【読】2026年2月に読んだ本(読書メーター)
2月も船戸与一さんの”落穂拾い”と称する読書が続いている。
初読・再読とりまぜて、ほぼ出版順に、22作品目(28冊目)まで読んだところ。
今は、『夢は荒れ地を』文春文庫を読んでいる。
2月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:4250
ナイス数:104
午後の行商人 (講談社文庫 ふ 30-14)の感想
再読かもしれないが内容を憶えておらず、新鮮だった。船戸作品の落穂拾い・初読・再読の、これが22冊目。タイトルから予想できない復讐譚。メキシコ南東部チアパス州を中心に繰り広げられる活劇。物語の底流にはサパティスタ民族解放軍の反政府活動があり、これも船戸さんらしい”叛史”史観が色濃い。語り部の「ぼく」と、行商人「タランチュラ」、その縁人「マリア」、途中から登場するサパティスタ民族解放軍の「オテック」、彼らの協力者や敵役、それぞれが魅力的。巻頭のメキシコ東南部地図がありがたい。まだまだ船戸作品を追う読書は続く。
読了日:02月01日 著者:船戸 与一
蟹喰い猿フーガ (徳間文庫 ふ 3-11)の感想
ずいぶん前に一度読んでいるかもしれないが、憶えていない。軽快洒脱な「コンゲーム小説」(詐欺師の話)。語り部(わたし)を含む主要人物たちがどれも魅力的。最後に3人、4人と欠けてしまうのが淋しいが…。「世の中に重要なことなんかほとんどない。…しかし、これは重要なことだ。…何が起ころうとやらなきゃならない」と決意するエル・ドゥロがかっこいい。黒人少年メッキーも。船戸さんは、当時の湾岸戦争やニューヨークのホームレスの状態なども巧みに織り込んでいて、さすが。プロレスにも詳しそうだ.
銃撃シーンが少ないのに救われる。
読了日:02月05日 著者:船戸 与一
小さな引揚者: 写真集の感想
親しくしている女性写真家(小松由佳さん)に教えていただき、この著者を知った(近々、この著者をテーマにトークイベントがある)。1904年生まれの著者は、敗戦・自身の引揚げ後の1946年7月、あらためて旧満州に渡って引揚者たちの苦難を写真に収めた。二眼レフカメラを隠し持って。子どもたちにスポットをあてたモノクロ写真が多数。どれも胸を打つ。この時期に朝鮮半島の北から苦労して脱出した松延(五木)寛之少年のことも連想した。筆舌に尽くしがたい苦難のようすが迫ってくる写真集。著者は登山家でもあった(1993年没)。
読了日:02月07日 著者:飯山 達雄
かくも短き眠りの感想
中古本が手に入らず図書館本で読んだ。憶えていないが、たぶん初読。毎日新聞夕刊連載(1994年10月~95年12月)だったことを知った。残念ながら、船戸作品のいつもの”勢い”が感じられなかった。主人公「わたし」と「少佐」呼ばれるかつての傭兵隊長・ビッグフォードとの過去の関りがはっきりと描かれていないこと、「わたし」の元恋人クラウディアへの拘りにも説得力が薄い。そのあたりがこの小説の瑕疵とも思える。舞台のルーマニア(チャウシェスク政権崩壊後)の政情が複雑だが、現代史の闇に眼を向ける船戸さんらしい作品ではある。
読了日:02月11日 著者:船戸 与一
流沙の塔 上巻 (新潮文庫 ふ 25-6)の感想
再読のはず。初読は20年ほど前だろうか(記録がなく記憶は曖昧)。これはよくできた長編。初読時にも感心した憶えがある。横浜、中国大陸(成都、北京、梅県)、新疆ウイグル自治区(トルファン、ウルムチ)と、舞台のスケールが大きく、登場人物たちの絡み合いも複雑だが、読ませる。どうなる、どうなる、と期待を持たせながら物語が展開し、下巻へ。1998年刊行。91年の『砂のクロニクル』、95年の『蝦夷地別件』に並ぶ船戸作品の傑作だと思う。
読了日:02月14日 著者:船戸 与一
流沙の塔 下巻 (新潮文庫 ふ 25-7)の感想
昨年末からずっと続いている船戸作品”落穂ひろい”の21作目(26冊目)。図書館本。20年ほど前に読んでいたはずなのに、内容はほとんど憶えておらず、新鮮だった。予測不能な結末に仰天。最後に勝ったのは中華人民共和国・中国共産党という巨大な権力機構だった。結末まで一気に駆け抜けるストーリーテリングは、さすが。執筆にあたっての綿密な調査もうかがえる。1990年代船戸作品の傑作。脂の乗っていた時期なのだろう。「芥子に頼るは流沙に塔を築くがごとし」「うえに飛鳥なく、したに走獣なし」…この作品を象徴している。
読了日:02月17日 著者:船戸 与一
緋色の時代 (上) (小学館文庫 ふ 4-2)の感想
今回は時間がかかったが、ようやく読了(文庫で610ページもあった)。たぶん初読。2000年5月出版の『虹の谷の五月』で(遅すぎた)直木賞受賞後、2001年12月の出版。登場人物が多すぎて(ロシア系の名前ばかり)、巻頭の「主要登場人物」リストを見ながら、その関係を追うのがたいへんだ。ひとことで言えば「殺し合い」が日常の物語。ただ、主要な登場人物はアフガン帰還兵(アフガンツィ)とアフガーニ(アフガン戦争に従軍したアラブ志願兵)。ソ連崩壊後のロシアのマフィアたちの驚くべき世界。よくぞ調べたものだと感心する。
読了日:02月23日 著者:船戸 与一
緋色の時代 (下) (小学館文庫 ふ 4-3)の感想
ようやく読了。登場人物たちの関係が複雑で(ロシア風の名前がなかなか覚えられないせいもあって)苦労したが、最後は圧巻。船戸作品には珍しく、若い恋人二人が生き残り、それが酷たらしい殺戮に満ちたこの物語の救いになっている。「緋色の時代」というタイトルの謎も最後に解けて、納得。船戸作品を初期のものから読み直し続けて、これが22作目。こうなったら再読・初読を問わず、ひと通り読破したい気分だ。解説を読みたいために文庫本を探しているが、なかなか入手できないのが困る(図書館本に助けられている)。
読了日:02月26日 著者:船戸 与一
読書メーター
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