カテゴリー「こんな本を読んだ」の735件の記事

2023年9月11日 (月)

【読】縄文時代は、はたして

まだ半分ほどしか読んでいないが、縄文時代を知るための、いい本があった。

山田康弘 『縄文時代の歴史』
 講談社現代新書 (2019/719)325ページ

【Amazonの紹介文】

われわれの中にも縄文人は生きている!? 近年の発掘調査、および科学的な分析技術の飛躍的な発展により、旧来の縄文像は次々に塗り替えられることになった。最新の知見を元に、最も新しい縄文時代像を明らかにする。縄文ブームの今こそ必読。

縄文時代とは、日本列島において、土器が出現した1万6500年前から、灌漑水田稲作が開始される3000年~2500年前までの時代をさす用語です。
この時代には、狩猟・採集・漁労を主な生業とし、さまざまな動植物を利用し、土器や弓矢を使うなどして本格的な定住生活が営まれていました。1メートルにも及ぶ柱材を使用するような大型建物を作る技術や、クリ林の管理や漆工芸を始めとするきわめて洗練された植物利用技術を持ち、各地の環状列石や土偶に見られるように、複雑な精神文化がありました。また多数の集落が婚姻や交易などによってつながり合い、列島内には広範な社会的なネットワークがつくりあげられていました。
世界史上にも類例のないユニークな存在としても知られる縄文時代。最近のDNA分析によると、現代日本人の遺伝子にも、12パーセントほどは縄文人から受け継いだものが存在しているということです。著者によれば、日本人の円環的な死生観には、縄文人から受け継いだ要素が色濃く反映しているといいます。その意味において、縄文人は今もわれわれの中に生きている、そう言ってもよいのかも知れません。近年の縄文ブームも、もしかしたら、そのような親近感ゆえのことかも知れません。
近年の発掘調査、および科学的な分析技術の飛躍的な発展で新たな知見が次々に明らかにされたことにより、旧来の縄文像は一新されることになりました。千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館では、これら最新の研究の成果を元にして、縄文時代の展示をリニューアルしました。本書は、その責任者による、最も新しい縄文時代像を紹介するものです。

あとがきに、ハッとする文章があった。
現代人が縄文時代に対して持つ、通俗的なイメージを打ち砕くものだが、なるほどと思った。

以下、長めの引用。

(本書 あとがき P.322-323 より)

<近年、縄文人をサステイナブル(環境破壊をすることなく維持・持続できる)でエコロジカルな考えを持ち、自然と共生した人々と評価する向きもある。確かに、そのような評価は当時の人々の一面を照らすものかもしれないが、少ない人口下で定住生活を行い、食料のほぼ100%パーセントを自然の恵みに依存していた縄文人には、そもそも自然と共生する以外のオプションはなかっただろう。「自然と共生する」という発想自体がきわめて現代的なものであることにも気が付くはずだ。>

<また、縄文人は、必ずしも現代的な意味でサステイナブルでエコロジカルな思考を持った人々だったわけではなかった。定住生活が進展するに従って、縄文人は周辺環境にさまざまな働きかけを行うようになった。彼らは必要に応じて森を切り開き、焼き払い、そして有用な植物を管理して自分たちに都合のよい二次的な自然環境をつくり出していた。このような人間本位の自然開発のあり方は、本質的に現代と変わらない。

<ただ、ごく少ない人口下で、そして石器によって人力で自然を切り開いていたがために、人々の改変・開発の度合いよりも、そして人々による自然からの食糧および各種資源の収奪量よりも、自然の回復力の方が優っていただけだ。その意味では、縄文文化とは、現代における私たちの社会の初原型と言うことができる。(後略)>

<縄文時代と現代を比較し、縄文時代をある種の「楽園」「ユートピア」として語ろうとする論調の中では、しばしば「極端に少ない人口」という観点が抜け落ちていることも、あわせて指摘しておきたい。(後略)>

現代は、文明の行き詰まりを世界的に感じていて、ついつい、はるか昔の素朴な生活を美化しがちだが、そんなことはないのだな。だいいち、いまさら縄文時代の生活に戻れるわけもないし。

ただ、「自然の回復力」というキーワードは、人類滅亡を避けるためには重要な観点なんだろうと思う。
「再生可能な」とよく言われるが、たとえば、人間が作り出したプラスチック製品の「再生」などは、本来の「再生」とは程遠いチャチな幻想なのかも。
自然の回復力を待つことなく、反対に、どんどん収奪・破壊し、ほんらい自然が持っているはずの回復力を奪っている今の人類に、滅亡を避ける道はあるのか?

