カテゴリー「桐野夏生」の13件の記事

2026年8月 1日 (土)

【読】2026年7月に読んだ本(読書メーター)

7月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2106
ナイス数:83

眠れぬおまえに遠くの夜を眠れぬおまえに遠くの夜を感想
愛読している作家・桐野夏生さんの最新刊(2026年4月発売)。それほど待つことなく図書館から借りられた。あいかわらず巧みな物語展開で、いっきに読ませる傑作。描かれているのが韓国の芸能界のリアルな世界だが、日本の芸能界を彷彿とさせる。主人公で俳優の「僕」(語り手)、彼がかつて発見した才能あふれる破滅的なアイドル、それに「僕」の友人の俳優(彼もスキャンダルで芸能界を去る)、それぞれが魅力的。初出は「文藝春秋」2024年9月号~2025年9月号。桐野夏生さんの創作活動が衰えていないことを確認できて、嬉しい。
読了日:07月02日 著者:桐野 夏生

世界の台所の間取り (書籍)世界の台所の間取り (書籍)感想
この著者は知らず、はじめて読んだが(図書館本)面白かった。イラスト(世界各地の台所の間取り図)が丁寧で、じつに綺麗。食にかける熱意は、世界中どこも同じと思わせられたが、そろぞれの土地柄が感じられ、あらためて世界は広いなあと感じ入った。著者には同様の著作が多数あるようだが、うーん、これ一冊でお腹いっぱいかな。
読了日:07月05日 著者:岡根谷 実里

ファンキー中国: 出会いから紡がれることファンキー中国: 出会いから紡がれること感想
ネット記事だか新聞書評だかで知り、興味をもって購入。他の本と並行して少しずつ読み進めたため、読了まで時間がかかった。13人の”中国通”筆者たちの文章が集められていて、自らの体験に基づいて、それぞれの視点から”中国の今の人々”を描いていて好感が持てる。馴染みのある執筆者は宮里千里とOKIだけだったが、ペンネーム”無常くん”が紹介する「おじさん動画」と、武田雅哉の「のんしゃらんチベット放浪記」が、ことに面白かった。中国(中国人)って面白いな。国としての中国は何かと問題があるけれど、そこに生きる人々は興味深い。
読了日:07月13日 著者:井口 淳子,山本 佳奈子,広岡 今日子,長嶺 亮子,無常くん,宮里 千里,二村 淳子,大友 良英,多田 麻美,中山 大樹,OKI,濱田 麻矢,武田 雅哉

メソポタミアのボート三人男メソポタミアのボート三人男感想
敬愛・愛読している高野秀行さんの新刊が出たことを知り、すぐに購入。じっくり味わわせてもらった。「バックラフト」という、まるで子ども用のボートのような(高野さん自身の形容)でメソポタミアのティグリス・ユーフラテス川源流を下る旅。同行する「隊長」こと山田高司さんとの珍道中が楽しい。隊長の素人離れしたイラスト、その博識ぶりにも舌を巻く。クルド人との出会い、彼らと交流する姿もいい。高野さんの父上(ギリシャ神話にめっぽう詳しい)のことは、本書で初めて知った。最後の旅の前に85歳で亡くなられたのがほんとうに残念。
読了日:07月22日 著者:高野 秀行

時刻表を殺意が走る: 原武史オリジナルセレクション (松本清張傑作選)時刻表を殺意が走る: 原武史オリジナルセレクション (松本清張傑作選)感想
これまでほとんど読んでいない松本清張を読んでみようと思い、図書館の書架でみつけたシリーズ。この原武史をはじめとして、桐野夏生、浅田次郎、佐藤優、宮部みゆき、海堂尊といった錚々たる選者による傑作選。まずは有名過ぎる「点と線」が収録されている鉄道関係の作品集を読んでみた。「点と線」は、さすが松本清張の出世作、面白く読んだが、ミステリーのトリックがやや凝り過ぎ、最後の種明かしも冗長に感じられた。他の短編4作も、それぞれ凝った内容。その中では「拐帯行」の意外な結末に驚いた。次は、桐野夏生選の一冊を読んでみよう。
読了日:07月23日 著者:松本 清張,原 武史

松本清張傑作選 憑かれし者ども 桐野夏生オリジナルセレクション松本清張傑作選 憑かれし者ども 桐野夏生オリジナルセレクション感想
「松本清張傑作選」の2冊目。桐野夏生選。4編の短編と1編の中編が収録されている。なかでも中編「馬を売る女」が面白かった。松本清張の膨大な著作の全貌は、私には見えないが、ここまで読んだ「傑作選」2冊に収められているのは、どれも「清張の犯罪小説志向」(巻末解題:香山二三郎)の色が濃い。この選集でも、選者・桐野夏生による巻末解説がいい。このシリーズは癖になりそうで、次は佐藤優選の一冊を借りてきている。清張作品の中では”渋い”セレクションだが、こういう選集も選者の個性が出ていて面白いものだ。
読了日:07月27日 著者:松本 清張

黒い手帖からのサイン: 佐藤優オリジナルセレクション (松本清張傑作選)黒い手帖からのサイン: 佐藤優オリジナルセレクション (松本清張傑作選)感想
選者・佐藤優らしいといえば、らしいセレクション。有名な「張込み」は、私にはそれほどいいとは思えず、「声」が面白かった。私には以外の感があった「服中の敵」「群疑」「山師」の三作の時代小説のなかでは「山師」の話が面白かった。それにしても多作の作家、これほどバリエーションに富む作品群を生み出した松本清張に驚いている。
読了日:07月29日 著者:松本 清張,佐藤 優

読書メーター

| | | コメント (0)

2026年6月 1日 (月)

【読】2026年5月に読んだ本(読書メーター)

5月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4953
ナイス数:161

藪枯らし純次 (徳間文庫)藪枯らし純次 (徳間文庫)感想
船戸与一後期(2008年)の傑作。伝奇ミステリーの色が濃厚。再読のはずだが、すっかり内容を忘れていて、最後まで夢中になって読んだ。この作品は横溝正史の世界を連想させるが、そこは船戸さん。戊辰戦争、郷里の山口(萩藩)の歴史的事件や今に続く怨念をからませるところなど、この作品と同時期(2007年頃)に執筆された『満州国演義』の導入部や『新・雨月 戊辰戦役朧夜話』(2010年)を思い起こさせる。やはり国内(五島列島)を舞台にした作品『龍神町龍神十三番地』(1999年)があるが、それよりもずっとよく出来ている。
読了日:05月02日 著者:船戸 与一

夜来香海峡 (講談社文庫 ふ 30-16)夜来香海峡 (講談社文庫 ふ 30-16)感想
これもたぶん再読。2009年、大作『満州国演義』執筆中に取材し書かれたものだと、巻末の解説(井家上隆幸)で知った。この時期の船戸さんの傑作だと思う。『流沙の塔』『緋色の時代』で描かれた世界情勢と重なる世界。井家上さんの解説では、この時期の船戸ワールドの魅力が的確に指摘されている。<これほどまでにおもしろくて、現代史と世界と真っ向から格闘している小説はまれである>と。ただ一点、主人公が尊敬する老人が、なぜあれほどまで死に急いだのか、説得力に欠ける気が。イタリア車マセラッティを偏愛するヤクザの兄貴が魅力的。
読了日:05月04日 著者:船戸 与一

ダークネスダークネス感想
ひさしぶりの桐野作品。図書館予約待ち行列に並び、発売後10か月、ようやく順番がきた。一気に読了。「村野ミロ」シリーズの本当の完結編のはずだが、最後のクライマックス後、ミロがどうなるのかが気になる。その意味では消化不良。ミロシリーズ第一作(タイトルは忘れたが)からすべて読んでいたので、この作品でのミロの背景を何とか思い出した。シリーズを読んでいないと、ちと厳しいかも。ハルオとミロを取り巻く新しい(前作から20年後の)人間関係が波乱に満ちていて、最後までどうなるのか期待を持たせる。桐野夏生の筆力に脱帽。
読了日:05月06日 著者:桐野 夏生

朝日のようにさわやかに (新潮文庫)朝日のようにさわやかに (新潮文庫)感想
タイトルに惹かれて読んでみた。名前だけは見知っていたが、はじめて読む作家。収録作のタイトル「朝日のようにさわやかに」「あなたと夜と音楽と」は共にジャズのスタンダードナンバーで期待していたが、ジャズ小説ではなかった。さまざまなテイストの短編とショートショート14編。面白いものもあり、そうでもないものも。SF風の「冷凍みかん」はよかった。この多作の作家、長編が多いようだが、この短編集に限っての印象では、村上春樹の短編を彷彿とさせた(個人的な印象)。直木賞受賞作と受賞後第一作ぐらいは、いつか読んでみたい気も。
読了日:05月08日 著者:恩田 陸

八日目の蝉 (中公文庫 か 61-3)八日目の蝉 (中公文庫 か 61-3)感想
ずーっと読みたいと思っていたこの作品。映画化された人気作だが、内容についての予備知識なしで初読。古本で手に入れた中公文庫の解説が池澤夏樹さっだのは拾い物(いかにも池澤さんらしい優れた解説)。<心を震わせるラストまでページを繰る手が止まらない!>(カバー帯の惹句)が大げさでなく、ぐいぐい引き込まれながら読了。<最後の海の場面の抑制された美しさまで、読者は波瀾のストーリーを先を追って読み続けるだろう。>(巻末解説:池澤夏樹) タイトル『八日目の蝉』に込められた寓意が胸に染みる。さすが角田さん。手練れだ。
読了日:05月09日 著者:角田 光代

世界は終わりそうにない (中公文庫 か 61-5)世界は終わりそうにない (中公文庫 か 61-5)感想
船戸与一さんとの対談が収められているのを見て購入。全部読んでみた。対談タイトルは「旅とボクシングとハードボイルド」(週刊ポスト2014.1.17号掲載)。映画化された『八日目の蝉』の成島出監督との対談も興味深い。小説が映画化されても観ることが少ないのだけれど(たいていがっかりするので)、この映画は観てみようと思い、ネットでレンタルして視聴。角田さんは、映画には映画の良さがあることをよくわかっている。この雑文集(?)には、角田さんが他人の著作に寄せた書評や解説文、吉本ばなな、三浦しをんらとの対談も収録。
読了日:05月12日 著者:角田 光代

新・雨月 上 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫)新・雨月 上 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫)感想
ずっと以前、単行本で読んだものを文庫(3分冊)で再読中。戊辰戦役での複雑怪奇な動き。主要登場人物(架空の人物と思われる)以外の実在の人物たちの名前が多くて覚えられず、ストーリー展開になかなか付いていけないが、面白い。大作『満州国演義』執筆中の2010年に単行本刊行。『満州国演義』の冒頭エピソードに繋がる、会津での西軍の狼藉がこれから展開されるのか? 船戸与一”落ち穂拾い”も、この作品で区切りをつけたい。『蝦夷地別件』と『満州国演義』は何度も読んでいるので、これでひと通りの読み直しが終わるはず。
読了日:05月17日 著者:船戸 与一

新・雨月 中 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫)新・雨月 中 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫)感想
虚実ないまぜの船戸与一らしい幕末時代小説。山県狂介(有朋)、榎本釜次郎(武揚)、西郷吉之助(隆盛)、板垣退助、土方歳三、大村益次郎、木戸孝允といった、よく知られた幕末~明治の人物が実名で登場。キーマンとなる長州の間諜・物部春介とその連れのモモ、長岡の元博徒・布袋の寅蔵らが、じつに生き生きしている。が、登場人物が多すぎて、あいかわらず混乱しながら読んできた。いよいよ下巻。船戸与一が独自の史観で会津戦争の終焉をどう描くのか、楽しみではある。
読了日:05月20日 著者:船戸 与一

