カテゴリー「服部文祥」の25件の記事

2025年12月30日 (火)

【雑】2025年を振り返る

今年2025年も、残すところあと1日。
昨年はさぼってしまったのだが、1年の振り返りをしてみたい。
おもに、音楽ライブやトークイベントへの参加記録。
手帳の記録が頼りだ。

2025年1月

■1月7日(火) 武蔵野プレイス 「地球永住計画」
 服部文祥さんと角幡唯介さん トークイベント

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■1月17日(金) 千歳烏山 「TUBO」
 MOTEL(須藤もん&対馬照)他 ライブ

■1月18日(土) 狛江 「泉の森会館」
 落語会(高山正樹さん主催)
 「狛江寄席」

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2025年2月

■2月9日(土) 犬山 「珈琲ふう」
 ニシカワ meets フォーク ライブ

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■2月13日(水) 新宿 「シアタートップス」
 劇団椿組公演
「キネマの大地 ~さよならなんて 僕は言わない~」

■2月16日(日) 四ツ谷 「Socket」
 小松由佳さん 報告会(トークイベント)

■2月27日(木) 武蔵野プレイス 「地球永住計画」
 小松由佳さん トークイベント

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2025年3月

■3月20日(木)~23日(日)
 小平図書館友の会 チャリティ古本市

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■3月27日(木)
 自動車免許 高齢者講習受講

■3月29日(土) 千歳烏山 「TUBO」
 西川郷子・よねやまたかこ ライブ

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2025年4月

■4月4日(金) 祐天寺 「FJ's」
 白崎映美(上風 しゃんぷう) ライブ
 白崎映美・西川郷子・猪野陽子

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■4月19日(土) 五反田
 中学時代の同級生2名に会う

■4月27日(日) 元住吉 「キルクス」
 ニシカワ meets フォーク ライブ

2025年5月

■5月16日(金) 武蔵野プレイス 「地球永住計画」
 小松由佳さん他2名 トークイベント

■5月31日(土) 国分寺 「giee」
 MOTEL & スーマー ライブ

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2025年6月

■6月7日(土) 小平市中央図書館 視聴覚室
 小平図書館友の会主催講演会 「宇宙の天気とその周辺」
 情報通信研究機構(NICT) 齊藤慎司さん

■6月8日(日) 目白 「自由学園 明日館」
 上風(しゃんぷう) ライブ
 白崎映美・西川郷子・猪野陽子

■6月23日(月)~25日(水)
 検査入院

2025年7月

■7月18日(金) 柏 「Studio WUU」
 上風(しゃんぷう) ライブ
 白崎映美・西川郷子・猪野陽子
 ゲスト:渡野辺マント

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2025年9月

■9月1日(月)~13日(土)
 入院・手術

■9月26日(金)~30日(火) 北海道(小樽)旅行

■9月28日(日) 小樽 「GOLD STONE」
 山崎ハコさん ライブ
 ゲスト」原田喧太さん

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2025年11月

■11月15日(土) 高円寺 「JIROKICHI」
 上風 ライブ

2025年12月

■12月6日(土) 西新宿 「OM SYSTEM GALERRY」
 宇井眞紀子さん 写真展 (ギャラリートーク)

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■12月7日(日) 高円寺 「稲生座」
 MOTEL他 ライブ

■12月8日(月) 武蔵野プレイス 「地球永住計画」
 吉田敏浩さん トークイベント

■12月20日(土) 早稲田大学 「ワセダギャラリー」
 小松由佳さん 写真展
 トークイベント (ゲスト:安田純平さん)

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■12月21日(日) 鷹の台 「アドバルーン商会」
 岡崎武志さん トークイベント

■12月25日(木) 高円寺 「JIROKICHI」
 木村充揮さん ライブ
 ゲスト:山崎ハコさん

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2025年1月 8日 (水)

【雑】地球永住計画のトークイベント

昨日(12/7)、武蔵境の武蔵雄プレイスで、関野吉晴さんの「地球永住計画」のトークイベントに参加した。

地球永住計画 公開講演 『現代の冒険者たち』
サバイバル登山家とサバイバル探検家と旧石器時代を旅する探検家がサバイバルについて語り合う
角幡唯介×服部文祥×関野吉晴

【講演者】
角幡唯介(ノンフィクション作家・探検家)
服部文祥(サバイバル登山家)
関野吉晴(探検家・医師)

武蔵野プレイス4階 フォーラム

https://sites.google.com/site/chikyueiju/gakuen/boukensha/kakuhatto2025

この三人の読者で、ファンなので、楽しみにしていた。
会場は120人の定員いっぱいで、三人のとりとめのないトークを楽しんでいた様子。

角幡さんが、いちばんたくさん喋っていたが、興味ぶかく面白い話が聴けた。

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会場入り口で、服部文祥さんの新刊が販売されていて、サインをいただけるとのこと。
まだ持っていない本だったので、購入してサインをいただいた。

服部文祥 『今夜も焚火をみつめながら』 モンベルブックス 2024/11/28
https://amzn.to/4gMe9Mp

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角幡さんは、昨年11月『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』を上梓。
私はすぐに購入し、1月2日から読み始めて、イベントの日までに読み終えようとがんばってみたが、まだ半分くらいまでしか読んでいない。

角幡唯介 『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』 新潮社 2024/11/20
https://amzn.to/4fQsAhp

角幡さんは、今月12日から、またグリーンランドへ渡るそうだ。

角幡さんのツイッター(X)に、こんな投稿があった。

角幡唯介
@kakuhatayusuke
1月4日
明日は冒険研究所書店でイベントです。犬橇で旅をした人物としてはラスムッセンが植村直己を上回る史上最大の巨星でしょう。私も本を読んでは、彼のような旅をしたい、といつも刺激を受けてます(しばしば獲物が見つからず餓死寸前に陥るという旅ですが)。興味のある方はぜひご視聴ください。

このイベントには参加できなかったが、ラスムッセンという人物に興味がわいた。
調べてみると、クヌート・ラスムッセンという人だった。

Wikipediaより
クヌート・ラスムッセン(Knud Johan Victor Rasmussen、1879年6月7日 - 1933年12月21日)はグリーンランドの極地探検家で、人類学者である。「エスキモー学の父」と呼ばれる。北西航路を始めて犬ぞりで横断した。グリーンランドやデンマーク、カナダのイヌイットの間では、よく知られた人物である。

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このラスムッセンについて書かれた本を探したが、日本語に翻訳されたものはみつけられなかった。
角幡さんはたぶん、英文の原書を読んだのだろう。

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2024年12月30日 (月)

