブログに連載することで、ネット上での出版ができるとも言える。

ときどき面倒になることもあるブログ投稿。
できるだけ続けていこうと思う。

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2015年12月 1日 (火)

【雑】水木しげるさん

あい残念なことだが、93歳なら大往生と言っていいのかもしれない。
水木しげるさんが11月30日に亡くなった。

訃報|水木プロダクション公式サイトげげげ通信
http://www.mizukipro.com/2015/11/post-1341.html

 水木プロダクション公式サイトげげげ通信
 http://www.mizukipro.com/

東京新聞:水木しげるさん死去 93歳 伝説の妖怪に息吹:社会(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015113090135648.html

この日の昼頃、ちょうど私たちは深大寺門前にある「鬼太郎茶屋」の前を歩いていたのだった。

(写真は2010/11/28に撮影したもの)

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そして、私の好きな、水木しげるさんの本。

『水木しげるのラバウル戦記』 ちくま文庫

― Amazonより ―
太平洋戦争の激戦地ラバウル。水木二等兵は、その戦闘に一兵卒として送り込まれた。彼は上官に殴られ続ける日々を、それでも楽天的な気持ちで過ごしていた。ある日、部隊は敵の奇襲にあい全滅する。彼は、九死に一生をえるが、片腕を失ってしまう。この強烈な体験が鮮明な時期に描いた絵に、後に文章を添えて完成したのが、この戦記である。終戦直後、ラバウルの原住民と交流しながら、その地で描いた貴重なデッサン二十点もあわせて公開する。

自らの戦争体験を綴った著書や漫画は、他にもたくさんある。

 『猫楠――南方熊楠の生涯』 角川文庫ソフィア

― Amazonより ―
博物学・民俗学・語学・性愛学・粘菌学・エコロジー…広範囲な才能で世界を驚愕させた南方熊楠。そんな日本史上最もバイタリティーに富んだ大怪人の生きざまを描く。(解題:荒俣宏・中沢新一)

南方熊楠という、あまり目だたない“怪人”を描いたこの漫画に、水木さんの民俗学への関心と造詣の深さがうかがわれる。
南方熊楠が好きな私には、たいへんうれしい一冊。

私の敬愛する人たちが、次々と鬼籍にはいっていくのは、淋しい。

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2015年8月 6日 (木)

【読】赤坂憲雄×鶴見和子

こんな魅力的な本が出た。
図書館にリクエストしておいたら、購入してくれた。

さきほど図書館から借りてきたところ。

鶴見和子さんが、生前、赤坂憲雄さんとこういう仕事(対談)をしていたのだ。
今から9年前のことだったらしい。
知らなかった。

赤坂憲雄・鶴見和子
 『地域からつくる――内発的発展論と東北学』

 藤原書店 2015/7/31発行 243ページ 2,500円(税別)

― e-honサイト掲載情報に加筆 ―
[要旨]
生涯をかけて「内発的発展論」を追究した社会学者・鶴見和子(1918‐2006)が、鶴見に背中を押され「東北学」へ踏み出した赤坂憲雄との対話のなかで、死の3か月前に語り遺したこととは何か。東日本大震災を経て、地域社会の解体と、自然と人間との関係の苛烈な再編成に直面しているわれわれが、いま一度、地域に立脚した未来像を描く方途を探る。
[目次]
序論 三・一一以後の鶴見和子論のために (赤坂憲雄)
<幕間>凛として群れぬ生き姿――鶴見和子さんを悼む (赤坂憲雄)
第1部 対談 内発的発展論と東北学 (赤坂憲雄・鶴見和子)
 なぜ、東北へ赴いたのか
 「漂泊と定住」の枠組の解体 (講演 鶴見和子)
 「東北」はひとつではない
 地域から国境を越える
<幕間>柳田民俗学のかくし味 (鶴見和子)
      東北芸術工科大学東北文化研究センター (赤坂憲雄)
第2部 柳田国男から東北学へ
 柳田・民俗学・東北 (赤坂憲雄・鶴見和子)
  <講演>柳田国男と東北 (赤坂憲雄)
  <講演>『遠野物語』を原点として東北モデルを考えよう (鶴見和子)
  <対談>東北、その内発的発展への道 (赤坂憲雄・鶴見和子)
 柳田国男から内発的発展論へ―『鶴見和子曼荼羅4 土の巻』解説 (赤坂憲雄)
 <対談>地域志向の比較学 (赤坂憲雄・鶴見和子)
[著者紹介]
赤坂 憲雄 (アカサカ ノリオ)  
1953年生。学習院大学文学部教授。福島県立博物館館長。遠野文化研究センター所長。1999年、責任編集による『東北学』を創刊。
鶴見 和子 (ツルミ カズコ)  
1918年東京に生まれる。39年津田英学塾卒業、41年ヴァッサー大学哲学修士号取得。65年ブリティッシュ・コロンビア大学助教授、66年プリンストン大学社会学博士号(Ph.D.)取得、69年上智大学外国語学部教授、同大学国際関係研究所所員(~89年。82~84年同所長)を経て、上智大学名誉教授。専攻、比較社会学。95年南方熊楠賞受賞。99年度朝日賞受賞。幼少より佐佐木信綱門下で短歌を学び、花柳徳太郎のもとで踊りを習う(20歳で花柳徳和子を名取り)。