雑駁な文章で恥ずかしいが、こんなことを考えている。

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2023年9月10日 (日)

【読】「土偶を読むを読む」を読んだ(再掲)

少し前(9月5日)にアップした感想文。
手直しをしたので、再掲しておきたい。

望月昭秀/縄文ZINE(編著)
『土偶を読むを読む』
文学通信(2023/6/10)431ページ

話題をさらった竹倉史人著『土偶を読む』(晶文社2021)及び、続編のこども向け図鑑『土偶を読む図鑑』(小学館2022)に対する、考古学視点からの正面切った批判書。本の装幀も竹倉氏の上掲書を意識して(皮肉って)います(書影参照)。
私は以前、交流紙213号(2022年8月発行)に寄せた投稿で竹倉氏の著作を大いに持ち上げました。当時、竹倉説の杜撰さに気づかず、本書を読んだあとでは“だまされたのか”と思い至りました。当時の “目から鱗が落ちた”という感激も、いまでは“落とした鱗を拾い直した”という思いに変わりました。悲しいけれど……。
いずれにしろ、書かれていることを無批判に鵜吞みにするのはいけないな、と反省しています。

以下、本書のポイントをAmazonの紹介文を参考にして――
・「土偶の正体」は、竹倉史人『土偶を読む』によって本当に解き明かされたのか?
・竹倉氏は、考古学の実証研究とイコノロジー【注】研究を用いて土偶は「植物」の姿をかたどった精霊像という説を打ち出した。
・NHKの朝の番組で大きく取り上げられ、養老孟司ほか、各界の著名人たちから絶賛の声が次々にあがり、ついに学術書を対象にした第43回サントリー学芸賞をも受賞。この賞の選評で佐伯順子氏は――「『専門家』という鎧をまとった人々のいうことは時にあてにならず、『これは〇〇学ではない』と批判する“研究者”ほど、その『○○学』さえ怪しいのが相場である。『専門知』への挑戦も、本書の問題提起の中核をなしている」――と竹倉氏(人類学専攻で考古学については“門外漢”)の姿勢を大いに評価。ここで言われている“専門家”とは考古学分野の学者・研究者・学芸員などを指す。
・しかし、このような世間一般の評価と対照的に、『土偶を読む』は考古学界ではほとんど評価されていない。それは何故なのか。その理由と、『土偶を読む』で主張される「土偶の正体」、それに至る竹倉氏の論証をていねいに検証している。

【注】イコノロジー(iconology)
本来は図像解釈学(ずぞうかいしゃくがく)。
竹倉説においては、有名な土偶の外観写真=図像と、食用植物や貝類との形態の相似に着目し、土偶の正体(何をかたどり、どんな目的で作られたか)を類推(想像)、「土偶の真実」を明らかにした! と高らかに宣言していた。

いまになって思うのですが、竹倉氏の着眼点はとてもユニークで面白いものでしたたが、メディアや著名人、権威ある学術賞までが“お墨付き”を与えた形になり、まるで正当な学説であるかのような扱いを受けたところに問題があったのでしょう。竹倉氏も、ひとつの仮説(もっと言えば“思いつき”)、軽い「読み物」というスタンスで発表すればよかったのかも。

 

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2023年9月 5日 (火)

【読】「土偶を読むを読む」を読んだ

一年ほど前に、さんざん持ち上げた本がある。

今年になって、その本への正面切った批判書が出版され、あっと驚いた。

以下、私が所属している小平図書館友の会の交流紙(会員向け)に投稿する予定の駄文。

望月昭秀/縄文ZINE(編著)
『土偶を読むを読む』
文学通信(2023/6/10)431ページ

話題をさらった竹倉史人著『土偶を読む』(晶文社2021)及び、続編のこども向け図鑑『土偶を読む図鑑』(小学館2022)に対する、考古学視点からの正面切った批判書。本の装幀も竹倉氏の上掲書を意識して(皮肉って)います(書影参照)。
私は、以前、交流紙213号(2022年8月発行)に寄せた投稿で竹倉氏の著作を大いに持ち上げました。
本書を読んだあとでは、竹倉説の杜撰さに気づかずに“だまされた!”という思いに至りました。当時は “目から鱗が落ちた”と感激したのですが、いまは“落とした鱗を拾い直した”という思いを強くしています。悲しい。
何にしろ、本に書かれていることを無批判に鵜吞みにするのはいけません。反省。

以下、Amazonの紹介文から(一部補足)
「土偶の正体」は果たして本当に解き明かされたのか? 竹倉史人『土偶を読む』(晶文社)を大検証!
考古学の実証研究とイコノロジー【注】研究を用いて、土偶は「植物」の姿をかたどった精霊像という説を打ち出した本書(竹倉氏の著作)は、NHKの朝の番組で大きく取り上げられ、養老孟司ほか、各界の著名人たちから絶賛の声が次々にあがり、ついに学術書を対象にした第43回サントリー学芸賞をも受賞。この賞では「『専門家』という鎧をまとった人々のいうことは時にあてにならず、『これは〇〇学ではない』と批判する“研究者”ほど、その『○○学』さえ怪しいのが相場である。『専門知』への挑戦も、本書の問題提起の中核をなしている」(佐伯順子)と評された。
しかし、このような世間一般の評価と対照的に、『土偶を読む』は考古学界ではほとんど評価されていない。それは何故なのか。その理由と、『土偶を読む』で主張される「土偶の正体」、それに至る論証をていねいに検証する。
【注】イコノロジー(iconology)
本来は図像解釈学(ずぞうかいしゃくがく)。
竹倉説においては、有名な土偶の外観写真=図像と、食用植物や貝類との形態の相似に着目し、土偶の正体(何をかたどり、どんな目的で作られたか)を類推(想像)、「土偶の真実」を明らかにした! と高らかに宣言していた。

 

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2023年8月 3日 (木)

【読】素晴らしきラジオ体操

あることがきっかけで、この本を思い出した。

『素晴らしきラジオ体操』
 高橋秀実(たかはし・ひでみね)
 小学館文庫 2002/9/1発行
 264ページ 552円(税別)

