【読】池澤夏樹さんの声
午後、車で外出。
小雨が降っていたが、車に乗っているうちに雨はあがった。
いつも聴いているTBSのラジオ番組、「久米宏 ラジオなんですけど」。
2時からのゲストコーナー(今週のスポットライト)は、池澤夏樹さん。
30分間、池澤さんの話を聴いた。
めずらしく、久米宏も本音でしゃべっていた。
(オリンピック誘致には反対、先の見えない原発は廃止、など)
久米宏 ラジオなんですけど
http://www.tbs.co.jp/radio/kume954/index-j.html
ゲストコーナー(スポットライト)
http://www.tbs.co.jp/radio/kume954/guest/index-j.html
このコーナーのスポンサーは朝日新聞社。
池澤さんが朝日に連載している縁で出演したらしい。
そういえば、池澤さんの声を聴くのは、はじめてかもしれない。
思っていたより高い声。
理由はないが、もっと低音の人だと思っていたので、ちょっと意外だった。
もの静かで落ち着いた話しぶりに聴き入った。
この国の絶望的な状況を、淡々と語っていた。
以下、池澤さんの話と、私の思いがごっちゃになっているが――
政治というものの「面倒くささ」。
経済活動が持つ「怪物」じみた面――限りない欲望、限りない拡大。
長い「進化」の過程で私たちが獲得した「頭脳」とか「知恵」といったものが、人類にとって、いまや「軛(くびき)」となっていないか?
人類が生み出し続ける技術や便利さによって、私たちはほんとうにしあわせになったのか?
ひょっとしたら、われら人類は「馬鹿」なのかもしれない――とまで、池澤さんは言う。
このまま走り続けていたら、人類はいずれ滅亡するしかないだろう、とも。
池澤さんの「持論」とも呼ぶべき内容だったが、なんだか悲しいような、淋しいようなきもちになってきた。
でも、そうなんだよな。
池澤さんの言うとおりなんだ。
オリンピック――
7年も先の東京オリンピック開催が決まったといっては浮かれている、異常さ。
ばかでかい国立競技場を作るというが、オリンピックが終わったら何に使うのか。
原発――
原発が生み出す核廃棄物の処理が簡単ではないことを、誰もが知っているはずなのに、目をそむけているのだろう。
止まらない汚染水問題は、人間の体でいえば出血が止まらない状態――と、池澤さん。
「完全にコントロールされている」と発言した本人が、そんなことを信じていない――と、私は思うのだが、そう発言せざるを得ないのが政治の世界――と、池澤さんは言う。
フクシマ――
いまや廃墟と化した原発地域は、この先ずっと長いあいだ、人が住めない土地になってしまった。
これは、とんでもないことではないのか。
竹島や尖閣諸島が日本の領土だと騒ぐなら、それよりずっと広い国土が失われてしまったことを言わないのは、なぜか?――と、池澤さん。
いやなこと、不安なことから目をそらして、「景気回復」だの、「経済成長」だのと、幻想をばらなく。
異様な喧噪は、この国の政治家たちがもたらしたものだが、多くの国民はそれに煽られている。
いや、煽られていると思っていなくて、なんとなく「良くなりそうな」気分が蔓延しているだけなのか。
池澤さんの指摘は、いちいちもっともで、こういうセンスを「コモンセンス(良識)」と呼ぶのだろう。
私も、そういう「あたりまえ」の感覚を忘れないようにしよう。
そんなことを考えながら、車を運転していた午後だった。
池澤夏樹さんの最近の著作をいくつか――
『春を恨んだりはしない 震災をめぐって考えたこと』 中央公論新社 2011年9月
被災地の肉声、生き残った者の責務、国土、政治、エネルギーの未来図。旅する作家の機動力、物理の徒の知見、持てる力の全てを注ぎ込み、震災の現実を多面的にとらえる類書のない一冊。
[目次]まえがき、あるいは死者たち/春を恨んだりはしない/あの日、あの後の日々/被災地の静寂/国土としての日本列島/避難所の前で/昔、原発というものがあった/政治に何ができるか/ヴォルテールの困惑
彼方の光に向かい歩を進めるには。詩人の耳、物理の徒の知見、旅する作家の機動力で、震災の全体像と日本の未来を多角的に見る。
『終わりと始まり』 朝日新聞出版 2013年7月
何かを終わらせ何かを始めるためには、一つの積極的な意志が要る。2009年から2013年まで朝日新聞好評連載。現実の深奥をとらえ、深い思索を積み重ねた廉直な名コラム48。
[目次]ギャップ・イヤー/イラク戦争の後始末/言葉の生活感/空中の視点とエコロジー/多文化の実現とウレシパ/三千人のダンサー/上から降る言葉/デジタル化で失ったもの/普天間移転問題の打開案/勝利の快感と天才の誘惑 ほか
沖縄、水俣、東日本大震災の問題にかかわり、発言が注目される小説家が、原子力優遇策への批判、震災後などの心の傷にふれる。
『文明の渚』 岩波ブックレット 2013年3月
あの東日本大震災で、私たちが学んだことは何だったのでしょうか?ここ数十年の文明の発達があまりに急速であったから、つい自分たちは無敵だと考えて、やりたい放題やってきた。でもそうではないのです。それがよくわかった。私たちは反省し、諦め、覚悟した上で、なおさりげなく、日常を送らなければならないのです。―2年間、被災地を歩き続け、被災者とともに泣き、怒った作家の、メッセージ。
聖書に関する本は、知らなかった。
『静かな大地』は、私の愛読書。
| 固定リンク | 0
「【読】読書日誌」カテゴリの記事
- 【読】2026年8月に読んだ本(読書メーター)(2026.09.02)
- 【読】2026年7月に読んだ本(読書メーター)(2026.08.01)
- 【読】2026年6月に読んだ本(読書メーター)(2026.07.01)
- 【読】2026年5月に読んだ本(読書メーター)(2026.06.01)
- 【読】2026年4月に読んだ本(読書メーター)(2026.05.01)
「池澤夏樹」カテゴリの記事
- 【読】2025年8月に読んだ本(読書メーター)(2025.09.01)
- 【読】池澤夏樹さんは、村上春樹をどう評価しているのかな?(2025.08.31)
- 【読】2025年7月に読んだ本(読書メーター)(2025.08.01)
- 【読】ガルシア・マルケス『百年の孤独』文庫版が出た(2024.09.23)
- 【読】2024年6月に読んだ本(読書メーター)(2024.07.01)


コメント