私が敬愛する二人の対話。
興味ぶかい本だ。
手もとに置いておきたい良書なので、じぶんでも購入しようと思う。

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2014年5月24日 (土)

【遊】国分寺「ライトハウス」と町田「高原書店」

午後、所用で相模原まで車ででかけた。

行きがけに、国分寺のうどんカフェ 「ライトハウス」 に寄って昼食。
ひさしぶりに店主の仁田さんにお会いした。

今日は暑かったので、冷たいうどんをいただいた。
妻は棒棒鶏うどん、私は冷やしかき揚げうどん。
揚げたてのかき揚げが、おいしかった。

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コインパーキングに車を置いたまま、すぐ近くにある 「おたカフェ」と「武蔵国分寺資料館」に寄ってみた。
長年このあたりに来ていながら、ここに寄るのは初めて。

資料館(有料・100円)には、時間の関係で入らなかったが、「おたカフェ」は緑の木立に囲まれ、落ちついた雰囲気。
また、こんどゆっくり来てみようと思う。
妻は「おたカフェ」でコースターを購入。

おたカフェ - 史跡の駅 -
 http://www.ota-cafe.com/

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相模原から町田へ。
二週間前に初めて行って気に入った古書店 「高原書店」 を再訪。

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店の場所を覚えたので、今回はすんなり到着。
一階の均一コーナーを見てから、二階、三階、四階と、ひと通り回ってみる。

この店は、基本が定価の半額。
欲しい本がたくさんあるのだが、やや値が張るため、何も買わず、もう一度一階の均一コーナーへ。

店に入ったときに見て気になっていた雑誌を買うことにした。
藤原書店発行の 「環」 28号(2007年冬号)、300円。
鶴見和子の追悼特集だ。
(鶴見和子は2006年7月31日、88歳で死去)

この雑誌が置かれていた300円均一コーナーを何気なく見ていたら、すぐそばに「太陽」の南方熊楠特集号(1990年11月号)を発見。
古本屋では、こういう嬉しい発見があるものだ。

二冊の雑誌を持って一階のレジへ。
代金648円(税込)を支払い、預けていた鞄を受け取って店を後にした。
今日の収穫だった。

 

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2011年4月 3日 (日)

【読】大型古書店で

「ブックセンターいとう」という大型古書店チェーンがある。
「BOOK OFF」よりも、このチェーン店のほうが珍しい本が多い。
あちこちの店舗をよく利用させてもらっている。

http://www.book-center.co.jp/


今日の夕方、国分寺店をのぞいてみた。
ずっと探し続けていた、講談社現代新書『南方熊楠を知る事典』があった。
奇跡的だ。驚いた。
Amazonではとんでもない値段がつけられている絶版本だ。
それが650円。
本の状態はよくないが、迷わず買ってしまった。

すでに一冊持っているのに……。

Kumagusu_jiten2『南方熊楠を知る事典』
 講談社現代新書 1142
 1993年4月20日発行
 653ページ 定価1500円(本体1456円)

