【読】2023年2月に読んだ本(読書メーター)
昨年の暮れから一か月半ほどかけて、北方『水滸伝』を読了。
続編の『楊令伝』(集英社文庫全15巻+読本)を図書館から借りてきて読み始めているところ。
2月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3517
ナイス数:153
水滸伝 15 折戟の章(集英社文庫 き 3-58)の感想
梁山泊軍と宋軍の戦は、ぎりぎりのところで思いもかけない展開を見せる。この巻で面白かったのは、巵三娘と王英とのエピソード、官軍から拾われた少年・趙林や、王進の許に預けられた張平の成長ぶり、官軍の奥深く入り込む候健の苦悩など。紙一重のところで全滅をまぬがれた梁山泊は、これからどうなる? 次巻に期待。
読了日:02月01日 著者:北方 謙三
水滸伝 16 馳驟の章 (集英社文庫 き 3-59)の感想
梁山泊の豪傑が何人も殺されるいっぽう、青蓮寺の頭目も梁山泊の影の部隊・致死軍の急襲によって、ついに…。この巻でも、間諜・候健の息子・候真が前面に出てくる。漢=豪傑たちばかりでなく女性や少年たちの姿をきっちり描く北方謙三の筆は、すばらしい。巻末の文庫解説、あの”ロックン・ローラー”吉川晃司が”北方オヤジ”へ熱いオマージュを捧げていて、ちょっとびっくり。北方謙三ファン層の広さを知る。いよいよ残すところあと3巻。物語が大きく動きそうな予感。
読了日:02月04日 著者:北方 謙三
水滸伝 17 朱雀の章 (集英社文庫 き 3-60)の感想
双頭山への官軍の猛攻。春風山・秋風山からの胸のすくような脱出劇。致死軍と高廉軍との壮絶な決戦。盧俊義と魯達の死。子午山で王進に預けられている楊令と張平。等々、描き切れないほど、この巻は中身が濃い。残り2巻に向けて盛りあがっていく。
読了日:02月05日 著者:北方 謙三
水滸伝 18 乾坤の章 (集英社文庫)の感想
たくましく成長した楊令の頼もしさ。『楊令伝』への布石か、舞台が北の遼の国まで広がり、遼に叛旗を翻す阿骨打(あくだ)という女真族の好漢(16巻目から登場)もクローズアップ。そして、私が好きだった林冲がとうとう…(あれほどの強敵=宋を相手の激闘で死んでいく好漢がいない方がおかしいのだが)。胸のすくような奇策でピンチを脱する梁山泊軍。作者の心憎い物語展開に胸を躍らせながら読了。いよいよ童貫率いる官軍との全面決戦となるのが最終巻なのだろう。あと1巻で終わってしまうのかと思うと、ちと寂しい。文庫巻末解説は夢枕獏。
読了日:02月06日 著者:北方 謙三
水滸伝 19 旌旗の章 (集英社文庫)の感想
昨年末から一か月半かけて全巻通読。さすがに達成感がある。最終巻、いい終わり方だ。替天行道の旗が宋江から楊令に手渡される。梁山泊の生き残りの何人かは、続編『楊令伝』にも登場するようだ。読んでみたい気もするが、全15巻かあ…。気分を変えて少し別系統の本を読んだ後にでも挑戦してみよう。(東京に雪が降った日に読了)
読了日:02月10日 著者:北方 謙三
北方謙三の「水滸伝」ノート (生活人新書 300)の感想
北方版『水滸伝』(集英社文庫)全19巻読破後、作者自身の”メイキング・オブ”ということで読んでみた。作者がこの大作に込めた想いは伝わってくる。続編の『楊令伝』をますます読みたくなる。
読了日:02月12日 著者:北方 謙三
替天行道 北方水滸伝読本 (集英社文庫)の感想
