3月は、所属団体(小平図書館友の会)のチャリティ古本市があったため、あまり本を読めなかった。
船戸与一作品の「落ち穂ひろい」が続いているが、ちがうジャンルの本(図書館本)も2冊ほど。
3月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:3100
ナイス数:81
夢は荒れ地を (文春文庫 ふ 23-2)の感想
再読。初読は単行本で16年も前(内容を憶えていない)。ストーリー展開が巧みでよくできた長編。ラストまで息つく暇もない展開(読むのに時間がかかったが)。なによりも、重要な主人公の越路修介(ラナ)の魅力が際立つ。修介を追ってカンボジアに来た現職自衛官の楢本辰次の揺れ動く心理もよく描かれているし、クメール人のチア・サミン、カンボジアで地道に活動している丹波明和の姿も生き生きしている。悲惨な児童売買、官民癒着という言葉がきれいすぎるほどのカンボジアの現実の闇だが、ラストにかすかな希望が。これぞ船戸ワールドの傑作。
読了日:03月04日 著者:船戸 与一
はくしむるちの感想
新聞書評欄(2626.2.21東京新聞「著者は語る」)で知り、図書館本を読んでみた。著者は2003年沖縄生まれの新進気鋭の作家。のっけから若者言葉、若者のあいだで流行のサブカルチャー用語がいっぱいで、私には読むのがしんどかったが、なんとか読了。現代沖縄の若者たちの生態(いじめや女子生徒への暴行など)と、過去の沖縄戦の生々しい描写がないまぜになっている複雑な構成。先達の大城立裕や目取真俊らの沖縄文学の系譜を引き継ぐ問題作だとは思う。タイトル「はくしむるち」が読後も謎だが「白紙」「もどき(むるち)」か。
読了日:03月08日 著者:豊永 浩平
老後がめんどくさいの感想
勢古さんの新刊。例によって軽い本(人生論的な)。あいかわらず”八つ当たり”のように、あたりかまわず”バカじゃないか”と言いきる論調には、ちょっと辟易。そうはいっても勢古さん流の「この人を見よ」という人物紹介がいい。そのひとり、医師で作家の久坂部羊の著作は読んでみようかという気になった。勢古さん、数年前に脳梗塞になって救急車で運ばれたという(発症から10時間後だったが、幸い後遺症なし)。人生まさに「運・不運」(勢古さんは運が9割という)。老後(人生)を楽しめ、などクソクラエという考え方には、おおいに同感。
読了日:03月09日 著者:勢古 浩爾
虹の谷の五月 上 (集英社文庫)の感想
再読のはずだが、内容を何も覚えていない。遅すぎる直木賞受賞作、これ以前にもっと優れた作品(『砂のクロニクル』『蝦夷地別件』など)があったのに、と、これまで思っていたが、今回、読み直してみてなかなか面白い作品と感じた。船戸作品には珍しく13歳の少年が主人公というのも新鮮。フィリピン・セブ島の片田舎の集落の人間関係が生々しく描かれている。鼻もちならない嫌な女「クイーン」が登場するが、彼女もそれなりの過去を背負っていて存在感がある。下巻に続く物語の展開が楽しみ。主人公の少年「トシオ・マナハン」の成長ぶりも。
読了日:03月15日 著者:船戸 与一
虹の谷の五月 下 (集英社文庫)の感想
再読のはずだが、これも内容を憶えておらず、新鮮な内容だった。古本が手に入らず図書館本。さすが、直木賞受賞作だけあって、よくできた小説。過酷な体験を通して精神的に強くなっていく主人公の少年「トシオ」、彼が尊敬していた青年の変化、その妹メグとの淡い恋。なによりも「虹の谷」の魅力的なゲリラ、ホセ・マンガハス。少年の祖父と近所のリベルタ婆さん。彼らをとりまく悪党たち。これら登場人物たちが生き生きと描かれている。唯一の日本人ドクターも魅力的。悲劇の結末になだれこむストーリー展開も巧みだ。船戸作品中期の傑作だと思う。
読了日:03月18日 著者:船戸 与一
降臨の群れ 上 (集英社文庫)の感想
図書館本。2010年に単行本で読んでいるはずだが内容の記憶はおぼろで、新鮮だった。読み始めは登場人物が多すぎて、巻頭の「主要登場人物」に助けられた。インドネシア全体とアンボン島の地図にも。単行本は2004年6月の刊行で、今から20年前だが、当時のインドネシアの、いわば内戦の状況がわかって勉強になる。船戸さんの世界観が随所に顔を出す。<グローバリズムってえのは何だかんだと言っても結局アメリカの世界制覇だ。金銭を持ってるやつが好き放題をするってことだ。その結果産み出されるのは大量の難民だよ。>(P.187)
読了日:03月28日 著者:船戸 与一
降臨の群れ 下 (集英社文庫)の感想
下巻はいっきに読了。基本稿が『小説すばる』誌2002年9月号~2004年1月号に連載されたという(文庫の後記)。物語に登場するバリ島のディスコ爆破テロは2002年10月12日に発生しているので、連載開始直後。連載中に、現実の事件を作品に取り込んでいることを知った。さすがだ。インドネシアの複雑な宗教対立・内戦を背景に、船戸作品らしく現地の状況に翻弄される日本人が主役のひとり。文庫発売当時、「東南アジア三部作」と呼ばれていたが(文庫解説)、その後、『蝶舞う館』『河畔に標なく』と続き、五部作になったのだ。
読了日:03月31日 著者:船戸 与一
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