消費税が3%の時代に出版された本だ。
発売当時、書店で見かけたおぼえがあるが、当時、私は南方熊楠をよく知らず、関心がなかった。

その後、あることがきっかけで、南方熊楠を読みはじめた頃、図書館でこの本を目にし、手元においておきたくなった。
すでに絶版となっていたので、価格がいくらだったか忘れたが、ネットで手に入れた。
かなり汚れのめだつ古書だったが。

 そのあたりは、私のWebサイトにも書いたことがある。
 http://yamaoji-hp.web.infoseek.co.jp/books.html

今日も、一瞬、「持ってるんだけどなあ……」と躊躇したものの、みつけた嬉しさが先にたち、手にとってレジに向かった。
勘定をすませた後、レジの店員さんに、「この本はめったにない本なんですよ、Amazonでも高い値段がついてる」なんて得意げに言ってしまった。
店員さんは、「そうなんですかあ。絶版なんですか?」と言っていたが、「失敗した(もっと高い値段をつけておけばよかった)」なんて顔は、もちろんしていなかった。
むこうは、あくまでもマニュアル通りにやる商売だから。

本の価値は、やっぱり読む人(コレクターもいるけど)が決めるものなんだなあ。


【参考サイト】
e-honサイト
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000018818146&Action_id=121&Sza_id=F3

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2009年6月23日 (火)

【読】魅力的な本を手に入れた

ずっと前にこのブログに書いた記事に、トラックバックがついた。
(「最近のトラックバック」をご参照ください)

どういう方か存じあげないけれど、私の記事を読んでくださったのはうれしいことだ。
トラックバックをつけていただいた私のブログの記事は、これ。

2008年4月29日 【楽】きょうだい心中
 http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_677a.html

山崎ハコさんの歌 「きょうだい心中」 から南方熊楠の話に飛ぶ、とりとめのない内容。

このなかで、西川照子さんという人のことを書いたが、私はこの人の著作を読んだことがなかった。
トラックバックをつけてくださった方のブログ記事に、西川さんの本のことが書かれていた。
私が、西川照子さんの略歴で引用した中にあった 『神々の赤い花』 という、魅惑的なタイトルの本だ。

あらためて興味ぶかく思い、運よく図書館にあったので予約して借りてきた。
と同時に、手もとに置きたくなり、amazonで古本をみつけて発注、手に入れた。
(こういうことが私にはよくある)

Nishikawa_kamigami_no_akaihana『神々の赤い花 ―人 植物 民俗―』
 西川照子  平凡社 1990/5/25発行
 330ページ 2680円(税込)

表紙はヤケがめだつが、中はきれいな本。
900円だった(送料別)。

第一章 「薔薇――赤い花の記憶」 の一部を読んでみたが、とても刺激的な内容だ。
この章のタイトルを拾ってみると――「赤い花の記憶」「幻想の赤いバラ」「リルケの薔薇」「三島由紀夫の薔薇」「紀貫之のそうび」――といったぐあい。

高踏的な内容かと思いきや、もともとが『さつき盆栽』『近代盆栽』という園芸雑誌に掲載された文章ということもあり、読みやすく親しみがもてる。
ただし、この人の博識ぶりはすごい。

いつも書くことだが、本との出会いは不思議なものである。

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2009年1月13日 (火)

【読】南方熊楠という巨人

水木しげるのコミック 『猫楠 南方熊楠の生涯』 (角川文庫)がとても面白かった。

Mizuki_nekogusu『猫楠 neko-gusu 南方熊楠の生涯』
 水木しげる 角川文庫 1996年
 667円(税別)

コミックだから誇張も多いが、南方熊楠という類いまれな巨人の魅力がよく伝わってくる。
熊楠にまつわるさまざまなエピソードが上手にとりあげられている。
熊楠ファンだけでなく、水木しげるファンにもおすすめしたいと思うほど。

「猫楠」というタイトルは、熊楠が猫好きだったことから、猫を狂言回しの役割で登場させて、物語をすすめているところから付けられたのだろう。


ひさしぶりに、南方熊楠の波乱に満ちた生涯を追いかけてみて、熊楠にまつわる本や、熊楠自身の著作(難しいが面白い)も読んでみたくなった。

私が南方熊楠にであったきっかけは、古本市でみつけた一冊の文庫本だった。
それまで、南方熊楠の名前とウワサは聞いていたので、読んでみようかなと思って買ってみたのだった。