本編の北方版『水滸伝』を読んでいるときに、この本の「人物事典」には、ずいぶん助けられた。あらためて通読。『水滸伝』執筆・出版の裏話満載で面白かった。北上次郎ほかによる評論、対談、年表なども。「文庫版・特別増補の章」がいい。北方謙三デビュー当時からの担当編集者(Yこと山田裕樹氏)との絶妙なコンビネーションが『水滸伝』完成の大きなちからとなっていたことがよくわかる。蛇足だが「読本」を「とくほん」と読むのが正しいことを、この本のルビで知った。長い間「どくほん」と読んでいた(恥)。
読了日:02月14日 著者:北方 謙三
中央線がなかったら 見えてくる東京の古層 (ちくま文庫)の感想
雑誌「東京人」2012年4月~9月号連載。2012年12月に刊行された単行本の文庫化。巻末の陣内秀信氏と三浦展氏の対談には触発されることが多い。中央線は私にも馴染みの深い鉄道。阿佐ヶ谷、中野界隈に住んでいたこともり、国分寺駅も通勤に使っていた。今も立川駅をよく利用する。そんな中央線を頭から消し去って、古い地形・川・湧水・古道をたんねんに辿ってみることで見えてくる、新宿~中野、高円寺、阿佐ヶ谷の昔の姿が新鮮(第一部)。私には第二部多摩編の方が面白かった。惜しむらくは巻頭のカラー地図が文庫では小さすぎる。
読了日:02月21日 著者:陣内 秀信,三浦 展
魂込め(まぶいぐみ)の感想
7年ほど前、目取真俊の小説群をまとめて読んでいるので、この短編集も再読のはず。収録されている6編の物語は、どれも沖縄の風土と暮らしの匂いが濃厚。芥川賞受賞作「水滴」の後に書かれた作品群。何度か訪れたことのある沖縄本島や周辺の島々で感じた琉球弧の島々の独特な空気が蘇る。『水滴』も再読したい。明日2023/2/25、パギやんこと趙博さんが「水滴」の一人芝居を演じるのを観に行くので、思いたって読み返してみた。目取真俊、恐るべき作家だと、あらためて思う。
読了日:02月24日 著者:目取真 俊
水滴の感想
7年ぶりの再読。芥川賞受賞作「水滴」をパギやんこと趙博さんが一人芝居で演じるイベントがあり、その前に読み直してみた。1985年に沖縄タイムスに連載、加筆修正された「風音」もいいのだが、特攻隊で死んだ戦友の足跡をたどるテレビ局ディレクターが、ちょっと型通りの印象。「オキナワン・ブック・レビュー」の仮構も面白い試みだが、もう少しのひねりが欲しいと感じた。「水滴」は、さすがに傑作。
読了日:02月26日 著者:目取真 俊
沖縄と国家 (角川新書)の感想
6年前の辺見庸と目取真俊の対談。図書館本。辺野古での座り込み、カヌーでの反対行動を続ける目取真俊、腰が据わっている。その発言は辺見庸をタジタジとさせるほどラジカル。第三章「沖縄戦と天皇制」には刮目させられた。旧日本軍の農民兵と学徒兵、どちらが残酷だったかと古山高麗雄に聞いたところ「そりゃあ、農民兵だよ」と言っていたという辺見庸に対して、出身階層というより社会経験の差だろうと返す目取真俊。沖縄戦での慰安婦の実態、縄ピーと呼ばれた沖縄の慰安婦たち。これまで私の脳裏に浮かばなかったことも。
読了日:02月28日 著者:辺見 庸,目取真 俊
パレスチナに生きるふたり ママとマハの感想
パレスチナに通い、現地の人たちに溶け込んで取材を続け、ツイッターを中心とするSNSで発信を続ける高橋美香さん。ビリン村とジェニン難民キャンプで暮らすふたりの女性(美香さんのパレスチナでの居候先)に焦点をあてた新刊の写真絵本。パレスチナ問題は難しいと言われる。が、そこで暮らす人たちの日常をとらえた愛情あふれる写真の数々を見ると、土地を奪われ、日々、死(イスラエルによるに暴虐)と隣り合わせの状況にも、人間の営みがあることが伝わってくる。この本が、おとなたちだけでなく次世代のこどもたちに何かを伝えられることを。
読了日:02月28日 著者:高橋 美香
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