【読】角幡唯介さんの新刊『地図なき山』

角幡唯介さんのファンなので、新刊が出るとすぐに買う。

今年11月20日に出た新刊が、これ。

『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』
新潮社 2024/11/20 281ページ

https://amzn.to/4iXivSh

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Amazonより

地図がない――それだけで日高の山は「極夜」を超える「魔境」と化した。
グルメサイトや地図アプリの検索結果をなぞるだけの日常で生は満たされるのか。情報に覆われた現代社会に疑問を抱いた著者は、文明の衣を脱ぎ捨て大地と向き合うために、地図を持たずに日高の山に挑む。だが、百戦錬磨の探検家を待ち受けていたのは、想像を超える恐るべき混沌だった。前代未聞の冒険登山ノンフィクション。
<目次>
はじめに――よりよく生きるために私は地図を捨てた
第一章 旅立ちの記
二〇一七年夏の記録 その一
第二章 漂泊論〜地図なし登山への道
第三章 裸の山に震え慄く
二〇一七年夏の記録 その二
第四章 新しい道を見つける
二〇二〇年夏
第五章 巨大な山に登る
二〇二一年夏
第六章 ラストピークをめざす
二〇二二年夏
あとがき

まだ読んでいないが、きっと面白いはず。
地図をいっさい見ず、山に飛び込んで、
自分の五感と経験だけを頼りに登り、歩く。
そんな山行記録が面白くないはずがない。
まして、あの「極夜行」(北極圏をナビに頼らず踏破)を成し遂げた角幡唯介さんだ。

ところで、探検家・医師の関野吉晴さんが主宰する「地球永住計画」というプロジェクトがある。

2025年1月7日、JR中央線武蔵境駅前の武蔵野プレイスで、服部文祥さん(サバイバル登山家)と角幡唯介さん(ノンフィクション作家)を招いて、関野さんとの鼎談がある。私も行く予定だ。


地球永住計画ウェブサイト
https://sites.google.com/site/chikyueiju/

地球永住計画 公式ウェブサイト
.....project to stay alive on earth official website - 角幡唯介・服部文祥

https://sites.google.com/site/chikyueiju/gakuen/boukensha/kakuhatto2025

地球永住計画 公開講演 『現代の冒険者たち』
サバイバル登山家とサバイバル探検家と旧石器時代を旅する探検家がサバイバルについて語り合う
角幡唯介×服部文祥×関野吉晴
【講演者】
角幡唯介(ノンフィクション作家・探検家)
服部文祥(サバイバル登山家)
関野吉晴(探検家・医師)
【日時】
◆ 会場講演 2025年1月7日(火) 19時 講演開始
◆ オンデマンド収録配信 2025年1月25日(土) 20時 配信開始
※ 講演時間120分で終了の予定ですが、若干延長されることがあります。
※ 途中入場、途中退席、トイレ休憩など問題ありませんので各自自由に行ってください。
※ オンデマンド収録配信はYoutube配信サービスによる限定収録配信です。
※ 収録配信動画は配信日より3日間視聴可能です。
【会場】
◆ 会場講演
武蔵野プレイス 4階 フォーラム
武蔵野市境南町2-3-18(JR 武蔵境駅 南口スグ)

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2024年8月 1日 (木)

【読】2024年7月に読んだ本(読書メーター)

2024年7月は、2冊しか読めなかった。

椎名誠さんの文庫は、6月末から読み始めたものの、中断が長くなり、ようやく月末に読了。
7月はじめの北海道旅行にも持って行ったのだが…。

 7月の読書メーター
読んだ本の数:2
読んだページ数:505
ナイス数:61

北海道犬旅サバイバル北海道犬旅サバイバル感想
5か月前に読んだばかりだが、わけあって再読。図書館本で読み始め、途中で自腹購入。あらためて面白かったのは、旅の終盤、楽古山荘から襟裳岬までの往復の途中、想定外のカンパ(ファンからの食糧カンパと、謎のおじさんからの少なからぬ現金カンパ)に動揺しながら、それまでの無銭サバイバル旅とのギャップに悩む姿だった。お金の使い道に迷う自分を面白がっているようなところに好感が持てる。服部流サバイバルの集大成ともいえる旅の記録は、貴重だ。旅程の地図が役立つ。惜しむらくはナツとのカラー写真が(カヴァー写真以外に)欲しかった。
読了日:07月20日 著者:服部文祥

すばらしい暗闇世界 (新潮文庫 し 25-43)すばらしい暗闇世界 (新潮文庫 し 25-43)感想
シーナさんらしい軽妙なエッセイ集。ナショナルジオグラフィック(通称ナショジオ)の特集をたくさん引いているのも興味深い。「生肉族の誇り」と題された文章で「エスキモー」がけっして蔑称ではないことを知った。エスキモー:生肉を食う人びと――生肉を食らう奴ら、という差別意識に満ちた呼称と思われていた――この呼称の何が悪い、というくだり。彼ら自身、自らをエスキモーと呼ぶ。生肉が本当に好きだし、そのことに誇りさえ持っている、とシーナさんは言う。森林限界を超える地域で植物からのビタミン摂取ができない彼らの知恵なのだった。
読了日:07月31日 著者:椎名 誠

読書メーター

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2024年7月21日 (日)

再読 服部文祥『北海道犬旅サバイバル』(続々・終)

思いがけず長い投稿になってしまったが、これで終わりにしたい。

服部文祥 『北海道犬旅サバイバル』 (みすず書房、2023年9月)
https://amzn.to/4bWQJAG

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■終盤戦■  (続き)
2019年10月31日~11月25日。
山小屋芽室岳~幌尻岳~ペテカリ山荘~楽古山荘~襟裳岬~帯広空港。375キロ。

■楽古山荘から襟裳岬まで往復。
天気が悪くなり、食料不足も重なって、北海道の南端・襟裳岬まで往復することに意味があるのか迷う。
襟裳岬までに宿泊(野宿)可能なポイントは少なく、焚火を熾すには人目を避けなければならない。焚火を熾すなら、日数の短縮は無理だ。
そこで、突然ひらめいたのは、固形燃料! という発想だった。
楽古山荘に誰かが置いていったもの。
「燃料置くなら食いもん置いとけ」と毒づいた固形燃料を使えば、焚火しなくてすむ。
ただし、食料不足は解決していない。
毎日飲み続けてきたチャイも、茶葉だけは豊富に残っているものの、砂糖とミルクパウダーの残りがわずか。
濃いチャイと薄いチャイを作り分けることに。
鹿だけは、獲ることができた。

■11月17日、襟裳岬へ向けて出発。
山越えの藪漕ぎから林道へ。そこから国道に出る。
郵便局の横の公衆電話で”神のお告げ”(天気予報)をテレフォンカードを使って聞く。

神社の横のガレージに、厳密にいえば不法侵入になるかもしれないと思いつつ、一泊する。

コンビニを目にして、もし100円拾ったら何を買うか、妄想する。
500円硬貨だったら、牛乳と砂糖だな、などと。

メイン道路の交差点に料亭があり、店の裏にまわり込んでゴミバケツを探す。
服部さん、旅の終わりに、かなり逼迫している。
町はずれの住宅街のゴミ箱まで覗いている。
<…運よく燃えるゴミの日だった。捨てたばかりと思われる袋をちょっと持ち上げると、底に溜まった生ゴミの水分にミニトマトが浮かんでいた。一瞬悩んだが、取り出すほどではない。つぎのゴミ袋を持ち上げたとき、目の前の玄関が開き、おじさんがゴミ袋を持ったまま私を見て固まっていた。/「おはようございます」と言い捨てて、走って逃げた。残飯の誘惑に負け、いつのまにか、ひと目を気にしなくなっていた。>(P/215)

