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2006年6月10日 (土)

【読】いくつもの日本

赤坂憲雄  『東西/南北考 ―いくつもの日本へ―』 という新書がおもしろかった。

Akasaka_touzainanboku_1岩波新書 700 (2000/11/20初版) 本文189ページ
赤坂さんの本では
『柳田国男の読み方 ―もうひとつの民俗学は可能か―』
(ちくま新書 007 1994/9/20初版)
を読んだことがあり、感銘をうけた。


https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2006/02/post_d63b.html
赤坂憲雄さんは、1953年生まれの気鋭の民俗学者。
東北芸術工科大学の助教授、同東北文化研究センター所長、福島県立博物館館長、という肩書きを持っている。 ぼくと同じ小平市に住んでいらっしゃるらしい。

この 『東西/南北考』 は、五木寛之さんの著作で知った。
図書館から借りて読み始めたが、あまりにおもしろいので、書店で購入。
夢中になって読んでしまった。

― カバー裏の紹介文 ―
東西から南北へ視点を転換することで多様な日本の姿が浮かび上がる。
「ひとつの日本」 という歴史認識のほころびを起点に、縄文以来、北海道・東北から奄美・沖縄へと繋がる南北を軸とした 「いくつもの日本」 の歴史・文化的な重層性をたどる。
新たな列島の民族史を切り拓く、気鋭の民俗学者による意欲的な日本文化論。

この紹介文、いかにも岩波新書らしく「カタイ」が、本文はとても刺激的だ。
ぼくは、しょっちゅう「目から鱗」が落ちる人間だが、このたびも、何枚もの鱗が落ちた思いがする。

「ひとつの日本」という幻想を打ち砕こうと、奮闘といっていいほどの熱の入れようで、「この弧状なす列島」の歴史を掘り起こしている。

「弧状なす列島」ということばが、くりかえし使われている。
赤坂さんは、この列島をけっして 「日本列島」 と呼ばない。
世界地図を見れば、この列島がアジア大陸の東端に大きな弧をえがいて連なっていることが一目瞭然だ。
北はサハリン(樺太)、カムチャッカ半島、クリル列島(千島列島)から、南は南西諸島(奄美、沖縄、先島諸島)までを視野に入れれば、この列島のちがう姿、歴史が見えてくる、とぼくも考えていた。

まえがき(はじめに)で、大相撲と異種格闘技をひきあいにだして、東西/南北の「座標軸」を論じているところがおもしろかった。
相撲(という格闘技)の源郷はモンゴルの草原であり、朝鮮半島を経て七世紀に渡来したものだという。
「東は毛人を征すること五十五国、西は衆夷を服すること六十六国」(雄略記)とあるように、ヤマト王権に服属させた異属を「東西」に分けて闘わせたのが、大相撲の起源だった。

だから、いまでも番付を東西に分け、それぞれの力士は「シコナ(四股名、醜名)」として「御国」(出身地)を背負っているのだという。
まるい土俵(東西にわかれ、花道から控えの間へと延びる)の上で闘うのが相撲。
これに対して、四角いリングの上で、東西の区別もなく、そのつどルールを決めて闘うのが異種格闘技。

<いささか乱暴に過ぎる比較ではあるが、これはじつは、わたしが列島の東西/南北をめぐる志向の軸について思いを巡らしはじめたとき、自然と浮かんだ連想であった。 あらためて断るまでもなく、東西の軸が相撲に、南北の軸が異種格闘技に対応している。>

<東西の軸に沿った戦いは、関ヶ原の合戦を思い浮かべるだけでも、ひとつの土俵・ひとつのルールを互いに認め合った戦いであることがあきらかだ。 (略)
それは突き詰めてゆけば、ひとつの種族=文化の内なる領土争いに帰着する。 ところが南北の軸に眼を転じると、様相はたちまちにして一変する。 (略) それは、蝦夷・アイヌ・琉球といった、少なからず種族=文化的な断層を孕んで対峙する相手との、いわば植民地支配のための戦争である。 ・・・>

長くなるのでこれぐらいにしておく。
興味をもたれた方には、図書館か書店で、ぜひ手にとって内容をごらんになることをおすすめしたい。

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