Hirano_kumagusu_gaiden平野威馬雄(ひらの・いまお)
 『くまぐす外伝』
 ちくま文庫 1991年 835円(税別) 472ページ

有名な熊楠の「履歴書」が巻末に掲載されている。
<「あなたの研究所設立のために、喜んで寄付をしたいが、あなたの事は、ただ、えらい学者だという事しかわかっていないので、このさい、ごくかんたんでいいから、あなたの略歴を、しらせてください」と、望んだ日本郵船重役矢吹氏は、この未曽有に長大な「リレキ書」を受け取ってどんなにおどろいたことであろう。>
(平野威馬雄 同書 P.369)
文庫サイズでも86ページにわたる、長大な履歴書だ。

今気づいたのだが、この文庫本の解説は水木しげるが書いている。
(解説 「霊的存在」 を見た熊楠 水木しげる)


神坂次郎が書いた伝記も面白かった。

Kousaka_kumagusu神坂次郎(こうさか・じろう)
 『縛られた巨人 南方熊楠の生涯』
 新潮文庫 1991年 667円(税別) 502ページ

「縛られた巨人」 というネーミングが、在野の、ほとんど無名な(国内では)民間学者として生涯をおくった熊楠をうまく表現している。
この文庫本の巻末対談は、北杜夫と神坂次郎による。
北杜夫も熊楠のことはよく知っていたのだ。




学術的な専門書だが、鶴見和子さんの書いた本がとてもよかった。

Tsurumi_kumagusu鶴見和子 『南方熊楠』  ―地球志向の比較学―
 講談社学術文庫 1981年 1100円(税別) 318ページ

私は、この本で鶴見和子さんという、信頼できる学者さんに出会った。
鶴見さんは、鶴見俊輔さんの姉上。

柳田國男を長く研究していた著者は、熊楠に出会ったことで大きなショックを受けたそうだ。
熊楠とがっぷり四つに取り組んでいる好著といえる。
内容は難しかったが、鶴見和子さんが生涯かけて取り組んだテーマに引き寄せて、熊楠の業績をたんねんにたどっている。

<南方熊楠について、わたしは晩学である。……この本を書かせていただいたことは、わたしにとって、眼から鱗の落ちるような経験であった。>
(本書 初版はしがき 鶴見和子)


南方熊楠は、膨大な、珠玉のような著作の魅力とともに、おそろしく人間的な魅力を持つ巨人である。


Kumagusu_jyuunishikouKumagusu_zuihitsu南方熊楠 『十二支考』
 岩波文庫(上・下) 1994年
 800円・760円(税別)

益川勝実編 『南方熊楠随筆集』
 ちくま学芸文庫 1994年
 1300円(税別)

どちらもまだ読んでいないが、そろそろ「原典」にあたろうかな、と思う。
古典にしろなんにしろ、原点に直接触れることの大切さを、近ごろ痛感している。

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2009年1月12日 (月)

【読】水木しげる 「猫楠」

ブルータスという雑誌(654号、2008/12/15発売)に、おもしろい特集があった。

BRUTUS 654号 (2009年1月1日・15日号)  マガジンハウス

Brutus200901http://magazineworld.jp/brutus/654/

特集 「生き方」を考える本。
「男が惚れる男、女が惚れる女」 として、11人がとりあげられている。

チェ・ゲバラ、須賀敦子、北大路魯山人、伊丹十三、岸恵子、開高健、南方熊楠、向田邦子、ル・クレジオ、椎名林檎、赤塚不二夫。


南方熊楠のページに、興味深い本が紹介されていた。

Brutus_kumagusu2Brutus_kumagusu1南方熊楠
 在野に生きた硬骨の天才。

1867年和歌山県生まれ。86年より約14年間にわたる留学の間に植物学などの分野で世界的な業績を残す。帰国後は南紀に留まりつづけ、博物学、宗教学、民俗学の分野における近代日本の先駆的存在として、また同時に植物学、特に「隠花植物」と呼ばれていた菌類・地衣類などの日本における初期の代表的な研究者として活躍。民俗学者の柳田國男をはじめ多くの国内の学者にも影響を与えた。太平洋戦争が始まる直前の1941年、74歳で死去。
(ブルータス 654号 P.33)