■この後、服部さんにとって僥倖ともいえるできごとが続く。
ゴール地の襟裳岬に着き、10分ほど滞在。写真を撮って往路を戻る途中、車が止まって「服部さんですよね?」と。
夫が服部さんのファンで、朝、車から見かけて、頼まれたという女性。
著書にサインをせがまれ、「サインの代わりってほどおれのサインに価値があるとは思っていませんが…」と、食料をせがんでみる。「なんでもいいです。米、麺、餅…」。いったん走り去った女性、その先で追いついてきて、おにぎり、五合ほどの生米、カップ麺数種類、羊羹、パンの缶詰、リンゴ、アルファ米…と、夢のような食料の山が手に入る。
足取りも軽く幌満近くの神社のガレージに帰っていった。

■その途中、観光案内所の「休憩所コーヒー無料」の掲示にひかれて、ふらふらと中に入る。
インスタントコーヒーとスティックシュガーとクリープの小ビンが、ポットのお湯とともに置いてあった。瓶はクリープだが、中身は植物油脂を使った安物だったと言いながら、残り少ないミルクパウダーを全部、お湯に溶かしてナツにも分けてやる。

「忘れ物」と書かれた箱に、オモチャがいくつかとプリッツ(菓子)の旨サラダ味があった。
受付の女性に「この忘れ物のお菓子、誰もとりにこないんじゃない?」と、つい聞いてしまうが、「くると思いますよ」とあっさり答えられて、がっかりする。が、受付の女性がナツに気をとられている隙に、ちゃっかりズボンに挟んで、頂戴してしまう。…こうなると犯罪者の一歩手前だが、憎めない。

<小袋を開けてプリッツを食べながら「月日は流れ、世界は変わった」と強く意識した。カウンターに座っていたのがおばさんで、私が若い旅人なら「お菓子の忘れ物なんかもっていっていいわよ」と言ってもらえたはずだ。だが、もはや私は五〇歳のオッサンで、相手もおばさんではなかった。世の中は変わったのだ。>(P.222)

■翌日、さらにラッキー過ぎる出来事が。
薄暗いうちにガレージを出て楽古山荘に向かう。
いきなり「おい、あんた」と呼び止められる。「犬連れてる、あんただよ」とさらに強調したのは、赤い自販機の前に立っているオッサン。ガレージ泊とプリッツの件で後ろめたさがあるため、「ども、おはようございます」と、関わりを避けたかったのだが「おう、茶、飲んでいけよ。なにがいい」と、おっさんは自販機に小銭を入れたので、安堵する。ミルクティがなかったので、温かくてカロリーが高そうなココアを指さし、おごってもらう。

この後、オッサンの質問攻めにあうが、その質問がいちいち的を射ている。服部さんは「本質的なことを理解するのが速いな」と思った。
さんざん旅の意義などをしゃべったところで、最後にオッサンが
「面白い話だった。正直、驚いた」と言いながら、ポケットから財布を出した。
「おれが餞別をやるって言ったらどうする?」
返答に窮しているあいだに、オッサンは財布から千円札を3枚と小銭入れの中身を全部出して置いていった。「小銭だよ」と言いながら。(オッサンの財布には一万円札が二十枚くらいあふれ出していた)
「けっこうあったな」とオッサンは笑い、「面白い話の礼だ。いらなかったら、そのへんの神社の賽銭箱に入れちゃいな。あばよ」と言って、軽トラに乗り込むや、振り向きもせずに立ち去った。

<オッサンもオッサンとの会話も白昼夢のようだったが、私の右手には千冊三枚とけっこうな量の小銭があった。/かすかな罪悪感から私はいくらあるのか確認せずにお金をポケットに入れて、立ち上がり、逃げるようにその場を去った。>(P.228)

もう、さすがにだれも来ないだろうというところで、ポケットのお金を数えてみると、4760円あった。
まるで落語のような展開に、笑ってしまう。

■その後の展開はもう書かないが、服部さんは、旅の最後、思いがけず、”にわか長者”のようになってしまった。
現金も免許証も持たないと決めた旅の最後に、だ。
こんな大金をどうしようか、何を買って食べようかと、急に悩みだす姿が微笑ましく、後味のいい結末だった。

(おしまい)

【追記 2024/7/22】
読書メーター
https://bookmeter.com/login
に掲載の感想文(255文字までの制約あり)
https://bookmeter.com/books/21493849

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再読 服部文祥『北海道犬旅サバイバル』(続)

服部文祥 『北海道犬旅サバイバル』 (みすず書房、2023年9月)
https://amzn.to/4bWQJAG

2024/7/12~7/20 再読
2024/2/18~2/19 初読

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昨夜読み終えた、この本の感想の続き。

■中盤戦■  (続き)
2019年10月17日~30日。
天塩岳ヒュッテ~山小屋芽室岳。193キロ。

山小屋芽室岳のデポは、そもそもヌプン小屋に置く予定だったという。
ヌプン小屋への林道が豪雨で壊れ、デポ設置が丸一日行程になるとの情報を得て、登山口近くにある山小屋芽室岳(ここも無人の避難小屋のひとつ)に変更していた。

ここで、角幡唯介さんの著作『極夜行』に触れている。
<角幡(唯介)君の極夜行は、デポが白熊に荒らされていることが発覚してから、がぜん面白くなっていった。連れている犬まで食べるかという窮地に追い込まれるのだ。/その報告を読んだとき「デポを回収できない事態を想定して食糧計画を立てておけよ」と思い、角幡君にもそう言ったのだが、実際に長期の旅をやってみると、デポを回収できないことを想定したら、デポの意味がないことがわかった。デポが回収できなくても旅が成り立つなら、最初からデポがなくてもいいからだ。>(P.162)

あたりまえと言えば、あたりまえ。
こんなふうにカッコつける服部さんも、私は好きだ。

角幡唯介さんの本は、私もたくさん読んできた。
『極夜行』『極夜行前』も、面白い本だった。

https://amzn.to/3y6GWtZ

https://amzn.to/3W5Uca8

■無人小屋へのデポは、事前に管理者・団体に届けてあるとはいえ、心ない登山者に荒らされる可能性がなくはない。
さいわい、服部さんの山小屋芽室岳のデポは無事だった。
ただ、天塩岳ヒュッテでも食べたスナック菓子のポリンキーが無かった!
<三日くらい前からずっとポリンキーのことを考えていたのだが、蓋を開けて中を見て、スナック菓子が天塩デポのスペシャルメニューだったことを思い出した。自分自身に期待して自分自身に騙された自分自身のばかさ加減にがっくりくる。>(P.164)