新・雨月 下 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫)新・雨月 下 ~戊辰戦役朧夜話~ (徳間文庫)感想
下巻にはいって戊辰戦争終焉に向けての西軍・東軍の戦いの構図がようやく見えてきた。第七章、架空の登場人物・物部春介の口を借りて、船戸さんの戊辰戦争感が語られるあたり、興味深い。終章でこの戦争の主要人物たち(実在)のその後が詳しく述べられているのも勉強になる。解説(前田哲男)で船戸さんの”叛史史観”を展開されているのも、船戸ファンにはたまらない。これまで半年以上をかけて続けてきた”船戸作品落ち穂拾い”も、これが最後。あとは、豊浦志朗名義のいくつかのルポルタージュを読んでみたい。
読了日:05月23日 著者:船戸 与一

なぜ、地形と地理がわかると幕末史がこんなに面白くなるのか (歴史新書)なぜ、地形と地理がわかると幕末史がこんなに面白くなるのか (歴史新書)感想
船戸与一『新・雨月 戊辰戦役朧夜話』を読み終えた後、戊辰戦争当時の複雑な動きを知りたくて図書館から借りてきた。まさに激動の時代。今でも名前がよく知られている幕末・明治の人物たちの行動が、少しはわかった気がする。気になったのは、明治以降の呼称のはずの「藩」「幕府」があたりまえのようの使われていること(他の書物でも一般的に使われてはいるのだが、コメントがあって然るべきかと)。このことは、別の本で調べて確かめてみたい。
読了日:05月26日 著者:


涙がでるほど心が震える すばらしいクラシック音楽涙がでるほど心が震える すばらしいクラシック音楽感想
ネットで知り、気になっていた本。図書館から借りて読んでみた。バッハからモーツァルト、ベートーベン、ブラームスら有名な10人のクラシック音楽の作曲家がとりあげられていて、なかなか面白かった。なかでも上にあげた4人の章が私の興味を引いた。たまにはこういう本もいい。
読了日:05月28日 著者:車田和寿

([か]1-1)古本道場 (ポプラ文庫 か 1-1)([か]1-1)古本道場 (ポプラ文庫 か 1-1)感想
単行本を持っていたはずなのだが、探しても見当たらなかった。読んだのか読まなかったのか、たぶん処分してしまったらしい。単行本、文庫版ともに惜しくも絶版。文庫の古本をネット購入。じつにさわやかな読後感。この師匠(岡崎さん)にして、この弟子(角田さん)。岡崎さんはもとより、角田さんの本への愛情が伝わってくる。国外の古本屋も探ってきた角田さんの、本への思いが胸を打つP.230の文章「本は、人という生きものに絶対的に近しい。……」が、いいなあ。文庫ならではの「文庫版あとがき」と石田千さんによる解説も、また、いい。
読了日:05月29日 著者:角田 光代,岡崎 武志

読書メーター

| | | コメント (0)

2024年9月21日 (土)

【読】赤坂憲雄『奴隷と家畜 物語を食べる』を読む

図書館から借りて、ようやく読み終えた。
赤坂さんらしい難解な部分も多いが、なかなか刺激的で、読み応えのある本だった。

赤坂憲雄 『奴隷と家畜 物語を食べる』
青土社 2023/5/10 369ページ
https://amzn.to/4dkJeUN

この本を知ったのは、内澤旬子さんのブログ記事を読んでいて、下記の投稿をみつけてのことだった。

内澤旬子 空礫絵日記
https://kemonomici.exblog.jp/

2023/7/1投稿記事
「取り上げていただきました : 内澤旬子 空礫絵日記」

https://kemonomici.exblog.jp/33019650/

内澤さんは、赤坂さんが『飼い喰い 三匹の豚と私』を取りあげてくれたことに触れ、次のように感謝を述べている。
いかにも内澤さんらしい文章だ。

<予想をはるか彼方にぶっ飛ばして長尺で取り上げていてくださいました。しかも非常に的確に私の意図を掴み読んでいてくださっていて、こんなに嬉しいことはないと言うくらいの文章でした。/文中、三匹の豚を飼って食べた私のことを「この人」と書いているのも不穏な、ドン引きしていらっしゃる感じがよく出ていて痛快でした。ちょっと笑ってしまいました。>

内澤旬子 『飼い喰い 三匹の豚と私 角川文庫
https://amzn.to/47AF6Pq

内澤さんのこの本、面白かったな。

■赤坂さんのこの本では、桐野夏生さんの『燕は戻ってこない』も取りあげられていて、桐野夏生ファンの私には嬉しかった。

桐野夏生 『燕は戻ってこない 』 集英社文庫 2024/3/19
https://amzn.to/3znYEKj

私は単行本で読んでいたが、文庫化されたようなので、買い求めて再読したいと思う。
単行本はブックオフで買ったのだったが、読了後、手放してしまった。
面白い小説だったが、再読するとは思ってもいなかった。

赤坂さんの「読み」は、さすがで、触発されることが多い。

■さて、この『家畜と奴隷 物語を食べる』という本。
雑誌『ユリイカ』に連載していたものだという。

ネット検索してみたら、次のような記事があった。
まだ連載が続いているようだ。

2024年4月号:怪物はささやき、物語の使徒になった
2022年1月号:奴隷化、いじめの政治学へ
2022年9月号:二本足の豚たちが動物農場をゆく
2021年2月号:胃の腑と詩と官能のあいだ

赤坂さんは、本書のあとがきで、次のように書いている。

< まるで、いきなり荒海に乗りだした漂流記のような連載となりました。ほぼ手直し程度に留めて、そのままの形での刊行となります。とにかく、海図やら羅針盤のたぐいはなにひとつもたずに、流されてゆくことを選んだのです。(中略)そもそも、全体の構想といったものはかけらもなく、『性食考』以後に生まれた雑念をめぐって、あくまでそれを随想(エッセイ)風につずってみたいと考えていただけです。(後略)/すくなくとも、連載に取りかかる以前に、『奴隷と家畜』などというタイトルはどこにもなかったのです。>

『性食考』(2017/7/26 岩波書店)という挑発的なタイトルの本も、読んでみたいと思う。

https://amzn.to/4e9V9pH

■本書では、さまざまな書籍(たとえば、大江健三郎の初期小説、宮澤賢治の童話、『家畜人ヤプー』という奇書、『ロビンソン・クルーソー』、G.オーウェル『動物農場』など多数)ばかりでなく、映像作品、コミックなど、多岐にわたって取りあげ、民俗学者・赤坂さんならではの考察を展開している。
読んでいて、どこに連れて行かれるかわからない戸惑いを感じながらも、赤坂さんらしい思索に引きずり込まれた。
なるほど、こういう読み方があったか、と。

第三章の”いじめ”に関する論考(中井久夫「いじめの政治学」他を取りあげて)には、ハッとさせられた。
子どもたちの”いじめ”の世界の”からくり”に触れた気がする。

■最後に、e-honサイトから、本書の紹介を転載しておく。
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000034466258&Action_id=121&Sza_id=C0

”スリリングな旅”とは、言い得て妙。

要旨
生きるために、捕って、殺して、わたしたちは食べる。食べるために、作物を栽培し、家畜を飼育し、人を奴隷にする。“食べるひと”ははてしない謎を抱いている。誰ものぞこうとしなかった意識の森深くへと、異端の民俗学者が下りてゆく。物語を食べ散らかすような、不遜にしてスリリングな旅。
目次
第1章
胃の腑と詩と官能のあいだ/憑依と観想から擬人法へ/ほか
第2章
奴隷農場は愛とともに昏れて/猿の惑星からの伝言/ほか
第3章
自己家畜化と道徳の発生/奴隷化、いじめの政治学へ/ほか
第4章
フォアグラ的な肥満のはてに/臓器提供者のいまわの恋/ほか
第5章
二本足の豚たちが動物農場をゆく/豚は知性的な生き物である/ほか
終章
奴婢訓の裂け目に

■さらに、ネット検索で、こんな記事(note ブログ)もみつけた。

赤坂憲雄『奴隷と家畜 物語を食べる』/寺田寅彦「詩と官能」/椹木野依「音を食って物がなくなる」|KAZE
https://note.com/novalisnova/n/n52bfd60caaf2


【追記】 2024/9/22
メモ:本書で取り上げられている膨大な書籍
(できるだけ拾いあげておく)
※この本には、残念なことに索引がないため、自分用のメモとして。

<第一章>
寺田寅彦 『寺田寅彦随筆集 第三巻』 岩波文庫  「夏目漱石先生の追憶」
高山辰雄 『存在追憶 限りなき時の中に』 角川書店
保阪康夫・小澤俊郎 『宮沢賢治 友への手紙』 筑摩書房
山本聡美 『九相図をよむ』 角川選書
スーザン・ソンダク 『他者の苦痛へのまなざし』 みすず書房

宮澤賢治 『宮沢賢治全集 7』 ちくま文庫 「フランドン農学校の豚」
『グリム童話集』 「ヘンゼルとグレーテル」
宮澤賢治 『宮沢賢治全集 5』 ちくま文庫 「蜘蛛となめくじと狸」
雑賀恵子 『エコ・ロゴス』 人文書院
宮崎学 『死を食べる』 <アニマルアイズ・動物の眼で環境を見る 2> 偕成社
正田陽一 『家畜という名の動物たち』 中央公論新社
ブライアン・フェイガン 『人類と家畜の世界史』 河出書房新社
 https://amzn.to/3N0IJEF
藤子・F・不二雄 『箱舟はいっぱい 異色短編集3』
 『ミノラウロスの皿 異色短編集1』 小学館文庫
大江健三郎 『死者の奢り・飼育』 新潮文庫 「飼育」「人間の羊」
三島由紀夫 『三島由紀夫文学論集Ⅱ』 講談社文芸文庫 「裸体と衣裳」
『シートン動物記1』 講談社 「ぎざ耳 あるわた尾ウサギの物語」
村上克尚 『動物の声、他者の声』 新曜社

<第二章>
安部公房 『内なる辺境』 中央公論社
小説 『マンディンゴ』 河出書房新社 1968年邦訳初版
 新装版1975年
『猿の惑星』 創元SF文庫 1968年
スウィフト 『ガリヴァー旅行記』
『賭ケグルイ』 ガンガンコミックスJOKER
小林多喜二 『蟹工船』
沼正三 『家畜人ヤプー』
芥川龍之介 『上海遊記 江南遊記 』 講談社文芸文庫
金子光晴 『どくろ盃』 中公文庫 「上海灘」
イザベラ・バード 『日本奥地紀行』
沼正三 『集成「ある夢想家の手帖から」』 太田出版

<第三章>
小原秀雄 『自己家畜化論』 群羊社 1984年
小原秀雄・羽仁進 『ペット化する現代人』 NHKブックス 1995年
リチャード・ランガム 『善と悪のパラドックス』 NTT出版 2020年
エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ 『自発的隷従論』 ちくま学芸文庫
中井久夫 『中井久夫集6 いじめの政治学』 みすず書房 「いじめの政治学」
 https://amzn.to/47wKF1r
中井久夫 『いじめのある世界に生きる君たちへ』 中央公論新社
 https://amzn.to/3TEfgUK
山下正男 『動物と西欧思想』 中公新書 1974年
 https://amzn.to/3XS77P5
大塚久雄 「ロビンソン・クルーソウの人間類型」「『経済人』のユートピア的具象化としてのロビンソン物語」
デフォー 『ロビンソン・クルーソー』 中公文庫(増田康雄 訳)
カレル・チャペック 『ロボット』(戯曲) 『山椒魚戦争』
渡辺京二 『逝きし世の面影』
 https://amzn.to/4d9UymM