今は、草思社文庫で出ているようだ。
2013年2月2日 発行 草思社文庫

<日本の夏休みの風物詩として慣れ親しんだ“ラジオ体操”を深く掘り下げたノンフィクション。そもそもの始まりは何時か、何の目的でどの様に普及していったのか? 知られざる側面に迫る。>

いわゆる「エンタメ・ノンフ」の傑作。
小学館文庫で読んはずだが、それはもう14年前のこと。
この本を知ったのは、高野秀行さんの『辺境の旅はゾウにかぎるだった。

その高野さんの本は、まだ手元にあるし、その後、文庫化(『辺境中毒!』と改題)されて、それも手元にある。

 

2019年5月28日の、この私のブログ記事に、当時のことが書いてあった。

【読】エンタメ・ノンフの面白本: やまおじさんの流されゆく日々
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-a179.html

その頃知った、面白そうな本のいくつかは、読めないまま手放してしまったようだ。
今になって、読みたくなったりする。
困ったものだ。

ああ! ラジオ体操!
子どもの頃、夏休みに、毎朝通ったものだが、それからすっかり遠ざかってしまった。

この団地の造成工事現場では、毎朝、始業前に工事の人たちがラジオ体操をしている。
ベランダから、ときおり、その様子を見ている。

20230801-165334

 

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2023年8月 2日 (水)

【読】角幡唯介さんと北極圏探検

所属している「小平図書館友の会」の会員向け交流紙に寄稿する、「おすすめの本」の紹介。
下に転載しておこう。

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角幡唯介 『極夜行』

文藝春秋 2018/2/10 333ページ
『裸の大地 第一部 狩りと漂泊』
集英社 2023/3/25 284ページ
『裸の大地 第二部 犬橇事始』
集英社 2023/7/10 357ページ

角幡 唯介(かくはた ゆうすけ)
1976年生まれ。ノンフィクション作家・探検家。早稲田大学探検部OB。

余談から――。角幡さんの実家は北海道芦別市でスーパーマーケットを営んでいたという(今は廃業)。私の母の実家があった美瑛町(芦別市から遠くない)に「カクハタ」という店があったことを、母が遺した日記で知り、親しみを感じた。
ここにあげた三冊は、角幡さんの北極圏(グリーンランド)探検(冒険?)の記録。本人は「漂泊」と表現している。野生動物を狩りながらの、行き当たりばったり的な旅だ。もちろん、当初の計画・目標はある。
犬を一匹だけ連れて橇を引いての徒歩旅から、やがて現地のイヌイットに倣って犬橇を使う狩猟の旅へ。その軌跡を追うのが面白い。GPSに頼らない、人力の、命がけといってもいい旅は身震いするほどの緊迫感にあふれている。
『極夜行』は「極夜」(一日中、太陽が出ない日、白夜の正反対)の中の過酷な旅。
『犬橇事始』では、はじめて犬橇に挑戦するも、エスキモー犬の調教の難しさが、これでもか、これでもかと執拗に綴られる。
「裸の大地」は三部作になるという。いつ出るかわからないが三作目が楽しみだ。

ウェブサイト
惑星巡礼 角幡唯介 | 集英社学芸部
https://gakugei.shueisha.co.jp/yomimono/wakuseijunrei/list.html

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単行本を図書館から借りて読んだが、たぶん、文庫化されたら買ってしまうだろうな。
(『極夜行』は、すでに文庫化されているが)

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2023年8月 1日 (火)

【読】2023年7月に読んだ本(読書メーター)

7月、北方謙三『岳飛伝』を読了。
「大水滸伝」三部作を通読したことになる。
最新刊の『チンギス紀』(文庫版は、まだ出ていない)も、そのうち、読んでみたい。

7月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:4098
ナイス数:153

岳飛伝 11 烽燧の章 (集英社文庫)岳飛伝 11 烽燧の章 (集英社文庫)感想
文庫版解説(細谷正充=文芸評論家)が、この小説の魅力をうまくまとめている。そこからの引用。<本書は、過去の中国が舞台だが、(中略)人の心に違和感を覚えることはない。まさに現代の作家が、現代の読者に向けて書いた小説だからだろう。その一例が、女性の生き方だ。> 例として、崔如が息子の岳雷をたしなめるシーンと、秦容が公礼を妻にするシーンをあげている。たしかに、北方「大水滸伝」三部作に登場する女性たちの多くが、強く、魅力的だ。その点で、現代の読者に訴えるところが多いのだろう。残り6巻。この先の物語の展開が楽しみ。
読了日:07月02日 著者:北方 謙三

岳飛伝 12 瓢風の章 (集英社文庫)岳飛伝 12 瓢風の章 (集英社文庫)感想
この巻の文庫解説(西上心太=文芸評論家)が、これまた、いい。この小説が書かれた経緯と魅力が、わかりやすく書かれている。この巻の感想だが、南宋の辛晃率いる軍が南を襲い、秦容と岳飛が連携してこれを打ち破る経緯、密林での戦闘描写が、これまでの騎馬・歩兵による戦闘シーンよりも想像しやすく、迫力がある。謎の女・李師師が死に、梁山泊側の何人かも命を落とす。南宋の宰相・秦檜の動きからも目が離せず、南宋軍から追い出された韓世忠を梁山泊の水軍・李俊が打ち取る経緯も、読ませる。
読了日:07月05日 著者:北方 謙三