このあたりも可笑しいが、がっくりする気持ちはよくわかる。
ここまでが中盤戦の記述。

■後半戦■
2019年10月31日~11月25日。
山小屋芽室岳~幌尻岳~ペテカリ山荘~楽古山荘~襟裳岬~帯広空港。375キロ。

いよいよ、この山旅のフィナーレ、核心部だ。
日高山脈の縦走。といっても、稜線歩きは避けて、主脈西側の沢を辿る。
途中、いくつか尾根を越える。

次のデポ地はペテガリ山荘。
荷物を少しでも軽くするために、山小屋芽室岳にデポの半分を置いていくことにした。
すいぶん悩んだ末の決断。
<そうだ、食料を残しておけば、やばくなったら帰ってきて、仕切り直すこともできる。>(P.168)

この判断が、のちに裏目に出るのだが…。

■ここまで鹿ばかり撃って食料にしてきたが、キタキツネに出会い、撃ち逃す。
<ちょうど引き金を引くときにナツが吠えながらリードを引いた。完全な失中。…/「なにやってんだよ」とリードを引いて小突いた。/運ぶ重量を考えても、肉の旨味を考えても、ここでキツネが獲れたら理想的だった。ナツのせいで取り逃がした、といっても、獲物を見つけたのもナツである。ナツは私が腹を立てている理由がわからないようで困った顔をしている。>(P.171)

ナツの擬人化が面白い。ここまでも、ナツが「どうしたんですか」とか「何してるんですか」という顔をする、といった記述が多く、それが微笑ましい。

戸蔦別岳から幌尻岳へ。積雪の上を”バリズボ”歩行。
ナツの足が切れて出血するも、ナツが気にしているそぶりはない。

■新冠ポロシリ山荘(避難小屋)に二泊して休養。
その後、ナツが行方不明になる。
ナツ失踪のそれまでの最長記録が40分。それをはるかに超えて3時間たってもナツが戻らない。
服部さんは本気でナツの遭難(死亡)まで覚悟し、家族への弁解を考える。
読んでいて、ハラハラする。
<私は「ナツは死んだ」と納得するまで何日かかるのだろう。/もう戻らないとあきらめたとき、私はどこに向かうのか?/そこまで考えて、ふと「私は何のために歩いているのだ?」という自問に行き当たり、ぞわぞわと背筋が泡立つような感じがした。>(P.183)
<…ナツが戻らなかったら、「ナツは死んだ」と自分が納得し、家族に言いわけが立つまでここで待って、そのあととぼとぼと帯広に向かうということだけだ。帰宅後、もし家族が納得しなかったら、ここに家族を連れてくるしかない。/それをすべてやって、決着し、一段落した後、私はもう一度この旅をやり直すだろうか。>(P.183)

結局、ナツは3時間を過ぎた頃、幕営地の服部さんのところに戻ってきた。
さすがにバツが悪いのか、服部さんを遠巻きにしながら、なかなか近くまで来ない。
<チャイを一杯飲んでから立ちあがり、ぐるりとまわり込むようにナツとの距離を縮めていく。ナツは観念しているようだ。一メートルほどまで近づいてから、おもむろに首根っこを掴んで、手荒く持ち上げ、「どんだけ心配したかわかってんのか!」と怒鳴りつけた。/たった三時間の不在なのに、ちょっと涙声になってしまう。>(P.185)

感動的なシーンだ。

この後、面白いエピソードが続き、私にはこの「後半戦」の部分がいちばん楽しめた。

■肛門不調事件
ここまで食べるシーンはあっても、”出す”シーンがなく不満だったが、ここで肛門問題が出来。
旅の始めから、長くアスファルトを歩くと肛門の調子が悪くなり、山に入ると治るというパターンを繰り返していた。
<…肉と米しか食べない長期の冬期サバイバル登山をくり返してきた私は、繊維質の足りない大便をひり出すことが多く、肛門に古傷を抱えていた。その古傷に新冠ポロシリ山荘滞在時の二日ぶりのウンコで、痛みが走った。>(P.188)

山登りをしていた私にもよくわかる、深刻なモンダイだ。

触ってみると、古傷部分が小豆サイズに腫れている感じがするというから、イボ痔になりかけていたのだろう。
それまで、出発時に山仲間が差し入れてくれた抗生物質で、なんとかなだめてきた。
鏡がないので、コンデジ(カメラ)で接写してみたという。その姿を想像すると、笑うに笑えない。

服部さんが考えついた”処方”は、鹿の脂(これは豊富にある)を抽出し、排便前に浣腸するというもの。
問題は二つあり、その一つは、浣腸する注射器がないこと(当然のことだ)。
ポイズンリムーバー(蜂に刺されたときに毒を吸引するためか)を持っていたが、肛門に挿入する管がない。ボールペンの軸で代用する。
もう一つの問題は、鹿の脂の温度。鹿は体温が高く、鹿脂は融解温度が高いそうだ。そのため、人間の体内では、冷めて蠟のように硬くなってしまう。液状のままだと、熱すぎて直腸を火傷してしまいそう。

苦労の末、体内注入に成功。硬い便がスムーズに排出された。鹿の脂は外気温ですぐに固まり、大便は厚めの砂糖衣をまとったカリントウのようになっていたそうだ。その便は、後日、キタキツネが食べた、とも。
微に入り細を穿つリアルな描写に笑ってしまう。

<ズボンもパンツも脱ぎ、傾けて脂を寄せたフライパンから、ポイズンリムーバーで脂を吸い、若いころ複雑な気持ちで眺めた「タンポン挿入法」のイラストと同じ姿勢で、ボールペンの軸を挿入し、ゆっくりとポイズンリムーバーの軸を押した。この瞬間に、もし誰かが小屋に入ってきたら私は言いわけの余地がない変態だ。>(P.192-193)

■上記の”処方”は、デポ地のペテカリ山荘でのこと。
ここで食料不足が明確になってきた。
<デポの整理をすべく、並べてみるとペテカリ山荘のデポは、これまでのデポに比べて内容が貧弱でチャンポンや本格インドカレーのレトルトが入っていなかった。それを見て、デポ設置時「旅も後半になれば、心身ともに研ぎすまされてストイックになっているだろうから、自分を甘やかす必要はない」などと考えていたことを思い出した。/「ふざけんなよ」と過去の自分を毒づいてしまう。>(P.194-195)

ちなみに、このペテカリ山荘の写真が掲載されているが、なるほど、立派な山小屋。服部さんは何度も利用しているという。

肛門は小康状態。
初冬のペテガリ岳を、ナツといっしょに往復。
いよいよ終盤戦。荒れ模様の天気のなか、襟裳岬までの往復と、楽古山荘から楽古岳を越えて帯広空港までの道のりが控えている。外は吹雪。
米の残りがあと10日分ほどになり、一日200グラムに制限する。
山荘の水道の水も止まってしまい、ナツの食料も乏しい。