Mizuki_nekogusu水木しげる 『猫楠 南方熊楠の生涯』
 角川文庫 667円(税別)
 1996年10月 初版発行 427ページ

漫画家・水木しげるが、熊楠が可愛がった猫たちの目を通して熊楠と彼を取り巻く人々の姿を描いた電気漫画の秀作。水木らしペーソスあふれるタッチで、闊達で奔放な愛すべきヘンクツの怪人・熊楠を親しみを込めて、生き生きと描いている。主要なエピソードもほぼ史実に沿って押さえられており、熊楠の人生を知るのに最も分かりやすい楽しい一冊。
(ブルータス 654号 P.33)

取り寄せて読んでいるところだが、とても面白い。
ついでに、前から買おうかどうか迷っていた 『南方熊楠の森』 (松井竜五、岩崎仁編、方丈堂出版)も手に入れた。
付録のCD-ROMがうれしい。


Kumagusu_no_mori『南方熊楠の森』
 松居竜吾、岩崎仁編 方丈堂出版
 2858円(税別) 2005年12月20日 発行
 215ページ

熊楠の調査・研究に欠かすことのできなかった熊野の森。そこで育まれた熊楠の世界観について、熊楠研究で知られる編者が最新の研究成果をまとめた。熊楠ゆかりの地を解説したテキストもファンにはうれしい。付録としてデータベースと映像資料のCD-ROMも。
(ブルータス 654号 P.33)

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2008年12月26日 (金)

【雑】今年も、またリセット

年末、さいごの仕事を終えて家に帰ってくると、毎年きまってこう思う。
「今年も、またリセット」

去年の今頃も、おなじようなことをこのブログに書いていたっけ。
一昨年も。

こうしてまた、ひとつ歳を重ねるわけだ。


昼休み、コンビニで手に入れた雑誌。

Brutus200901BURUTUS 2009年 1/1・15合併号
 マガジンハウス  590円(税込)

表紙にひかれて買ってみた。
「生き方」を考える本、という巻頭の特集がなかなかいい。
パラパラとめくっていると、南方熊楠がとりあげられていて、うれしくなった。

こんな人たちが、それぞれ見開きで紹介されている。
チェ・ゲバラ/須賀敦子/北大路魯山人/伊丹十三/岸恵子/開高健/南方熊楠/向田邦子/ル・クレジオ/椎名林檎/赤塚不二夫




朝は朝で、電車の中で読んでいた宮部みゆきさんの時代小説の一節に、ジーンときた。

Miyabe_kanninbako宮部みゆき 『堪忍箱』
 新潮文庫  476円(税別)

<この荷車には何が積んであるんだろう。藁で包んで荒縄で縛った四角いものが、ぎっちりと並べてある。ひどく重そうだ。でもこれを引いて持っていかない限り、引き手は金をもらえないし、今日のおまんまにはありつけない。仕事というのはそういうもので、雨でも天気でも暑くても寒くても、ひと言も文句を垂れたりしてはいけないのだと、おっかさんは言っていた。>
(「砂村新田」より)

そうなんだな、と思う。
働いて、働いて、文句も言わず、子を育て、老いて死んでいく、そんな無名の人々がいちばんえらいのだ。

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2008年4月29日 (火)

【楽】きょうだい心中

これも思いだしたので、書いておこう。
山崎ハコさんが歌う 「きょうだい心中」 という歌にまつわる話だ。

「はっぽん」のライブでも、この歌の生い立ちを、ハコさんが話していた。

ハコさんが歌った 「きょうだい心中」 は、神代辰巳監督の映画 「地獄」 (1979年、東映)の挿入歌。
神代監督が、カセットでハコさんの歌を聞き、「こんどの映画の主題歌はこの子に作らせる」と、指名してできたのが 「心だけ愛して」 という、もう一曲の挿入歌だったということだ。
(アルバム 『人間まがい』 1979年発売 に収録)


ところで、とつぜんだが、こんな本がある。

Kumagusu_jiten『南方熊楠を知る事典』
 講談社現代新書 1993.4.20 (絶版)