岳飛伝 13 蒼波の章 (集英社文庫)岳飛伝 13 蒼波の章 (集英社文庫)感想
ますます混迷を極める。金軍が南宋に侵攻。それも帝自らが率いる禁軍。この金の帝(海陵王)が、やたら戦をしたがるどうしようもない奴。兀朮と胡土児の活躍で、なんとか金に撤退する。このあたりがこの巻の白眉。胡土児の秘された出自が本人に知らされるのは、いつだろう。梁山泊最古参の史進と李俊が頑張っている。頼もしい。李俊軍による沙門島の奪還が爽快。その李俊が密かに思い続けていた瓊英(亡き張清の妻で張朔の母)を十三湊に訪ねるも、十日前に死んでいたというシーンには泣かせされた。残り4巻。物語の展開は予想もつかない。
読了日:07月07日 著者:北方 謙三

岳飛伝 14 撃撞の章 (集英社文庫)岳飛伝 14 撃撞の章 (集英社文庫)感想
いよいよ、南宋と岳飛・秦容連合軍の戦闘が少しずつ進む。これまでの正面切っての戦いと大きく違い、じわじわと。全面的な決戦はこの先か。中華の外では、李俊が十三湊で命の灯をひっそりと消す。梁山泊の古参が、またひとり舞台を去り、さびしい。いっぽう、王清が若妻とともに十三湊に落ち着きそうな気配で、ほっとした。史進、呼延凌も、いい年齢になり、そろそろ退場なのか。秦容、宣凱、王貴、張朔、候真ら第二世代の活躍が頼もしい。さらに彼らの次の世代も生まれ始めている。ついに残り三巻。どんな結末が用意されているのだろうか。
読了日:07月09日 著者:北方 謙三

岳飛伝 15 照影の章 (集英社文庫)岳飛伝 15 照影の章 (集英社文庫)感想
梁山泊軍と金軍の決戦が近い。南宋でも、岳飛と秦容が南宋総帥の程雲を翻弄。中華全土が決戦の戦場と化すのだろう。さらに、南の小梁山にも南宋水軍の手が…。吹毛剣を授けられ、北辺に追われた胡土児は、どうなる? さまざまな期待を持たせながら、いよいよシリーズ最後の2巻へ。
読了日:07月12日 著者:北方 謙三

 

岳飛伝 16 戎旌の章 (集英社文庫)岳飛伝 16 戎旌の章 (集英社文庫)感想
史進は死んだのか? 気を持たせる終わり方だが、続く最終巻で明らかになるのだろう。
読了日:07月14日 著者:北方 謙三

 

 

岳飛伝 17 星斗の章 (集英社文庫)岳飛伝 17 星斗の章 (集英社文庫)感想
北方「大水滸伝」三部作読了。昨年暮れから7か月かかった。この巻の幕引きは岳飛の静かな退場(なんとなく予想していた)。史進が生き延びたのも自然な流れ、というか作者のメッセージが込められているのか。梁山泊軍、南宋軍、金軍の最後の決戦シーンには、あいかわらず戦場のイメージが沸かず不満がある。何十万の大軍というのが私の想像力を超える。それはともかく『水滸伝』19巻、『楊令伝』15巻、『岳飛伝』17巻、計51巻を読み終えて感慨深い。胡土児の将来が気になる。『チンギス紀』に繋がるのだろうか。北上次郎の文庫解説がいい。
読了日:07月16日 著者:北方 謙三

裸の大地 第二部 犬橇事始裸の大地 第二部 犬橇事始感想
『極夜行』に続く角幡さんの著作。二部作に気づかず、第一部の前に読んでしまった(第一部はこれから読む)。人力橇から犬橇へ。角幡さんのグリーンランドでの探検・冒険の進化。世界的なコロナのパンデミックと重なり、当初の目標に届かなかったものの、彼のチャレンジは続くのだろう。巻末に地図の付録があるものの、地理的な把握は難しかったが、エスキモーたちと橇犬の関係がよくわかった。ペット犬だらけの日本では想像できない過酷な世界(犬をシメるという行為)。そこでの人間と犬たちの関係性に納得。相棒犬ウヤミリックの死が悲しい。
読了日:07月23日 著者:角幡 唯介

裸の大地 第一部 狩りと漂泊 (裸の大地 第 1部)裸の大地 第一部 狩りと漂泊 (裸の大地 第 1部)感想
図書館への予約の手違いで第二部を先に読んでしまったが、前編にあたるこの本も面白い。『極夜行』に続く著者の旅。人力橇と相棒犬・ウヤミリック。狩猟をしながらの「漂泊」を目指す。文明の利器(GPSなど)がなかった、ひと昔前のエスキモーのように。続編(第二部)にある、犬橇の旅・狩猟をしながらの旅へ向かう、その前段。食料が尽きかけ、餓死の直前、土壇場で思わぬ僥倖が…。
読了日:07月25日 著者:角幡 唯介

イトウの恋 (講談社文庫)イトウの恋 (講談社文庫)感想
『日本奥地紀行』を遺したイザベラ・バードの日本での旅の従者/通訳だった"イトウ"の話というので気になっていた小説。モデルはあるが、純然たるフィクション。面白かった。I・B(イザベラ・バード)とイトウ(伊藤鶴吉)のあいだに "あったかもしれない" 恋を軸に、イトウが残したとされる手記を偶然発見した新米中学教師とその教え子、イトウの子孫らしい劇画原作者の女性。これらが巧みに絡み合って、物語としての厚みがある。物語の最後、ストンとパズルのピースが嵌るような、みごとな展開。
読了日:07月28日 著者:中島 京子