<第四章>
ノーマン・コルパス 『フォアグラの歴史』 原書房
メルヴィル 『白鯨』
『グリム童話集』 岩波文庫 「ヘンゼルとグレーテル」
『今昔物語』 巻第二十六 (猿神退治譚)
イーサン・ガットマン 『臓器収奪 消える人々』 ワニ・プラス
カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』 ハヤカワepi文庫 2005年
『約束のネバーランド』 集英社
戸田慧 『英米文学者と読む「約束のネバーランド」』 集英社新書
柳田国男 『遠野物語』 (第六話 神隠し譚)
桐野夏生 『燕は戻ってこない』 集英社
 https://amzn.to/3XyDz7Y
大野和基 『代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳』 集英社新書

<第五章>
ジョージ・オーウェル 『動物農場』
 https://amzn.to/3MVehfm
 https://amzn.to/3zvxGjP
ライアル・ワトソン 『思考する豚』 木楽舎
 https://amzn.to/4enZW6S
栗原康 『はたらかないで たらふく食べたい』 タバブックス
 https://amzn.to/4efcnlU
 https://amzn.to/4eA9k7B
網野善彦 『無縁・苦界・楽』
ジョン・シェスカ 『三びきのコブタのほんとうの話』 岩波書店
『三びきのこぶた(イギリスの昔話)』 福音館書店
ブルーノ・ベッテルハイム 『昔話の魔力』 評論社
『3びきのこぶた』 講談社
飯沢匠 『ブーフーウー』 理論社
デイヴィッド・ウィズナー 『3びきのぶたたち』 BL出版
ユージン・トリビザス 『3びきのかわいいオオカミ』 冨山房
内澤旬子 『飼い喰い 三匹の豚とわたし』 角川文庫
 https://amzn.to/3TE7fPU
中村生雄 『祭祀と供犠』 法蔵館文庫

<終章>
寺山修司 『奴婢訓』
中野好夫 『スウィフト考』 岩波新書

| | | コメント (0)

2024年7月 1日 (月)

【読】2024年6月に読んだ本(読書メーター)

6月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2290
ナイス数:150

三省堂国語辞典から 消えたことば辞典三省堂国語辞典から 消えたことば辞典感想
「新明解国語辞典」(新解)は、よく知っていて、面白いなと思っていたが、その前身に「明解国語辞典」(明国)→「三省堂国語辞典」(三国)という歴史があったとは、知らなかった。「明国」「三国」という略称も、おかしい。いずれも編者の個性(編集方針)が色濃く出ている辞典。そこから消えたことばも、懐かしかったり、時代に密着したものだったり。言葉は時代とともに生きているものだと、あらためて痛感。面白い一冊だった。図書館本。
読了日:06月02日 著者:見坊 行徳,三省堂編修所

もっと悪い妻もっと悪い妻感想
一年ほど前に出た桐野さんの新刊。といっても、次の新刊がもうすぐ出るらしい。新古書店で見かけて、よほど買って読もうかと思ったが、ページ数の割には高かったので、図書館に予約。順番がまわってくるまで、ずいぶん時間がかかった。桐野さんらしく、日常生活に潜む不気味さを抉り出す、よく出来た短編集(雑誌連載)だったが、いまひとつ満足できなかったのは残念。やはり長編で力を発揮する作家なのかもしれない。図書館から借りてきて、あっという間に読み終えた。
読了日:06月02日 著者:桐野 夏生

墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)感想
日航機123便墜落事故から1年後に書かれた本。ずいぶん前に読んだかもしれないが、憶えていない。あらためて? 読んでみた。まだ事故調査報告書が出されていない時期(報告書「案」は出ていた)。事故原因と言われていた圧力隔壁破損説に基いて書かれているものの、それが尾翼破壊につながったとされることには、疑問を呈している。520人の死者とその遺族の境遇を(毎日新聞記事1985/9/12を引きながら)詳述していたり、生存者・落合さんへの単独インタビュー、関係者からの聞き取りなど、取材の丁寧さが光る。
読了日:06月09日 著者:吉岡 忍

だからあれほど言ったのに (マガジンハウス新書)だからあれほど言ったのに (マガジンハウス新書)感想
タイトルにも魅かれて読んだ図書館本。内田樹が書いた本(文章)が好きだ。実際に会ったことも話を聞いたこともない人だけれど、”武芸者”らしい?率直な文章が好ましい。何よりも様々な気付きを与えてくれる。雑多な文章が集められた中では、子どもたちを「決して傷つけず『無垢な大人』に育て上げる」ことの大切さ、というテーマに共感。また、村上春樹の創作の秘密を解き明かす「村上春樹が描く『この世ならざるもの』」には思わず膝を打った。「日本国憲法は”空語”」「日本(政府)はアメリカの言いなり」などは、いつもの”内田節”。同感。
読了日:06月10日 著者:内田樹

一日一考 日本の政治 (河出新書)一日一考 日本の政治 (河出新書)感想
うるう年の2月29日を含む1年366日、1日ごとに「日本の政治」を考えるヒントになる短い文章(著名人や無名人)を挙げ、著者による短いコメントを付したもの。1日分が新書の1ページにまとめられているので、ときどき開いて読み続けた。6月18日(連合赤軍事件の公判、永田洋子の死刑判決の日)の項、桐野夏生『夜の谷を行く』から引用された部分。原武史さんと桐野夏生さんの対談を思い出した。天皇・皇室関係が多いのも、原武史さんらしい。引用された文章には、知らなかった人物も多く、刺激を受けた。
読了日:06月13日 著者:原武史

書くことの不純 (単行本)書くことの不純 (単行本)感想
今年1月に出た角幡さんの新刊。元新聞記者の角幡さんの文章は、論理的でしっかりしているのだが、私にはなかなか難しい内容だった。加藤典洋、三島由紀夫、開高健らの作品・文章を引きながら、行為と表現にまつわる彼自身の悩みを縷々、書き綴っている。三島由紀夫『金閣寺』を読み込んでいることに、驚いた。読書家なんだな。角幡さんの登山観・冒険観が出ている部分は興味ぶかく、なかでも「羽生と栗城」の章が面白かった。夢枕獏『神々の山嶺』は私の愛読書なので。
読了日:06月17日 著者:角幡 唯介

ノイエ・ハイマートノイエ・ハイマート感想
池澤さんのファンなので、この新刊を知って図書館から借りてきた。「短編と詩、引用などからなる雑多な構成」は意図的なもの。いかにも池澤さんらしい試みだ。”難民”をテーマに、フィクションでありながらリアリティーがあり、胸に迫る。なかでも、満州からの引揚者(これも難民)を描いた『艱難辛苦の十三個月』と、レバノンからの難民(密航者)を描いた『サン・パピエ』の2編がよかった。池澤さんのいい読者ではないが、過去の作品をあらためて読んでみようと思う。メルマガをまとめた『新世紀へようこそ』(正・続2冊)も読むつもり。
読了日:06月19日 著者:池澤 夏樹

オパールの炎 (単行本)オパールの炎 (単行本)感想
桐野夏生さんの新作。「中ピ連」(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)の活動で、いっとき有名になった榎美沙子がモデル――ということを知らずに読み始めた。最後に明かされる”執筆者”(40歳のノンフィクションライター)が、主人公・塙玲衣子の関係者を取材して得られた証言を積み重ねて行く構成。桐野さんらしい凝った仕掛けだ。巻末の謝辞にある木内夏生氏は、どうやら榎美沙子の夫だった人物(ネット検索でどういう人物なのかわかる)。実名小説にしなかったのは、本人を含め関係者が存命だからか。面白い小説だった。
読了日:06月27日 著者:桐野 夏生

九十歳。何がめでたい九十歳。何がめでたい感想
上映中で評判になっている映画を、昨日観た。映画が面白かったので、原作を読んでみようと図書館から借りてきた。地元の図書館には6冊収蔵されているのだが、かろうじて1冊、貸し出されていないものがあった。佐藤愛子さんが書いた本は、たぶん初読。軽妙なエッセイ集。今日借りてきて、あっという間に読み終えた。8年前に週刊誌に連載されたものだが、90歳とは思えない元気な様子(今年、100歳を超えている!)。さわやかな読後感。この人の小説も読んでみようかなと思う。
読了日:06月30日 著者:佐藤愛子

読書メーター

| | | コメント (0)

2023年6月 1日 (木)

【読】2023年5月に読んだ本(読書メーター)

5月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3875
ナイス数:205

真珠とダイヤモンド 上真珠とダイヤモンド 上感想
今年2月に出たばかり。人気作家・桐野夏生の新作とあって図書館の順番待ちに並ぶこと2か月、ようやく手元に届いた。1986年、バブル最盛期の証券会社。マネーゲームの異様な熱気。その時代に一攫千金を夢みる3人の証券会社新入社員が主役。上巻の冒頭は、ホームレスに近い境遇まで身をやつした、そのうちの一人の女性の描写から始まり、遡って、過去の入社当時の"生き馬の目を抜く"証券会社の様子が異様な迫力で描かれる。話の展開が桐野夏生らしく、いかにも"ストーリーテラー"だなと、感心させられる。興奮しつつ、一気に読了。下巻へ。
読了日:05月01日 著者:桐野 夏生

真珠とダイヤモンド 下真珠とダイヤモンド 下感想
下巻もいっきに読了。プロローグで感じた謎が、エピローグで閉じる、みごとな展開。タイトルの謎も最後に明かされる(薄汚れた真珠と、輝かないダイヤ)。バブルの時代から、それがはじけて数十年。コロナ後の日本社会。この作品でも、女性の生き難さが描かれる。桐野夏生らしい、社会問題を扱った傑作。桐野作品は、どれも救いようのない話ばかりなのだが、私はこの作家が次々と生み出す作品を、これからも追い続けるだろう。
読了日:05月02日 著者:桐野 夏生

間違う力 (角川新書)間違う力 (角川新書)感想
タイトルがずっと気になっていた本。ようやく手に入れて読むことができた。高野さんには珍しい新書(親本は2010年刊行の単行本)。世に「〇〇する力」の類いの本は多いが、これはいかにも高野さんらしい内容。災い転じて…というが、何でもポジティブに捉える高野さんらしく、爽快な逸話満載。仲のいい内澤旬子さんのことも書かれていて、内澤ファンの私にはうれしい。革張り本を作りたいために屠畜の世界へ(『世界屠畜紀行』)、さらに自分で豚を飼育してしまう(『飼い喰い』)…そんな内澤さんと高野さんは似ているのかも。好奇心と実践力。
読了日:05月03日 著者:高野 秀行

楊令伝 14 星歳の章 (集英社文庫)楊令伝 14 星歳の章 (集英社文庫)感想
いよいよ終盤。この巻の最終章が泣かせる。南宋との戦で郭盛が壮烈な死を遂げ、史進は愛馬を死なせてしまう。史進の人間味がいい。この巻を読んでいて思ったのだが、楊令が思い描く「国」の姿には、作者・北方謙三の想いが込められている気がする。「岳飛伝」につながる次巻・最終巻が楽しみだ。文庫解説の東えりかは、元北方事務所の秘書だったとか。この解説もいい。
読了日:05月04日 著者:北方 謙三

楊令伝 15 天穹の章 (集英社文庫)楊令伝 15 天穹の章 (集英社文庫)感想
最終巻をいっきに読了。15巻、長かった。楊令の死は、はじめから予想(覚悟)していたが、こんな最期になるとは…。大将どうしの一騎打ちというか決闘で終わらせるところに、ちょっと違和感もあるが、北方流ハードボイルド的味わい。このあと『岳飛伝』で、楊令が願った民の国への想いは、岳飛に受け継がれるのだろうか。「大水滸伝」三部作の最終作品『岳飛伝』がどのような展開になるのか知らないが、岳飛も秦檜も南宋の実在人物だと知ったので、期待しよう。日本や西域も、ますます、からんでくるのだろうな。
読了日:05月05日 著者:北方 謙三

