会員おすすめの本 (友の会HPより) 3
【会員の方から頂いた本の紹介】 その3
13. 博士の愛した数式
14. 多みんぞくニホン―在日外国人のくらし
15. フク・ホロヴァーの生涯を追って―ボヘミアに生きた明治の女
16. クワイ河収容所
17. 嫌われ松子の一生
『博士の愛した数式』
小川洋子 著
新潮社 2003.8 発行 1,500円
読売文学賞、書店員が投票で選ぶ第一回「本屋大賞」まで受賞した作品を、今更と思いながらお勧めせずにはいられない一冊です。
事故で記憶を失ってしまった天才数学者と派遣家政婦、そして、その息子(阪神タイガースの熱烈なファン)10歳。
日常にちらかっている数字、例えば、生年月日、靴のサイズ、電話番号等々が、博士にかかればそれらの数字は急速に輝きだし、意味をもち、無限の世界へと連なっていくというふうに・・・・。
作者の小川さんは学生時代、数学が苦手だったそうだが<数学の友愛数という詩的なことばに出会ったとき、博士が話し出す情景まで浮かんできた>と、この物語の生まれたきっかけを話している。 (H/M)
参考:小川洋子さん 最新作
『ブラフマンの埋葬』 講談社 2004.4発行 1,300円
『多みんぞくニホン ―在日外国人のくらし 』
宗司博史 編著
財団法人千里文化財団発行 1,785円
国立民族博物館にて2004年3月25日~6月15日にかけて開催された同名の特別展の解説書である。
企画に協力することになり、大阪まで足をはこんだが、父母達一世のくらしを、ものや資料を通して客観的に見ることはこれからの方向を決める良い機会になった。
進行する“多民族日本”への入門書、参考書にもなり、今そばにいつもおいてるかわいい本です。小川ユリア文化交流会にも10冊ほど有り。 (s/r)
『フク・ホロヴァーの生涯を追って ―ボヘミアに生きた明治の女』
吉澤朎子・著 草思社
2002.3発行 2,500円
この本の作者、吉澤朎子さんは、先日の会報9号で『地元作家に聞く』に紹介されたので、既に読まれた方も多いかと思いますが、あえて投稿しました。
この本は推理小説でも恋愛物語でもないがそんな要素をすべて含んだ明治生まれの女性のドキュメンタリーなのである。
明治19年に和歌山県で氏族の娘として生まれた竹本福が、大阪瓦斯の技師として来日していたチェコ人カレル・ヤン・ホタと20歳で結婚、フク・ホロヴァーとなった。幸福な新婚時代を横浜/上海で過ごしたが、戦争の影に追われて彼の母国チェコに移住し、幾多の苦難に耐えて昭和40年78歳で没するまでの生涯を埋もれた歴史から発掘したノン・フィクションである。
彼女の一生は東欧の近代史=宗教・民族・思想・独裁・暴力などが世界戦争と結びついた暗黒時代=に埋もれていたのを、吉澤さんは愛情を込めて彼女を掘り起こすことで強大な隣国に囲まれて翻弄されてきた小国チェコの悲哀までもが描かれている。
厳しい環境に耐えて、楽しみを作り出して生き抜いた「フク」の人生とチェコの歴史が重なって見えてくるようである。
15年という長い歳月をかけてこの大作をまとめられた、吉澤さんの前向きなエネルギーにひたすら感服する次第です。 (M/S)
『クワイ河収容所』
アーネスト・ゴードン 著 (Ernesut Gordon)
斎藤和明訳 ちくま学芸文庫
1995年 筑摩書房
国家間の問題解決を武力、つまり戦争によるのは断じて反対、といつも考えている私。戦争体験者の一人として語り継いでゆかねばならないのだがとても難しい。そんな私がこの本を一読して、これこそ戦争を知らない人たちにお薦めしたいと強く感じたのである。
この本は新刊書ではない。原書はなんと1962年発行、改版の翻訳は1995年、第2次世界大戦終戦の50年後の出版である。著者ゴードンは1916年スコットランド生まれのイギリス人。大学卒業後志願して陸軍大尉になった人。書名から想像がつくように日本軍の俘虜となった約4年間の記録である。いくつかの収容所を移動させられ、十分な食糧も与えられずに、時には橋を架け、鉄道敷設の過酷な重労働に耐えたり、時にはマラリア、赤痢、ジフテリア、脚気などで死にそうになる。
著者だけではない。俘虜たちは皆、極限状態におかれて生きる望みもなくただ生息しているに過ぎない。人間性を失い、仲間内で食糧、所持品の盗難が横行する。そんなひどい状況が続く中で、動けない友人を介護するという些細な行動から人間性が回復され、周囲に浸透してゆき俘虜たちの生活態度が、いつか立ち直ってゆくのである。キリスト教信者である人を中心に信仰も大きな支えになってゆく。
終戦後開放され故国に帰るのだが、ここでもまたも、一般の生活に順応する大変さにも触れている。
現在、平和の中にあっても、戦争の一側面を知り、考えるのも良いと深く感じさせた本である。小平では喜平図書館が所蔵している。 (M/S)
『嫌われ松子の一生』
ありえない不幸話、そう言ってもおかしくないかもしれない物語でした。
それなりに裕福な家庭に生まれ、教師という職にもついている松子。
だけど、ある事件をきっかけに家を出て転落人生をおくることになってしまう。
というのが簡単なあらすじ。
映画化もされたので知っている方もいらっしゃると思いますが。
不幸な話です。
だけど、文章のなせる技か、それほど暗い気持ちにはなりません。
少しほっとするような交流もあったりして、そこら辺が長く続かないとはいえいやされます。
上下巻ということで、読むのに気力が必要ですが(私はそうでした)、ぜひ一気に読んでほしい作品です。
ラスト、松子の最後がとても印象的にしめくくられていて、そこを読むためにこの悲しい物語を読んでいたのかもしれない、と思わせられるものでした。 (K.I)
紹介された本について
『嫌われ松子の一生』
作者 山田宗樹
出版社 幻冬舎文庫 (上)571円 (下)600円
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