【読】戦後のモノクロ写真
12月7日 『昔はよかったね』 の続き。
赤瀬川原平
『戦後腹ぺこ時代のシャッター音』
岩波写真文庫再発見
岩波書店 2007.11.5 第2刷 \1600(税別)
(初出 『世界』 2004年1月号~2006年12月号)
これが予想以上におもしろい。
戦後、1950年から刊行されはじめた岩波写真文庫。
モノクロ写真である。
懐かしいことこのうえない。
赤瀬川さんの文章が、なかなかいいのだ。
<昔はみんな貧乏だった。 昔というのは日本が戦争に負けてしばらくのころ、水泳の古橋、橋爪という名前が、貧乏の中で輝いていた。 (中略) / 自分の年齢的には、中学、高校、そして上京してからの時間帯、コーヒーを飲めない年齢から、やっと自分でコーヒーを飲む年齢になっていくころだ。> (「アメリカ人の生活を見る」)
「日本列島の同時多発フォト」 で紹介されているのは、1956年4月25日発行の岩波写真文庫 183 『日本―1955年10月8日―』 。
この日は特に何かの日というわけではなく、「あえてたまたまの一日を選んで、その日の光景を日本中の人々にカメラで撮ってもらって、それをずらりと見てみようというアイデアである」。
<じつはこのシリーズはこの巻にはじまり、翌1956年8月15日、さらに1957年4月7日、そして1958年正月と、一年ごとに同じ方法で公募して出版している。 (中略) 年を追って見てくと、やはり少しずつ世の中は豊かになって、少しずつ大人っぽくなって、環境が整えられていく様子がわかる。>
<でも通して感じられるのは、このころの日本人は、とくに子供たちは、じつに素朴だったなあということ。 実直だったなあということ。 もちろん写真だから、それは表面のことだと、いまからはいうだろうが、そのころの人間はいまみたいに、裏の裏までは考えていなかった。 もっと単純だった。>
<1956年8月15日の巻で、お宮の木陰でゴザを敷いて、机を持ち出して、子供たちだけでの勉強会の写真がある。 みんな正座して机に向かっているのが、無理なく自然な形になっている。 いまでは考えられない光景だ。 昔はよくこういうことをしていたと、何だかじーんとくる。 いまの世の中では真面目がむしろ軽蔑される。 もちろん内容はいまも真面目な人が大勢いるとは思うが、それを表に出せない。 むしろ不真面目に振舞うことが風潮となっているから、こんな光景にはとても出会えない。> (太字は引用者)
こういう柔軟なものの見方ができる人だから、私は赤瀬川さんが好きだ。
ほんとにそうだよなあ、と思う。
これはいい本ですよ。
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