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)感想
積読本を思いだして読んだ。新書にしては分厚い本だったが、軽快な文章で、すいすい読めた。写真も満載。ひさしぶりの「エンタメノンフ」を堪能。本書に記載されている「ナショジオ日本語版」の「【研究室】研究室に行ってみた。モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所 サバクトビバッタ 前野ウルド浩太郎」連載記事をみつけた。https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140114/379960/ 私が敬愛する高野秀行さんとのつながりも、読後の検索で知った(Twitter)。
読了日:05月07日 著者:前野ウルド浩太郎

無言館 (アートルピナス)無言館 (アートルピナス)感想
地元の図書館の片隅に、利用者が不要になった本を置いていく「無料交換棚」がある。ほしい本があれば勝手に持ち帰ってよい。そこでみつけた一冊。上田市の「無言館」のことは知っていたが、行ったことはない。戦没画学生たち(ほとんどが繰上卒業、学徒動員で戦地に赴いた)の遺作集。私の父親より少しだけ年長の青年たちの経歴を読む。こういう才能ある画家・彫刻家まで動員しなければいけなかった(戦える兵士が残っていなかった)、あの戦争の理不尽を思う。
読了日:05月08日 著者:窪島 誠一郎

私たちはどこから来て、どこへ行くのか: 科学に「いのち」の根源を問う (単行本)私たちはどこから来て、どこへ行くのか: 科学に「いのち」の根源を問う (単行本)感想
これも積読本だったもの。古書店の店頭均一棚にあったのをタイトルに惹かれて買った。1999年から2003年に書かれたエッセイを集めたもの。タイトルは著者が制作した映画『A』『A2』に因む。オウム信者を扱ったこの2本の映画に関するエッセイがほとんど。私は知らなかった映画なのだが、なるほど、そんなことがあったのかと。この著者の小説『千代田区一番一号のラビリンス』(2023年3月)や『日本国憲法』(2007年/太田出版)も読んだが、どんな人かわかった気がする。『放送禁止歌』(知恵の森文庫/2003年)も読みたい。
読了日:05月10日 著者:森 達也

放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法感想
つい先日読んだ高野さんの『間違う力』(角川新書/親本は2010年出版)で知った本。絶版だったので中古本を入手。2009年11月出版だから、その少し前に上智大学で非常勤講師を務めたとき(東南アジア文化論)、ご自身の知り合い9人を呼んで、高野さんを聴き手に話してもらったときの内容。自由でユニークな生き方をしてきたゲストたちと、高野さんとの、掛け合い漫才を聴くようで、じつに面白い。卒業後の就職・進路に悩む学生の気もちが”癒された”というのも納得。こういう人生もあるのかと思うと、たしかに、生きていくのが楽になる。
読了日:05月11日 著者:高野 秀行,二村 聡,下関 崇子,井手 裕一,金澤 聖太,モモコモーション,黒田 信一,野々山 富雄,姜 炳赫

アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)感想
「アフリカの日々」は、長大で、私には散漫な印象。読むのに苦労した(途中でやめようかと思ったが、なんとか読み通した)。メイ・サートンの『夢見つつ深く植えよ』に通じる味わいではあったが…。独立前のケニヤ、野生動物をやたらとハンティングする感覚には違和感も。いっぽう、「やし酒飲み」は抜群に面白く、いっきに読み終えた。私だけの印象かもしれないが、アイヌに伝わるユカラやウェペケレを想起させる。なんという豊饒な世界! この作者チュツオーラにも興味がわく。
読了日:05月17日 著者:イサク・ディネセン,エイモス・チュツオーラ

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)「空気」と「世間」 (講談社現代新書)感想
この著者の『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』 (講談社現代新書/2017年)を読んだことがあるのと、本書のタイトルに惹かれて買ったままだった積読本。かつて阿部謹也が論じた「世間」と、山本七平が論じた「空気」を引き合いに出して、「空気を読む(読め)」と言われるようになった昨今の「空気」とは、「世間」が流動化したものなのだと喝破。興味深くはあったし、視点の鋭さを感じるところもあったが、いまひとつピンとこなかった。導入としてお笑い番組の「空気」をとりあげているところから、ちょっと読む気が半減。
読了日:05月22日 著者:鴻上 尚史

岳飛伝 1 三霊の章 (集英社文庫)岳飛伝 1 三霊の章 (集英社文庫)感想
ついに北方謙三「大水滸伝」三部作の最終作に突入。期待を裏切らないスケールの大きな物語の始まりだ。偉大な頭領・楊令を失った喪失感をそれぞれの胸に秘めながら、梁山泊の生き残りたちの人間味あふれる苦悩がよく描かれている。王貴や張朔といった梁山泊二世たちの今後の活躍や、あらたに登場した耿魁(こうかい)という魅力的な人物のこれから先も楽しみだ。岳飛と一兵卒との会話が印象的だった。子午山の公淑・郝嬌の二人の女性の会話も胸を打つ。原泰久(漫画家)による巻末解説がいい。
読了日:05月31日 著者:北方 謙三

読書メーター

| | | コメント (0)

2023年5月 7日 (日)

【読】桐野夏生の新作

桐野夏生、ひさびさの新作を読んだ。
人気作家とあって、図書館では予約待ちが長かった。
3か月近く待っただろうか。
ようやく順番がきて、上巻が届いたと思ったら、すぐに下巻も。
ちょうど、池澤夏樹の大作『また会う日まで』と重なったので、がんばって読んだ。

桐野夏生 『真珠とダイヤモンド』(上) 毎日新聞出版 (2023/2/2) 368ページ
桐野夏生 『真珠とダイヤモンド』(下) 毎日新聞出版 (2023/2/2) 288ページ

https://amzn.to/3XJBSGC

https://amzn.to/4biK03X

題名が謎だったが、終盤に解き明かされる。

プロローグとエピローグの対比、終盤のどんでん返しのような思いがけない展開。
桐野夏生らしい巧みな構成で、読む者をぐいぐい引き込む。
さすがだ。

週刊誌(サンデー毎日)連載だったらしい。
あらためて、桐野夏生のパワーに脱帽。

Interview:桐野夏生さん(作家) 狂乱の時代、総括せねば バブル期描く新作『真珠とダイヤモンド』 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230313/dde/014/040/005000c

| | | コメント (0)

2022年12月25日 (日)

【読】いつも読みたい本ばかり(2022年総集編に代えて)

毎年、年末に「総集編」と題して一年間の振り返りをしている。

今年は、「読書メーター」というサイトでの毎月のまとめ記事をアップしてきたこともあり、別の形でここにまとめておこう。

読書メーター(読んだ本)
https://bookmeter.com/users/466409/books/read

「いつも読みたい本ばかり」、これは渡辺一枝さんの本の題名。

https://amzn.to/4fduqsa

 Photo_20221225215601  

私も「読みたい本」が手元に山のようにある。
一生かけても読み切れないほどの「つんどく本」がありながら、図書館から借りたり、新刊・古本を買い求めたりしている。
「読みたい本」は増え続けるのに、読める時間には限りがある、このジレンマ。

増え続ける蔵書については、手元にあることの効用、ということも信じているのだが、はたして。

死ぬ前までには整理しなくては。
もしも、整理できずにぽっくり逝ってしまったら、馴染みの古本屋さんにまとめて引き取ってもらおう。
残された人たちには、なんでここまで溜め込んだのかと、呆れられることだろうな。

さて、今年一年間に読んだ本。
作者別にまとめてあげておこう。
なかには、読めなかったが、いつか読みたい本も混じっている。

★印は図書館本 ●印は手元にあって未読

岸政彦 ・・・今年知った人
『街の人生』 勁草書房 (2014/5/20) 306ページ ★
『マンゴーと手榴弾 -生活史の理論-』 勁草書房 (2018/10/20) 341ページ ★

https://amzn.to/4gq4R8o

五木寛之 ・・・この先、あまり読まないかも(昔の本で再読したいものはある)
『一期一会の人びと』 中央公論新社 (2022/1/10) 222ページ ★
『捨てない生きかた』 マガジンハウス新書 (2022/1/27) 197ページ ★
『重箱の隅』 文春文庫 (1984/11/25) 367ページ (単行本1979/5文芸春秋社刊)
 ※1975/12/10~1976/4/11夕刊フジ連載

https://amzn.to/3ZFTELl

https://amzn.to/3OMwJYC

『僕はこうして作家になった―デビューのころ―』 幻冬舎文庫 (2005/9/30) 255ページ ●未読
『にっぽん漂流』 文春文庫 (1977/11/25) 236ページ ※単行本をAmazonで購入 ●未読

■桐野夏生 ・・・たくさん読んだ(既刊の小説は、ほぼすべて)

桐野夏生: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat24350732/index.html

『砂に埋もれる犬』 朝日新聞出版 (2021/10/30) 494ページ ★

https://amzn.to/3VwmDyO

『バラカ(上)』 集英社文庫 (2019/2/25) 400ページ
『バラカ(下)』 集英社文庫 (2019/2/25) 468ページ
『夜の谷を行く』 文春文庫 (2020/3/10) 329ページ
『だから荒野』 文春文庫 (2016/11/10) 459ページ
『ジオラマ』 新潮文庫 (2001/10/1) 294ページ ※自著あとがき(解題)あり
『残虐記』 新潮文庫 (2007/8/1) 255ページ
『水の眠り 灰の夢』 文春文庫 (2016/4/10) 476ページ ※村野ミロシリーズ
『ローズガーデン』 講談社文庫 2003/6/15 279ページ ※短編集
『はじめての文学 桐野夏生』 文藝春秋 (2007/8/10) 273ページ ★
『リアルワールド』 集英社文庫 (2006/2/25) 282ページ
『奴隷小説』 文春文庫 (2017/12/10) 187ページ ※解説 白井聡 ★
『冒険の国』 新潮文庫 (2005/10/1) 166ページ ★
『天使に見捨てられた夜』 講談社文庫 (1997/6/15) 420ページ ★
『玉蘭』 文春文庫 (2005/6/10) 388ページ ★
『顔に降りかかる雨』 講談社文庫 (1996/7/15) 404ページ ★
『ダーク(上)』 講談社文庫 (2006/4/15) 296ページ ★
『ダーク(下)』 講談社文庫 (2006/4/15) 349ページ ★
『錆びる心』 文春文庫 (2000/11/10) 397ページ
『対論集 発火点』 文春文庫 (2012/12/10) 278ページ
『光源』 文春文庫 (2003/10/10) 428ページ
『とめどなく囁く』 幻冬舎 (2019/3/25) 445ページ ★
『白蛇教異端審問』 文春文庫 (2008/1/10) 303ページ ※エッセイ集
『ポリティコン(上)』 文春文庫 (2014/2/10) 494ページ ★
『ポリティコン(下)』 文春文庫 (2014/2/10) 468ページ ※解説:原武史 ★
『燕は戻ってこない』 集英社 (2022/3/10) 445ページ
『ロンリネス』 光文社文庫 (2021/8/20) 504ページ
『ハピネス』 光文社文庫 (2016/2/20) 450ページ
『魂萌え!(上)』 新潮文庫 (2006/12/1) 335ページ

『魂萌え!(下)』 新潮文庫 (2006/12/1) 292ページ
『抱く女』 新潮文庫 (2018/9/1) 362ページ
『猿の見る夢』 講談社文庫 (2019/7/12) 609ページ
『メタボラ』 文春文庫 (2011/8/10) 684ページ (ブックオフ 2022/3/21 ¥520)
『優しいおとな』 中公文庫 (2013/8/25) 371ページ
『路上のX』 朝日文庫 (2021/2/28) 510ページ
『グロテスク(上)』 文春文庫 (2006/9/10) 397ページ
『グロテスク(下)』 文春文庫 (2006/9/10) 453ページ
『I'm sorry, mama』 集英社文庫 (2007/11/25) 262ページ
『緑の毒』 角川文庫 (2014/9/25) 332ページ
『IN』 集英社文庫 (2012/5/25) 376ページ
『夜また夜の深い夜』 幻冬舎文庫 (2017/8/5) 430ページ
『デンジャラス』 中公文庫 (2020/6/25) 330ページ