失踪願望。 コロナふらふら格闘編失踪願望。 コロナふらふら格闘編感想
2021年4月から同年6月までのウェブ連載日記と、2編の書き下ろし。この間、2021年6月に、椎名氏はコロナに感染して意識を失い自宅から救急搬送されている。場所が自宅でなければ危なかったかもしれないと医師に言われるほどの、重篤な症状だったようだ。その入院前後の顛末が「新型コロナ感染記」に綴られている。もう一編の書き下ろし「三人の兄たち」には、氏の6歳年長の3人(編集者時代の先輩、野田知佑氏、椎名氏の兄)の思い出が(3人とも故人)。日記を含めて全編に細君の渡辺一枝さんへの感謝が何度も書かれているのが印象的。
読了日:07月29日 著者:椎名 誠

読書メーター

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2023年7月31日 (月)

【読】沢木耕太郎さんと山崎ハコさん

角幡唯介さんの書くものが好きで、よく読んでいる。

まだ読み始めたばかりの、この本に、沢木耕太郎さんとの対談が掲載されている。

角幡唯介 『旅人の表現術』 集英社文庫 (2020/2/25) 335ページ

驚いたことに、沢木耕太郎さんが山崎ハコさんのデビュー・アルバムに言及している。

対談の前後の脈略を無視して、その部分だけを下にあげる。

「歩き、読み、書く ノンフィクションの地平」(上掲書 P.74)
 初出:「考える人」 2012年秋号[No.42]
 2012年10月4日刊行(新潮社)

沢木
(前略)
一九七〇年代にデビューした山崎ハコさんという女性歌手がいます。最初のアルバムが素晴らしい出来で、でも二枚目、三枚目はなかなかヒットしない。山崎さんがあるときこう言っていました。「それは当たり前だと気づきました。だって十七歳の全人生が最初の一枚にはこもっていたんです。そのあとの一年、二年をこめたものより一枚目がいいに決まってる。そう思えるようになりました」
(後略)

この、ハコさんの言葉を、沢木さんはどこで聞いたのだろうか。
(「あるときこう言っていました」)
とても気になる。

ネット検索などではみつからない。
沢木さんの対談集かインタビュー集などに載っているのだろうか?
それとも、何かの機会でハコさんと話したのか?

妙に説得力のある、ハコさんの言葉なのだが…。

 

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2023年7月16日 (日)

【読】読み終えたぞ、北方謙三「大水滸伝」三部作

昨年2022年の暮れから読み続けてきた、北方謙三「大水滸伝」三部作。
最後の『岳飛伝』最終巻を読み終えた。

じつに感慨深い。

読書メーターにあげた感想(255文字までという制限あり)を、載せておこう。

https://bookmeter.com/books/12716151

北方「大水滸伝」三部作読了。昨年暮れから7か月かかった。この巻の幕引きは岳飛の静かな退場(なんとなく予想していた)。史進が生き延びたのも自然な流れ、というか作者のメッセージが込められているのか。梁山泊軍、南宋軍、金軍の最後の決戦シーンには、あいかわらず戦場のイメージが沸かず不満がある。何十万の大軍というのが私の想像力を超える。それはともかく『水滸伝』19巻、『楊令伝』15巻、『岳飛伝』17巻、計51巻を読み終えて感慨深い。胡土児の将来が気になる。『チンギス紀』に繋がるのだろうか。北上次郎の文庫解説がいい。

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2023年7月 8日 (土)

【読】北方謙三「大水滸伝」三部作、あと4巻

昨年2022年暮れから、継続して読んでいる北方謙三の「大水滸伝」三部作。
『水滸伝』 全19巻
『楊令伝』 全15巻
『岳飛伝』 全17巻
いずれも集英社文庫。

北方謙三「大水滸伝」シリーズ ◆中国歴史小説『水滸伝』『楊令伝』『岳飛伝』◆|集英社
https://lp.shueisha.co.jp/dai-suiko/

『岳飛伝』13巻目まで読み終えて、最後の4巻を図書館から借りてきた。

 

『水滸伝』は、ブックオフで古本を買い集め、読み終えた後は、小平図書館友の会のチャリティ古本市に供出。
続く『楊令伝』は、地元の図書館から借りて読んだ。
『岳飛伝』は、文庫版が地元図書館になく、相互利用が始まった小平の図書館から借りて読んでいる。

文庫版にこだわるわけは、巻末の解説が読みたいから。

合わせて51巻の大作を読み続けるのは根気がいるが、それだけ魅力的な小説なのだ。
全巻読了後に、あらためて感想を書くつもりだ。
登場人物が膨大で、舞台も広いので(宋末から南宋時代の中国全土、さらに、西域、日本、南方まで)、内容の紹介は私には無理だが。

