【楽】【読】休日の昼下がりに聴くジャズ(モンクとマリガン)
村上春樹さんの 『ポートレイト・イン・ジャズ』 (新潮文庫、和田誠 絵) を読みなおしている。
音楽を言葉で表現するのはむずかしいことだが、さすが村上春樹さんだ。
耳慣れないカタカナ語がよくでてくるので辞書が必要かもしれず、人によって好みはあろうが、私は彼の魔法のような表現に感心する。
たとえば、バリトン・サックス奏者 ジェリー・マリガンの魅力を、こんなぐあいに表現している。
<僕らがジェリー・マリガンの音楽から一貫して感じとることができるのは、そのナイーヴで内省的な魂の息吹である。音楽に対する深い尊敬の念であり、きりっと背筋ののびた潔さである。> (新潮文庫版 P.129)
また、孤高のピアニスト セロニアス・モンクについては、こうだ。
<セロニアス・モンクの音楽の響きに、宿命的に惹かれた時期があった。モンクのあのディスティンクティヴな――奇妙な角度で硬い氷を有効に鑿削る――ピアノの音を聴くたびに「これがジャズなんだ」と思った。それによって暖かく励まされさえした。……モンクの音楽は頑固で優しく、知的に偏屈で、理由はよくわからないけれど、出てくるものはみんなすごく正しかった。……> (新潮文庫版 P.156-157)
ディスティンクティヴ distinctive : 独特な、特徴的な
村上春樹さんの小説は、残念ながらほとんど読んでいないのだけれど、ジャズを題材にした文章は好きだ。
そんなわけで、このちいさな一冊は私の愛読書になっている。
読んでいると、むしょうにジャズのレコードを聴きたい気分になってくるのだ。
村上さんの推奨盤ではないが、こんなレコードがあったのでひさしぶりにターンテーブルにのせて聴いてみた。
村上さんのように「ワイン片手にソファーに座り」というわけにはいかず、コーヒーを淹れて飲みながらだけれど。
"MULLIGAN Meets MONK"
Thelonious Monk and Gerry Mulligan
RIVERSIDE RLP 1106
New York, August 12 and 13, 1957
(日本盤 ビクター 1975年)
GERRY MULLIGAN, baritone sax
THELONIOUS MONK, piano
WILLBUR WARE, bass
SHADOW WILSON, drums
B面一曲目、マリガンが作曲した「デサイデッドリー DECIDEDLY」がいい。
ふたたび村上さんの言葉を借りれば、「マリガンの紡ぎ出すトーンは懐が深く、優しい」。
聴いているこちらを、ゆったりとくつろがせてくれる。
管楽器のはいったモンクの演奏もいいな、と思いながら、もう一枚ひっぱりだして聴いている。
"BRILLIANT CORNERS" THELONIOUS MONK
RIVERSIDE RLP 12-226
New York, December 17 and 23, 1956
(日本盤 ビクター 1976年)
THELONIOUS MONK, piano
ERNIE HENRY, alto sax
SONNY ROLLINS, tenor sax
OSCAR PETTIFORD, bass
MAX ROACH, drums
CLARK TERRY, trumpet
PAUL CHAMBERS, bass
なんといっても、ソニー・ロリンズのテナーとマックス・ローチのドラムスが光っている。
B面一曲目、モンクが奏でるチェレスタの響きがかわいらしい。
最後の曲、「ベムシャ・スイング」にさしかかれば、もうごきげんだ。
ジャケットがいいな。
CDでは味わえない、レコードのよさというものがある。
こんなことなら、若い頃にもっとたくさんレコードを買っておけばよかった。
ついでだが、そして、これまでさんざん書いたことだが――『ポートレイト・イン・ジャズ』 のCD二枚もいい。
このオムニバス・アルバムは、いまや私の愛聴盤となっている。
レコードだったらもっとよかったのに。
Portrait in Jazz
selected by Makoto Wada
and Haruki Murakami
(左)Sony Records SRCS 8680
1998年 2400円(税別)
(右)POLYDOR POCJ 1600
1998年 2718円(税別)
「ジャズがほんとうに好きな二人がつくったとっておきのアルバム」 (CD帯より)
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