【関連本】・・・桐野さんに凝って、こんな本にまで手を出した
現代女性作家読本刊行会(編)
『現代女性作家読本⑰ 桐野夏生』 鼎書房 (2013/11/15) 163ページ

松岡理英子・江國香織・角田光代・町田康・金原ひとみ・島田雅彦・日和聡子・桐野夏生・小池昌代
『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』 新潮社 (2008/10/30) 285ページ ★ ●未読

佐々木敦
『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 メディア総合研究所 (2011/7/24) 389ページ ★
 ※第10章 桐野夏生 「作家がものを書く」

阿川佐和子/東浩紀/岩田健太郎/桐野夏生/他
『私たちはどう生きるか コロナ後の世界を語る2』 朝日新書831
(2021/8/30) 192ページ ★ ◎一部読

『小説新潮別冊 Shincho Mook The COOL! 桐野夏生スペシャル』 (2005/9/28) 159ページ ◎一部読

■原武史 ・・・この人の本は、今後も少しずつ読みたい
『最終列車』 講談社 (2021/12/8) 328ページ ★
『滝山コミューン一九七四』 講談社文庫 (2010/6/15) 343ページ ※解説:桐野夏生

https://amzn.to/41iSE0V

『増補新版 レッドアローとスターハウス もうひとつの戦後思想史』 新潮選書 (2019/5/20) 442ページ ★ ●未読

■森達也 ・・・話題になった新作、他
『千代田区一番一号のラビリンス』 現代書館 (2022/3/20) 382ページ ★

https://amzn.to/4g2bvC1

『日本国憲法』 太田出版 (2007/1/30) 276ページ ★

■島田雅彦 ・・・東京新聞連載で読んでいたものを、単行本でいっきに
『パンとサーカス』 講談社 (2022/3/22) 597ページ ★

https://amzn.to/4gppwti

■朝倉喬司 ・・・この人にも関心がある
『戦争の日々―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント―(上)』 現代書館 (2009/1/25) 230ページ ★
『戦争の日々―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント―(下)』 現代書館 (2009/12/8) 238ページ ★

■左巻健男 ・・・何で知ったのか覚えていないが、たまにはこういう本も面白い
『こんなに変わった理科教科書』 ちくま新書1644 (2022/4/10) 257ページ

■藤原辰史(ふじはら・たつし) ・・・この人にも注目、読みたい本がたくさんある
『食べるとはどういうことか 世界の見方が変わる三つの質問』 農文協 (2019/3/1) 175ページ ★
『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』 中公新書2451 (2017/9/25) 270ページ
『[決定版]ナチスのキッチン 「食べること」の環境史』 共和国 (2016/7/10) 477ページ ●未読

https://amzn.to/4is1XSs

『カブラの冬 第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆 レクチャー第一次世界大戦を考える』
 人文書院 (2011/1) 154ページ ●未読

■岡崎武志 ・・・ひさしぶりに読んだオカタケさんの近刊
『ドク・ホリディが暗誦するハムレット――オカタケのお気軽ライフ』 春陽堂書店 (2021/11/20) 238ページ ★

https://amzn.to/4g1H9zj

■南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ) ・・・岡崎武志さんつながり
『古本マニア採集帖』 皓星社 (2021/12/15) 271ページ ★

■河田桟 ・・・与那国島在住、馬と猫と暮らす人
『ウマと話すための7つのひみつ』 偕成社 (2022/10) 47ページ ★ ※池澤夏樹さんのネット記事で知った

https://amzn.to/3Zt9ebW

■高野秀行 ・・・私の好きな高野さんの新刊、大ヒットして入手困難だった
『語学の天才まで1億光年』 集英社インターナショナル (2022/9/10・2022/10/26第3刷) 334ページ ★

https://amzn.to/3D0TIMW

高野秀行: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat21181618/index.html

■向井透史(むかい・とし/古書現生店主) ・・・これもネットと新聞書評で知った

『早稲田古本劇場』 本の雑誌社 (2022/9/5) 377ページ ★

https://amzn.to/3D3jDUh

東京新聞書評(評者:内澤旬子) 2022年10月30日 掲載
<書評>『早稲田古本劇場』向井透史(とうし) 著 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
https://www.bookbang.jp/review/article/743416

■内澤旬子 ・・・私が大好きな内澤旬子さんの新刊、大ヒットらしい
『カヨと私』 本の雑誌社 (2022/7/16) 252ページ ★

https://amzn.to/3ZGvReg

<書評>『カヨと私』内澤旬子 著 2022年9月25日 (評者:服部文祥
https://www.tokyo-np.co.jp/article/204405

内澤旬子: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat21379484/index.html

【関連本】
ヴェルマ・ウォーリス/亀井よし子(訳)
『ふたりの老女』 草思社 (1995/2/20) 190ページ ★ ※内澤旬子さんのツイッターで知った

https://amzn.to/3ZJp2su

宮田珠己/網代幸介(画)
『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』 大福書林 (2021/10/10) 367ページ
 ※内澤旬子さんのブログで知った ●未読

■群ようこ/牧野伊三夫(挿画)
『かもめ食堂』 幻冬舎文庫 (2008/8/10) 216ページ

■小松由佳
『人間の土地へ』 集英社インターナショナル (2020/9/30) 251ページ ※再読

https://amzn.to/3BeOSep

小松由佳: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat24342002/index.html

■関野吉晴
『えほんのひろば 草原の少女プージェ』 小峰書店 (2006/12/26) 35ページ ★

https://amzn.to/41nO6GE

関野吉晴: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat21692270/index.html

■金井真紀(文・絵) ・・・今年の収穫
『日本に住んでる世界のひと』 大和書房 (2022/11/30) 239ページ ★

https://amzn.to/41pHY0G

『世界はフムフムで満ちている――達人観察図鑑』 ちくま文庫 (2022/6/10) 237ページ

■奥野克巳 ・・・この本もネットで知った
『一億年の森の思考法 人類学を真剣に受け取る』 教育評論社 (2022/5/26) 279ページ ★

■野田サトル ・・・今年、シリーズ完結を機に、一気読み
『ゴールデンカムイ 1』 集英社 (2015/1/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 2』 集英社 (2015/2/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 3』 集英社 (2015/5/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 4』 集英社 (2015/8/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 5』 集英社 (2015/12/23) ※再読
『ゴールデンカムイ 6』 集英社 (2016/2/23) ※再読
『ゴールデンカムイ 7』 集英社 (2016/4/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 8』 集英社 (2016/8/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 9』 集英社 (2016/11/23) ※再読
『ゴールデンカムイ 10』 集英社 (2017/3/22) ※再読
『ゴールデンカムイ 11』 集英社 (2017/8/22) ※再読
『ゴールデンカムイ 12』 集英社 (2017/12/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 13』 集英社 (2018/2/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 14』 集英社 (2018/6/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 15』 集英社 (2018/9/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 16』 集英社 (2018/12/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 17』 集英社 (2019/3/24) ※再読
『ゴールデンカムイ 18』 集英社 (2019/6/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 19』 集英社 (2019/9/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 20』 集英社 (2019/12/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 21』 集英社 (2020/3/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 22』 集英社 (2020/6/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 23』 集英社 (2020/9/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 24』 集英社 (2020/12/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 25』 集英社 (2021/3/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 26』 集英社 (2021/6/23) ※初読
『ゴールデンカムイ 27』 集英社 (2021/9/22) ※初読
『ゴールデンカムイ 28』 集英社 (2021/12/22) ※初読
『ゴールデンカムイ 29』 集英社 (2022/4/24) ※初読
『ゴールデンカムイ 30』 集英社 (2022/6/22) ※初読
『ゴールデンカムイ 31』 集英社 (2022/7/24) ※初読

【関連本】
中川裕
『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』 集英社 (2019/3/20) ※再読 (初読:2019/5/13)

https://amzn.to/3D8EVzS

瀬川拓郎(監修)
『カラー版 1時間でわかるアイヌの文化と歴史』 宝島社新書 (2019/6/24) 223ページ

アイヌ民族・アイヌ語: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat20297702/index.html

山岳関係、旅の本

高橋大輔
『剱岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む』 朝日新聞出版 (2020/8/30) 259ページ ★

山と渓谷社(編)
『日本人とエベレスト―植村直己から栗城史多まで』 山と渓谷社 (2022/3/1) 446ページ ★

近藤謙司
『ぼくは冒険案内人』 山と渓谷社 (2014/12/5) 237ページ ★

『近藤謙司とシミュレートするエベレスト登山 Kindle版』 ゴマブックス (2014/4/25) 115ページ
下川裕治
『「おくの細道」をたどる旅 路線バスと徒歩で行く1612キロ』 平凡社新書999 (2022/3/15) 235ページ ★

服部文祥
『You are what you read. あなたは読んだものにほかならない』 本の雑誌社 (2021/2/22) 261ページ ★

https://amzn.to/4f6a58a

服部文祥: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat22703334/index.html

『お金に頼らず生きたい君へ 廃村「自力」生活記』 河出書房新社(14歳の世渡り術シリーズ)
(2022/10/30) 270ページ ※10/21「地球永住計画」トークイベント会場で購入(著者サイン本)

https://amzn.to/4ipeNAC

ジョン・クラカワー/梅津正彦(訳)
『空へ 悪夢のエヴェレスト 1996年5月10日』 ヤマケイ文庫 (2013/8/1) 509ページ

トミー・コールドウェル/堀内瑛司(訳)
『ザ・プッシュ ヨセミテ エル・キャピタンに懸けたクライマーの軌跡』 白水社 (2019/8/15) 449ページ ★

https://amzn.to/49tnJ42

石川直樹
『 補新版 いま生きているという冒険』 新曜社 (2019/5/15) 311ページ ★

『ぼくの道具』 平凡社 (2016/1/20) 217ページ ★
アレックス・オノルド/デイビッド・ロバーツ/堀内瑛司(訳)
『ALONE ON THE WALL 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡』 山と渓谷社 (2016/3/5) 342ページ ★

以上、全部ではないが、主な本をあげてみた。
今日12/25現在、今年読んだ本は130冊
コミックで稼いでいるが、これは私の年間新記録。

そして、来年にかけて読破したいのが、北方謙三版「水滸伝」(全19巻)。
20代の頃から、何度も読もうとしたが果たせず。
「水滸伝」にはいろいろな版があるようだが、物語性に富んでいそうな北方版を選んでみた。
中古の文庫本を、とりあえず2冊買ってきて読み始めた。
こういう大河小説を読み通すには、気合と根気が必要。

北方謙三
『水滸伝 一 ―― 曙光の章』 集英社文庫 (2006/10/25) 388ページ ※解説:北上次郎

<北宋末、中国。砂塵をまいて、泥河をこえて、英雄たちが奔る! 原典を読み込み大胆に再構築、中国古典英雄譚に新たな生命を吹き込んだ、21世紀に蘇る決定版「水滸伝」いよいよ登場!> Amazonより

北方謙三: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/cat24379193/index.html


【了】

 

| | | コメント (0)

2022年8月19日 (金)

【読】桐野夏生 萌え(続)

桐野夏生の作品を読み始めたのは、最近のこと。
昨年2021年3月だった。

『アンボス・ムンドス』という短編集(文春文庫)。
「読書メーター」に、記録がある。

https://bookmeter.com/books/14845471

<タイトルに惹かれて手に取った文庫。表題作「アンボス・ムンドス」は、以前、アンソロジー「日本文学100年の名作第10巻」(新潮文庫、池内紀・川本三郎・松田哲夫/編)に収録されていたのを読んで感銘を受けた作品だった。読後に余韻を残す7つの短・中編集。桐野夏生という作家が紡ぎ出す世界は、一作ごとに違う貌を持っていて、あらためてその才能に感心する。人間の心の闇に気づかされる。小説の醍醐味を味わった。>