長い読書経緯を、記録としてメモ帳に残している読書記録から、コピペしておく。

●2022/12/24~12/27 北方謙三 『水滸伝 一 ―― 曙光の章』 集英社文庫 (2006/10/25) 388ページ 解説:北上次郎
●12/28~12/31 北方謙三 『水滸伝 二 ―― 替天光の章』 集英社文庫 (2006/11/25) 389ページ 解説:大沢在昌
●12/31~1/2 北方謙三 『水滸伝 三 ―― 輪舞の章』 集英社文庫 (2006/12/20) 388ページ 解説:逢坂剛
●2023/1/2~1/3 北方謙三 『水滸伝 四 ―― 道蛇の章』 集英社文庫 (2007/1/25) 390ページ 解説:池上冬樹
●1/4~1/5 北方謙三 『水滸伝 五 ―― 玄武の章』 集英社文庫 (2007/2/25) 390ページ 解説:志水辰夫
●1/6~1/8 北方謙三 『水滸伝 六 ―― 風塵の章』 集英社文庫 (2007/3/25) 388ページ 解説:吉田伸子
●1/8~1/11 北方謙三 『水滸伝 七 ―― 烈火の章』 集英社文庫 (2007/4/25) 389ページ 解説:縄田一男
●1/11~1/12 北方謙三 『水滸伝 八 ―― 青龍の章』 集英社文庫 (2007/5/25) 395ページ 解説:王勇
●1/13~1/16 北方謙三 『水滸伝 九 ―― 風翠の章』 集英社文庫 (2007/6/30) 390ページ 解説:馳星周
●1/16~1/18 北方謙三 『水滸伝 十 ―― 濁流の章』 集英社文庫 (2007/7/25) 398ページ 解説:大森望
●1/18~1/22 北方謙三 『水滸伝 十一 ―― 天地の章』 集英社文庫 (2007/8/25) 389ページ 解説:岡崎由美
●1/22~1/26 北方謙三 『水滸伝 十二 ―― 炳呼の章』 集英社文庫 (2007/9/25) 397ページ解説:張競
●1/26~1/29 北方謙三 『水滸伝 十三 ―― 白虎の章』 集英社文庫 (2007/10/25) 397ページ 解説:西上心太
●1-29~1/30 北方謙三 『水滸伝 十四 ―― 爪牙の章』 集英社文庫 (2007/11/25) 395ページ 解説:細谷正充
●1/30~2/1 北方謙三 『水滸伝 十五 ―― 折戟の章』 集英社文庫 (2007/12/20) 395ページ 解説:茶木則雄
●2/1~2/4 北方謙三 『水滸伝 十六 ―― 馳驟の章』 集英社文庫 (2008/1/25) 390ページ 解説:吉川晃司
●2/4~2/5 北方謙三 『水滸伝 十七 ―― 朱雀の章』 集英社文庫 (2008/2/25) 397ページ 解説:高井康典行(やすゆき)
●2/5~2/6 北方謙三 『水滸伝 十八 ―― 乾坤の章』 集英社文庫 (2008/3/25) 397ページ 解説:夢枕獏
●2/7~2/10 北方謙三 『水滸伝 十九 ―― 旌旗の章』 集英社文庫 (2008/4/25) 395ページ 解説:ムルハーン千栄子
●2/10~2/12 北方謙三 『北方謙三の「水滸伝」ノート』 NHK出版生活人新書300 (2009/9/10) 203ページ
●2/12~2/14 北方謙三(編著) 『替天行道 ―― 北方水滸伝読本』 集英社文庫 (2008/4/25) 419ページ

●2/21~3/2 北方謙三 『楊令伝 一 ――玄旗の章』 集英社文庫 (2011/6/30) 390ページ 解説:宮部みゆき
●3/4~3/7 北方謙三 『楊令伝 二 ――辺烽の章』 集英社文庫 (2011/7/25) 395ページ 解説:北上次郎
●3/8~3/13 北方謙三 『楊令伝 三 ――盤紆の章』 集英社文庫 (2011/8/25) 395ページ 解説:唯川恵
●3/14~3/19 北方謙三 『楊令伝 四 ――雷霆の章』 集英社文庫 (2011/9/25) 397ページ 解説:後藤正治
●3/21~3/24 北方謙三 『楊令伝 五 ――猖紅の章』 集英社文庫 (2011/10/25) 397ページ 解説:小久保裕紀
●3/28~3/29 北方謙三 『楊令伝 六 ――徂征の章』 集英社文庫 (2011/11/25) 398ページ 解説:吉田戦車
●3/31~4/2 北方謙三『楊令伝 七 ――驍騰の章』 集英社文庫 (2011/12/20) 396ページ 解説:宇梶剛士
●4/2~4/3 北方謙三『楊令伝 八 ――箭激の章』 集英社文庫 (2012/1/25) 398ページ 解説:武田双雲
●4/4~4/5 北方謙三『楊令伝 九 ――遥光の章』 集英社文庫 (2012/2/25) 398ページ 解説:川上健一
●4/6~4/10 北方謙三『楊令伝 十 ――坡陀の章』 集英社文庫 (2012/3/25) 396ページ 解説:水森サトリ
●4/11~4/17 北方謙三『楊令伝 十一 ――傾暉の章』 集英社文庫 (2012/4/25) 390ページ 解説:吉田伸子
●4/17~4/22 北方謙三『楊令伝 十二 ――九天の章』 集英社文庫 (2012/5/25) 390ページ 解説:今野敏
●4/23~4/24 北方謙三『楊令伝 十三 ――青冥の章』 集英社文庫 (2012/6/30) 390ページ 解説:張競
●5/3~5/4 北方謙三『楊令伝 十四 ――星歳の章』 集英社文庫 (2012/7/25) 390ページ 解説:東えりか
●5/4~5/5 北方謙三『楊令伝 十五 ――天穹の章』 集英社文庫 (2012/8/25) 388ページ 解説:イオアニス・メンザス