■ペテカリ山荘から楽古山荘へ。
楽古山荘には残りの地図と飛行機に乗るためのシャツをデポしてあった。
ペテカリ山荘で小屋の備蓄食料に手を出したことで”気持ちのタガが緩み”、楽古山荘でも備蓄食料を食べるつもりまんまんになっていたのだが・・・小屋に食料はなく、ミツカンの麺つゆがひと瓶と、固形燃料の缶が6個あるだけだった。
小屋には薪ストーブがあるので、固形燃料を使う必要はない。
「食いもん置いとけよ」と八つ当たりする。

※ここまでも、ずいぶん長くなってしまったので、さらに続く。

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再読 服部文祥『北海道犬旅サバイバル』

今月(2024年7月)北海道旅行で5年ぶりに再会した友人。
かれこれ20年にもなるだろうか、東京から北海道 北見の近くの置戸町に移住。
オケクラフトと呼ばれる木工の工房を自宅で営みながら、北海道の山を歩き続けている友人だ。

今回、会ったときも、北海道の山の話で盛りあがった。
私も、高校時代(もう50年以上も昔)、山岳部に2年間所属し、いくつかの山を登っていた。
数えるほどの山しか知らないが、日高の山々には、とくに憧れをもっていた。
友人は、そんな日高の山にも、アプローチに自家用車を使って登ったという。

服部文祥『北海道犬旅サバイバル』(みすず書房、2023年9月)
私には興味津々の本だった。
今年2024年2月、図書館にリクエストし、借りてきて読んだ。

北海道旅行から帰宅後、この本のことを思い出し、友人に送ってあげた。
私自身も、この本を持っていなかったので、同時に購入。
本が届くまで図書館の本を再読し、途中から、書店に届いた本に切り替えて読了。

以下、印象が消えないうちに、この本のことを書いておきたい。

https://amzn.to/4bWQJAG

Photo_20240721090501

目次
序章 旅立ち前
五〇を前に惑う/ナツとの出会い/山旅犬/覚醒の途中/荒野の旅
I 前半戦
宗谷丘陵
まず羽田まで/北海道上陸/宗谷岬へ/牧場の分水嶺
森から強制退去
気のいいおじさん/国有林の山旅/強制連行/宗谷の日曜日/一日の歩行スタイル/道迷い/問寒別のヒグマ
街を歩く
ヒグマの親子/牧草地の奥で/国道を使って/車道に出る/中川町に入る/コンバット/国道を歩く
天塩岳ヒュッテへ
音威子府通過/街場の調達食料/クズ野菜の助け/引退セレモニー/豆ご飯/朝日町/野菜調達方法/廃道の鹿/天塩岳ヒュッテ
II 中盤戦
大雪山系を越えて
デポ回収/完全休養日の目論み/天塩岳の登山者/廃道/国道の誘惑/誕生日の層雲峡/大雪越え
山小屋芽室岳へ
廃道/ヌプン小屋/荒野の旅/十勝川林道/新得の街場/デポという不確定要素
III 後半戦
ナツを待つ
旅の核心部へ/チロロ越え/幌尻越え/新冠ポロシリ山荘/古道ナメワッカ沢/ナツ行方不明/犬と山を歩く意味/ペテカリ山荘へ
襟裳岬を往復する
基礎疾患対策/いよいよ終盤戦へ/ペテガリ岳/終盤戦開始/冬将軍到来/食料制限/アタック準備/岬アタック開始/襟裳岬
旅の終わり
本町無料休憩所/謎のオッサン/現金があるということ/現金があるということ 2/楽古岳越え/クッキーシュー/生還
ちょっと長いあとがき

■2019年10月1日から11月25日まで、約2か月かけて宗谷岬から襟裳岬まで北海道を縦断する徒歩の山旅。
相棒は、北海道生まれの野良犬の仔、知人から引き取った雌犬のナツ。
現金も免許証も持たず、食料は、出発時に持参した米などの他、ルートの途中にデポしておいたもので賄う。
あとは、猟銃で獲物を得る現地調達。

■序章■
この山旅を思いたった動機が語られる。

鉄砲を肩に荒野を犬と歩く、現金もクレジットカードも持たずに歩けば北海道も「荒野」といえないか?
狩猟犬として服部さんの相棒となった「ナツ」との出会いも運命的。

■前半戦■
自宅から羽田まで歩き、飛行機で
稚内空港へ。
宗谷岬まで歩いて、そこが出発点。
野宿を重ね、4日目にさっそくの試練にみまわれる。
おせっかいなジイさんに出会ったばっかりに、森林管理署員に通報され、国有林からの退去を命じられる。

■コンパスを紛失する。ピンチだが、のちに、デポ地の避難小屋で出会った登山者から借りることができた。
コンパスを探しているとき、思いがけずウェストポーチから100円玉が出てきて、その使い道に悩む。
街の郵便局でハガキを一枚買い、家族宛に投函することを思いつく。
日ごろ「連絡をしない」となじられている留守宅の妻とその友人に、家族愛を強くアピールできるという下心。
また、帰りの帯広空港からの飛行機便(チケットだけは仮搭乗日で購入済み)の搭乗日変更連絡に使うため持ってきたテレフォンカード。その使い道も思いつく。その「ジョーカー的魔力」とは、麓の街の公衆電話で天気予報を聞くことだった。
以後、里に降りるたびに公衆電話を探して「天の声」(ダイヤル177の天気予報)を聞こうとするのも、可笑しい。

■道北の問寒別(といかんべつ)あたりから国道に降りて人里歩き。音威子府(おといねっぷ)、美深、名寄あたりまで、里の道を歩く。その途中で、とうぜん、人と出会うのだが(街を歩く)、そのやりとりがまた、可笑しい。
中川町の生涯学習センター図書室で、市街地の地図をコピーさせてもらおうとしたがコピー機がなく、近くのコンビニ(セイコマート)まで行くのだが、図書室の登録カードを作る必要があると言われ、免許証がないので銃の所持許可証を見せるはめに。それを見た司書のおねえさんは、言葉に詰まる。
<銃の所持許可証は国家公安委員会が「銃を持たせても大丈夫なほど安全公正な人間である」と保証した証明である。これ以上ないくらいまともな人間であることを国が保証しているのだ。だが、その手帳を図書室で出す焚火くさいオッサンはやっぱり怪しい変なヤツでしかない。>(P.96)
焚火くさいオッサン…。こういうところが服部さんの文章のウマイところだ。

■朝日町では、畑仕事をしているおじさんに声をかけて、積んであるクズ野菜をもらっていいかどうか聞く。
ここまでも、道に倒れていたトウモロコシから一本もぎ取って失敬したり、クズ白菜やクズカボチャを拾ったり、道路にこぼれ落ちているダイズの粒を拾っては、夕食のオカズにして、うまい、うまいを連発している。
朝日町のおじさんは、太いダイコンとネギをくれた。
野菜の摂取は、だいじ。山菜が採れる時期ではないので。