そうか、そういうきっかけで読み始めたのだったか。

いや、その前に『柔らかな頬』(直木賞受賞作)を文庫(上下2巻)で読んでいたっけ。

→ 【読】桐野夏生 萌え!: やまおじさんの流されゆく日々
https://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2022/05/post-57c606.html

その後、おもに新古書店(ブ)で文庫本を買い集めては、断続的に読んできた。
読み終えた本は、次々と”ブ”へ売却。

新古書店で見つからなかった本は、図書館からも借りた。
なかには文庫化されていない最近の単行本もあるが、文庫を優先するのは、巻末の解説を読みたいから。

このたび、ようやく、これまで発表された桐野作品を、ほぼすべて読了しそう。
ただし、『ファイアーボール・ブルース』という、女子プロレスを扱った2作だけは、読んでいないし、本格テビュー前のロマンス小説も見たことがなく、未読。
数えてみると、40作を超える作品を読んでいる。
私にとって、それほど魅力ある作家なのだ。
(もちろん、桐野夏生は好き嫌いが大きく分かれる作家ということは承知しているが)

桐野夏生HP -BUBBLONIA-
http://www.kirino-natsuo.com/

桐野夏生 | ダ・ヴィンチWeb
https://ddnavi.com/person/2327/

最後に今読んでいるのは、これ。

https://amzn.to/3ZFaOsu

以下、私がこれまでに読んだ桐野作品の記録。
たぶん、単行本の刊行順。
個人的なメモです。

***

【2022/8/19現在】 ●読了 ▲読了(図書館本) ・未読

・ファイアボール・ブルース―逃亡(1995年1月 集英社)
 【改題】ファイアボール・ブルース(1998年5月 文春文庫) ※未読
OUT(1997年7月 講談社 / 2002年6月 講談社文庫【上・下】) ※第51回日本推理作家協会賞受賞作
錆びる心(1997年11月 文藝春秋 / 2000年11月 文春文庫 / 2006年1月 大活字文庫【上・下】)
 所収作品:虫卵の配列 / 羊歯の庭 / ジェイソン / 月下の楽園 / ネオン / 錆びる心
ジオラマ(1998年11月 新潮社 / 2001年10月 新潮文庫)
 所収作品:デッドガール / 六月の花嫁 / 蜘蛛の巣 / 井戸川さんについて / 捩れた天国 / 黒い犬 / 蛇つかい / ジオラマ / 夜の砂
柔らかな頬(1999年4月 講談社 / 2004年12月 文春文庫【上・下】) ※1999年第121回直木三十五賞受賞作
光源(2000年9月 文藝春秋 / 2003年10月 文春文庫)
玉蘭(2001年3月 朝日新聞出版 / 2004年2月 朝日文庫 / 2005年6月 文春文庫) ※図書館 3/26- (文春文庫)
・ファイアボール・ブルース2(2001年8月 文春文庫) ※未読
リアルワールド(2003年2月 集英社 / 2006年2月 集英社文庫) ※図書館 3/27- (文庫)
グロテスク(2003年6月 文藝春秋 / 2006年9月 文春文庫【上・下】)
残虐記(2004年2月 新潮社 / 2007年8月 新潮文庫)- 週刊アスキー連載。連載時タイトルは「アガルタ」。桃源郷としての「アガルタ」を全く知らないままタイトルとして採用したとのこと
I'm sorry, mama(2004年11月 集英社 / 2007年11月 集英社文庫)
魂萌え!(2005年4月 毎日新聞社 / 2006年12月 新潮文庫【上・下】) ※Amazon購入
冒険の国(2005年10月 新潮文庫) ※図書館 3/26- (文庫)
アンボス・ムンドス(2005年10月 文藝春秋 / 2008年11月 文春文庫)
 所収作品:植林 / ルビー / 怪物たちの夜会 / 愛ランド / 浮島の森 / 毒童 / アンボス・ムンドス
メタボラ(2007年5月 朝日新聞社 / 2010年7月 朝日文庫【上・下】 / 2011年8月 文春文庫)
東京島(2008年5月 新潮社 / 2010年5月 新潮文庫)
女神記(2008年11月 角川書店 / 2011年11月 角川文庫)
IN(2009年5月 集英社 / 2012年5月 集英社文庫)
ナニカアル(2010年2月 新潮社 / 2012年10月 新潮文庫)
優しいおとな(2010年9月 中央公論新社 / 2013年8月 中公文庫)
ポリティコン(2011年2月 文藝春秋【上・下】 / 2014年2月 文春文庫【上・下】) ※図書館4/23~
緑の毒(2011年8月 角川書店 / 2014年9月 角川文庫)
ハピネス(2013年2月 光文社 / 2016年2月 光文社文庫)
だから荒野(2013年10月 毎日新聞社 / 2016年11月 文春文庫)
夜また夜の深い夜(2014年10月 幻冬舎 / 2017年10月 幻冬舎文庫)
奴隷小説(2015年1月 文藝春秋 / 2017年12月 文春文庫) ※図書館 3/26- (文庫)
 所収作品:雀 / 泥 / 神様男 / REAL / ただセックスがしたいだけ / 告白 / 山羊の目は空を青く映すか Do Goats See the Sky as Blue?
抱く女(2015年6月 新潮社 / 2018年8月 新潮文庫)
バラカ(2016年3月 集英社 / 2019年2月 集英社文庫【上・下】)
猿の見る夢(2016年8月 講談社 / 2019年7月 講談社文庫)
夜の谷を行く(2017年3月 文藝春秋 / 2020年3月 文春文庫)
デンジャラス(2017年6月 中央公論新社 / 2020年6月 中公文庫)
路上のX(2018年2月 朝日新聞出版 / 2021年2月 朝日文庫)
ロンリネス(2018年6月 光文社 / 2021年8月 光文社文庫)
とめどなく囁く(2019年3月 幻冬舎) ※図書館4/23~
日没(2020年9月 岩波書店)
インドラネット(2021年5月 KADOKAWA)
砂に埋もれる犬(2021年10月 朝日新聞出版)
燕は戻ってこない(2022年3月4日 集英社)

【小説 村野ミロシリーズ】
顔に降りかかる雨(1993年9月 講談社 / 1996年7月 講談社文庫 / 2017年6月 講談社文庫【新装版】)
天使に見捨てられた夜(1994年6月 講談社 / 1997年6月 講談社文庫 / 2017年7月 講談社文庫【新装版】) ※図書館 3/26- (1997版文庫)
水の眠り灰の夢(1995年10月 文藝春秋 / 1998年10月 文春文庫 / 2016年4月 文春文庫【新装版】)
ローズガーデン(2000年6月 講談社 / 2003年6月 講談社文庫 / 2017年8月 講談社文庫【新装版】))
 収録作品:ローズガーデン / 漂う魂 / 独りにしないで / 愛のトンネル
ダーク(2002年10月 講談社 / 2006年4月 講談社文庫【上・下】) ※図書館

【ロマンス小説】
・愛のゆくえ(1984年12月 サンリオニューロマンス)
・熱い水のような砂(1986年2月 サンリオニューロマンス)
・真昼のレイン(1986年7月 サンリオニューロマンス)
・夏への扉(1988年1月 双葉社) ※桐野夏子名義
・夢の中のあなた(1989年3月 双葉社) ※桐野夏子名義
・ジュニア小説(野原野枝実名義)
・恋したら危機!(1989年8月 MOE文庫)
・あいつがフィアンセだ!(1989年8月 MOE文庫)
・小麦色のメモリー(1989年8月 MOE文庫)
・トパーズ色のband伝説(1989年10月 MOE文庫)
・恋したら危機! パート2(1989年12月 MOE文庫)
・媚薬(1990年3月 MOE文庫)
・恋したら危機! パート3(1990年5月 MOE文庫)
・急がないと夏が… プールサイドファンタジー(1990年7月 MOE文庫)
・セントメリークラブ物語1 セントメリーのお茶会にどうぞ(1990年10月 MOE文庫)
・セントメリークラブ物語2 銀の指輪は冷たく輝く(1991年1月 MOE文庫)
・ガベージハウス、ただいま5人(1991年3月 コバルト文庫)
・涙のミルフィーユボーイ(1992年1月 コバルト文庫)
・ルームメイト薫くん 1-3(1993年-94年 偕成社)

【エッセイ集】
蛇教異端審問(2005年1月 文藝春秋 / 2008年1月 文春文庫) - エッセイ集
The cool!桐野夏生スペシャル(2005年9月 小説新潮別冊 - Shincho mook)- 書き下ろし作「朋萌え!」や未発表作「プール」他、25ページにわたるカラーグラビア等、桐野夏生の基本情報が掲載

【対談集】
発火点(2009年9月 文藝春秋 / 2012年12月 文春文庫)

 

| | | コメント (0)

2022年8月 1日 (月)

【読】2022年7月に読んだ本(読書メーター)

7月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:6128
ナイス数:201

ALONE ON THE WALL アローン・オン・ザ・ウォール 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡ALONE ON THE WALL アローン・オン・ザ・ウォール 単独登攀者、アレックス・オノルドの軌跡感想
トミー・コールドウェルの『ザ・プッシュ』で知ったクライマー アレックス・オノルド(ホノルドと表記するのが正しいらしいが)とデイヴィッド・ロバーツとの共著。ロープやギヤ類をいっさい使わず、いわば裸一貫で岸壁を登る”フリーソロ”。考えてみれば、きわめて原初的な岩登りのスタイルで、そこに魅力を感じる。もちろん、落ちてしまえば一巻の終わりで、ふつうの人には真似できないことだ。コールドウェルもそうだったが、このオノルドも人間的な魅力に富む人物。手に汗握る映像も見てみたいものだ。
読了日:07月01日 著者:アレックス・オノルド,ディヴィッド・ロバーツ


日本国憲法日本国憲法感想
先日読んだばかりの小説『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)の著者が、2007年に上梓した本。この小説のベースになっているフジテレビの深夜番組「NONFIX」で試みようとしてできなかったことの顛末が、詳しく書かれている。憲法一条と九条への著者の思い・考えが綴られていて、あらためて憲法について考えさせられることが多かった。日本国憲法の最初の単語が「朕(ちん)」だという指摘にハッとした。「朕は、…帝国議会の決議を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。」
読了日:07月03日 著者:森 達也


戦争の日々(上)―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント戦争の日々(上)―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント感想
週刊金曜日2022/4/8号に掲載されていた『千代田区一番一号のラビリンス』の著者・森達也氏へのインタビュー記事を読んだ。そこに現代書館社長の菊地泰博氏へのインタビュー記事もあり、この本が紹介されていた。先の戦争についてはさまざまな本があるが、朝倉喬司氏による上下2巻のこの著作は知らなかった。まさに「戦時下日本のドキュメント」で、当時の指導者たちから巷間の無名の人びとにいたるまで、新聞記事などをたんねんに追って、その実相に迫っている。日米開戦に至る両国の交渉の裏話(米大使グルーの日記など)が興味深い。
読了日:07月07日 著者:朝倉 喬司


戦争の日々〈下〉天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント戦争の日々〈下〉天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメント感想
当時の日記や手記(有名無名を問わず様々な人が遺した)、新聞・雑誌記事、市井の噂や流言飛語などを構成することで、あの戦争の姿をあぶり出す。まさに「実況ドキュメント」。下巻では1941年12月の開戦から、緒戦の勝利に沸く熱狂とそれに続く劣勢、敗戦までの日々が綴られている。終章、沖縄戦での幼女のエピソード(母親と二人で逃げ回っていて母親が死亡、通りがかりの人に拾われて壕に連れて来られたが、食べ物も一切受け付けずひと言も発しなかった)が胸に迫る。昭和18年生れの著者は、この幼女に自分自身を重ね合わせている。
読了日:07月11日 著者:朝倉 喬司


