カテゴリー「柳田国男」の22件の記事

2016年1月 9日 (土)

【読】独学のススメ、ブログの効用

どういうきっかけで知った本か忘れてしまったが、図書館から借りてきたこの本が面白い。

礫川全次(こいしかわ・ぜんじ)
 『独学の冒険 ――消費する情報から知の発見へ』
 批評社 2015/10/31発行 219ページ 1,700円(税別)

Amazonには書影が載っていないので、私がよく利用しているe-honサイトから画像を拝借。

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著者は1949年生まれの「在野史家」と、巻末著者略歴にある。

自分のブログの過去記事と読書記録を見直して、わかった。
2014年10月から11月にかけて、この人の本を続けて読んでいた。

礫川全次 『異端の民俗学 ―差別と境界をめぐって』
  河出書房新社 2006/4/20発行 210ページ (図書館から借りて)
礫川全次 『戦後ニッポン犯罪史』
 批評社 2000/6/10発行 332ページ (図書館から借りて)
礫川全次 『日本人はいつから働きすぎになったのか ―<勤勉>の誕生』
 平凡社新書744 2014/8/12発行 254ページ (購入)

   

他にもたくさん、興味ぶかい本を出版している人だ。

2014年10月19日の東京新聞書評ページに掲載されていた記事と写真を見て、ますます好きになった。

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さて、今読んでいる 『独学の冒険』 だが、独学入門、独学のすすめ、といった内容。

独学とはなにか。
まえがきによると、「自分ひとりの意思に基づき、基本的に自分ひとりの力に頼っておこなう学問」 という。

「学問」といわれると、私などは腰が引けてしまうが、自分ひとりを頼みに、何かしらの探求を続けること、と解釈すれば、私なども独学の徒のはしくれと言えそうだ。

この本でとりあげられている独学の先達の顔ぶれも興味ぶかい。

柳田國男、家永三郎、千葉徳爾、佐藤忠男、清水文弥、南方熊楠、中山太郎、佐々木喜善、橋本義夫、谷川健一、吉本隆明、杉本つとむ。

はじめて見る名前も多いが、読みすすむうちに、いずれ、どういう人たちかはわかるはず。

あとがきにも書かれているが、「独学」と「在野学」の関係が微妙だ。
独学とは対照的なアカデミズムの世界に身を置きながら、独学的な発想で研究を続けた例として、家永三郎があげられている。


本書巻頭のQ&Aが面白い。
そのなかで、ブログの効用が述べられている。

 ・ 毎日更新することで、文章の練習になる (同感)
 ・ 研究日誌になる (私のブログは「研究」には程遠いが)
 ・ 未知の人々と交流する媒体になる (コメントを通して・・・私にも経験あり)
 ・ ひとつの「ファイル」になる (アーカイブ=書庫としてのブログ)
 ・ 出版の代わりになりうる

最後の効用だが、これまた興味ぶかいブログが紹介されていて、参考になった。
さっそく、ブックマークに追加。
著者自身も、ブログを書いている。

部落学序説 (吉田向学)
 http://blog.goo.ne.jp/eigaku

巫研 Docs Wiki
 http://docs.miko.org/index.php/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
 日本巫女史
  http://docs.miko.org/index.php/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%B7%AB%E5%A5%B3%E5%8F%B2

礫川全次のコラムと名言
 http://blog.goo.ne.jp/514303

なるほど、ブログに連載することで、ネット上での出版ができるとも言える。

ときどき面倒になることもあるブログ投稿。
できるだけ続けていこうと思う。

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2015年8月 6日 (木)

【読】赤坂憲雄×鶴見和子

こんな魅力的な本が出た。
図書館にリクエストしておいたら、購入してくれた。

さきほど図書館から借りてきたところ。

鶴見和子さんが、生前、赤坂憲雄さんとこういう仕事(対談)をしていたのだ。
今から9年前のことだったらしい。
知らなかった。

赤坂憲雄・鶴見和子
 『地域からつくる――内発的発展論と東北学』

 藤原書店 2015/7/31発行 243ページ 2,500円(税別)