ここまでが「前半戦」。
10月1日~17日。宗谷岬~天塩岳ヒュッテ。331キロ。

■中盤戦■
10月17日~30日。天塩岳ヒュッテ~山小屋芽室岳。193キロ。

デポ地の天塩岳ヒュッテで、事前にデポしてあったお菓子や豪華な食材(といってもレトルト食品など)をむさぼり食う。
この避難小屋で、筆記用具の予備としてチビた鉛筆をゲット。
泊まりに来た男女の登山者から(男性の方は服部さんのファンだった)から、待望のコンパスを借りることができた。
天塩岳は、私も登ってみたかった北海道の山のひとつ。
登山者が多いらしく、この小屋に四人の登山者が訪れ、やはり服部さんを知っている人がいた。
ボルシチと酒のつまみが並ぶ、小屋での”宴会”に誘われて同席する。
<どちらもここ二十日間食べていない味なので嬉しい。がつがつ早食いしないように、かなり気をつけた。/このときもナツがオナラをしてすごい匂いが部屋に充満した。たぶん四人は、私がオナラをしたと思ったはずだ。というのも私もしたいオナラを耐えていたからだ。私は我慢したのにまったく意味がなかったことになる。>(P.134)
”荒野”での、ひとりと一匹の山旅だったはずだが、ときどき人間との出会いのシーンがあって、それがアクセントになっている。

■天塩岳登頂後、日高山脈の入口である山小屋芽室岳への大雪山系超え。
この地域は、私にも馴染みのある山系。
奥深い大雪山系の山道を避けて(雪が積もる前に大雪を越えてしまいたいとの思い)、上川の街に降りる。
ここでもヤマブドウを収穫していたおじいさんを手伝って、お裾分けをもらう。
層雲峡の自転車専用道路を延々と歩く。
大雪超えは、ルート選択に迷って難航したようす。

ヌプントムラウシ温泉の近くに建つヌプン小屋(避難小屋)に着くも、薪ストーブがなく「火気厳禁」だった。
この小屋、私は知らなかったが、本書には写真が掲載されている(P.151)。
いかにも北海道の避難小屋らしい佇まい。

■十勝川林道を下って、新得の街へ。
旅の開始から痛んでいた左足が、この頃になって痛みが少なくなっている。
このあたりでも、出会った老夫婦にクズ野菜をねだったところ、ダイコンとネギをもらう。
農家でもなさそうな老夫婦の立派な家を見て、廊下でもいいから泊まらせてくれればなあ、と思う。
かなり旅疲れしてきたようす。

※ここまで書いて、まだ長くなりそうなので、続きは別投稿で。

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2024年4月 1日 (月)

【読】2024年3月に読んだ本(読書メーター)

2024年3月。
月末になって、まとまった読書ができなかった。
今、複数の本を並行して読んでいる。

■3/25~ 今井むつみ・秋田喜美
『言語の本質 ―ことばはどう生まれ、進化したか』
 中公新書 (2023/5/25) 277ページ
■3/27~ ベフルーズ・ブチャーニー/オミド・トフィギアン(英訳)/一谷智子・友永雄吾(監修・監訳)
『山よりほかに友はなしー―マヌス監獄を生きたあるクルド難民の物語』
 明石書店 (2024/2/29) 443ページ
■3/28~ 野呂邦暢/岡崎武志(編)
『夕暮の緑の光 野呂邦暢随筆選』(大人の本棚)
 みすず書房 (2010/5/7) 227ページ
■3/31~ 野呂邦暢 『野呂邦暢小説集成3 草のつるぎ』
 文遊社 (2014/5/1) 595ページ

3月の読書メーター

読んだ本の数:8
読んだページ数:1893
ナイス数:160

サバイバル登山家サバイバル登山家感想
再読。15年ほど前に読んだはずだが、内容の記憶はまったくない。著者が20代から30代の頃の山行記録。初々しさを感じる。「日高全山ソロサバイバル」(2003年8月2日~26日)の記録が圧巻。この頃はまだ、文明の利器(時計、ヘッドランプ、ラジオなど)を携帯。それでも常人には為し得ない、きわめてハードな山歩きだ。ほぼ無人の日高山系で出会った登山者から携帯電話を借りて自宅に電話したときの、奥さん(服部小雪さん)の反応がおかしい。開口一番「生きてたの……」と。そんな奥さんやお子さんたちにも、あとがきで感謝している。
読了日:03月05日 著者:服部 文祥

山旅犬のナツ山旅犬のナツ感想
2016年に服部家にもらわれてきて、”山旅犬”として文祥さんのサバイバル登山や狩猟の相棒となっている”ナツ”。つい最近、そのナツが失踪したというが、見つかったようだ(大ケガをしていたらしい)。カラー写真満載。文祥さんの文も、いい。いい顔してるな、ナツ。
読了日:03月06日 著者:服部 文祥

 

アイヌもやもや: 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。アイヌもやもや: 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。感想
書名にひかれて読んでみたが、横書きの本が、これほど読みにくいものだとは思わなかった。著者は樺太アイヌ・北海道アイヌ・和人(和民族という呼び方をしている)をルーツに持つ。1976年生まれと、まだ若いが、北海道大学アイヌ・先住民研究センターの教授。「アイヌ問題」と正面切って構えずに「アイヌもやもや」とした姿勢はよい。もう少し、著者自身の体験に基づく事例があると、もっとよかったと思う。巻末の参考文献が役立ちそうだ。
読了日:03月08日 著者:北原モコットゥナシ

ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義感想
パレスチナの歴史的な背景、現状をあらためて知る。イスラエル建国の経緯についても、シオニズムが必ずしもユダヤ人の多数の支持を集めていたのではないという指摘に、ハッとした。今のパレスチナはイスラエルによる不当な占領、植民地主義的な侵略、というストレートな主張にも頷ける。「憎しみの連鎖」「暴力の連鎖」と捉える考え方は、他人事として判断停止することだと。巻末の参考文献なども読み、ファクトチェックしながら、これからも”正しい”理解を深めていきたい。2023年10月の講演録ということもあり、タイムリーな良書だと思う。
読了日:03月10日 著者:岡 真理

デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界感想
さすが、ジャズをこよなく愛する村上春樹。まさに”ジャケ買い”の極致。デヴィッド・ストーン・マーティン(DSM)という、ジャケット・デザイナーの雰囲気のあるジャケットの絵と、アルバム内容の紹介(”ジャケ買い”なので、村上氏の評価は必ずしもいいとは限らないが)は、おおいに参考になる。ビリー・ホリデイと秋吉敏子のアルバム(ともにLP)などは、たまたま私も持っているので、それだけで嬉しくなった。膨大な美しいジャケット写真を見ていると、ネット販売サイトを探して、思わずポチっとしそうになる。あぶない、あぶない。
読了日:03月12日 著者:村上 春樹