燕は戻ってこない (集英社文芸単行本)燕は戻ってこない (集英社文芸単行本)感想
ひさしぶりに桐野夏生作品を読んだ。2022年3月刊行の最新作。代理母(代理出産の一種)という、きわめて現代的なテーマ。実質的なデビュー作『OUT』につながる「女性たちの困窮と憤怒」(帯の惹句)が描かれる。終幕、主人公リキの決断に、何やら救われる思い。いい後味だった。物語の展開にかかわる「りりこ」の強烈な個性が印象的。
読了日:07月12日 著者:桐野夏生


ロンリネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)ロンリネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)感想
『ハピネス』の続編とは知らず先に読んでしまった。タワーマンションとか、ママ友とか、縁遠い世界だが、主人公女性の懊悩は理解できる。結末にもう少しひねりがあるかと思ったが、これはこれで桐野夏生らしいクロージングかもしれない。『ハピネス』も読まなくては。
読了日:07月14日 著者:桐野 夏生


ハピネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)ハピネス ハピネス・ロンリネス (光文社文庫)感想
先に読んでしまった『ロンリネス』につながる作品。高級タワーマンションに暮らすプチセレブと呼ぶべき主婦たち=ママ友どうしの見栄の張り合いに翻弄される主人公、彼女と親しいヤンママ風の美雨ママ、お受験に奔走する3人のママたち。そこにダブル不倫や主人公と夫との軋轢がからむ。なかなか面白い。作品として未完の感が否めないのは、続編を想定して書かれたからか。文庫解説(斉藤美奈子)の指摘が鋭い。未完ということなら、続編の『ロンリネス』も、その先の展開が気になるところ。光文社のプチセレブ向け女性誌「VERY」連載とのこと。
読了日:07月16日 著者:桐野 夏生


魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)感想
感想は下巻読了後に。文庫上下2巻に分けるほどの分量ではないのに、と思う。たしかに文庫1冊にすると600ページを超える長編だが。
読了日:07月17日 著者:桐野 夏生

 

魂萌え!〔下〕 (新潮文庫)魂萌え!〔下〕 (新潮文庫)感想
桐野夏生らしい作品。文庫解説(星野智幸)によれば、桐野作品には「ホワイト桐野ワールド」と「ブラック桐野ワールド」があるという。たしかに。この小説は「ホワイト」、つまり平凡な専業主婦の平凡な日常からの微妙な脱出(夫の急死であきらかになる事実と彼女の変化)の物語だ。これまで読んだ作品の中では『だから荒野』を連想させる。ラスト、ちょっとしたどんでん返し的エピソードをもってくるあたり、さすがの小説巧者。
読了日:07月18日 著者:桐野 夏生


抱く女 (新潮文庫)抱く女 (新潮文庫)感想
予備知識なく読んだので、タイトルからどんな小説かと思ったが、1972年の時代の匂いが濃厚。桐野さんは私と同年生まれで、内ゲバ時代の当事者世代だったことを思い起す。冒頭、雀荘にたむろする無気力な若者たちの姿にうんざりしながら読んでいたが、女性ジャズシンガーとの出会いあたりから懐かしい思いがした。酒癖の悪いジャズピアニストなど、いかにも居そうで笑ってしまった。主人公直子に頑張れよと声をかけたくなった。時代の色が濃厚だが、普遍的なテーマを内蔵する青春小説といえるだろう。またしばらく桐野ワールドにのめり込みそう。
読了日:07月19日 著者:桐野 夏生


猿の見る夢 (講談社文庫)猿の見る夢 (講談社文庫)感想
これも予備知識なしで読んだが、タイトルが秀逸。自己中心的でいながら、とんでもなく間抜けな主人公(一見、社会的な地位もあり金銭的にも恵まれている会社役員)の破滅へ向かうドジな道のりが、コミカルに描かれている。文庫解説・関川夏央が言うように、こういうサラリーマンは巷にありふれているのかも。物語の展開のテンポが巧妙で、いっきに読ませる。狐につままれたようなラストが不気味。
読了日:07月20日 著者:桐野 夏生


メタボラ (文春文庫)メタボラ (文春文庫)感想
タイトルが謎のまま、予備知識なしで読んだこの小説は、桐野作品の中でも何本指かに入る傑作だと思う。舞台は沖縄。それだけでも私にはうれしいのだが、副主人公ともいえる宮古島出身の男の島言葉が、この男のキャラクターを巧みに現わしていて、さすが桐野夏生だと感心した。主人公の過去が徐々に明かされていく展開も巧み。2005年11月から2006年12月にかけて朝日新聞に連載。現代沖縄の姿がよく描かれている。
読了日:07月22日 著者:桐野 夏生


優しいおとな (中公文庫)優しいおとな (中公文庫)感想
これも傑作。文庫解説で雨宮処凛が「熱烈な桐野ファン」と告白している。雨宮さんには秘かに注目しているので、嬉しい。この小説も、桐野作品らしく現代日本の深刻な問題(貧困問題、家族問題)を、これでもかと抉り出していて、強烈なのだが、どこか人の”優しさ”を信じたくなる、温かなまなざしが感じられる。巻末にあげられている参考文献(学術的で難しそうな書名)を見ると、この作品にこめられた作者の熱意が伝わってくる。
読了日:07月24日 著者:桐野 夏生


路上のX (朝日文庫)路上のX (朝日文庫)感想
桐野夏生作品には「ブラック桐野ワールド」と「ホワイト桐野ワールド」の2種類があるという説を読んだことがあるが、これはブラックもブラック、真っ黒な、現代の女子高生たちをとりまく世界。文庫版解説(仁藤夢乃=Colabo代表)を読むと、これが現代日本の生々しい現実なのだと納得。絶望的な気分になる。少女たちを食い物にする男たち、自分の子どもたちを見捨てるどころか虐待する親たち、隔離施設に閉じ込めることしかしない・できない行政。この現実を直視させられた。物語の展開は、さすが桐野さん。最後の種明かしが秀逸。傑作だ。
読了日:07月26日 著者:桐野 夏生


グロテスク 上 (文春文庫)グロテスク 上 (文春文庫)感想
<名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。>(文庫カバー)とあるが、表題どおり”グロテスク”な世界。ちょと辟易しながら、なんとか読了。上巻ではさまざまな謎が解かれておらず、下巻での展開が楽しみではある。
読了日:07月29日 著者:桐野 夏生

 

グロテスク 下 (文春文庫)グロテスク 下 (文春文庫)感想
下巻の冒頭「張(チャン)の上申書」で物語の流れがガラッと変わり、桐野夏生らしい凝った構成。悪意に満ちた独白と登場人物たちの手記・日記で構成されるおどろおどろしい世界。あまり好きではないが、最後まで読者を引っ張るところは、さすが。好悪が分かれる問題作だと思う。文庫版解説(斉藤美奈子)がなかなか鋭い。
読了日:07月31日 著者:桐野 夏生

読書メーター

| | | コメント (0)

2022年5月19日 (木)

【読】桐野夏生 萌え!

現代日本の流行作家を熱心に追いかけているわけではないので、知らない作家は数多い。
図書館や書店で名前をよく見る現代作家でも、読んだことのない作家がほとんど。
あたりまえといえば、あたりまえだ。

そんななか、桐野夏生という多作で魅力的な作家に出会えたことは、貴重な読書体験といえる。
私の肌に合う作家だった。
最初に読んだのは『柔らかな頬』(直木賞受賞作)。

https://amzn.to/3Zr2qLZ

https://amzn.to/4gpy4A9

これにはショックを受けた。
読んだのはつい最近、昨年2021年3月。
それから1年ちょっとのあいだに、かなりたくさんの作品を読み続けている。
まさに、桐野夏生”萌え”である(※)

※萌え(もえ)とは、日本のサブカルチャーにおけるスラングで、主にアニメ・ゲーム・アイドルなどにおける、キャラクター・人物などへの強い愛着心・情熱・欲望などの気持ちをいう俗語。意味についての確かな定義はなく、対象に対して抱くさまざまな好意の感情を表す。(Wikipedia)

”萌え”と表現するのはいかがなものか、という気もするが、桐野さんには『魂萌え』という小説もあるので、なんとなく使ってみた。

◆桐野夏生作品リスト◆
あまりにもたくさんあるので、備忘録として、下に掲げるリストを作っている。
読み終えたもの、これから読むもの、手元にないもの、がわかるようにしている。
さすがに、初期の「ロマンス小説」群は入手困難ということもあって読んでいない。

文庫はブックオフで購入して、読み終えた本は、どんどんブックオフに持って行っている。
ほんとうは、新刊書店で購入して著者の印税収入に貢献しないといけない、と思うのだが。

文庫化されていない近作は、単行本を図書館から借りたり(予約待ち行列が長い)、待ちきれなくて自腹で買ったものもある。

【2022/5/19現在】 〇持っていて未読 ●読了 ▲読了(図書館本)

・ファイアボール・ブルース―逃亡(1995年1月 集英社)
【改題】ファイアボール・ブルース(1998年5月 文春文庫)
●OUT(1997年7月 講談社 / 2002年6月 講談社文庫【上・下】) ※第51回日本推理作家協会賞受賞作
●錆びる心(1997年11月 文藝春秋 / 2000年11月 文春文庫 / 2006年1月 大活字文庫【上・下】)
[所収作品:虫卵の配列 / 羊歯の庭 / ジェイソン / 月下の楽園 / ネオン / 錆びる心]
●ジオラマ(1998年11月 新潮社 / 2001年10月 新潮文庫)
所収作品:デッドガール / 六月の花嫁 / 蜘蛛の巣 / 井戸川さんについて / 捩れた天国 / 黒い犬 / 蛇つかい / ジオラマ / 夜の砂
●柔らかな頬(1999年4月 講談社 / 2004年12月 文春文庫【上・下】)
 ※1999年第121回直木三十五賞受賞作
●光源(2000年9月 文藝春秋 / 2003年10月 文春文庫)
▲玉蘭(2001年3月 朝日新聞出版 / 2004年2月 朝日文庫 / 2005年6月 文春文庫)
・ファイアボール・ブルース2(2001年8月 文春文庫)
▲リアルワールド(2003年2月 集英社 / 2006年2月 集英社文庫)
〇グロテスク(2003年6月 文藝春秋 / 2006年9月 文春文庫【上・下】)
●残虐記(2004年2月 新潮社 / 2007年8月 新潮文庫)- 週刊アスキー連載。連載時タイトルは「アガルタ」。桃源郷としての「アガルタ」を全く知らないままタイトルとして採用したとのこと
〇I'm sorry, mama(2004年11月 集英社 / 2007年11月 集英社文庫)
〇魂萌え!(2005年4月 毎日新聞社 / 2006年12月 新潮文庫【上・下】)
▲冒険の国(2005年10月 新潮文庫) ※東大和市立図書館 3/26- (文庫)
●アンボス・ムンドス(2005年10月 文藝春秋 / 2008年11月 文春文庫)
[所収作品:植林 / ルビー / 怪物たちの夜会 / 愛ランド / 浮島の森 / 毒童 / アンボス・ムンドス]
〇メタボラ(2007年5月 朝日新聞社 / 2010年7月 朝日文庫【上・下】 / 2011年8月 文春文庫)
●東京島(2008年5月 新潮社 / 2010年5月 新潮文庫)
●女神記(2008年11月 角川書店 / 2011年11月 角川文庫)
〇IN(2009年5月 集英社 / 2012年5月 集英社文庫)
●ナニカアル(2010年2月 新潮社 / 2012年10月 新潮文庫)
〇優しいおとな(2010年9月 中央公論新社 / 2013年8月 中公文庫)
▲ポリティコン(2011年2月 文藝春秋【上・下】 / 2014年2月 文春文庫【上・下】)
〇緑の毒(2011年8月 角川書店 / 2014年9月 角川文庫)
〇ハピネス(2013年2月 光文社 / 2016年2月 光文社文庫)
●だから荒野(2013年10月 毎日新聞社 / 2016年11月 文春文庫)
〇夜また夜の深い夜(2014年10月 幻冬舎 / 2017年10月 幻冬舎文庫)
▲奴隷小説(2015年1月 文藝春秋 / 2017年12月 文春文庫)
[所収作品:雀 / 泥 / 神様男 / REAL / ただセックスがしたいだけ / 告白 / 山羊の目は空を青く映すか Do Goats See the Sky as Blue?]
〇抱く女(2015年6月 新潮社 / 2018年8月 新潮文庫)
●バラカ(2016年3月 集英社 / 2019年2月 集英社文庫【上・下】)
〇猿の見る夢(2016年8月 講談社 / 2019年7月 講談社文庫)
●夜の谷を行く(2017年3月 文藝春秋 / 2020年3月 文春文庫)
〇デンジャラス(2017年6月 中央公論新社 / 2020年6月 中公文庫)
〇路上のX(2018年2月 朝日新聞出版 / 2021年2月 朝日文庫)
〇ロンリネス(2018年6月 光文社 / 2021年8月 光文社文庫)
▲とめどなく囁く(2019年3月 幻冬舎)
●日没(2020年9月 岩波書店)

