【読】2025年12月に読んだ本(読書メーター)
船戸与一さんの初期作品から、おもに未読の小説を読み続けている。
12月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4595
ナイス数:152
日本推理作家協会賞受賞作全集 59 (双葉文庫 ふ 7-3)の感想
この下巻は、いっきに読み終えた。物語の構成がよく練られていて、さまざまな伏線が生きている。コロンビアとベネズエラ、それにチリの反体制運動(民族解放戦線)を背景に、ふたりの日本人の流れ者の動きが、この作品でも中心になっている。「涸れた油田地帯」での最後の戦闘場面は圧巻。1980年代に書かれた「南米三部作」は、評判どおりの傑作だったと、あらためて思う。三作のなかでは『山猫の夏』文庫版の北上次郎の解説が、いい。
読了日:12月02日 著者:船戸 与一
シリアの家族の感想
縁あって5年ほど前から応援している写真家・小松由佳さんの、『人間の土地へ』(2020年)に続く3冊目の新刊。前作以降、小松さんの活動を見守ってきた。本書は第23回開高健ノンフィクション賞を受賞した力作。2011年からのシリア内戦も2024年12月8日のアサド政権崩壊(アサドのロシア亡命)によって歴史的な転機を迎えた。当事者(シリア人の夫を持つ)と写真家(取材者)としての両方の目から、激動のシリアと、故郷を追われたシリア難民(夫もその一人)の姿が、親しみやすい文章で描かれている好著。多くの人に読んでほしい。
読了日:12月04日 著者:小松 由佳
〈全条項分析〉日米地位協定の真実 (集英社新書)の感想
何かと取沙汰される「日米地位協定」(正式名は長いが、わかりやすく言うと「日米間の相互協力及び安保条約第六条に基づく基地と米軍の地位に関する協定」)。日米安全保障条約の運用を定めるこの協定が、これほど詳細なものとは知らなかった。日米関係の実態を筆者は「占領延長型」「有事即応型」「国民無視型」と喝破する(あとがき)。日本に駐留する米軍は、いまややりたい放題。日本政府も惜しむことなく金を出し放題。防衛費に含まれない予算を米軍のために使っていることも知った(辺野古の軟弱地盤改良費用もその一つ)。なんとも情けない。
読了日:12月07日 著者:松竹 伸幸
酒を主食とする人々: エチオピアの科学的秘境を旅するの感想
敬愛するノンフィクション作家・高野秀行さんの近刊。高野さんの新刊はすぐに買うことにしていて、この本もしばらく本棚にあった。期待を裏切らない面白さ。エチオピア南部の「幻の酒飲み民族」をテレビ番組の取材で訪れたときのレポート。世界の辺境を歩きまわり、現地の食べ物・飲み物を何でも試してきた高野さんもびっくりするほどの「酒を主食とする人々」には驚愕。エピローグに綴られているように、「飲酒が健康によくない」という考え方は、どうやら「先進国」の人々の偏見らしい。酒より体に悪い物を、私たちは日々、摂取しているのだろう。
読了日:12月12日 著者:高野秀行
世界のシワに夢を見ろ!〔小学館文庫〕 (小学館文庫 た 9-1)の感想
高野秀行さんの未読本落穂ひろい。本棚に眠っていた本だが、たぶん初読。親本(単行本)は2005年9月刊行。コミック誌連載。それまでの高野さんの辺境(世界のシワと呼ぶ)歩きからさまざまなエピソードを披露。それもまた高野さんの「落穂ひろい」と言える。<単行本未収録のエピソードを七篇追加、あまりのくだらなさに著者自ら「こんなバカな本は最後にしたい」と嘆く、爆笑探検エッセイ完全決定版ついに文庫で刊行‼>と、カバー裏にある。この本でも、いつもの”高野ブシ”炸裂。
読了日:12月12日 著者:高野 秀行
横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁 (角川新書)の感想
緻密な論考なので(裏付けデータが細かい)読むのに苦労したが、乱暴にまとめれば「米軍は日本でやりたい放題」「治外法権がいまだに続いている」ということ。翁長元沖縄知事が言ったように「日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」。考えたくないことだが、首都圏で米軍機かオスプレイの大きな事故でも起きない限り、「横田空域」の真下で生活している私たちは、危機意識を持たないのかもしれない。そういえば、私の住んでいる地域の上空にも、大型輸送機が騒音を残して飛び回っている(自衛隊機かもしれないが)。