― e-honサイト掲載情報に加筆 ―
[要旨]
生涯をかけて「内発的発展論」を追究した社会学者・鶴見和子(1918‐2006)が、鶴見に背中を押され「東北学」へ踏み出した赤坂憲雄との対話のなかで、死の3か月前に語り遺したこととは何か。東日本大震災を経て、地域社会の解体と、自然と人間との関係の苛烈な再編成に直面しているわれわれが、いま一度、地域に立脚した未来像を描く方途を探る。
[目次]
序論 三・一一以後の鶴見和子論のために (赤坂憲雄)
<幕間>凛として群れぬ生き姿――鶴見和子さんを悼む (赤坂憲雄)
第1部 対談 内発的発展論と東北学 (赤坂憲雄・鶴見和子)
 なぜ、東北へ赴いたのか
 「漂泊と定住」の枠組の解体 (講演 鶴見和子)
 「東北」はひとつではない
 地域から国境を越える
<幕間>柳田民俗学のかくし味 (鶴見和子)
      東北芸術工科大学東北文化研究センター (赤坂憲雄)
第2部 柳田国男から東北学へ
 柳田・民俗学・東北 (赤坂憲雄・鶴見和子)
  <講演>柳田国男と東北 (赤坂憲雄)
  <講演>『遠野物語』を原点として東北モデルを考えよう (鶴見和子)
  <対談>東北、その内発的発展への道 (赤坂憲雄・鶴見和子)
 柳田国男から内発的発展論へ―『鶴見和子曼荼羅4 土の巻』解説 (赤坂憲雄)
 <対談>地域志向の比較学 (赤坂憲雄・鶴見和子)
[著者紹介]
赤坂 憲雄 (アカサカ ノリオ)  
1953年生。学習院大学文学部教授。福島県立博物館館長。遠野文化研究センター所長。1999年、責任編集による『東北学』を創刊。
鶴見 和子 (ツルミ カズコ)  
1918年東京に生まれる。39年津田英学塾卒業、41年ヴァッサー大学哲学修士号取得。65年ブリティッシュ・コロンビア大学助教授、66年プリンストン大学社会学博士号(Ph.D.)取得、69年上智大学外国語学部教授、同大学国際関係研究所所員(~89年。82~84年同所長)を経て、上智大学名誉教授。専攻、比較社会学。95年南方熊楠賞受賞。99年度朝日賞受賞。幼少より佐佐木信綱門下で短歌を学び、花柳徳太郎のもとで踊りを習う(20歳で花柳徳和子を名取り)。

私が敬愛する二人の対話。
興味ぶかい本だ。
手もとに置いておきたい良書なので、じぶんでも購入しようと思う。

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2015年6月23日 (火)

【読】赤坂憲雄さんの「遠野/物語考」読了

赤坂憲雄さんの 『遠野/物語考』 を文庫版でようやく読みおえた。

赤坂憲雄 『遠野/物語考』
 ちくま学芸文庫 1998/1/9発行 358ページ 1,200円(税別)

赤坂さんの書いたものは、私には難解で読み通すのがたいへんだったが、とても刺激的な内容だった。

六章から成り、第六章は文庫版で増補されたもの。
第四章「色彩考」がユニークな考察。

第一章 物語考
第二章 白神考
第三章 境界考
第四章 色彩考
第五章 黄昏考
第六章 地名考その他

章題はそれぞれ硬いものだが、赤坂さんならではの「遠野物語」をめぐる深い考察から学ぶことが多い。

柳田国男の『遠野物語』は、さまざまな文庫版で読めるが、『遠野物語拾遺』とあわせて読みたいもの。
角川ソフィア文庫版には『拾遺』も収録されていて、手もとにあるので、通して読んでみようと思う。

『遠野物語 付・遠野物語拾遺』
 角川ソフィア文庫 268ページ 476円(税別)

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2015年6月21日 (日)