https://amzn.to/3OO1AE5

●インドラネット(2021年5月 KADOKAWA)

https://amzn.to/3VvJfzj

●砂に埋もれる犬(2021年10月 朝日新聞出版)

https://amzn.to/3Vt7bU4

・燕は戻ってこない(2022年3月4日 集英社)

https://amzn.to/3OKHLxu

【小説 村野ミロシリーズ】
▲顔に降りかかる雨(1993年9月 講談社 / 1996年7月 講談社文庫 / 2017年6月 講談社文庫【新装版】)
▲天使に見捨てられた夜(1994年6月 講談社 / 1997年6月 講談社文庫 / 2017年7月 講談社文庫【新装版】)
●水の眠り灰の夢(1995年10月 文藝春秋 / 1998年10月 文春文庫 / 2016年4月 文春文庫【新装版】)
●ローズガーデン(2000年6月 講談社 / 2003年6月 講談社文庫 / 2017年8月 講談社文庫【新装版】)
[収録作品:ローズガーデン / 漂う魂 / 独りにしないで / 愛のトンネル]
▲ダーク(2002年10月 講談社 / 2006年4月 講談社文庫【上・下】)

【ロマンス小説】
・愛のゆくえ(1984年12月 サンリオニューロマンス)
・熱い水のような砂(1986年2月 サンリオニューロマンス)
・真昼のレイン(1986年7月 サンリオニューロマンス)
・夏への扉(1988年1月 双葉社) ※桐野夏子名義
・夢の中のあなた(1989年3月 双葉社) ※桐野夏子名義
・ジュニア小説(野原野枝実名義)
・恋したら危機!(1989年8月 MOE文庫)
・あいつがフィアンセだ!(1989年8月 MOE文庫)
・小麦色のメモリー(1989年8月 MOE文庫)
・トパーズ色のband伝説(1989年10月 MOE文庫)
・恋したら危機! パート2(1989年12月 MOE文庫)
・媚薬(1990年3月 MOE文庫)
・恋したら危機! パート3(1990年5月 MOE文庫)
・急がないと夏が… プールサイドファンタジー(1990年7月 MOE文庫)
・セントメリークラブ物語1 セントメリーのお茶会にどうぞ(1990年10月 MOE文庫)
・セントメリークラブ物語2 銀の指輪は冷たく輝く(1991年1月 MOE文庫)
・ガベージハウス、ただいま5人(1991年3月 コバルト文庫)
・涙のミルフィーユボーイ(1992年1月 コバルト文庫)
・ルームメイト薫くん 1-3(1993年-94年 偕成社)

【エッセイ集】
●蛇教異端審問(2005年1月 文藝春秋 / 2008年1月 文春文庫) - エッセイ集
〇The cool!桐野夏生スペシャル(2005年9月 小説新潮別冊 - Shincho mook)- 書き下ろし作「朋萌え!」や未発表作「プール」他、25ページにわたるカラーグラビア等、桐野夏生の基本情報が掲載

【対談集】
●発火点(2009年9月 文藝春秋 / 2012年12月 文春文庫)

こうしてみると、まだまだ未読作品が残っているし、最新作『燕は戻ってこない』も図書館の予約待ち。
楽しみがあって、いいのだ。

「病膏肓に入る」などと、いかめしい”たとえ” (※)を使ってしまいたくなるが、古い雑誌(ムック)の特集号やら、原武史さんとの対談が掲載されている「文藝春秋」のバックナンバー(2011年3月号)まで、ネットでみつけて手に入れた。

※病膏肓に入る(読み)やまいこうこうにいる
病気が重くなって、治る見込みがなくなること。転じて、あるものごとに極端に熱中して、手のつけられないほどになることのたとえ。
[由来] 「春秋左氏伝―成公一〇年」に見える話から。紀元前六世紀、春秋時代の中国でのこと。晋しんという国の君主、景公は、病気が重くなったので、隣国から医師を呼ぶことにしました。すると、景公の夢に、病気が二人の子どもになって出て来ました。一人が「名医から逃れるには、どこに隠れればいいかな」と言うと、もう一人は「肓こうの上、膏こうの下に居おらば、我を若何いかんせん(横隔膜の上、心臓の下に入れば、おれたちをどうにもできないよ)」と返事していました。その後の医師の診断は、「病気の原因が横隔膜の上と心臓の下に入ってしまっているから、治療できない」とのこと。景公は、「彼は名医だ」と言って、謝礼をたくさん与えて帰らせたのでした。 (コトバンク)

【書影】
(左)The cool!桐野夏生スペシャル
   (2005年9月 小説新潮別冊 - Shincho mook)
(右)「文藝春秋」2021年3月号
   対談(桐野夏生✕原武史)無縁社会 日本を生き延びる知恵
   ※『ポリティコン』(2011年2月刊行)について語っている

Thecool20050928 20113

  *****

小平図書館の交流紙(毎月、会員に配布)に、「おススメの本」として、次のような文章を寄稿した。


桐野夏生『夜の谷を行く』
文春文庫 2020年3月 329ページ

https://amzn.to/41u5eut

桐野夏生(きりの・なつお)の小説が好きで、ときどき文庫の古本を買ったり、新刊を図書館から借りて読んでいます。
ペンネームから男性作家だと思い込んでいたのですが、私と同年生まれの女性作家と知り、親しみを感じています。1984年にデビュー。いまや膨大な著作のある人気作家なのですが、好き嫌いは分かれるところかもしれません。
『夜の谷を行く』は、1971年から72年にかけて世間を震撼させた連合赤軍事件(群馬県山中におけるリンチ殺人事件)を軸に、彼らの生き残りの女性の40年後を描いた小説です。ちなみに、この連合赤軍による「あさま山荘事件」から今年で50年。先日、山荘攻防戦の映像とその後の山荘の様子が放映されていました。
この小説、実際の事件をベースに永田洋子や森恒夫といった有名な幹部たちが実名で出てきますが、主人公とその周辺の人物は作者の仮構。とはいえ、2011年の震災前後の時代設定にリアリティがあります。
主人公は、事件後5年9カ月の刑期を務めて出所し、私塾を経営。それも5年前に閉めて、今は週に4日のスポーツジム通い(月に6500円のささやかなコース)と図書館通いを楽しみに、過去の事件とのかかわりを避けて、鉄階段の古いアパートに一人でひっそりと暮らしています。そこにある日、昔の“同志”から思わぬ電話がはいって、にわかに身辺が慌ただしくなります。否が応でも過去の事件を反芻することになり、昔の“同志”たちとの関わりが始まります。
そればかりか、数少ない肉親(事件のために親戚からは絶縁されています)である妹(やはり事件のせいで夫と離婚)、そのひとり娘である姪との関係も、ぎくしゃくし始めます。そんな折、ライターを名乗る若い男から取材の申し込みがあって・・・。物語の最後、あっと驚く意外な結末までもっていく展開は、さすが。
文庫版の解説は、連合赤軍事件を担当した女性弁護士(大谷恭子氏)。永田洋子の異常な性格がもたらした事態と言われ、一審の判決でもそう断定されたこの事件の別の側面を鋭く指摘しています。作者はこの弁護士から当時の“兵士”たち、とくに若かった女性たちを紹介されて取材したとのことです。

最後に、これまで読んだ桐野夏生作品のうちで私が面白かったと思うものを――。
・『柔らかな頬』(1999年4月 講談社/2004年12月 文春文庫)―幼児誘拐を軸に平穏な生活の裏に潜む闇を描く長編サスペンス。1999年直木賞受賞作。
・『アンボス・ムンドス』(2005年10月 文藝春秋/2008年11月 文春文庫)―短編集。表題作が秀逸。
・『ナニカアル』(2010年2月 新潮社/ 2012年10月 新潮文庫)―林芙美子の知られざる一面を描く伝記的なフィクション。
・『バラカ』(2016年3月 集英社/2019年2月 集英社文庫)―幼児売買というショッキングな現実と、東日本大震災・原発事故後の“こうだったかもしれない”日本の惨状をベースに展開する、ひとりの少女(薔薇香)の流離譚。
近作では『日没』(2020年9月 岩波書店)、『インドラネット』(2021年5月 KADOKAWA)、『砂に埋もれる犬』(2021年10月 朝日新聞出版)など。

| | | コメント (0)

その他のカテゴリー

【山】山日誌 【楽】音楽日誌 【歩】散歩日誌 【演】演劇・映画・演芸日誌 【観】観察日誌 【読】読書日誌 【遊】おでかけ日誌 【雑】きまぐれ日誌 【震】震災日誌 あの戦争 こんな本を手に入れた こんな本を読んだ こんな音楽を聴いた ちょっと遠くへ アイヌ民族・アイヌ語 アフガニスタン山の学校支援の会 サイボク・まきばの湯 トムラウシ山遭難事故 上々颱風 中島みゆき 中村安希 五十一 五木寛之 今尾恵介 内村剛介 内澤旬子 内田樹 加藤登紀子 勝沼大雅園 勢古浩爾 北方謙三 南方熊楠 古山高麗雄 古本 吉本隆明 吉村昭 呉智英 四季 冬 四季 夏 四季 春 四季 秋 図書館 国分寺 light house 国分寺界隈 塩山 BUN BUN Bear 塩見鮮一郎 多摩 夢枕獏 宇井眞紀子 宮本常一 宮沢賢治 宮部みゆき 小平図書館友の会 小平界隈 小松由佳 小熊英二 小金井公園 小金井界隈 山崎ハコ 山田風太郎 山野井泰史 岡崎武志 岸本完司 平岡正明 府中 郷土の森 日帰り温泉 日航123便墜落事故 星野道夫 服部文祥 杏's cafe 村上春樹 東大和界隈 松岡正剛 松本清張 松浦武四郎 柳田国男 桂枝雀 桐野夏生 椎名誠 江戸東京たてもの園 江戸東京博物館 池澤夏樹 沖浦和光 沖縄 沢木耕太郎 浅川マキ 浅田次郎 浅草弾左衛門 渋・辰野館 満州 澤地久枝 狭山公園 田中優子 白崎映美 百名山 知里幸恵・真志保 石光真清 石原吉郎 石川英輔 美瑛 船戸与一 菅江真澄 萱野茂 西川郷子 西牟田靖 角幡唯介 赤坂憲雄 長倉洋海 間宮林蔵 関野吉晴 阿部謹也 青梅・奥多摩・五日市 静かな大地 須藤もん 高橋美香 高田渡 高野秀行 鳥の歌 鶴見和子