【読】勇気をくれた言葉
鶴見和子さんについて、もうすこし書く。
『コレクション 鶴見和子曼荼羅』シリーズ(藤原書店・1998年)のカバー見返しに、こんな言葉があった。
― 若き命に 鶴見和子 ―
ひとりの人間の生命はちりひじのように、かすかでみじかい。ひとりの人間の生涯に、その志は実現し難い。自分より若い生命に、そしてこれから生まれてくる生命に、志を託すよりほかない。
コレクション<鶴見和子曼荼羅>に、私の生きこし相(すがた)と志とを描いたつもりである。その萃点は、内発的発展論である。それは、人間がその生まれた地域に根ざして、国の中でそして国を越えて、他の人々と、そして人間がその一部である自然と、共にささえあって生きられるような社会を創っていくことを志す。その志を、これまで思い及ばなかったような独創的な形相(かたち)と方法(てだて)で展開してほしいと希求する。
身のうちに死者と生者が共に棲みささやき交す魂ひそめきく
生命細くほそくなりゆく境涯にいよよ燃え立つ炎ひとすじ
これを読んで、身がひきしまる思いがした。ちょっと大げさだけど。
これまでなんとなく悲観的な思いを抱いて生きてきたが、そうじゃないよ、と言われたような気がする。
「こころざし」・・・ながいこと忘れていたこのことばに、勇気づけられた。
《参考》
「萃点」「内発的発展論」・・・鶴見さんの思想の核となるキーワード。
「萃点」は、南方曼荼羅に出てくる考え方で、ひとことでは説明できない。
(鶴見和子著『南方熊楠』講談社学術文庫などを参照願いたい)
「内発的発展論」は、「土着的発展」つまり、西洋的な近代化をモデルとすることなく、自己の社会の中から自立的に近代化のモデルを作りだすことを指す。やはり、ひとことでは説明が難しいが、鶴見さんの考え方の核をなす。
「ちりひじ」・・・広辞苑にしか載っていないような言葉だが、「塵泥」と書く。
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コメント
見事な歌、心から驚きました。やはり優れた人はいるんですね。一つ目の歌の「正者」は「生者」ではありませんか?
投稿: 玄柊 | 2006年2月24日 (金) 23時09分
正者→生者。
またまた誤変換に気づきませんでした(^_^;)
訂正しておきました。
投稿: やまおじさん | 2006年2月24日 (金) 23時22分