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2008年5月 5日 (月)

【読】この本はすごい

きのう、このブログで紹介したばかりだが、この本はすごい。

Kitamichi_ainugo_chimei北道邦彦 著 『アイヌ語地名で旅する北海道』
 朝日新書 103  2008.3.30発行 740円(税別)

https://amzn.to/4dBa7Ef

ネットで検索してみたが、この本や著者について、記事がすくない。
そこで、本書の前書き(はじめに)から、すこし引用したい。
著者の人となりがわかると思う。

<埼玉県の高校の教員を退職後、私は北海道で生まれたのにアイヌ語を知らない自分を省み、一念発起してアイヌ語の勉強をはじめた。 せっかく学ぶならと、第一人者の田村すゞ子先生のいらっしゃった早稲田大学語学教育研究所で受講することにした。>

著者略歴によると、この人が退職したのは1994年。
北海道に戻ってアイヌ語の研究を始め、その後、97年から4年間、早稲田大学で上記のアイヌ語講座を受講し、勉強したという。
1935年生まれだから、62歳頃から 「勉強」 をはじめたことになる。
これだけでも、すごいと思う。
まったく、頭がさがる。

この本をざっとながめてみると、内容の深さに驚く。
とても新書とは思えない。

目次を紹介しておこう。

はじめに
序章 アイヌ語地名の特色
第1章 山のいろいろ
第 2章 輝く白雪の山なみ
 Ⅰ 日高山脈
 Ⅱ 石狩山地
 Ⅲ 知床半島
第3章 岬めぐり
第4章 札幌
終章 アイヌ語の特色
おわりに
主な参考文献
索引

259ページの本だが、内容が濃い。
過去の先達の業績、研究をベースに、よく調べ、深く考察しているのだ。

アイヌ語地名研究の先達として、本書の序章にあげられているのは、次のとおり。
(各人の生没年は、北道氏の記述による)

秦檍麻呂 『東蝦夷地名考』 1808年
上原熊次郎 『藻汐草』 1792年、『蝦夷地名考并里程記』 1824年
松浦武四郎(1818~1889) 『初航・再航・三航蝦夷日誌』
  『廻浦日記』、『丁巳日誌』、『戊午日誌』など
B・H・チェンバレン 『アイヌ語地名の命名法』 1887年
永田方正 『北海道蝦夷語地名解』 1891年
金田一京助(1882~1971) 『北奥地名考』 1932年
知里真志保(1909~1961) 『アイヌ語入門――とくに地名研究者のために』
  『地名アイヌ語小辞典』 ともに1956年
高倉新一郎、更科源蔵、知里真志保 『北海道駅名の起源』
山田秀三(1899~1992) 『アイヌ語地名の研究 1~4』 1995年

この他、菅江真澄(1754~1829) 『えみしのさえき』 他
……など、著者は、これらの文献に目を通していると思われる。
すごいことだ。

この本の魅力は、綿密なアイヌ語地名解はもちろんのことだが、随所に掲載されているコラム(あるいは、コラム的に記載された補足)の内容の幅広さだ。

こんなコラムがある。

・知里幸恵 『アイヌ神謡集』 にふれたもの (第1章、第2章)
・知里幸恵の生涯にふれたもの (第1章、第2章)
・金成マツ・金田一京助の 『アイヌ叙事詩 ユーカラ集』 にふれたもの (第2章)
・日高山脈の氷河地形 (第2章)
・松浦武四郎のこと (第2章)
・多義語 sir シリ (第2章)
・ハマナス (第2章)
・知床横断道路 (第2章)
・アイヌの蜂起と悲劇の歴史 (第2章) ……これは8ページにわたる
・松浦武四郎の生涯 (第3章) ……これも4ページにわたる

……等々。

北海道に生れた人、住む人、北海道を訪ねる人で、多少なりともアイヌ語、アイヌ文化に関心をもつ人にとって、これほど有益な本はすくないと思う。

持ち歩きできる新書、というのもうれしい。
地名索引も充実している。
いい本に出会ったと思う。

うーん。
ひさしぶりに、力のはいった紹介になった。

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コメント

AMAZONで発見し、購入申し込みました。旅では非常にうれしい本になることでしょう。

投稿: 玄柊 | 2008年5月 6日 (火) 17時25分

>玄柊さん
新刊なので書店にもあると思いましたが・・・。
北海道の旅のともとして、こんないい本はないでしょう。
この本を眺めていると、北海道を旅したくなりますね。

投稿: やまおじさん | 2008年5月 6日 (火) 17時52分

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