●5/29~5/31 北方謙三 『岳飛伝 一 ――三霊の章』 集英社文庫 (2016/11/25) 390ページ 解説:原泰久
●5/31~6/2 北方謙三 『岳飛伝 二 ――飛流の章』 集英社文庫 (2016/12/25) 390ページ 解説:池上冬樹
●6/2~6/4 北方謙三 『岳飛伝 三 ――嘶鳴の章』 集英社文庫 (2017/1/25) 394ページ 解説:張競
●6/6~6/7 北方謙三 『岳飛伝 四 ――日暈の章』 集英社文庫 (2017/2/25) 384ページ 解説:鳴海章
●6/7~6/8 北方謙三 『岳飛伝 五 ――紅星の章』 集英社文庫 (2017/3/25) 386ページ 解説:諸田玲子
●6/9~6/11 北方謙三 『岳飛伝 六 ――転遠の章』 集英社文庫 (2017/4/25) 392ページ 解説:小梛治宣
●6/13~6/15 北方謙三 『岳飛伝 七 ――懸軍の章』 集英社文庫 (2017/5/25) 390ページ 解説:桜木紫乃
●6/15~6/16 北方謙三 『岳飛伝 八 ――龍蟠の章』 集英社文庫 (2017/6/30) 392ページ 解説:川合章子
●6/16~6/19 北方謙三 『岳飛伝 九 ――曉角の章』 集英社文庫 (2017/7/25) 390ページ 解説:末國善己
●6/19~6/26 北方謙三 『岳飛伝 十 ――天雷の章』 集英社文庫 (2017/8/30) 385ページ 解説:東山彰良
●6/26~7/2 北方謙三 『岳飛伝 十一 ――烽燧の章』 集英社文庫 (2017/9/25) 388ぺージ 解説:細谷正充
●7/3~7/5 北方謙三 『岳飛伝 十二 ――瓢風の章』 集英社文庫 (2017/10/25) 394ページ 解説:西上心太
●7/6~7/7 北方謙三 『岳飛伝 十三 ――蒼波の章』 集英社文庫 (2017/11/25) 392ページ 解説:小山進

●北方謙三 『岳飛伝 十四 ――撃撞の章』 集英社文庫 (2017/12/20) 394ページ 解説:吉田伸子
●北方謙三 『岳飛伝 十五 ――照影の章』 集英社文庫 (2018/1/25) 395ページ 解説:宇梶剛士
●北方謙三 『岳飛伝 十六 ――戎旌の章』 集英社文庫 (2018/2/25) 394ぺージ 解説:山田裕樹
●北方謙三 『岳飛伝 十七 ――星斗の章』 集英社文庫 (2018/3/25) 391ぺージ 解説:北上次郎


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2023年7月 1日 (土)

【読】2023年6月に読んだ本(読書メーター)

北方謙三『岳飛伝』10巻目まで読んだ。
他に2冊。

6月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:4044
ナイス数:137

岳飛伝 2 飛流の章 (集英社文庫)岳飛伝 2 飛流の章 (集英社文庫)感想
この巻で、また大きな展開が。子午山の公淑が静かに息を引き取り、王進がその後を追うように自死(といっていいだろう)する章はしんみりと胸に沁みる。王清と蔡豹は子午山を離れて自立。二人のこの先が気になる。また、自らの弱さを隠そうともしない岳飛の姿が魅力的。呉用を頭領とする梁山泊が思いをあらたに動き出し、金軍との大きな戦闘(決戦?)が始まる。若い宣凱は呉用の跡を継ぐのか? 次巻の展開がいよいよ楽しみ。北方大水滸伝の最終作は、じつに面白い。さすがだ。
読了日:06月02日 著者:北方 謙三

岳飛伝 3 嘶鳴の章 (集英社文庫)岳飛伝 3 嘶鳴の章 (集英社文庫)感想
3巻目。舞台がさらに南方まで広がり、この先のスケールの大きさを予感させる。カンボジアから、なんとビルマ(ミャンマー)まで! 梁山泊若手の活躍(宣凱、秦容、王貴、王清たち)からも目が離せない。老いてなお強い史進、人間味あふれる岳飛。さらに、前面に出てきた三人の個性的な若い女性たちも魅力的。北方謙三が描く人物の奥深さ! この巻の文庫解説(張強氏)は、北方大水滸伝の成り立ちを本家水滸伝と比較していて、たいへん興味深い。
読了日:06月04日 著者:北方 謙三

魂魄の道魂魄の道感想
これまで何冊も作品を読んだ作家の新刊(2023年2月刊)。2014年から2022年まで雑誌に発表された5編の中短編が集められている。生き延びた人たちの視点から沖縄戦での苦難と戦後の苦悩が語られる。ずっしりと重い内容。
読了日:06月05日 著者:目取真 俊


岳飛伝 4 日暈の章 (集英社文庫)岳飛伝 4 日暈の章 (集英社文庫)感想
南方であらたな試みを始めた秦容・李俊一行が、物語の広がりを予感させる。金軍と岳飛軍・南宋軍との大規模な戦闘シーンは、私には、あいかわらずイメージがつかみにくいが、波乱含みではある。北へ突出した岳飛軍は、南宋の秦檜たちの停戦への動きによって見捨てられるのだろうか。次巻に向かい、展開が楽しみだ。この巻の解説(鳴海章)が言う「遠大な物語でありながら、どのページを繰っても、熱く、7着ればいつでも血が噴き出しそうに躍動している」北方大水滸伝なんだな、と、あらためて思う。『岳飛伝』は全体のまだ四分の一弱(全17巻)。
読了日:06月07日 著者:北方 謙三