【読】遠野の物語世界

ひと月ほど前から、『遠野物語』(柳田国男)をめぐる読書を続けている。

・石井正己 『NHK100分de名著 柳田国男』
 NHK出版 (2014/6/1) 107ページ
・三浦佑之・赤坂憲雄 『遠野物語へようこそ』
 ちくまプリマー新書 127 (2010/1/10) 175ページ
・後藤総一郎(監修)・遠野常民大学(編著) 『注釈 遠野物語』
 筑摩書房 (1997/8/20) 406ページ
・菊池照雄 『山深き遠野の里の物語せよ』
 梟社 (1989/6/20) 253ページ
・菊池照雄 『遠野物語をゆく』
 梟社 (1991/7/20) 260ページ
・赤坂憲雄 『遠野/物語考』
 ちくま学芸文庫 (1998/1/9) 358ページ

赤坂憲雄さんの 『遠野/物語考』 は難しい本なので、途中までしか読んでいないが、最後まで読み通したい。

菊池照雄さんという人は、1929年遠野市生まれ。
遠野で生まれ育った人にしか書けないであろう、遠野の物語世界に引きこまれる好著。
今日、ようやく読み終えた。

菊池照雄 『遠野物語をゆく』
 梟社 1991/7/20発行 260ページ 2,000円(税別)

自身の経験を振り返り、遠野についてこのように書いている。

<火の玉も見たし、狐にも化かされた。しかし、遠野をはなれたらこの種の経験とはばったり縁が切れた。遠野とは何かそのような虚の世界、裏側の世界との境界線の戸ががたびししていてよく締まっていないために、この世に、あの世からいろんな信号がまぎれこむ土地なのではないかと思ったりする。> (P.241 終章)

柳田国男の『遠野物語』は、すぐれて文学的な“作品”だと思うが、遠野という土地とそこに住む人々のことを知るにつけ、その奥に広がる広大な “物語世界” に強く魅かれる。

図書館から借りている、もう一冊。
カラーのガイドブックで、遠野の案内書といえる。
手もとに置いておきたい本だが、残念なことに絶版なのでAmazonで購入することにした。

『「遠野物語」を歩く 民話の舞台と背景』
 菊池照雄(文)/富田文雄(写真)
 講談社カルチャーブックス 1992/2/14発行
 143ページ 1,500円(税別)

遠野には、いつかきっと行ってみたい。

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2015年6月 9日 (火)

【読】遠野物語の奥に広がる世界

きのう、梅雨入りが発表されて、さっそく今日は梅雨空。

午前中、BS放送で女子サッカーワールドカップの試合を見る。
一次予選リーグ、アメリカとオーストラリアの試合が面白かった。
なでしこジャパンの初戦、対スイス戦もなんとか勝った。


少し前からはまり込んでいる、柳田国男「遠野物語」の世界。
その奥には遠野の地に広がる世界が垣間見えて、面白い。

赤坂憲雄さんの 『遠野/物語考』 (ちくま学芸文庫)を読んでいて、そこに興味ぶかい本が紹介されていた。

<……遠野に生まれ育った一人の民俗研究者、菊池照雄さんの『山深き遠野の里の物語せよ』と『遠野物語をゆく』(ともに梟社)という二冊の本が、わたしたちの眼前に切り拓いて見せたのは、『遠野物語』という閉ざされた文学作品(テキスト)の向こうに横たわる、息を呑むほどに鮮烈な、遠野の生きられた伝承世界の豊穣にして、深々と昏い闇を孕んだ時間=空間の拡がりでした。それは遠野とかぎらず、この列島のあらゆるムラがかつてみずからの胎内に蔵していた、豊かな時間であり、空間でもありました。わたしには、ここからあらたなる遠野/物語の世界への道行きがはじまる、という予感があります。>
(赤坂憲雄 『遠野/物語考』 第一章 P.19-20)

この二冊が隣接市の図書館にあったので、予約しておいたものを受けとってきた。

隣接市・東村山市立図書館には、私の住んでいる市の図書館にない本が多く、ときどき利用させてもらっている。
図書館の相互貸出はありがたいものだ。

菊池照雄 『遠野物語をゆく』
 梟社 1991/7/20発行 260ページ 2,000円(税別)

菊池照雄 『山深き遠野の里の物語せよ』
 梟社 1989/6/20発行 253ページ 1,680円(税別)