もひとつ ま・く・ら (講談社文庫)もひとつ ま・く・ら (講談社文庫)感想
三年ほど前に読んだ『ま・く・ら』の続編。小三治師(十代目)は、私が前編を読んだ数か月後、2021年10月7日、惜しくも亡くなった。私より、ちょうど一回り上、1939年生まれ。もっともっと、あの独特の語り口の「まくら」を聞きたかった。私は生で聞いたことはなく、それも心残り。あとがきにあるように「厚い本だからと先を急がないで」「黙読でも、私(小三治師)がおしゃべりしてるのと同じ速度で」味わいながら読みたい本。
読了日:03月15日 著者:柳家 小三治

本は眺めたり触ったりが楽しい (ちくま文庫 あ-15-4)本は眺めたり触ったりが楽しい (ちくま文庫 あ-15-4)感想
どこで知ったのか覚えていないが(あるいは書店で見かけたのか)、書名に魅かれて買った。買う本の方が読む本(読める本)よりも多い私には「本の読み方は自由なんだよ」「眺めたり触ったりするだけでもいいんだよ」と言われているようで、うれしい。知的障がいのある子どもが、図書館で本を眺めているだけで楽しそうにしている、それを見た図書館司書が「本は読まなきゃダメ」とえらそうに言う。この司書に著者はフンガイする。あるいは「ダイジェスト版はうちの図書館に置かない」と言い切る、やはり図書館司書に対しても苦言を呈する。いいなあ。
読了日:03月16日 著者:青山 南

ユーカラおとめユーカラおとめ感想
1922年5月に上京、金田一京助宅で「アイヌ神謡集」を完成させた直後の9月18日、心臓麻痺で急逝するまでの知里幸恵を描いた小説。金田一の妻・静江と中條百合子(のちの宮本百合子)が意地悪気に、金田一京助がなんとも頼りなげに、描かれている。幸恵の内面のつぶやき、葛藤は、いかにも作者のたくましい想像力のたまもの。桐野夏生が「ナニカアル」で描いた林芙美子を思い出した。巻末に参考資料としてあげられている藤本英夫氏の著作を、ずっと前に読んだことがあり、知里幸恵に深い関心を持ってきた。藤本氏の本を読み直してみようかな。
読了日:03月20日 著者:泉 ゆたか

読書メーター

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2024年3月 5日 (火)

【読】服部文祥さんにはまる

今年2024年になってから、このブログへの投稿が途絶えていた。
(毎月読んだ本の記録:読書メーターだけは残してきた)

服部文祥さんの書いた物が好きで、ときどき読んでいるのだが、先月から、立て続けに読んでいる。
止まらなくなってしまった。
(日付は読んでいた期間)

2/18~2/19 服部文祥 『北海道犬旅サバイバル』
 みすず書房 (2023/9/11) 247ページ ※図書館本

2/21~2/22 服部文祥 『狩猟サバイバル』
 みすず書房 (2009/11/25) 267ページ

2/23~2/25 服部文祥 『ツンドラ・サバイバル』
 みすず書房 (2015/6/19) 273ページ ※図書館本

3/1~3/5 服部文祥 『サバイバル登山家』
 みすず書房 (2006/6/19) 257ページ ※初読2009/7/17

3/5~ 服部文祥 『山旅犬のナツ』
 河出書房新社 (2023/11/20) 95ページ ※図書館本

『サバイバル登山家』『狩猟サバイバル』 の二冊は、本棚に長く眠っていた。
『サバイバル登山家』(みすず書房から出ている一連の単行本の最初の本)は、以前、読んでいるはずだが、内容を覚えておらず、今回の再読が新鮮だった。
『狩猟サバイバル』は、たぶん読まないままだった”積読本”で、今回が初読。
その他の本は、図書館から借りて読んでいる。いずれも初読。

『北海道犬旅サバイバル』
https://amzn.to/3wpxoJs

昨年出ていたこの本が、今回のきっかけ。

狩猟犬「ナツ」とともに、宗谷岬から襟裳岬まで、晩秋の北海道南北分水嶺700kmをまる2か月かけて歩き通す山旅。
現金、クレジットカードも持たず(使える場所もないが)、背負っている食料は米と調味料だけ。
河原で野営し、おかずは鹿を撃って食いつなぐ。
(途中、無人小屋2か所に、事前に食料を”デポ”してあった)

自身が”サバイバル登山”と名付けた山旅スタイルの究極の姿だ。
場所によって狩猟や焚火の制限があるため、鉄砲で鹿を得るのも限られる。
しょっぱなから、通報されて森から退去、という事態も。

拾った荷物の中にあった100円玉の使い道に悩んだあげぐ、里の郵便局でハガキを買って、留守宅に便りを送ったり、ゴール近くの里では、謎のオッサンから”餞別”としてけっこうな額の現金をもらって混乱したり、と、下界の世間・人間との接触も面白い。

『ツンドラ・サバイバル』
https://amzn.to/3T6ForO

これは、9年ほど前に出版されていたことを知らなかった。
この本の後半は、テレビ取材のための”ツンドラ・サバイバル”。
巨大な隕石湖に生息する新種の魚を釣る魅力に抗しきれず、テレビ・クルーとロシア人の見張り役同行、ヘリや無限軌道車を使う旅を敢行。
偶然出会った現地チュクト族のミーシャという魅力的な猟師との共感が、ひしひしと伝わってきた。

『山旅犬のナツ』
https://amzn.to/3P7cGom

昨年11月に出たばかりの本。
今日から読み始めて、たぶんすぐに読み終えそう。
2016年に北海道の写真家から譲り受けて、服部文祥さんの狩猟の相棒として共に山旅を続けてきた”ナツ”とのことが、写真満載で紹介されている。
隣接市(東村山)の図書館にあったので、今日、借りてきた。

もう一冊。
2008年にちくま新書で出版された新書の増補版文庫。
購入して手元にあるので、そのうち読んでみよう。
(親本の新書は、2009年に読んでいる)

『増補 サバイバル!』 ちくま文庫 (2016/7/10) 318ページ
https://amzn.to/3P7A7h9

 

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2024年3月 1日 (金)

【読】2024年2月に読んだ本(読書メーター)

2月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3388
ナイス数:160

古本大全 (ちくま文庫 お-34-11)古本大全 (ちくま文庫 お-34-11)感想
時間つぶしに立ち寄った書店で発見。私が好きなオカタケさんの新刊。これは買わずにいられない。同じちくま文庫の『古本でお散歩』『古本極楽ガイド』『古本生活読本』『古本病のかかり方』(いずれも、現在、品切れ)掲載の文章を集めて再構成し、さらに二章を加えて、これぞ古本尽くしの一冊。新書にしては分厚く425ページある。岡崎さんの軽妙な語り口で、古本好きにはたまらない。カヴァー写真は、岡崎さんのご自宅の地下書庫で本を開く著者。話には聞いていたが、どこかの古本屋かと思うほどの本の量。
読了日:02月07日 著者:岡崎 武志