南方 熊楠(みなかた くまぐす)
1867年5月18日(慶応3年4月15日) - 1941年(昭和16年)12月29日)
日本の博物学者、生物学者(とくに菌類学)、民俗学者。
菌類学者としては動物の特徴と植物の特徴を併せ持つ粘菌の研究で知られている。
主著『十二支考』『南方随筆』など。
投稿論文や書簡が主な執筆対象であったため、平凡社編集による全集が刊行された。「歩くエンサイクロペディア(百科事典)」と呼ばれ、彼の言動や性格が奇抜で人並み外れたものであるため、後世に数々の逸話を残している。
(出典:Wikipedia)

この「知る事典」は、なかなか面白い本だが、 「きょうだい心中」 という昔から歌われている歌のことが書かれている。

「南方熊楠主要著作解題――月下氷人」 (本書P.532~、西川照子)

<今も熊野等の碇泊地で船頭や船饅頭が唄う、「所は京都の堺の町で、哀れ悲しや兄妹(おととい)心中、兄は二十一、その名は軍平、妹は十八、その名はお清、兄の軍平が妹に×て、それが病の基(もとい)となりて、ある日お清が軍平眼元にもしもし兄上御病気は如何、医者を迎うか薬を取ろうか、医者も薬も介抱も入らぬ、一夜頼みよ、これお清さん、これこれ兄様何言わさんす、人が聞いたら畜生と謂わん、親が聞いたら殺すと言わん、私に一人の夫がごんす、歳は二十一、虚無僧でござる、虚無僧殺して下されますりゃ、一夜二夜でも三八夜でも、妻となります、これ兄上よ。(後略)>

これは、南方熊楠が、1913年に宮武外骨の主宰する 『月刊不二』 三号に載せた文章の一部を、西川照子が引用している部分である。
南方熊楠は、一般に卑猥、淫猥と言われていることにもこだわりを持たない、自由闊達な人だった。
("お硬い"柳田国男とは、そこがちがう)

<「月下氷人」を熊楠は「むすぶのかみ」と読む。 サブタイトルは「系図紛乱の話」。 近親相姦の古話によって論は進むが、熊楠はここでまず神々の物語を語る。 (以下、略)>

面白いのは、筆者の西川照子さんがこの文章のなかで、山崎ハコの名前をあげているのことだ。
以下、長くなるが、その部分を転載する。

<この「兄妹心中」、京の伝承では、「堺の町」(堺町?)は「西陣町」、兄の名は「モンテン」、妹「オキヨ」の年が十九、妹の男の年も十九、とある。 多少の異同はあるものの京の流行歌(はやりうた)がどうして、熊野の船頭や遊女に歌われたのか。 おそらく、「兄妹心中伝承」 は全国にあったが、都である京のものが、改めて全国へ流布したのであろう。 それにしてもこの話、あまりにも哀れである。 これが「淫行」であろうか。 遊女が海に向かって歌ったというところが、熊楠も語るように哀しい。
 姉と弟、兄と妹――神々の世界なら許されるこの恋愛が、人間世界ではなぜいけないのか。 この 「きょうだい恋愛」 は現在でも生きている。 内藤やす子の流行歌 『弟よ』(橋本淳作詞) は 「弟よ、弟よ」 と呼びかけ、「悪くなるのは もうやめて あなたを捨てたわけじゃない」 とキワドイ科白をいう (ちなみに 『きょうだい心中』 も山崎ハコによって歌われた)。> (本書 P.535~)

この西川さんという人も、面白い人である。
(西川照子 神奈川県生まれ。出版・編集企画制作集団「エディシオン・アルシーヴ」主宰。 岡見正雄に中世学を、梅原猛に哲学を師事。 専攻は民俗学。 著書に『神々の赤い花――人 植物 民俗』―平凡社、論文に「南方熊楠を見立てる」など)


Hako_dear_my_songs_2山崎ハコ
 『ベストコレクション Dear My Songs』
  2001年9月 PONY CANYON 2枚組
  DMCA 40124

このベストアルバムは、山崎ハコ初監修(選曲、曲順、解説)によるもので、過去のアルバムからまんべんなく選曲されている。
上の二曲もはいっている。

このアルバムが出来るという事が、嬉しくてたまりません。 歌は私が作った大切な宝物です。 これは最強のベストアルバムです。 ―― 山崎ハコ
 

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