 

思いきってAmazonで注文した 『注釈 遠野物語』(筑摩書房)も、今日届いた。
ほとんど新品同様、読まれた形跡のない、きれいな状態の本だった。

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2015年6月 7日 (日)

【読】「遠野物語」を読む(続)

梅雨空。
最高気温24度。
とうとう一歩も外に出ないですごした日。

『注釈 遠野物語』を、ざっと読み終えた。

この本には『遠野物語』の初版テキストが掲載されているので、『遠野物語』も通読したことになる。
「遠野常民大学」の人たちの労作である注釈と解説をすべて読むことはできなかったが、地元のアマチュア研究家たちの、たんねんな仕事ぶりに敬服した。

『注釈 遠野物語』
 後藤総一郎 監修/遠野常民大学 編著
 筑摩書房 1997/8/20発行 406ページ 3,900円(税別)

資料価値も高い本だとわかったので、Amazonで手に入れることにした。
近いうちに届くはず。


赤坂憲雄さんや三浦祐之さん、石井克己さんが、遠野常民大学の活動に深くかかわっていたことを知った。

さらに、赤坂憲雄さんは、著書 『遠野/物語考』 でこの活動に言及している。
ずっと本棚にしまいこんであったこの本を読みはじめた。
読んでみると、まことに面白い。

赤坂憲雄 『遠野/物語考』
 ちくま学芸文庫 1998/1/9発行 358ページ 1,200円(税別)

<『遠野物語』刊行から88年の歳月を経て、この夏、一冊の注釈書が世に送りだされた。『注釈遠野物語』(遠野常民大学編著、筑摩書房)、遠野の人々の手になる、初めての本格的な注釈と研究の試みである。注釈という華やかさから遠い仕事が、これほどに重く、深々とした衝撃をもたらすのは、なぜか。(後略)> (P.341-342)

<これまで、遠野は『遠野物語』というすぐれた文学作品の、たんなる背景にすぎなかった。この図と地がいま反転する。遠野という土地を知らずには、もはや『遠野物語』を読むことも、語ることもできない。柳田国男の『遠野物語』から、遠野の『遠野物語』へと、確実に、その解読の地平が変わる。この注釈書を携え、遠野へと旅立つとき、もうひとつの『遠野物語』との出会いの扉が開かれる。(後略)> (P.342-343)


もう一冊、思いだして一部を読み直した本がある。

五木寛之 『隠れ念仏と隠し念仏』 (こころの新書)
 『隠された日本 九州・東北 隠れ念仏と隠し念仏』 (ちくま文庫)

― e-honサイトより ―
[要旨]
五木寛之が日本史の深層に潜むテーマを探訪するシリーズ「隠された日本」の第2弾。九州には、かつて一向宗が禁じられ、300年もの間の強烈な弾圧に耐えて守り続けた信仰、「隠れ念仏」の歴史がある。それに対して東北には、信仰を表に出さず秘密結社のように守り続け、「隠す」ことで結束した信仰「隠し念仏」がある。為政者の歴史ではなく、庶民の「こころの歴史」に焦点を当て、知られざる日本人の熱い信仰をあぶり出す。
[目次]
第1部 「隠れ念仏」と知られざる宗教弾圧
 民衆が守り抜いた「隠れ念仏」
 民衆の捨て身の抵抗運動
 かつての日本にあった「魂の共同体」
第2部 「隠し念仏」が語る魂の鉱脈
 東北の隠された魂「隠し念仏」
 『遠野物語』に秘められたもの
 宮沢賢治の宗教心

 

私が持っているのは2005年刊の新書版だが、文庫で復刊されている。

このなかで、赤坂さんの仕事に言及されていて、『遠野/物語考』 もとりあげられている。
「隠し念仏」の話は、『遠野物語』の七一話にある。
五木さんが書いていることも、なかなか興味ぶかい。

前にも書いたが、五木さんのこのシリーズは、なかなか刺激的だ。

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2015年6月 5日 (金)

