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2011年4月13日 (水)

【読】読了、吉村昭「三陸海岸大津波」

吉村昭さんの『三陸海岸大津波』を、今日、読み終えた。

今度の震災直後、一時、入手困難になっていたが、今は書店に平積みされている。
初版は1970年7月、中央公論社から出版された。
(原題 『海の壁――三陸沿岸大津波』)
その後、1984年8月に中公文庫。
2004年3月に文春文庫から。

私が手に入れたのは、文春文庫の第8刷で、2011年4月1日発行となっている。
3月11日の震災の後、急遽増刷されたのだろう。

明治29年の津波、昭和8年の津波、チリ地震津波(昭和35年)、の三章からなる。
三陸海岸を襲った、これら三回の大津波が、事実として淡々と語られている。
吉村さんならではの、緻密な調査に基づいた「記録文学」である。

「記録に徹した吉村氏の筆致の向こうから立ちのぼってくるのは、津波で死んだ人たちの声や、生き残ったとしてもなにも語らぬままこの世を去った人たちの声である」
(作家 高山文彦氏による巻末解説)

明治29年の津波
明治29年6月15日(陰暦5月5日、端午の節句)の大津波は、三陸海岸一帯に甚大な被害をもたらしている。

―Wikipediaより―
明治三陸地震(めいじさんりくじしん)は、1896年(明治29年)6月15日午後7時32分30秒に発生した、岩手県上閉伊郡釜石町(現・釜石市)の東方沖200km(北緯39.5度、東経144度)を震源とする地震。M8.2~8.5という巨大地震であった。
地震後の津波が本州観測史上最高の遡上高である海抜38.2mを記録するなど津波被害が甚大だったこと、および、この津波を機に、明治初年にその名称が成立したあとも、行政地名として使われるのみで一般にはほとんど使われていなかった「三陸」という地名が知られるようになり、また「三陸海岸」という名称が生まれたことで知られる。
人的被害
死者:2万1915名(合計・2万1959名→北海道:6名、青森県:343名、岩手県:1万8158名、宮城県:3452名)
行方不明者:44名 負傷者:4398名
物的被害
家屋流失:9878戸
家屋全壊:1844戸
船舶流失:6930隻
その他:家畜、堤防、橋梁、山林、農作物、道路など流失、損壊

昭和8年の大津波
昭和8年3月3日(この日は奇しくも雛祭り)の大津波も、釜石の東方で起きたマグニチュード8.1の地震がもたらしたもの。
明治の大津波の経験から年月を経ていたこともあり、予想外の事態だった。

「この地震による被害は、死者1522名、行方不明者1542名、負傷者1万2053名、家屋全壊7009戸、流出4885戸、浸水4147戸、焼失294戸に及んだ」 (Wikipediaによる)

チリ地震津波
昭和35年5月24日未明。
この時は、気象庁が、前日に発生した南米チリの大地震を観測し、それによって起きた津波が太平洋上にひろがってハワイにまで達したことを知っていた。
にもかかわらず、日本の太平洋沿岸に来襲することまでは予知できなかった。
三陸沿岸の人たちにとって、突然の大津波の来襲だった。

日本近海の地震が起こした津波とはちがい、それは、ゆっくり大きなうねりでやってきた。
体験者のことばによれば、「のっこのっこ」とやってきた。
まさに、寝耳に水の状態だった。

「この津波は、三陸海岸全域を襲った。各市町村では、……地震をともなわない奇妙な津波に驚かされた。津波に対する防潮堤等の施設のために人命の損失は、明治二十九年、昭和八年の大津波を下廻ったが、それでも大きな被害を各地にあたえた。岩手県下だけでも死者61名、……」
(本書 P.159-160)

平成23年3月11日
過去何度も大津波に襲われた経験から、大きな防潮堤をつくるなど対策をうっていたにもかかわらず……。
今回の大津波の猛威は、これまで誰も想像できなかった規模だろう。
著者の吉村さんでさえ、ここまでの事態は考えていなかったのではないだろうか。

福島の原発事故もそうだが、これまで、ほとんどの人が考えてもみなかった事態が、今起きている。
もっともっと「最悪の事態」を想定しておくこともたいせつだと感じた。
それほど自然の猛威は人知を超えるものだと。

 

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