短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)感想
岡崎武志さんの『古本大全』にブローティガンが紹介されており、読んだことのなかったこの作家の作品を読んでみようと探してぶつかった本。目取真俊「面影と連れて」だけは既読作品。パレスチナ出身の作家ガッサーン・カナファーニーの作品「ラムレノ証言」は、今のパレスチナ/ガザの事態を彷彿させる。村上春樹訳のレイモンド・カーヴァー作品は、さすが。金達寿「朴達の裁判」(短編というには、やや長いが)が、いい。この一冊で、世界中には豊饒な小説の世界があることを知った。さすが、目利きの池澤夏樹さんらしい選書。
読了日:02月12日 著者:コルタサル他

隆明だもの隆明だもの感想
書名『隆明だもの』が秀逸。この書名に魅かれて読んでみたようなもの。長女・ハルノ宵子さんが、晶文社刊「吉本隆明全集」の月報に2014年3月から2023年5月まで連載した短い文章が、じつに味わい深い。一緒に暮した家族ならではの吉本隆明観は、あんがい本質をついているかも。「うちの家族は全員”スピリチュアル”な人々だった。…論理とスピリチュアルは、決して相反するものではない。まずインスピレーションありきで、そこに経験や修練によって得た知識の強固な裏打ちがあってこそ、父はあそこまでの仕事ができたのだと思っている。」
読了日:02月15日 著者:ハルノ宵子

人新世の「資本論」 (集英社新書)人新世の「資本論」 (集英社新書)感想
評判になったこの本を、なんとか読了。カバー裏に並んだ著名人たちの推薦コメントがスゴイ。第6章までは、外国の(カタカナの)学者の名前が頻出するのが鬱陶しく、途中で投げ出しそうになったが、著者の言いたいことは伝わってきた。最後のふたつの章(第7章、8章)になって、ようやく「脱成長」「脱資本主義」を目指す具体的な動きが紹介されていて、なにやら希望を感じた。岸本聡子という人を知ったのも収穫。また、手元にある本書著者の「100分で名著 カール・マルクス 資本論」や、吉本隆明「カール・マルクス」も読んでみようと思う。
読了日:02月15日 著者:斎藤 幸平

ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-11 ディック傑作集 3)ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-11 ディック傑作集 3)感想
SFファンではないが、池澤夏樹個人編集の世界文学全集(短編集)に「小さな黒い箱」が収録されていたので、この作家の短編集を読んでみた。1950~60年代の作品は、さすがに時代を感じさせる。惑星への移住は、いかにもSF的だが、小道具が今からみるとチャチい。テープとか紙のカードとか、今では過去の遺物になりかけているのだが、当時は、それに代わるものが想像できなかったのだろう。ただし、作者の発想は、さすが。不気味な印象が残る作品群。
読了日:02月19日 著者:フィリップ・K. ディック

北海道犬旅サバイバル北海道犬旅サバイバル感想
大好きな服部文祥さんの最新刊。50歳を迎え、これが「サバイバル登山」の集大成、あるいは引退セレモニー(体力的な限界から)と考えて敢行した北海道縦断の徒歩・犬旅。免許証も現金も持たず、鹿を狩りながら野宿で宗谷岬から襟裳岬まで歩き通す、二か月に及ぶ痛快な旅の記録。出発早々、コンパスを無くしたり(その後、出会った登山者から借りて事なきを得る)、唯一の筆記具のボールペンを無くしたりと(すぐに見つかった)、ハラハラさせる。最後に、通りかかったオッサンから数千円のカンパ(選別)をもらって何を買うか悩む姿が微笑ましい。
読了日:02月19日 著者:服部文祥

狩猟サバイバル狩猟サバイバル感想
著者40歳の頃の作品。どうやら読まないまま、本棚に眠っていたようだ。サバイバル登山から狩猟サバイバル登山へと、一歩を踏み出した頃の体験が、上質な文章で綴られている。後に狩猟犬として著者と行動を共にする愛犬ナツは、まだいない。主に鹿を鉄砲で撃つ狩猟を学び(小菅村の猟友会で猟を教わる)、従来の”サバイバル登山”に取り入れて、南アルプスの間ノ岳の冬季登頂を実現。殺生への想い、煩悶は、当然ありながらも、著者の生命観といったものが伝わってくる。
読了日:02月22日 著者:服部 文祥

ツンドラ・サバイバルツンドラ・サバイバル感想
服部文祥さんの本のなかでも、バツグンに面白い一冊だった。半分は国内の単独”サバイバル登山”。詳細なルート地図によってイメージがつかみやすい。大菩薩山嶺と南アルプスが、私にも多少の土地勘があるので身近に感じられた。転落事故もショッキングだ。後半は、テレビ取材のための”ツンドラ・サバイバル”。巨大な隕石湖に生息する新種の魚を釣る魅力に抗しきれず、テレビ・クルーとロシア人の見張り役同行、ヘリや無限軌道車を使う旅を敢行。偶然出会った現地チュクト族のミーシャという魅力的な猟師との共感が、ひしひしと伝わってくる。
読了日:02月25日 著者:服部 文祥

死刑すべからく廃すべし: 114人の死刑囚の記録を残した明治の教誨師・田中一雄死刑すべからく廃すべし: 114人の死刑囚の記録を残した明治の教誨師・田中一雄感想
新聞書評で知り、読んでみた。明治から大正期にかけて「教誨師」として活躍し、114人の死刑囚の記録を残した田中一雄という人物を執拗に追ったノンフィクション。謎に包まれた田中一雄の生涯にも興味をひかれたが、1910(明治43)年の大逆事件で、いわばでっち上げの罪で死刑宣告された24人(うち、幸徳秋水、菅野須賀子を含む12人が死刑執行、残り12人は恩赦により死刑を免れた)話は、興味深かった。死刑制度の是非は、私にはなんとも言えない(身内が殺されたら私は復讐したいと思うだろうから)。それでも考えさせられた。
読了日:02月26日 著者:田中 伸尚

教誨師 (講談社文庫)教誨師 (講談社文庫)感想
50年もの間、死刑執行に立ち会い続けた教誨師(浄土真宗僧侶)への聞き取りが(本人の死後に公開という約束で)みごとにまとめられている。教誨師・渡邊普相師は少年期に広島で被爆。その体験が教誨師という仕事に向かわせたようだ。たくさんの死刑囚との拘置所での面会、絞首刑執行への立ち会い時の生々しい様子は胸に迫る。死刑執行に携わる刑務官の苦悩も知った(かつては一人の刑務官が操作するレバーで行っていた)。渡邊氏の「死刑は人殺し」という言葉が重い。週刊誌記者時代の平岡正明氏の名や知人の名が出ていて驚いた。教誨≠教戒。
読了日:02月29日 著者:堀川 惠子

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