読了日:12月15日 著者:吉田 敏浩
新装版 カルナヴァル戦記 (講談社文庫 ふ 30-17)の感想
船戸与一さんの古い小説の落穂拾い。この本は、たぶん初読。少し前に読んだ『山猫の夏』(講談社文庫/1995年刊)の解説で北上次郎(目黒孝二)さんが、船戸さんの短編集もいいと書いていたが、ブラジルを舞台とするこの短編集も傑作。「冒険小説」の枠を超え、過去の歴史や現代の民族運動・紛争を<叛史>の視点から描き切る船戸さんの力量は、さすが。人によって評価が分かれるのが船戸作品なのだが、私は好きだ。他の短編集『祖国よ友よ』『銃撃の宴』も入手困難だが(ネットでなら手に入る)、いずれ読んでみたい。
読了日:12月17日 著者:船戸 与一
緑の底の底 (徳間文庫 ふ 3-12)の感想
船戸さんの落穂拾い。過去にいちど(単行本で)読んでいるのかもしれないが、憶えていない。表題作「緑の底の底」は、ラスト、あっと驚くどんでん返しに感心した。やられたぁ、という感じ。秀作だと思う。併録されているもう一篇の「メビウスの時の刻」は、構成がややこしく、読むのに疲れたが、これもまた巧みなトリックが仕込まれていて、船戸流ミステリーなのだろう。
読了日:12月20日 著者:船戸 与一
黄色い蜃気楼 (双葉文庫 ふ 7-1)の感想
これも船戸作品の落穂拾い。ずいぶん前に一度読んでいるかもしれないが、忘却の彼方。構成に工夫が凝らされていて、ぐいぐいと引き込まれ、夢中になって読んでしまった。文庫解説の香山二三郎氏の指摘によれば、《「硬派」的ヒーローの流離譚を主流にした物語系》に属する作品だという。もう一方は、『山猫の夏』から『砂のクロニクル』『蝦夷地別件』へと続く《革命譚主流の物語系》――この指摘は興味深い。それにしても、ひさしぶりに味わっている船戸ワールドが、これほど味わい深いものだったとは。「落穂拾い」は、とうぶん続きそうだ。
読了日:12月22日 著者:船戸 与一
祖国よ友よ (徳間文庫 ふ 3-6)の感想
船戸与一さんのデビュー後2冊目の短編集。この時期の船戸作品は読んでいなかったので、初読。北上次郎(目黒孝二)氏が『山猫の夏』(1995年刊講談社文庫)の解説で「船戸与一の短編が好きだ」として『銃撃の宴』(未読)『カルナヴァル戦記』(先日読了)とともにあげていた短編集だ。なるほど、この時期から「船戸ワールド」――それは「《世界》そのものを、あるいは個々の地域の状況が連動して成る世界の《現代史》そのものを描」く(本書の解説:岡村隆の指摘)――の構築が始まっていたのだな。収録されている4篇は、どれも面白い。
読了日:12月24日 著者:船戸 与一
群狼の島 (徳間文庫 ふ 3-5)の感想
1979年『非合法員』でデビューした船戸さんの3冊目(1981年刊)。これも初読。舞台はマダガスカル。船戸さんらしく「西欧近代史観とはまったく異質のところで想像力を行使し」て(井家上隆幸氏の文庫解説)力強く語られる冒険小説。初期の頃から、このようにみごとで隙のないストーリテリングの骨太の作品を書き続けていたことを再認識した。主人公はじめ登場人物たちが生き生きしている。次は、評価の高い『夜のオデッセイア』(いちど読んでいるかもしれないが憶えていない)を読んでみよう。船戸作品の落穂拾いは、まだまだ続きそうだ。
読了日:12月27日 著者:船戸 与一
夜のオデッセイア (徳間文庫 140-3)の感想
船戸与一作品(初期)の”落穂拾い”が止まらない。平岡正明氏の文庫解説(これが私にはうれしい)によれば、平岡氏の<周囲(まわり)でとびきり評判がいい>というが、よくできた冒険小説。<船戸アクションの仕掛(ドラマツルギー)>には舌を巻き、最後まで楽しめた。楽しいだけじゃなく、1980年のアメリカ合衆国を取り巻く世界情勢が巧みに織り込まれている。豊浦志朗名義の『叛アメリカ史』(ちくま文庫)も手元にあるので、読み直してみたくなった(既読かもしれないが、内容はおぼろ)。次は1982年刊の『蛮賊ども』にとりかかろう。
読了日:12月30日 著者:船戸 与一
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