【読】「遠野物語」を読む

柳田國男の 『遠野物語』 を通して読もうと、一念発起。

これまで、拾い読みや解説本に引用された部分しか読んだことがない。

これほど面白い物語はないのだが、なにしろ明治の文語体なので読みにくい。
意味のよくわからない言葉もたくさん出てくる。

たとえば、序文にでてくる 「此書の如きは陳勝呉広のみ」 とか、「遠野の城下は則ち煙花の街なり」 などという部分。
ちいさな辞書には出ていない漢語の意味がわからなくて困る。

そこで、こんな本をみつけて図書館から借りてきた。

手もとに置いておきたいぐらいのいい本だが、残念なことに新本は手にはいらない。
わけあって自粛しているAmazonに、つい手が伸びそう。
少々値が張る。

『注釈 遠野物語』
 後藤総一郎 監修/遠野常民大学 編著
 筑摩書房 1997/8/20発行 406ページ 3,900円(税別)

『遠野物語』のテキストとして初版本(聚精堂、1910年)を掲載し、毛筆本(草稿本)の内容を対比させているのが特徴。
詳細な注釈と解説が添えられている。
労作である。

この本は、さきごろ読んだ 『遠野物語へようこそ』(ちくまプリマー新書/三浦佑之・赤坂憲雄)の巻末ブックガイドで紹介されていたので知った。

<地元の人々が掘り起こした資料や、聞き取り調査をもとに、『遠野物語』を読み解く本格的な注釈書。初版本と自筆毛筆草稿本を掲載、写真や地図も充実している。> (同書ブックガイドより)

この「遠野常民大学」というグループは、「野の学・生活者の学としての共同学習運動」(『注釈 遠野物語』より)。
地元のさまざまな人のあつまりで、こういう活動はすばらしい。

もう一冊。
これも 『遠野物語へようこそ』 のブックガイドで紹介されていた。
近くの図書館にあったので借りてみた。
高価な本で、現在は入手困難(Amazonにはでているが)。

『遠野物語辞典』 石井正巳 監修
 岩田書店 2003年6月発行 本文323ページ 7,900円(税別)

ところで、『遠野物語』 のオリジナル・テキストは文庫で簡単に手にはいる。

私が持っていたのは岩波文庫だが、角川ソフィア文庫版は『遠野物語拾遺』も収録されているので、最近、手に入れた。

『遠野物語・山の人生』 岩波文庫 1976年

テキストは、筑摩書房版『定本柳田国男集』を底本とし、初版本、増補版(昭和10年、郷土研究社刊)および成城大学柳田文庫所蔵の著者加筆本と校合。
解説:桑原武夫。

  

『新版 遠野物語 付・遠野物語拾遺』 角川ソフィア文庫

初版序文、再版覚え書き、遠野物語、遠野物語拾遺、解説(初版:折口信夫、改版:大藤時彦、新版:鶴見太郎)、年譜、索引から構成される。

ただ、残念なことに、これら文庫版には注釈がないため、意味がよくわからない部分にぶつかったとき、困る。
いちいちネットで調べるのも面倒だ。

読むのなら、初版の原文が掲載されていて注釈・解説が充実している 『注釈 遠野物語』 がいいと思う。

冒頭にあげたことばの意味は、この本によると次のようだった。

陳勝呉広 中国・楚の時代の故事。陳勝、呉広は人名。秦滅亡のきっかけをつくったことから、「或ることのさきがけをすること」。
煙花 都市などの賑わいや華やかさをいう。

近くの図書館の閉架書庫に、『定本柳田国男集』も収蔵していたので、四巻目を借りてみた。

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2015年6月 3日 (水)

【読】国立にあった谷川書店

関東地方も梅雨入りが近いらしく、蒸し暑い。
湿度は90パーセントを超えているだろう。

この9月に、所属する小平図書館友の会主催で、赤坂憲雄さんの講演会を予定している。
9月13日(日)午後1時半から、小平市立中央図書館視聴覚室で開催予定だ。

講演会の案内ちらしが早々にできあがったが、まだ配布していないので掲載は控えておく。

その赤坂憲雄さんの本を、すこしずつ読んでいる。
講演会のテーマに柳田国男の「遠野物語」がからんでいるので、「遠野物語」もきちんと読んでみようと思う。

「遠野物語」の入門書として、この新書が読みやすくて、ためになった。

三浦佑之・赤坂憲雄  『遠野物語へようこそ』
 ちくまプリマー新書 127 2010/1/10発行 175ページ

9月の講演会とタイアップするかたちで、7月の読書会でこの本をとりあげる。

読書サークル・小平 2015年7月開催案内: 小平図書館友の会ブログ
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/kltomonokai/2015/06/20157-d7e1.html