岳飛伝 5 紅星の章 (集英社文庫)岳飛伝 5 紅星の章 (集英社文庫)感想
呉用がひっそりと息を引き取った。その終焉シーンが、いい。西遼では韓成が「戦は、いやだ、人が死ぬ」と涙を流しながらも宣撫を続け、上青の許へ着く。その姿にもジーンとくる。遠く南方の宣凱たちの部隊では、ついに甘藷糖が完成。彼らの創意工夫が、すごい。さらに日本では、十三湊に着いた張朔が平泉の藤原基衡・秀衡父子に謁見する。物語の舞台はどんどん広がり、この先の梁山泊の交易のスケールがどこまで広がるのか。矛をおさめた岳飛の今後も、おおいに気になる。
読了日:06月08日 著者:北方 謙三

岳飛伝 6 転遠の章 (集英社文庫)岳飛伝 6 転遠の章 (集英社文庫)感想
文庫版カバー裏にあるように、「シリーズ前半、最大のクライマックスを迎える緊迫の第六巻」。まさか、岳飛がこの巻で死んでしまうことはないだろう(岳飛伝なのだから)と思いながらも、手に汗握る展開。頭領を失った岳家軍はどうなるのか。なにもかも失い、身ひとつで南方に逃亡する岳飛は? 全17巻のまだ三分の一だ。「水滸伝」「楊令伝」と続いてきて、登場人物たちの流れに大きな瑕疵がないのは、みごと。舞台のスケールがどんどん広がってきて、この先が楽しみだ。
読了日:06月11日 著者:北方 謙三

時々、慈父になる。時々、慈父になる。感想
この作家の熱心な読者でもないが、なんとなく読んでみようと図書館から借りてきた。面白かった。『スノードロップ』『パンとサーカス』は読んでいて、注目している作家ではある。「本書はフィクションです」とあるのが可笑しいが、ご自身の半生(ご子息誕生から現在まで)は、ほぼ実話だろう。ミロク(彌六)と名付けられたご子息が、活躍していることも知った。冒頭、エトロフ島訪問記が私には新鮮だった。芥川賞選考委員に選ばれ、石原慎太郎とやりあったくだりも面白い。全編を通じて反「アベ政治」への痛烈な批判は、この人らしく、いっそ痛快。
読了日:06月12日 著者:島田 雅彦

岳飛伝 7 懸軍の章 (集英社文庫)岳飛伝 7 懸軍の章 (集英社文庫)感想
湄公河(メコン川)の畔に落ち着いた岳飛。象の河で着々と「小梁山」を築き続ける秦容たち。西域では韓成が活躍。十三湊では藤原一族との結びつきを深める張朔。スケールの広がりに目を見張り、この先の展開への期待が増す。岳飛に懐いて子分のようになった猿の骨郎が可笑しい。
読了日:06月15日 著者:北方 謙三

 

岳飛伝 8 龍蟠の章 (集英社文庫)岳飛伝 8 龍蟠の章 (集英社文庫)感想
金国と南宋が組んで、梁山泊に挑んでこようとする。梁山泊致死軍の攪乱が頼もしい。海上でも大きな戦闘の予感。南方では「象の河」一帯(甘藷園、造船所、小梁山)の秦容・李俊らを頭とする梁山泊と、「湄公河」の岳飛たちが、ついに連携。南宋との戦が始まりそうで、この先の展開にますます期待が高まる。なお、この巻の文庫版解説(川合章子=歴史系フリーライター)には、歴史上の実在人物である岳飛と秦檜について詳しく書かれていて、きわめて興味深い。
読了日:06月16日 著者:北方 謙三

岳飛伝 9 曉角の章 (集英社文庫)岳飛伝 9 曉角の章 (集英社文庫)感想
全17巻の折り返し。撻懶の病死を契機に国内の矛盾が表面化してくる金国。水軍を強化して梁山泊の拠点(沙門島)と水軍を襲う南宋。この二国には滅亡の気配が感じられる。対照的に、梁山泊は秦容が率いる小梁山が発展を続け、岳飛との連携も進み、北方の高山の傭兵たちを配下に加えて、あたらしい国ができていく予感。このあたりの展開は、胸がすく思いだ。王清の悩みが微笑ましく、今後の命運が気になる。長大な物語(『水滸伝』19巻、『楊令伝』15巻に続く本作)を、まだしばらく楽しめそうだ。作者の技量にあらためて脱帽。
読了日:06月19日 著者:北方 謙三

岳飛伝 10 天雷の章 (集英社文庫)岳飛伝 10 天雷の章 (集英社文庫)感想
岳飛と秦容、それに蕭炫材が手を組み、南方の動きが激しくなった。水上戦で手痛い敗北を喫した南宋軍の動きも、興味深い。王貴と崔蘭がめでたく結ばれる一方で、蔡豹の悲しい死。あいかわらず、波乱万丈。ますます目が離せない。というか、次巻への期待が高まる。
読了日:06月26日 著者:北方 謙三

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