【山】【読】沢木耕太郎 「凍」
今日の東京新聞夕刊には大きな活字が躍り、そのとばっちりをうけて、山野井さんの連載は三面に追いやられてしまった。
一面のニュースについて、私の感想は「いいよなあ」というものだ。
あの人たちは、辞めりゃ済むけど、俺たちはそうそう簡単に辞められないもの。
それはさておき。
沢木耕太郎 『凍』 新潮社 2005年刊
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期待をはるかに超えるおもしろさだ。
山野井泰史・妙子夫妻がよく描かれている。
さすがに沢木耕太郎の筆はすごい。
YouTubeでちょっとだけ見た夫妻の姿によって、妙子さんも凍傷で手足の指を失っていることは知っていたが、手の指は第二関節から十本すべて、足の指は二本を残して八本すべて、とは驚いた。
そんなことがあっても、あたらしい目標をつくって登攀を続けるのは、根っから山が好きだから、ただそれだけだという。
泰史さんは、いわゆるピークハンターではないから、ヒマラヤの八千メートル峰というだけで登攀するのではなく、じぶんが登りたい山(岩壁)だけに挑戦し続けている人だ。
沢木さんのこの本を読んでいると、夫妻の出会い、結婚にいたる経緯なども詳しく描かれていて興味ぶかい。
つくづく、いい夫婦だな、と思う。
奥多摩での質素な生活ぶり知るにつけ、この夫妻にますます好感をもつようになった。
この本で唯一残念なのは、ギャチュン・カンの地図が掲載されていないため、地理的な位置関係がイメージしにくいことだ。
ギャチュン・カン峰は、エヴェレスト(別名サガルマータ、チョモランマ)のすぐ近くにある。
標高7952メートルで8000メートルにわずかに足りないことと、アプローチの難しさから、登頂しようとする登山家はほとんどいないらしい。
しかし、山野井泰史さんは、この山に魅せられてその北東壁の単独登攀に挑む。
結果的には、北東壁では敗退し、北壁に切り替えて夫婦二人で登るのだが……。
<……日本において山野井は、一般的にはほとんど無名と言ってよかった。山岳関係の雑誌に登山の記録を載せることはあっても、積極的にテレビや週刊誌に出ることはなかった。それは……登山の費用のすべてを自分で賄っているため、名前を売ってスポンサーを見つける必要がなかったからでもある。ただ、自分の好きな山を好きに登ることができさえすればよかったのだ。>
<そうした山野井にとって、八千メートルという高さはヒマラヤ登山に必須のものではなかった。八千メートル以下でも、素晴らしい壁があり、そこに美しいラインを描いて登れるなら、その方がはるかにいいという思いがあった。>
(本書 第一章 ギャチュンカン P.24-25)
中身の濃い本で(活字もぎっしり詰まっている)、まだ三分の一までしか読みすすんでいないが、いい本だ。
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