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そうそう、国立にあった「谷川書店」のことを書くつもりだった。

一年前に閉店してしまったそうだが、私はいちどだけ店内をのぞいてみたことがある。

赤坂憲雄さんが、著書のあとがきのなかで、谷川書店で柳田国男全集を買ったエピソードを書いていたはず。
赤坂さんが若い頃の話だ。

このエピソードが書かれていたのがどの本だったか、じぶんのブログ記事を探してようかくわかった。
七年近くまえの記事だった。

2008年10月 9日 (木)
【遊】四市横断サイクリング (8) 最終回: やまおじさんの流されゆく日々

http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/8-6ea7.html

この本だった。

赤坂憲雄 『柳田国男の読み方――もうひとつの民俗学は可能か』
 ちくま新書 007 1994年9月発行 222ページ 680円(税別)

赤坂さんが二十代の終わりに、谷川書店で手に入れて自転車の荷台にくくりつけて運んだのは、筑摩書房刊『定本柳田国男集』全36巻だったそうだ。

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2007年1月20日 (土)

【読】「山の精神史」あとがき

夜も遅いが、書けるときには書いておこう。
赤坂憲雄 『山の精神史』 (小学館ライブラリー/初版は1991年小学館)の著者あとがきに、とてもいいエピソードが書かれている。

赤坂さんが、琉球大学で「天皇制についての話」(講義だろうか)をしたとき、課題レポートのなかに、「家が代々生業として山師(樵・炭焼き・猟など山のあらゆる仕事にしたがう人たち)をしている」女子学生(本土出身)のレポートがあったという。
彼女が小学校三年のとき、「学校の宿題にかこつけて、渋る祖父から戦争体験の聞き書きをしたのだという」、その内容だ。

すこし長くなるが、赤坂さんの原文を引用する。

<山師の老人は孫娘に問いかける、山師はどうして獣を殺すのか、と。 食べてゆくために必要だからと、少女は祖父の口癖通りに答える。 祖父は獲物のからだをたとえ爪一本たりとも粗末にせず、いやがる子供に解体作業を手伝わせ、生命の重みや尊さを身体で教えこむ人だった。 戦争には、その生産的な必要性がないんだよ、ただやみくもに人を殺す、殺したって食べることすらできないものを、殺すことが目的で殺すんだ、そう、老山師は少女に話す。 彼は戦地では、かならず狙いをはずして銃を撃った。>

これに続いて、赤坂さんの「性根」がよくあらわれている部分。
<戦友(平地人の末裔だろう)たちが、「天皇のために」と憑かれたように敵を殺しているかたわらで、ひとりの男は生活のなかで培われた「山師としての誇り」をえらんだのだ。少女は結局、宿題の作文を出さずじまいだった。 そんな少女の頭を撫でながら、老山師は苦笑いとともに言った、おまえもやはり木霊(山の娘)だな・・・・・・と。>

<わたしはかの女のレポートを読みながら、ついに柳田国男が到り着くことのできなかった山の精神史の深みに、いつの日か降り立ってみたいものだと、あらためておもった。>

 ― 赤坂憲雄 『山の精神史 柳田国男の発生』
    (小学館ライブラリー/1996年) P.350~351 ―

涙がでそうになるほど、いい話だ。
山人(やまびと)、山民、平地人、常民、など、柳田国男の残した言葉の意味するところを、執拗と思われるほど追い続けている赤坂さんだが、「なぜそこまでこだわるのか」という読者(つまり、ぼく)の思いは、この「あとがき」をよんで、ストンと落ち着いた。

上に引用した部分に続いて。
<わたし自身のなかにも、どうやら東北の山の民の裔(すえ)の血が流れているらしいと気付いたのは、じつは柳田の取材のための旅をつづけるさなかに、亡くなった父の故郷を訪ねたときのことであった。 新鮮な驚きであり、大きな発見でもあった。 柳田の思想を掘ることが、やがてみずからの存在の根っこを掘ることでもあるとしたら、それはなんとも愉悦に充ちた知のいとなみではないか。>

いい本に出会ったな。

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2007年1月19日 (金)

【読】性根

勢古浩爾さんという人が「根性」ということばを使っていたが、ぼくは「性根(しょうね)」ということばを使いたい。
「性根のすわった」人である。
なんのことか。
Akasaka_yanagita_yama_1『山の精神史』 (小学館ライブラリー) を書いた、赤坂憲雄さんという人のことだ。
これまで、このブログで何冊かとりあげたが、この学者さんは信頼できる。
― 『山の精神史』 1996年刊 著者紹介 ―
赤坂憲雄(あかさか のりお)
1953年東京生まれ。東京大学文学部卒業。現在、東北芸術工科大学・教授。日本思想史専攻。 ここ10年近くは、柳田国男が構想した日本の民俗学の固有の領土を検証する旅を続ける一方、最近は山形に拠点を求め、"東北学"をめざして、民俗の発見の野辺歩きを始めている。
主な著作に『異人論序説』(ちくま学芸文庫) 『境界の発生』(砂子屋書房) 『漂泊の精神史』(小学館) 『結社と王権』(作品社) 『遠野物語』(宝島社)など多数。

あと20ページほどで読了する。
ぼくの柳田国男への関心は、もとはといえば南方熊楠への関心からシフトしてきたもの。
柳田国男の著作(原テキスト)は、ほとんど読んでいないにひとしい。
それなのに、赤坂さんの柳田国男論がこれほどおもしろいのは、赤坂さんの「性根のすわった」取り組み方というか、執念といっていいほどのこだわり方、熱い思いが、ぼくに訴えてくるからだろう。

たとえば、今日読んだこんな部分だ。
<柳田国男の、ことに昭和にはいってからの思想の核に置かれたものが、常民をめぐる理念であったことについては、たぶん異論のさしはさまれる余地があるまい。 だからこそ、常民とは何かという問いは、柳田の思想を根柢から了解するためのキー・コンセプトとして、飽かずくりかえし問われてきたのだ。 さまざまな角度からの、さまざまな答えが提示された。 その多くは、柳田のテクストのそこかしこに散らばっている常民をめぐる記述の断片と、解釈者の側の過剰な/過小な思い入れや期待とがない交ぜにされたもので、柳田の思想を発生的に了解したいという、わたし自身の欲望を満足させてはくれない。>
(『山の精神史』 小学館ライブラリー 第七章/平地人と常民 P.325)

この引用だけだと、かた苦しい本と思われそうだが、そうではない。
写真、図版が豊富。 著者がじぶんの足でたどった柳田国男の足跡、赤坂さん自身の旅先でのエピソードなどは人間味あふれるものだ。

それにしても、と思う。
柳田国男という、とらえどころのない巨人。
書店にいけば、数十巻もある分厚い「柳田國男全集」(一冊6,000~8,000円もする!)がぼくを威圧する。
もちろん文庫も出ていて、読み物としておもしろいものもあるが、とにかくその全貌がとらえにくい。
また、柳田門下生や後続の学者連中が、妙にもちあげたり、けなしたりして、おかしな虚像ができあがっている。

赤坂さんが若い頃から続けている作業は、そういった虚像からできるだけ遠ざかった地点で、柳田国男の思想を原点から検証するもの、といったらいいのか。
ぼくは、学者でもなく学究の徒でもないから、いたって気軽なきもちで読んでいるが、おもしろい。 おもしろいとともに、得るところも多いのだ。

ところで、どうでもいいことだが、ぼくはやはり柳田国男よりも南方熊楠の人間味にひかれる。
うーん、今夜も理屈っぽくなってしまったな。 いやはや。

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